しばらく続いた強風と雨が止んだ翌日、
春を思わせる陽気のなか、一気に南へと下る。

巨大なテーブルの下にこぼれたパンクズの様にも見える
ケープタウンの街並を対岸から眺めると白い靄がかかっていた。

「走るには良い日だ。」

そんな事をぼんやりと思いながら走り出した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cape of good hope01

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cape of good hope02

ケープタウンを一度通り過ぎ、そのまま更に南は南へと走り、
40km先のペンギンで有名なサイモンズタウンまで進んだ。

ケープタウン周辺では多くのサイクリスト達を見かけ、
ヨーロッパ以上に自転車に乗っている人の数が多くて驚く。

天気が良過ぎたせいで思っていたよりも早く町に着き、
ボルダーズビーチにてペンギンの群れを眺めては、
「今日はこの後どうしようか?」と予定を考える。

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ペンギンを観る為だけに多くの人が訪れます。
ペンギンの動きは見ていて飽きないです。


時間は午後1時30分。ここから喜望峰までは約25km。

往復50kmの距離なら暗くなるまでに帰って来れるはず。
なにより真冬であるのにかかわらず風も吹かない、
こんな完璧とも呼べる天気は滅多にないだろう。

ここを訪れた人達の話を聞くと、そのほとんどに強風の話が出てくる。
ましてや冬である以上、更に強い風を想定していたのだが、
無風であたたかさを感じる程の天気を見逃すわけにはいかない。

今日と明日では全く天候が変わってしまう可能性もある。

そうと決まればもう進むしかない。

そのまま再び自転車で海岸線を走り喜望峰を目指した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cape of good hope06

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海岸線をひたすら走り、かなりこう配のある坂道を上りまくると、
ケープポイント自然公園に入る為のゲートがあり85ランドを支払う。

遂にアフリカ大陸の最後目的地が近づく。

あまり実感がなかったのだが、少しだけドキドキしてくる。

本当にここでアフリカの旅が終わってしまうのか?
もしかしたら旅自体の終わりかもしれない。

この道があの遠くに見える丘を越えたらもう終わりなのだろうか?

あの角を曲がったらもうそこがゴールなのだろうか?

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そんな事をふと思うと感慨深さがこみ上げるのだが、
思っていた以上にゲートから喜望峰までは遠く、
しばらく走っているうちに気持ちはかなり落ち着いた。

喜望峰行きの曲がり角を右に入り、坂を下って更に2km程進む。

それらしき岩が傾きかけた陽の光に照らされていて、
「あ~遂についてしまった。」そんな事を思ったと思う。

喜ぶでも嬉しがるでも泣くでもない呆然とした感情で、
Cape of good hope(喜望峰)の文字を眺めて座り込んだ。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cape of good hope13


単なる岩山と言えばそれっきりのこの場所に来て、
一先ずはアフリカ大陸縦断の最終地点とする。

アフリカ大陸最南端はここから150km東にあるアラガス岬です。

思い残す事は沢山あるが、モロッコを出発して
寄り道しながらも一年足らずでここまで来た。

早いのか遅いのかは旅人の考え方次第で、
それぞれのペースで進めば良いと思う。

ユーラシア大陸を横断してロカ岬に着いた時もそうだったが、
思っていた程の達成感があるわけでもなく複雑な感情だ。

毎日が目的地到着の連続を繰り返す生活の中、
ここが最後だと言う実感は稀薄であり、
まだまだ旅の途中と言う感覚しかない。

実際にこれからまた自転車に乗って町まで帰らなくてはならず、
日の入りの午後5時までに出なくては罰金500ランドを取られる。

そして今日はサイモンズタウンまで戻り、宿は空いているだろうか?

思考は現実から逃れられない。

喜望峰にて観光客に絡まれ色々と話をしながら時間が過ぎ、
午後4時になる頃、再び町へ戻る為に自転車で走り出す。

あぁ、やっぱりまだ旅は終わってなかった。

タイムリミットは1時間、海抜0mからグングン坂を登り、
自然公園入り口のゲートをくぐり脱出しなければならない。

脱出ゲームも無事クリアし、サイモンズタウンのバックパッカーズに
宿をとり、少し体を休めてからケープタウンへと移動しようと思う。

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とりあえずはこれでアフリカ縦断の旅は終了した。

次はどこへ行くのだろうか?そしてイツになるのだろう?

この日の夜はアフリカ縦断を祝い、よい感じのレストランにて
ワインとシーフード料理屋を堪能し、夜にジンマシンが出たのだった。

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無事になんとか喜望峰まで辿り着きました。
心配をおかけした皆様、応援して下さった皆様ありがとうございます。
これからどうするかは未定ですが、近々帰国する予定です。
何枚かカードの期限が切れそうだったり諸々事情があるので。。。
ちなみに『喜望峰』とは誤植が正式名称になった形で、
本来はGood Hope『希望』が正しい訳だそうです。

ケープタウンやその他周辺の事などはまだ続きますので、
今後ともよろしくお願いします。

11.June.2012 箭内孝行