タイトル「モグラ」

 

 

信西…
藤原通憲。入道して信西を名乗る。SがMかといわれたら、間違いなくドSに入る人で、おそらくその頂点に君臨する男。非常な切れ者で、平清盛のブレーンとして平家一門の隆盛に大きく貢献した。

 

 

信西という人がいました。彼は名もなき一学者でしたが、後白河法皇に取り立てられてからはメキメキ頭角を現し、保元の乱では冷静な指揮を見せて平清盛、源義朝らを勝利に導きました。

 

その功あってますます絶頂となり、権勢を欲しいままにするも、そのせいで色んな人に恨まれるようになり、清盛の留守中に屋敷で寝ているところを敵対勢力に襲われます。平治の乱です。

 

信西、とても勘の鋭い男でしたから、いち早く気付いて屋敷を抜け出し、少数の郎党を引き連れて山の中に逃げ込みました。しかし、敵は大勢で至るところに警戒網を張っているので、逃げられそうにない。

 

そこで信西は一計を案じます。土を掘って土中に身を埋め、竹筒で息をつないで難を逃れるという、賢いのか賢くないのかよくわからない方法です。そうすれば、敵が攻めてきても発見できず、やり過ごせるだろうという考えで、大急ぎで部下に穴を掘らせて自らは土の中に隠れ、上から葉っぱをかぶせて念入りな工作を施しました。

 

そうこうするうちに敵が山へと攻め上ってきました。そしてモグラ信西の近くにやってきて、どこか隠れていないか探索の目を光らせます。目ざとい一人が、敷き詰められた葉っぱの中から、微妙に空気が乱れているところを見つけます。不審に思い葉っぱを取り除いて土を掘り起こしてみると、モグラの真似をした時の権力者が。こうして希代の策士は御用となったのであります。