アルバムmonsoon jamの5曲目はスローナンバーの、「傘」。



この曲は確か2008年に俺のソロライブで初披露して、それを見に来ていたメンバーがrainmanでやろうって話になって、かっつんがメロディーとアレンジをバンド用に作って唄い始めた曲。


今回はアルバム全体を通して、アコースティックギターの音が効果的に使われている。
すべてギターのかっつんの演奏によるものだけど、今回の傘も歌詞の世界観がさらに広がるような音とアレンジになっている。

tomo-kunの奏でるブルースハープもここでは「こんなに優しい音が出るのか?」って思うほどぞくっとする音を出す。


落ち着いたドラムとベースの上にのる、BOVAのトライアングルやスチールパンも、ここでは違う表情で登場する。

スローを聞くとバンドがわかるというけど、これが今のrainmanのスローナンバーです。





歌詞について。


この曲を作った頃は、あの最悪な「秋葉原の通り魔事件」があったときで、人間の弱さとか悲しさとか怖さとか、そういうものが頭を支配してて、何かやりきれない気持ちで言葉を並べてたような気がする。


「椅子に腰を下ろす時に見せる顔が心の顔だ」と誰かが言ってた~ と、この曲は始まるが、誰が言ってたかは覚えていない。過去にそんなことを聞いたことがあって、その時から、人が腰を下ろす時の顔を注意してみるようになった。元気に明るく振舞ってても、どこか孤独な部分を人は持っていて、それがふと力を抜く時に出てしまうのかな。そんな風に解釈していた。


俺の回りにも、人の喜ぶ顔が好きで、それを見るために走り回ってるやつらがたくさんいるけど、やつらがたまにこぼす痛みや影を見逃したくないなと思う。迷惑かけっぱなしの俺が言うんじゃおこがましいけどね。




この曲に出てくる「路地裏の店」は、新宿歌舞伎町に実在する。いや、実在した。


人間が一人やっと通れるくらいの細い階段をあがった場所にその店はあった。
この曲を作ってるときには実在してたんだけど、唄い始めて少したったら、店を閉めるという話を聞いた。


この店はRさんという女性が一人で切り盛りしてて、いつも気取らない笑顔で迎えてくれた。


ある日、明け方近くまでそこで呑んで、店を出た。新宿はまだまだ夜の顔で、霧雨にネオンが滲んで見えた。いつものように俺は忘れ物に気づく。サングラスだったか帽子だったか…。

店に戻ろうとすると、階段の下で、Rさんが階段の壁に寄り添って目を閉じているのが見えたんだ。酔いと、霧雨と、ネオンのせいがあるかもしれないが、俺はとてもその光景がキレイに見えて、しばらく見た後店には戻らずに帰った。

声をかけるべきだったのか。

曲の中では声をかけてみたりしてるが…。



インターネットが普及して、掲示板などに色んなやつらの想いが溢れている。正しい情報ばかりじゃないし、キレイな情報ばかりじゃない。いい奴もいるがどうしようもない奴もいて、顔の無い言葉たちを見るたびに、心が冷めていってしまうような感覚。

耳を覆いたくなるような事件に対する怒りも、小馬鹿にされるような気がして、素直に表すのを躊躇してしまうような感覚がある。





この曲に1つ救いが欲しくて、ひっぱってきたのが、「病室の窓」と「蛍」の話のくだり。


このくだりからのかっつんのギター音も好きな部分だ。リズム隊もピンと張り詰めた冬の空のようにタイトに曲を終盤へと運んでくれる。




これはある日、俺が実家に戻っている時の夕方の出来事。


親戚のおいちゃんが何かのおすそ分けをしてしてくれるために、俺の実家に寄ったんだ。
玄関先で俺がおいちゃんを迎えたんだけど、家に上がらずにすぐに出ようとするから、俺は「ちょっとゆっくりしていきなよ」って言ったんだ。
そしたらおいちゃんが「いや、これから市立病院に行って、庭に蛍をまかないといけないから」と言った。
俺は意味がわからなかった。「蛍をまく?」「病院?」

おいちゃんは俺に説明してくれた。
おいちゃんの住む山の奥の川では、この季節蛍がたくさん出没するらしい。
おいちゃんはその蛍達を見て元気な気分になったから、これを病気で入院してる患者さんが見たらきっと元気な気持ちになるんじゃないかって思ったそうなんだ。
それで毎週、ボランティアで、川で蛍を籠に集めて、こっそり市立病院まで行って、庭に蛍を撒いてくるんだそうだ。


特においちゃんの身内が入院してるわけでもないし、おいちゃんの家からだと病院までは片道一時間以上かかるし、病人が窓を開けて蛍を見つける補償なんてなにもないのに、おいちゃんはそれでも毎週通ってると聞いて、俺はすげーあったかい気持ちになったんだ。
おいちゃん、あんたかっこいいぜ!!!と。


いつか歌にしたいなぁと思っていて、この「傘」で使わせてもらった。





曲を聞いてくれた人が、あったかくなればいいなと思います。



もう一度行かなきゃね。

傘を捨てて。


●雨奇風好●rainman_daisuke

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