著者が16の時に執筆した幻想的な短編・「花ざかりの森」と

著者自身「自らのエキスのもっとも濃い部分」と言う「憂国」を表題にした

自薦の短編集。

 

特に「憂国」は強烈でした・・・。

二二六事件に与した友人を叛徒として捉えるよう命令を受けた武山中尉。

友を討つことはできず、美しい妻とともに切腹に至る…。

 

切腹に至るまでの禊・お色直し・そして最後の営みと

恍惚とした覚悟に彩られた濃厚な情景。

中尉も奥様の麗子も自らに陶酔しすぎてて、

その美学にどっぷりと漬けこまれます。(誤字ではないです)

 

そして迫力の切腹シーン。

この作品の原点といわれる「愛の処刑」を先に読みましたが(こちらはゲイ小説)

どちらも…腹を切る痛み・刺さる肉の感触・流れ出る血や内臓の湯気や

地の底から湧き出てくるようであろううめき声も聞こえそうなほど

生々しく激しいものでした。

そんじょそこらの残酷描写も真っ青です…。

実は外で読んでたのですが、このシーンを読んだときは

本当に固まってしまい、外の世界を一瞬マジで忘れました。

 

そして、のちにこのように本当に割腹した著者…

何かを感じずにはいられません。

 

ジョーカー・ゲームを読んだ後ならば

「トートロジー」と切り捨ててしまう姿ですが・・・

無駄死にと言い捨てるなどできない強烈な意志の姿は、

寒気が来るほど恐ろしく、また美しくもありました。

 

かとおもったら「卵」みたいなシュールなギャグもあり。

「海と夕焼け」のような少年十字軍のリーダーであった少年が

奴隷として売られたのち、日本に来ていたらという短編もあり。

学習まんが「世界の歴史」で数ページ書かれていた少年十字軍の悲劇、

印象に残っていたので、ここに出てきて驚きました。

 

バラエティに富んだ短編集でした!

 

 

えー、「花ざかりの森」は全然わかりませんでした。

美文なのはわかるけど何を言いたいのかわかりませんでした。

詩を長く書き連ねたような・・・

高校生三島由紀夫恐るべし。