サンドロ・ボッティチェリ Sandro Botticelli

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ヴァティカン宮システィナ礼拝堂

「キリストの試練」 サンドロ・ボッティチェリ Sandro Botticelli
ヴァティカン宮システィーナ礼拝堂 1481~1482年


宗教、神話や物語、詩などからもインスピレーションを受け、作品化している。文学や哲学、植物学など、職人階級でも相当な教養を身につけたボッティチェリは、比較的に裕福な家庭で、商工階級のなかでは、貴族たちと交わる暮らしをしていたという。


当時から「ダンテ」を愛読するということは、それなりの教育を受けている象徴である。皮肉なことに、ボッティチェリの人生の冬というべき不安な時代に、「ダンテ」の挿絵を描いている。


ヴァティカン宮システィナ礼拝堂2 「キリストの試練」に描かれているこの女性。頭に木枝をのせている。足元には、クピド(キューッピット)が葡萄を抱えているではないか。


見覚えがある。1490-1500年に制作された「酔い」の果実の女神と見受けられる作品である。足元のクピドは、さらにそっくりだ。


「ボッティチェリ 至福の花々 (サンドロ・ボッティチェッリ)」の記事からご覧いただける。


さて、今回は、ヴァティカン宮システィーナ礼拝堂の大壁画から、サンドロ・ボッティチェッリの3点の作品を、まずご紹介する。


ボッティチェリのパトロンとなるメディチ家とヴァチカンの和解のため、システィーナ礼拝堂に赴くことになる。


1481年のこと。それ以降、ボッティチェリは時代の寵児となっていく。


僕がこの画家に「はまった」のは、初期の頃から晩年まで、描き方のパターンがあるということだ。「ヴィーナスの誕生」や「春(ラ・プリマヴェーラ)」と「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」の作風がまったく違うのだ。


このシスティーナ礼拝堂は、どちらかというと、「ヴィーナスの誕生」や「春(ラ・プリマヴェーラ)」に登場する女神に似た顔立ちや、服装がうかがえる。



システィナ礼拝堂


システィナ礼拝堂2

上 「反逆者たちの懲罰」

下   「モーセ の 試練」


この真ん中は、システィーナ礼拝堂の壁のであるが、一番下(上から3段目)の中央に、ボッティチェリの作品がそれぞれ描かれている。「キリストの試練」、「モーセの試練」などは、タイトルから予測できると思うが、「反逆者たちの懲罰」という邦題だが、原題をみると、コラをはじめダタンとアビラムらに対し、モーセが懲罰を与えるというものだ。


記事 サンドロ・ボッティチェリ Sandro Botticelli システィーナ礼拝  も読んで。



ヴァティカン宮システィナ礼拝堂4 天上画のすぐ下の壁に配置されている「聖シクストゥス2世像」(1481年)である。


サン・シスト(システィーナ礼拝堂)の名の由来の人物だ。教皇となって1年ほどで、皇帝ヴァレリアンの迫害で斬首されたという。


多くの画家達が、ここで才能を競って、仕上げていくのだが、ここで名を挙げたいところでもある。だが、長くなるので、今日は、サンドロ・ボッティチェリに絞っていく。


ちなみにロッセリ、ベルジーノらも、ボッティチェリとともに赴いている。


ボッティチェリは、聖母子シリーズをはじめ、同じ題材で何枚も描いている。受胎告知、東方三博士の礼拝などだ。


そのボッティチェリが正式に画家となったのが、1472年のこと。


聖ルカ画家同信会に迎えられ、「独立した画家」となる。


さて、連作画といえば、デカメロンの「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」、「聖 ゼノビウス」の奇跡について表現した4部作がある。「聖ゼノビウス伝からの四つの場面」だ。ギベルティ作 聖ゼノビウスの棺も有名だ。



ナスタジオ・デリ・オネスティの物語

ナスタジオ・デリ・オネスティの物語 第1~第4の挿話 1483年頃


The Story of Nastagio degli Onesti (first episode) プラド美術館
The Story of Nastagio degli Onesti (second episode) プラド美術館
The Story of Nastagio degli Onesti (third episode) プラド美術館
The Story of Nastagio degli Onesti (forth episode) 個人所蔵


女が裸で走っている。犬が噛み付く。これは馬上の男の怨念である。結婚ができなかった男は死に、女を呪う。呪われた女もとうに亡くなっているはずだと記憶しているが、呪いは永遠に続き、犬に内臓を食われ、息絶える女。そしてまた走り出す女。延々とこの繰り返しが行われる。


そんな話を、ある男が女に話す。なかなか結婚を決めてくれない女にだ。そして宴の席で、その場面をみせる。そしてとうとう結婚にこぎつけた。というような話だ。これは、「春」、ヴィラ・レンミのフラスコ画同様に、結婚の贈り物として依頼された作品である。



