ふたつでひとつの人工衛星 おりひめ・ひこぼし/きく7号(ETS-Ⅶ) | 宇宙(そら)を見ながら「旅」するmomoの日記。 

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7月7日 七夕。

年に一度  空の「恋人」が出会う日。


手をつないで 寄り添って・・・やさしく見つめ合う  

そんな姿を 天の川で浮かべながら


彼らの挑戦が始まる

夢描く  未来への挑戦の記録・・・







1997年11月 種子島宇宙センター。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。 

まるで、夜空を切り裂くように閃光が走る。飛び立ったのはH-Ⅱロケット6号機。

この日

宇宙開発事業団(NASDA/現JAXA)によって、技術試験衛星が打ち上げられました。


技術試験衛星とは、文字が示す通り

宇宙空間上で、衛星に搭載された機器やその技術を習得するための衛星です。




NASDA(ナスダ)では、この技術試験衛星シリーズの愛称を「きく」と呼んでいます。

現在、この「きく」シリーズは8号まで運用。(2010年7月現在)


今回搭載された、7番目の衛星は「きく7号」と呼ばれました。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   ロケットに搭載する前の「きく7号」

そして、この衛星には

「おりひめ・ひこぼし」という愛称がつくのでした。



人工衛星を打ち上げ、星や惑星を観測し世界に並ぶくらいの観測技術の確率に成功。

純国産のH-Ⅱロケットの開発により、

日本はさらに、衛星を宇宙へ生産する技術を獲得したことになります。


技術が進歩していけば、次のステップへ日々進化するもの。


次に目指すのは、自動で活動できる「衛星」の開発でした。


そんなコンセプトのもと、ある衛星が宇宙へ旅立ちます。

それがきく7号。  「おりひめ・ひこぼし」です。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   おりひめ・ひこぼし
きく7号は二つの衛星に別れています。

ひとつはひこぼし(チェイサ衛星) もうひとつをおりひめ(ターゲット衛星)といいます。


彼らの主な実験。


宇宙空間で手をつなぎ、離れ・・・そしてまた手をつなぐこと。

宇宙空間でのランデブー・ドッキング技術を習得することでした。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   ドッキングアーム

何もない宇宙空間で、遠隔操作なく、自動で遠くの衛星とドッキング(接合)する。


それは、とても難しい技術でした・・・


衛星本体の姿勢を保つだけでも、かなりの微調整が必要です。

ましてや無重力の空間で

お互いに近づきながら、ぶつかることなく・・・数ミリのずれも許さない

単純ながら繊細な実験。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   地上から見た「きく7号」

新幹線(以上)の速度で移動している衛星、万が一、ぶつかれば大変です。



遠隔操作と自動運行・・・宇宙用ロボット技術試験とも呼ばれるこのミッションは

日本では初めてのこと、世界的にもまだ未知の試みでした。


どんなに頑張っても、人は宇宙での活動に限界があります。

これから宇宙で活動する為に、ロボット(衛星)が活躍する日がきます。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   国際宇宙ステーション

そんな宇宙で活動していくための・・・未来の為の技術でした。



さて、体制を整えた衛星「おりひめ・ひこぼし」

いよいよ実験の開始です。


1998年6月。

まずは、おりひめを固定しているひこぼしのツメの部分を開いたり閉じたりする実験を試行。

手元で泳がせる程度のものでしたが、

世界で初めての無人衛星同士の分離、ドッキングに成功したのです。
どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   ↑おりひめ側 ↓ひこぼし側

