2007-06-29

ピアス

テーマ:オ・ネ・ガ・イ


 フェンス
 



履きなれないハイヒールで

つま先が痛い。


背伸びをしても届かない

あなたの唇よりも

触れたいのは

左耳の銀のピアス。


やわらかそうな

耳たぶを貫いてひかる

小さな冷たい輪が


黒い髪にかこまれ

ひとりぼっちの

星みたいに浮かぶ。


いつも

傷なんかコワくない

痛みがひどくコワい。


冷たさに触れたいのは

自分のあたたかさを

知りたいから



誰かの傷に触れたいのは

それが

自分の傷ではないと

確かめたいから



ごめんなさい。


あやまらなくていいよ、と

あなたがいうから


そうして


息苦しくないように

抱きしめる腕の力を

そっと抜いてくれるから


誰に習ったのか

いいかげんな

愛し方しかできないわたしも


泣き出して

こんどこそ

あなたを愛せるかもしれない。





先日「バベル」を観ました。

神の怒りなんて

タイトルはおおげさですね。



だって

どの感情も

私がすぐ近くに感じてきたものと

同じものだから。



舞台は

モロッコ、メキシコ、東京。



東京での

少女の孤独は

自分の過去に重なる部分があって

涙が流れました。


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2007-06-22

テーマ:シアワセのかたち

  脚の爪



脚の爪は切らない。

あの人が切りたがるから。


切りそろえた小さな爪を

ぬれたあの人の指先が

そっと

何度もなでるから。


くすぐったい。


街行く人が

素足にサンダルの季節になっても

私は脚の爪に

色を塗らない。


汗と産毛

それ以外のもので

あの人の敏感な舌を

汚さないように。


ぱちん。

ぱちん。


鏡のない部屋。


小さな弧を描く白

弧を描く放物線。


向かい合って

うつむくあの人を見るときの


ただ静かな


その行為を見つめるときの

わたしの目の表情を

知りたくはなくて。


上手いとか

下手とか


こだわらないといいながら


いつもあの人のいう

オリジナルという幻想。


だって

それだって模倣から

作られたもの


なのに。


それほど特別な

愛し方なんてない。


比べられないもので

ふたりの時間は

満たされていく。







今日

「不思議顔の猫」の本を読みました。

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2007-06-15

「ハイドラ」金原ひとみ

テーマ:読書のタシナミ

自分の体を傷めつけるのだって

結局は

嫌になるくらいの

自己顕示欲からだ。

病的にやせること。

いつも、「笑うな」という

人気カメラマンの新藤が

壊れていく自分を求めているから。

なんて。

それが本当の理由ではない。

読者モデルあがりの

替えのきく

その他大勢だった早希は

ずっと特別な存在になりたかった。

だから

彼女は彼の望む被写体になった。

タトエ ミニククテモ。

自己否定と自己顕示。

自分は特別だ、と

感じさせてくれる

ひとつの道具としての

彼であり彼の愛なのだ。

一方では

ちっぽけな自分を感じるための

彼との関係なのだ。

そして

彼女はそれを自覚している。

人気バンドのヴォーカルである松木は

読者モデル時代からの早希のファンで

ストレートに愛を告げてくる。

変わってしまった彼女を

救いたい、と言うのだ。

早希が新藤の裏切りを知り

心乱れて電話をしたときに

何も聞かず駆けつけてくれる松木。

優しい言葉が

電話越しにかけられる。

こんな場面で泣いてしまう私は

早希と同じように

複雑にねじれた心を

持っているのかもしれない。

素直に誰かに守られたいと思う心と

自分は守られるのに値しないと思う心と。

追いつめられて

拒否されることを覚悟して

不安な気持ちに押しつぶされそうにならないと

誰かを求めることはできないから

こたえてくれる

ただまっすぐな

あたたかい気持ちが心にしみる。

それなのに

ひるんでしまうのは

なぜだろう。

もうながいこと

癖になった自己否定が

いつまでも

中毒のように甘くしつこく

彼女にも私にも

まとわりついている。

   ― 金原ひとみ「ハイドラ」(新潮社)

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2007-06-08

恋文

テーマ:コトバにできない

     
  朝の習慣
 



恋文が届いた。

夜明けの5時に。


郵便受けのソコが

カタンとなって

私の浅い眠りをさました。


毛布をかぶり

はだしのつま先を

こすりあわせて


私は

玄関の

やわらかい光の中に立つ。


腰をまげ

なげいれられた封筒を

指先だけを使って

ひろうために。


それは

独り言のように四角い。

あてさきがない。


端を用心深くちぎる。


それから


かさかさ、と音を立てて

白くたたまれた

優しい言葉をひらいていく。


なぜだろう。


差出人は

あのひとなのに

私は

懐かしい父の字を拾っている。


泣きそうだ。


思いと

こことの

その距離の遠さに。


一瞬で

消えない言葉が

ここにあるから


すこしだけ


世界の

あいまいな美しさを

信じることが

私自身に許される。


私の価値、らしいもの。

あなたの愛、らしいものを。







先日

初めて谷川俊太郎さんの

講演を聞きました。


詩はたくさん読んでいたけど

お話も朗読も楽しかったです。


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2007-06-01

願い

テーマ:カナシイトキ

かなしくて

どうしようもなくて

泣いて 泣いて

あなたに せがむと

あなたは冷たい声で

ただ静かに

泣き止みなさい、と強く。

溢れる涙をぬぐい

こみあげる嗚咽を

飲み込み

ひどく不自然にゆがんだ

わたしの表情を

みつめるあなたの視線を受け止める。

あなたは

微笑んでさえいない。

だから憎むこともできない。

あなたの望む理由を

懸命にさがしても

ただのいいわけだと

思われるだけだろう。

許されたい。

わたしが知るはずのない

あなたのなかの

幼い思い出に

たよって。

血の通わないもののように

かたい

その体に抱きつくよりも

ヒトらしい柔らかさを持った

手のひらで

やさしく頭をなでてほしかった。

悪い夢の中で

何度も見たように

わたしの子どもじゃない、と

あなたに言われるのを

おそれ

待ち焦がれるような

不思議な気持ちで。


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