review of jacques demy retrospective exhibition | la petite chambre

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先月のシネマファッションイラスト「シェルブールの雨傘」
続けてアップする予定が、まとめに時間がかかって遅くなって
しまいましたが…
8月の訪問時の
感想に加え、10月に再訪したジャック・ドゥミ展
追加感想など。

1回目の初日は図録やグッズが届いてなくて、再訪時に購入する
つもりでしたが、残念ながら数量限定で完売でした…

2回目は見落としてた細部情報を見ながら再鑑賞し、
別フロアのフィルムセンター図書室で、完売した図録を閲覧後、
「ジャック・ドゥミ、結晶の罠」という過去イベントのカタログ
が興味深い内容で、ドゥミや妻アニエスの知らなかった一面を
知るのに貴重な資料でした。
じっくり読みたくて購入したいと思い図書室の方に尋ねたら、
07年に日仏学院で開催されたイベント用カタログで現在在庫が
ない為、図書室にあったのは展示用に日仏学院から借りた本の
コピーだったそうです。

限られた時間内での資料の拾い読みでしたが、
「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」
「ロバの王女」など代表作の美しくドリーミーな世界観の
パブリック・イメージとは違った、商業的に成功しなかった
ダークな作品や、世間(特に母国フランス)から忘れ去られた
暗黒時代についてのインタビュー記事を目にして、
ダークで悲しい面を知って胸が熱くなりました。

妻アニエス・ヴァルダの作品の方がシニカルで現実的なので、
彼女の方が気難しそうな先入観がありましたが、実は
ドゥミの方が気難しくシニカルで不器用ところがあり、
アニエスの方が社交性があったようです。
ドゥミが亡くなった直後は別の死因で発表されていたけれど、
実際の死因がエイズだったことにも驚きました(ヴァルダの
「アニエスの浜辺」で病名が明かされてたそうです)

「シェルブール」「ロシュフォール」「ロバと王女」「モン・パリ」
と何度もドゥミと組んでいたドヌーヴや、長年コンビで名作を
生み出した音楽家ミシェル・ルグランとの不和や決別のことも
書かれていました。
「シェルブール」や「ロシュフォール」の歌声は吹き替えで
知られていますが、晩年の作品「都会のひと部屋」をドヌーヴ
にオファーした際、ドゥミは完璧さを求めて吹き替えを提案し、
自分の歌声に自信を持っていたドヌーヴは譲歩せず(共演予定
だったジェラール・ドパルデューも吹き替えに同意せず降板)
交渉が成立せず不和になり降板劇があり、作品自体も重苦しく
評判も良くなかったそうです。

ドゥミって完璧主義なのかな。
ドヌーヴは好きな女優だけど、シェルブールで女優として開花
させてくれた恩師の元を去ったとは冷たい気もする。
時々彼女からはしたたかさは感じられるし、図太さがあるから
長く現役で続けいているのかもしれない。。

公開時は見送ったけど、ヴァルダがドゥミについて描いた
「アニエスの浜辺」や「ジャック・ドゥミの少年期」、
ドゥミの「天使の入江」「モデルショップ」も見てみたい。

ヌーヴェルヴァーグ世代の監督陣に対する印象についても
書かれていて、ゴダールとやリヴェット(だったと思う)は
褒めていたけど、トリュフォーに関して「彼とは心を通わせた
ことがない」という発言が意外でショックだった。
接点がなかったということなのか、共感出来る要素がなく
苦手ということなのか。
日本にファンが多く、非ブルジョワ出身、映画人として成功後
不遇な時代を送ったこと、女性的な作風など、似た境遇や近い
感性かなと勝手に思っていたので。。

以前から気になってた本「パリから向かうフランス映画の港町、
ジャック・ドゥミとヌーヴェルヴァーグの故郷を訪ねて、
シェルブールからロシュフォールまで
」(タイトル長い…)
前回の記事引用した筆者の方の著作で、ドゥミ作品の舞台を
たどった内容なので、amazonで取り寄せました。




まだ少ししか目を通してないけど、シェルブールやロシュフォール、
ドゥミの故郷ナントなど、ドゥミやヴァルダの作品の舞台や映画、
その他主に50-60年代のフランス映画の舞台をたどったガイド、
映画についての紹介やコラムなど、フランス映画好きの方には
きっと満足出来そうな一冊だと思います。

過去に行ったことのある都市(ニースやエズ、アンティーヴなど)
は懐かしいし、未訪の地や未見の映画については見たくなったり
実際行ってみたくなりそうです。

10年前に買った「タエコワーズのヨーロッパ・ヴァカンス便り」も
映画やヨーロッパ好きの筆者タエコさんのオリジナルで細かな
レポートが印象的で、行ってみたいという気持ちになり、
渡欧時に参考になった一冊。
この本を出版後若くして亡くなり、直接面識はなかったけれど
同世代なので感慨深かったです。。

何度かアップしてるけど、久々に「ロシュフォールの恋人たち」
の絵で締めたいと思いますflower*

rocheforr