2016-02-08 08:14:32

【自主避難者から住まいを奪うな】「打ち切り御免」曲げぬ県庁。3万の家賃補助で追い詰められる避難者

テーマ:被曝

原発事故による、いわゆる「自主避難者」向けの住宅無償提供を2017年3月末で打ち切る方針を示している福島県は7日午後、東京都内で打ち切り後の家賃補助を軸とした「新たな住宅支援策」に関する説明会を開いた。しかし、従来から無償提供の継続を求めている避難者側との溝は深まるばかり。県側は「福島に戻れる環境は整いつつある」、「無償提供は6年が限界。打ち切り方針は変わらない」などと繰り返し、避難者の声に耳を傾けない。挙げ句、取材者を締め出そうと画策して避難者から批判を浴びる始末。当事者が置き去りにされたまま、「復興」という名の棄民が加速している。



【「打ち切りの撤回は致しません」】

 これまで何度も繰り返されてきた光景だった。

 福島県避難者支援課の幹部らは避難者からの質問に端的に答えず冗長な説明に終始していたが、次の言葉だけはきっぱりと言い切った。

 「打ち切りの撤回は致しません」、「方針が変わることはありません」

 県職員の口からは、住宅の無償提供継続について「難しい」、「ハードルがかなり高い」、「6年が限界だ」などと消極的な表現ばかりがついて出た。無償提供の継続を妨げる「高いハードル」とは何か、何を根拠に「6年が限界」と捉えたのか、具体的な説明は無い。そしてこうも言った。「内閣府との協議の中で、福島県として打ち切りを判断した」。避難者から声があがる。「福島に戻れるという判断をしたのは県なんですね?」。県職員はうなずいた。「はい。放射能に汚染されたのは事実だが、生活できる環境が整っている。そもそも、避難指示区域以外では普通に生活しています」。

 避難者に寄り添うと言いながら公の場で発信する言葉がこれでは、自主避難者への世間の誤解は払拭されるはずがない。なぜ避難の必要が生じたのか。原発事故による放射性物質の拡散があったからだ。2015年2月に実施された県の「避難者意向調査」でも「応急仮設住宅の入居期間の延長」を求める声が最も多く、その理由の多くが「放射線の影響が不安」だった。何のための「意向調査」だったのか。

 避難者支援課によれば、「避難されている方の声にお応えしたいという支援策」が最大月3万円の家賃補助(2年間)だったという。さらに「住宅を見つける時間が欲しいという声を受けて」家賃補助は3カ月前倒しされることになったと職員は胸を張った。これには、説明会場の後方に座っていた若い母親らから怒りの声があがった。

 「全然応えてないよ」

 実は、決まっているのは民間住宅へ転居した場合の「家賃補助」と福島に戻る際の「転居費用補助」(10万円)だけなのだ。各都道府県の公営住宅への優先入居は「お願いしている。いろいろな角度から検討を進めている」(避難者支援課)状態。実際、東京都都内避難者支援課の担当者はこう言っている。

 「福島からの避難者が優先的に都営住宅などに入居できるかは方向性も含めて未定です。このままいけば、都としては2017年3月末で住宅の提供義務がなくなるわけで、退去して自力で住まいを探していただくことになります」

 これが「避難者の声に応えた」という福島県庁の〝努力〟の結果なのだ。
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(上)説明会の冒頭、福島県避難者支援課の幹部らは

取材者の途中退出を提示。避難者らから「やましい

ことでもあるのか」と批判を浴び、撤回した

=東京都中野区

(下)年収まで実名で書かせる「意向調査」の回答用紙


【「来年3月で家族はバラバラです」】

 避難者の言葉に耳を傾けない県職員に、福島県相馬市から東京都立川市に避難しているという男性(57)が静かに語り始めた。「早く福島に帰って欲しいと言っているようにしか聞こえない。なぜ避難しているかと言えば、原発が爆発したからですよ。なぜそれが分からないのですか?」。

 男性は自力で住まいを確保したため、国の支援なく現在の住まいの家賃も支払っている。この間、都営住宅へ入居するべく申し込んだが、4回とも抽選に外れてしまった。うつ病を患い、妻が働いている。「貯金を取り崩しているけれど、やばいです」。ハローワークにも通っているが、年齢がネックになり仕事に就けていない。
 「僕は、川内、高浜など全国の原発で働いてきました。汚染は6年で消えるものじゃない。でも、帰還を強制しているような気がしますね」
 南相馬市原町区から調布市に避難中の男性(60)も「県にはまったく期待していない。いくら声をあげても反映されないじゃないか」と静かにマイクを握った。

