さまざまな組織に分化する胚(はい)性幹細胞(ES細胞)から、ホルモンを分泌する中枢器官の「下垂体」を作ることに理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)と名古屋大の研究チームがマウスを使って成功したと発表した。成果は英科学誌ネイチャー電子版(9日付)に掲載された。
下垂体は、脳などの2つの組織が相互に作用する複雑な過程を経て分化するため、ES細胞で作るのは困難とされていたが、世界で初めて成功した。
下垂体は、脳の一部の間脳の下にぶら下がり多様なホルモンを放出する内分泌器官。成人で直径1センチ程度だが、生命維持に必要なホルモンや成長ホルモンなどを放出する重要な役割を担っている。
研究チームは、マウスのES細胞1万個を容器内に浮かべて培養し、形成を誘導する化合物を加えた。すると脳の一部の「視床下部」と「口腔(こうくう)外胚葉」という2組織の塊が形成され、組織の相互作用で、約20日間で下垂体が形成された。その後、ES細胞から作った下垂体を、下垂体をあらかじめ除去したマウスに移植。ホルモン調節が正常に作用することを確かめた。
今後、ホルモン分泌が低下する疾病などに応用が期待できるという。理研の笹井芳樹グループディレクターは「同様の培養方法で、肺や腸管など、より複雑な器官をES細胞からつくり出すことも可能であると示した」と話している。
(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/111110/wlf11111007080002-n1.htmES細胞:「下垂体」作成に成功 内分泌器官で初--理研など生命維持に必要なホルモンを作り出す組織「下垂体」を、さまざまな細胞に分化するマウスの胚性幹細胞(ES細胞)を使って作成することに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)と名古屋大の研究チームが成功した。作成した下垂体をマウスに移植し、正常に機能することも確認した。ES細胞から形成過程が複雑な内分泌器官を作ることに成功したのは世界で初めて。9日付の英科学誌「ネイチャー」電子版で発表した。
血圧の低下や意識障害などを引き起こす下垂体機能低下症は国内で少なくとも7000人の患者がいるが、ホルモンを補充する対症療法しかなく、今後の研究の進展が期待される。
同研究センターの笹井芳樹グループディレクターらがマウスのES細胞を培養。約2週間で原形になる組織が形成された。更に培養液に手を加えると、一部の細胞が、下垂体から出る副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を産出する細胞に変化。
作成した組織にACTHの分泌を促すホルモンをかけると、その分泌量は大量になり、副腎皮質ホルモンが過剰な状態ではACTHの分泌量が自動的に減少。生体内と同様に分泌量の調節ができることが確認された。
下垂体を除去したマウス14匹に今回作成した下垂体を移植すると、血中のACTH濃度が上昇し、全て9週間以上生存した。
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■ことば
◇下垂体
大脳のすぐ下の視床下部にぶらさがるようにあり、ヒトでは直径約1センチ。生命維持に必要な副腎皮質刺激ホルモンや子供の身長を伸ばすのに必要な成長ホルモンなど、重要なホルモンを分泌する。
(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20111110ddm041040112000c.html理研と名大、ES細胞から下垂体 マウスで機能回復理化学研究所の笹井芳樹グループディレクターや須賀英隆研究員、名古屋大学などは、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)から様々なホルモンを分泌する下垂体の組織を作ることに成功した。機能不全のマウスに移植して、延命効果も確かめた。論文が9日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載される。
下垂体は脳の視床下部の隣にある内分泌器官。副腎皮質刺激ホルモンなど生命維持に欠かせない物質を出す。この働きが落ちる下垂体機能低下症の国内患者数は約7000人。ホルモンを補充して治療するが、根治療法はない。
笹井氏らは微小な穴の中に培養液と1万個のマウスのES細胞を入れた。一定条件で培養すると凝集し、その表面に2種類の細胞の層を形成。特定のたんぱく質の働きを抑えると、培養開始から20日以上で一部がホルモンを作る細胞になり、「人工下垂体」が作製された。
この組織を下垂体を取り除いたマウスに移植したところ、血中の副腎皮質刺激ホルモンの濃度は通常の活動ができる程度まで回復。移植後8週間以上でも生存した。
今後はヒトのES細胞で人工下垂体を作製する。新技術は新型万能細胞(iPS細胞)にも応用できる見込み。5年以内にヒトのES細胞などから作った人工下垂体を動物に移植する実験に着手する。
(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E2EBE2E6918DE2EBE3E3E0E2E3E39180EAE2E2E2;at=DGXZZO0195579008122009000000ES細胞から下垂体、再生医療の臨床応用近づく様々な細胞に変化できるマウスの胚性幹細胞(ES細胞)から、ホルモンを分泌する「下垂体」を作り、病気のマウスを治療することに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)と名古屋大のチームが成功した。
機能の複雑な内分泌器官をES細胞から作ったのは世界初。再生医療の臨床応用に近づく成果で、英科学誌ネイチャー電子版に10日、発表した。
下垂体は間脳の直下にあり、脳からの指示で様々なホルモンを血液中に放出する。中でも副腎皮質刺激ホルモンは血圧や血糖のバランスを維持する働きがあり、生命の維持に欠かせない。
同センターの須賀英隆研究員らは、ES細胞1万個を培養液中に浮かべて間脳の物質に似た化合物を加えた。すると、細胞が集まった粒は、表面が袋状にくぼんで下垂体と似た構造になり、副腎皮質刺激ホルモンを大量に作り始めた。
(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111110-OYT1T01264.htm?from=navrES細胞から下垂体 複数組織絡む臓器で世界初さまざまな組織や細胞になるとされる胚性幹細胞(ES細胞)から立体的な下垂体を作ることに、理化学研究所と名古屋大のチームがマウスで成功し、10日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
下垂体は脳の一部の間脳に接し、生命の維持や成長に必要な多様なホルモンを放出する内分泌の中枢器官で、ヒトでは直径1センチ程度。視床下部など二つの組織が相互に作用して発生に必要な環境ができるため、ES細胞などの幹細胞で作ることは困難だった。
理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹グループディレクターは「複数組織の働きで形成される臓器を作ったのは世界で初めて」としている。
(47NEWS)
