テーマ:フロー理論
フロー理論の2回目です。
前回はフロー理論にある、「フロー体験」についてお話しさせていただきました。
フロー体験とは、端的に言えば
「仕事や趣味など、取り組んでいることに没頭してしまう」ことでした。
没頭している時には、自意識がなくなったり、
時間の感覚が歪んだりするといった特徴がありました。
おそらく、誰でもこれに類する体験は必ずあるのではないでしょうか。
仕事で何かの書類やデータを作成しているとき、
スポーツやアウトドアを行っているとき、
将棋やゲームで相手との駆け引きに興じているとき、
勉強で教科書や問題集と格闘しているとき、
家や車の掃除をしているとき・・・etc.
最初は意識して取り組まないといけないことでも
やっているうちに集中してその取り組みを行っていること自体にのめりこみ
気づいたらものすごい時間が経っていた、
終わったら一回り大きな自分を発見した、ということは生活の随所で起こると思います。
これらの体験、「フロー体験」が起きるのは、どのような時なのか。
どのような条件があって、この状態が成立するのか。
チクセントミハイ先生はフローが起きやすくなる条件を3点ほど挙げています。
1.能力を必要とする挑戦的活動であること
まず、「活動」とは体を動かす活動だけでなく、思考の活動でも構わないと言います。
スポーツや掃除など、体を動かす必要は必ずしもないわけですね。
「挑戦的」であることというのは少し難しいですが
個人にとって、それが挑戦に感じられることであれば何でも良いようです。
挑戦と感じられるためには、その活動と自分の能力がある程度
均衡していることが必要になります。
均衡が崩れると、それは退屈なものになるか
手に届かない不安さ、重苦しさ、あきらめが募るかのいずれかです。
チクセントミハイ先生は、『フロー体験 喜びの現象学』という本で
(僕の大好きな本で、今回の参考書籍ですが)読書を例に挙げています。
読書をするためには、読書するためのルールが必要です。
日本語で書かれた書籍なら、日本語の文法で書かれています。
まずはそれを知っていないと読書ができない。当然です。
面白くなる、没頭できるためには、それを面白く没頭するだけの
能力がないといけないといいます。
中学校や高校の授業でいろいろ日本文学作品を読みます(読まされます?)よね。
しかし、面白いと感じたりそうでないと感じたり、
クラスが真っ二つ(9対1くらい?)に分かれる。
なぜなら、面白く感じるにはその文脈にある感情を読み取ったり、
その行動や考え方がその時代の何かの考え方や
作者の物事の捉え方を知ったり、それに気づいたり という能力が違うから というわけです。
その書籍を読むという行為と自分の能力が均衡しているから
「格闘」という取っ組み合いができるわけですね。
2.明確な目標があり直接的なフィードバックが得られること
明確な目標については、仕事でも何でもよく言われることで
比較的わかりやすいかと思います。そのイメージのままです。
その活動はどうなったらゴールなのか、ですね。
営業利益いくらというのも目標ですし
ラインの稼働率をいくつにするというのも目標。
何らかの施策なら、その施策によってどういう状態になることを
ゴールとしているのか。
スポーツなら相手に勝つこと(勝つために何が要るのかはまたあるわけですが)、
将棋なら先に詰みにすること、登山なら頂上を陥れること(下山して荷解きするまで?)…etc.
これも1と関連があることで、その目標達成のための過程ひとつひとつが
挑戦となることが大事なのは言を待ちません。
直接的なフィードバックのほうはちょっと難解です。
フィードバックとは、その目標達成のための過程ひとつひとつが
うまくいっているのかいないのかが分かることです。
Excelで何かの資料を作ったりマクロを組んだりするときには
それはとってもわかりやすいですよね。
計算式を組んで、適用してみる。式がうまくできていれば、望んだとおりの結果が出力される。
けれども、そうでない場合はエラーが出たりする。
エラーが出た場合には、計算式の過程を検証すれば、どこでつまづいたのかが分かる。
それを修正することを繰り返して、望んでいたものを得られるようにする。
入力に対して、即座に出力があり、うまくいっているのかいないのかは瞬時に返ってくる。
スポーツもそうですよね。狙った位置にストロークを打ち込めたのかそうでないのか。
しかし、仕事でぼんやりしたことに取り組んでいるときは
なかなか手応えが得られなかったりする。
手応えのない仕事に打ち込み続けるのはなかなか大変なもの。
総論として、手応えが得られにくい仕事に従事していると達成感が低めに出る。
営業の仕事は数字が求められて大変だなあと思いますけれど、
ES調査したりなんかすると、企画系の人より高い達成感が出たりする。
フィードバックが得られやすいということでしょうか。
3.今していることへの注意集中が得られること
一瞬、?となる条件ですね。
没頭している状態とは、集中している状態といいながら
必要条件が「集中」であるというのですから。
しかし、実感としても、没頭する過程では徐々に(どこかで一気に?)
集中に切り替わっているのは確かでしょう.
集中するための条件設定として、勉強なら図書館に行ったり、
仕事なら思い切ってメインのオフィスを離れてあえて研修所で作業したりしますね。
あるいは、そのための音楽をかけたり、アロマを使ったり
集中力を高めるためのライフハックには事欠きません。
「今していること」とはどのような意味なのでしょうか。
チクセントミハイ先生曰く、物事に取り組むとき人は
何かと雑念が混じるものだといいます。
自意識だったり、仕事ならその仕事以外にもいろいろなことをやらなければ
という意識、他にも気にやむいろいろな事柄が混じる。
それらを意識の集中を妨げるものとして
「心理的エントロピー」と呼んでいます。
「心理的エントロピー」やそもそも意識について
チクセントミハイ先生は面白い考察をされているので
それは別の機会で触れたいと思います。
ここでは、「心理的エントロピー」のある状態の反対概念として
「心理的ネゲントロピー」の状態に自らを置くこと・置かれることで
「今していること」だけに意識が向かうようになること(意識が投射されること)が
必要になるということを言っています。
いかかでしたでしょうか。
こう考えてみると、世のスポーツや趣味、仕事での目標設定など
いろいろなものが人間の「フロー体験」を引き起こすように
設計している・されていることに気が付きますね。
これらの条件をうまく使って、日頃の活動をさらに面白いものにしたいですね。
一方、条件とは言うものの、ではこの条件が実際に達成される状態にあると
思われるのに、なぜ「フロー体験」が恒常的に起こっている気がしないのか
という疑問も出てきます。
チクセントミハイ先生は、さらに論を進めて
こういった「フロー体験」が起こりやすいパーソナリティについても述べています。
また回を分けて、お話を進めていきたいと思います。