――アラバス 砂漠
「あぢぃいい~」
蒼い短髪を掻き上げながら、青年――クラウドは弱音を吐いた。
「ウルサイ! こっちまで暑くなるでしょ!!」
兎のキラは白銀の毛を逆立たせて、怒る。
もう、どれほど歩いただろうか。
日が昇り、砂地独特の灼熱光が肌を焼く。
そんな中、金の髪を結い上げた少年は黙々と歩いていた。
「トキは涼しい顔してるけど、何? なんか、秘策でもあるのか?」
クラウドがトキの肩を掴む。
トキは仏頂面でその手を払う。
暑くないはずがない。
聞いていた40度どころか、現在の砂漠の温度は50度を超えている。
しかし、弱音ばかり吐いてはいられない。進むしかないのだ。
やがて、太陽は真南に位置し
いよいよ地からの蒸気で意識が朦朧としてくる面々。
「・・・どうして、何も見えてこないんだ」
トキが呟いた。
キラは、腰のバックに非難していた。
地図を広げても、現在地が分からない。
ディバイダー(コンパス)が潰れたようで、針がグルグルと回り続けている。
トキは歩みを止めずに、考えていた。
「「例えどんなに強い力を求めても、その源が憎しみや怒りだけなら、それは脆く簡単に壊れてしまう。
真実の強さを求めるのなら、君は本当に大切なことに気付かなければならない」」
リザと名乗った女性の言葉が何度もトキの心をざわつかせる。
彼女は何を知っている?
僕を知っている・・・?
トキは俯いていた顔を上げた。
ギラギラと射す太陽を仰ぎながら、歩みを続ける一行だった。
by 蓮