それから一か月後。

7月7日、七夕の日。

今度はお互いを2m離した位置からのドッキングにも成功します。


秒速1cm以下のゆっくりした速度によるドッキング。

それは、いままで誰も確立されなかった技術の成功でした。


順調に作業項目をクリアしていく「おりひめ」と「ひこぼし」

まるで、天の川でお互いの再会を楽しむかのよう。



さて、それから さらに一か月後の8月7日。

すでに、七夕は終わっていましたが

この夫婦に至っては、引き離されることもなく順調に手を取り合い、寄り添う姿がありました。


今日は、525mからのドッキング試験を行います。


ところが突然、「ひこぼし」はバランスを崩してしまいます。


「おりひめ」近づいてはバランスを崩し、遠ざかる「ひこぼし」


なぜか「おりひめ」からあと一歩のところで

「ひこぼし」は、ひっくり返ってしまうのです。


それは、姿勢制御装置(スラスター)が原因でした。

だったら、それを直せばいいだけ・・・のはずでしたが、

何回も転び続けた「ひこぼし」は、アンテナが地上に向かず、一時、交信不能に陥ってしまいます。


また衝突防止予防に、セキュリティとして「おりひめ」から遠ざかる設計がされていた為

とうとう最終的に

「ひこぼし」は「おりひめ」から12kmも遠ざかってしまいました。



「おりひめ」を目の前に、何度もその場を立ち去ってしまう「ひこぼし」


「おりひめ」には、自分の位置を知らせるための機能は持っていましたが

長時間の電力は確保されていませんでした。

このままでは、電源が完全におち、本当に星の海原で迷子になってしまいます。


早急に、彼女を捕獲する必要がありました。

かくして、「おりひめ」救出作戦が始まったのです。



何年もかかって作り上げたプログラムを数日で書き換えないといけません。

不調であった「ひこぼし」も「おりひめ」を見失わない距離を保つような航路修正も必要でした。


当初、数時間で終わるはずの実験は

20日も要したものとなりました。



8月27日。

休日(プライベート)も、お盆も夏休みも・・・返上して問題解決にあたった運用チーム。


この壮大な救出劇とも夫婦喧嘩とも とれる事件はは

運用チームの死闘を乗り越えて、ドッキングは見事成功と当時に終止符をうつことになりました。


「ひこぼし」はやっと「おりひめ」に出会うことが出来たのです。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。 

※ドッキングを成功した数だけだるまが置かれ、短冊や笹も飾られたそうです。


それから1年。

その間、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)共同によるロボットアーム作動実験や、

若田宇宙飛行士による遠隔操作実験などが行われ多くの成果を残しました。


1999年12月まで、運用は続けられることとなります。





2002年10月。

衛星本体の運航が、おぼつかなくなった「おりひめ・ひこぼし」は

NASDAスタッフにより、停波コマンドが送信されました。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。 
長い間、星空の中でずっと働いていた「夫婦」

しかし、これからは誰にも邪魔されない、二人の時間が約束されます。


「おりひめ・ひこぼし」は、手を繋ぎあったまま永遠の眠りにつきました。



自動でドッキング(接合)・ランデブー(並走)する技術は

確実に次の世代へ受け次がれています。


どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。   HTV(宇宙ステーション補給機)

近い未来、自動で動く宇宙船に人が乗って行ける・・・そんな日が来るかもしれません。





どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。 

そして、半永久的に

このふたつの人工衛星は、今も地球上を遊覧しています。



これからも一生、離れることのないふたつの星(人工衛星)として




7月7日、七夕。


この夜 ふたつの衛星(夫婦)が

永遠に離れることなく 空を舞っています。


彼らが 見つめる先に 私達の未来があり

その願いが 叶う日が来るまで

彼らの物語は 続いていくことでしょう。




みなさんは、どんなお願いをしましたか?




JAXAのHP「きく7号(おりひめ・ひこぼし)」について↓

                 http://www.jaxa.jp/projects/sat/ets7/index_j.html

                 http://robotics.jaxa.jp/project/ets7-HP/index.html


引用文献

「おりひめ・ひこぼし」のお話も載っています↓

どうでしょうロケ地を 宇宙(そら)を見ながら「旅」する momoの日記。  「萌」の皮をかぶった「ガチ」の衛星解説本。

「しきしまふげん」さんのHP↓

        http://teardrop.weblogs.jp/