聖 ゼノビウス

「聖ゼノビウス伝からの四つの場面」 1500-05


Baptism of St Zenobius and His Appointment as Bishop ロンドン,ナショナルギャラリー

1枚目は、「聖ゼノビウスの洗礼と司教の務め」(直訳だから)。ゼノビウスが洗礼を受け、フィレンツェ最初の司教となった日を描いているが、もうひとつエピソードが書き込まれている。ゼノビウスの母親が、結婚には思慮深くという訓示を与え、結婚を拒否した女性が描かれている・・・はず。


Three Miracles of St Zenobius ロンドン,ナショナルギャラリー

2枚目は、「聖ゼノビウスの三つの奇跡」である。左は悪魔払いの場面。中央は死んだ子供を生き返らせる場面。左はキリスト教を信仰すると約束した、盲目の異教徒の目を治癒する場面。


Three Miracles of St Zenobius メトロポリタン美術館

3枚目も「奇跡」で、左の青年に生命を与えた場面。中央は、聖者の遺体を運ぶ途中、馬から転落した男を救う場面。左は「祝福の水」で、生き返らせている場面。


Three Miracles of St Zenobius ドレスデン国立絵画館

4枚目は「聖ゼノビウスの最後の奇跡、そして死」(直訳だから)。左は遊んでいた子供が、荷車で事故死した場面。中央は母親が聖ゼノビウスに、死んだ子に会わせてと泣き叫ぶ。その願いを叶え、子は蘇る。右では、聖ゼノビウスの臨終で、祈りを唱えながら賛美している場面。


一つの作品に、3つ程度のエピソードを描いた作品。どれもが主題であるから、絵巻物風な描き方だ。



Sandro Botticelli

ウェルギニア The Story of Virginia 1496-1504
ルクレティア The Story of Lucretia 1496-1504
カルンニア(誹謗) Calumny of Apelles 1494-1495


ウェルギニア物語とは、古典作家のリヴィのヒロインだったか?このウェルギニアは、ルクレティア (c.1496-1504)に結びつく作品。無実にもかかわらず、奴隷制度のなかで不名誉の烙印をおされる。ローマの専制的政治への反乱ともいえるらしい。ルクレティアは、左でローマ皇帝の息子に犯され、右で意識を失ったところを発見され、中央では、ルクレティアの死を前にした兵士達が誓いを立てている。これが、誹謗へと繋がっていくのだろうか。


誹謗は、左の青年が「無実」をあらわし、天にむけた指の先は、神への伝言だろうか。その前にいる老婆は「後悔」である。さて、「誹謗」の青いドレスの女性である。彼女は、「無実」の男性の髪を掴み引きずっている。なんと恐ろしい女。とても可憐な顔をして。その「誹謗」を、「嫉妬」と「欺瞞」の女性が、美しい花を添えている。さて、右には驢馬の耳をもつ王がいる。愚かな性質を象徴している驢馬の耳だ。「無知」と「猜疑」が何か囁いている。そして手を差し伸べる王の前の男。松明をもって「悪意」がいる。


サヴォナローラが焚刑に処されたのが1498年のことだ。

そして、ウェルギニア、ルクレティア、誹謗は、最後の作品といわれる「神秘の降誕」へと続くのだ。



REMOVE-Mystic Nativity

サンドロ・ボッティチェリ 神秘の降誕 1501年
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

この上部にある銘文だ。

「私アレッサンドロはこの絵画を1500年の末、イタリア苦難の時代に、ひとつの時代とその半分の時代の後、すなわち聖ヨハネ第11章に記される3年半の間悪魔が解き放たれるという黙示禄の第2の災いの時に描いた。そして悪魔はその後、第12章で述べられるよう鎖につながれこの絵画のように地に落とされるのを見るのであろう」


REMOVE

我に触れるな プチパレ美術館 部分 全体像はクリックで

サンドロ・ボッティチェリ&フィリッピーノ・リッピのエステル記から3つの物語 

Sandro Botticelli&Filippino LIPPI


REMOVE-Megillat Esther


「Trois scènes de l'histoire d'Esther エステルの3つの物語」 部分 全体像はクリックで

1470-75 ルーヴル美術館


「エステルの叔父の嘆き」(叔父とはユダヤ人モルデカイのこと)、「エステル、ペルシャ王クセルクセスの王妃となる」、「ハマンの処刑」


あらすじは、ユダヤ人モルデカイの養女エステルの機転でハマンの策略からモルデカイの命を救い、ユダヤ人絶滅の策略を阻止した物語。

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The_virgin_adoring_300


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ボッティチェリ 聖母子
サンドロ・ボッティチェリ 聖母子
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ボッティチェリ 至福の花々 (サンドロ・ボッティチェッリ)
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酔い 果実酒の寓話 / 聖母子と八天使
ヴィーナス / ウェヌス(ヴィーナス)・プディーカ
春(ラ・プリマベーラ)/ ミネルヴァ(パラス)とケンタウロス

「眠る幼子キリストを崇拝する聖母」1490年頃

サンドロ・ボッティチェリ 受胎告知
サンドロ・ボッティチェリ 三連画
ダンテ神曲 地獄編 トピック 」(ボッティチェリの挿絵あり)

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