http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011110901000472.htmlマウスES細胞から脳下垂体=体内でも正常に機能-理研などあらゆる細胞になることができるマウスの胚性幹細胞(ES細胞)を使い、脳下垂体を人工的に作り出すことに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市中央区)などのチームが世界で初めて成功した。生体内で正常に機能することも確認しており、器官発生研究グループの笹井芳樹ディレクターは「複数の組織の相互作用で形成される脳下垂体が作れたのは非常に意義が大きい。人工多能性幹細胞(iPS細胞)にも応用でき、再生医療の分野が広がる可能性がある」としている。論文は10日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
グループによると、脳下垂体は副腎皮質ホルモンや成長ホルモンなどを制御する重要な器官。発生過程が複雑で、ES細胞などの幹細胞から作るのは不可能とされてきた。
グループは、約1万個単位のES細胞の固まりを作る凝集浮遊培養法で培養。6日後には、口腔(こうくう)外胚葉と視床下部の細胞からなる2層構造ができた。さらに培養したところ、脳下垂体の前段階のラトケ嚢と呼ばれる組織を経て、副腎皮質ホルモンなどに必要な細胞ができた。
脳下垂体を除去したマウスを、そのままのグループと培養でできた脳下垂体を移植したグループに分けて比較。移植しなかったマウスは活動が低調で8週間後までに全て死亡したが、移植したマウスは85%が生存し、活発に運動。副腎皮質ホルモンも分泌されていた。
(時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a3%c5%a3%d3%ba%d9%cb%a6&k=201111/2011111000049世界初 ES細胞で「下垂体」体のあらゆる組織や臓器になるとされる「ES細胞」から、体内のホルモンのバランスをつかさどる器官「下垂体」を作り出すことに、世界で初めて理化学研究所などの研究グループがマウスを使った実験で成功しました。
研究を行ったのは、神戸市にある理化学研究所と名古屋大学の研究グループです。研究グループは、特殊な物質を使ってマウスのES細胞を刺激し、分裂させる実験を行ったところ、立体的な構造を持った組織が作られ、ホルモンのバランスをつかさどる器官「下垂体」になったということです。この人工の下垂体を、下垂体を持たないマウスに移植したところ、エネルギーの代謝に関わるホルモンの量などが変化してマウスの運動量が増えたということで、研究グループでは人工の下垂体が本物と同様に機能したとみています。下垂体を人工的に作り出したのは世界で初めてで、研究グループでは根本的な治療法がなかった成長ホルモンの分泌が止まり身長が伸びなくなる病気などの新たな治療法につながるとしています。研究グループの笹井芳樹ディレクターは「今回の成功で新たな治療法の道筋が示せたと思う。複雑な器官を作った意義も大きく、再生医療の可能性がさらに広がった」と話しています。この研究は10日発行のイギリスの科学誌「ネイチャー」で発表されます。
(NHKニュース)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111110/t10013857801000.htmlこちらです。
Nature (2011) doi:10.1038/nature10637
Received 26 July 2011 Accepted 14 October 2011 Published online 09 November 2011
Self-formation of functional adenohypophysis in three-dimensional cultureHidetaka Suga, Taisuke Kadoshima, Maki Minaguchi, Masatoshi Ohgushi, Mika Soen, Tokushige Nakano, Nozomu Takata, Takafumi Wataya, Keiko Muguruma, Hiroyuki Miyoshi, Shigenobu Yonemura, Yutaka Oiso & Yoshiki Sasai
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature10637.htmlThe adenohypophysis (anterior pituitary) is a major centre for systemic hormones. At present, no efficient stem-cell culture for its generation is available, partly because of insufficient knowledge about how the pituitary primordium (Rathke’s pouch) is induced in the embryonic head ectoderm. Here we report efficient self-formation of three-dimensional adenohypophysis tissues in an aggregate culture of mouse embryonic stem (ES) cells. ES cells were stimulated to differentiate into non-neural head ectoderm and hypothalamic neuroectoderm in adjacent layers within the aggregate, and treated with hedgehog signalling. Self-organization of Rathke’s-pouch-like three-dimensional structures occurred at the interface of these two epithelia, as seen in vivo, and various endocrine cells including corticotrophs and somatotrophs were subsequently produced. The corticotrophs efficiently secreted adrenocorticotropic hormone in response to corticotrophin releasing hormone and, when grafted in vivo, these cells rescued the systemic glucocorticoid level in hypopituitary mice. Thus, functional anterior pituitary tissue self-forms in ES cell culture, recapitulating local tissue interactions.
めちゃくちゃ凄いですねぇ。。さすが笹井先生!と唸らされる研究成果です。
まず下垂体を作ろうと思う時点で凄いです。
理研のプレスリリースは
こちら。
1 ■無題
娘が下垂体機能低下症で毎日、ホルモン補充をしています。
近い、将来ホルモン補充なしで生活できる事を願っています。