 味の素スタジアム、旧赤坂プリンスホテルを経て現在の都民住宅に入居した。高齢の母親は東京の暮らしになじめず、南相馬の自宅に帰った。3LDKに幼稚園に通う2人の孫を含めて6人暮らし。家賃に共益費や駐車場代も加えれば「来春以降は、福島県内では考えられないほどのお金がかかる」。

 少しでも息子世帯の負担を減らそうと、妻と南相馬に帰る苦渋の決断をした。福島に戻る人だけには10万円の転居費用補助が出るが、県庁に問い合わせると「息子世帯の家賃補助か転居費用かの二者択一です」と言われた。泣く泣く、妻と二人の転居費用は補助を受けないことにした。男性は「不公平だ」とも主張したが、福島に戻らない息子世帯の転居費用は支給されない。しかも、息子世帯が受けられる家賃補助は最大で3万円。避難者支援課が想定している「家賃6万円」では、都内で借りられる間取りは、都心から離れても1Kかせいぜい2K。男性は「全く不完全な支援策だ」と怒りをぶつけた。

 「来年3月で家族はバラバラです」という男性の言葉に、避難者支援課の職員は言葉がない。孫との同居をあきらめたのは、何より放射線被曝への不安があるからだ。しかし、県庁の考え方は「皆、普通に生活している」。男性はたまらずこう言った。「こんな支援策、誰も納得していませんよ」

 そして、囲み取材では皮肉交じりに語った。

 「確かに、これまで無償提供の世話になってきたし、決定権のない人たちにいくら言ってもね…。彼らも立場上、ああ言わされているのだろう」
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南相馬市から調布市に避難中の男性。息子世帯の

家賃負担を少しでも減らそうと、断腸の思いで妻と

自宅に戻ることを決めた。「来春から家族はバラバラ

です」。息子が得られる家賃補助は月額3万円だけ


【実名で収入書かせる「意向調査」】

 WHO(世界保健機関)は、「健康」を次のように定義している。

 「肉体的、精神的および社会的に完全に良好な状態にあること」。
 「日本子どもを守る会」がまとめた「2015年版子ども白書」でも、「住宅問題と若者の貧困」や「子どもの居住権」が重要な課題として掲げられている。住まいは生活の根幹だ。
 しかし、避難者たちがどれだけ訴えても福島県は聞く耳を持たない。説明会の終了後、「県知事に直接、訴えたい」と母親の1人はつぶやいたが、内堀雅雄知事は自主避難者と会おうともしない。福島県は、新たな支援策を発表した後に「意向調査」の名目でアンケート用紙を避難者に送付しているが、記名式の上に健康状態のほか家族個々人の年収まで記入させるようになっている。「収入を把握して追い出す材料にするのだろう」、「家賃補助を少しでも減らしたいのか」と避難者らは憤る。シリアルナンバーを切り取るなど、個人を特定されぬよう工夫して回答する動きが広がっている。

 この日の説明会では、避難者支援課の職員が質疑応答の取材を禁じる発言があり、紛糾する場面があった。テレビ局や全国紙の記者も取材に来ていた。説明会に来られない避難者のためにも、すべてを記録して報じて欲しい─。集まった避難者から怒りの声があがった。「何かまずいことでもあるんですか?」。県職員は、出席した避難者のプライバシー保護を理由に挙げたが、個人が特定されないように配慮すれば良いだけのことだ。取材を禁じる理由にならない。そもそも、取材者の退出を求める避難者などいなかった。行政の隠蔽体質が如実に表れた一幕だった。
 あとどれだけ避難者が声をあげれば届くのか。しかし、避難者には個々の日常生活がある。運動家ではない。そもそも、避難者支援課の意向調査票が届いて初めて、住宅の無償提供打ち切りを知る避難者も少なくないという。

 「当事者の発信が大事なのは分かるけど、私たちにも生活がある。私が声をあげて来られたのは、子どもが病気の時などに手を差し伸べてくれた近所の人がいたから。原発事故への理解があったから。避難者をサポートする体制が整わないと、当事者が声をあげることなんてできませんよ」
 母親の目は潤んでいた。避難は美談ではない。避難者たちは追い詰められている。


(了)

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