2015-11-30 20:06:35

【浪江町の米】東大学食で始まった「食べて応援」~居住制限区域の米は本当に「世界一安全」なのか?

テーマ:食品汚染

東京大学(東京都文京区)の学生食堂で30日、福島県浪江町の居住制限区域で今秋、収穫された米を使った「浪江定食」の提供が始まった。生協購買部で米の販売も始まり、大学をあげて浪江町を応援している。「食べて応援」に潜む追加被曝の危険性や、国が目指す「原発被害者の自立・帰還」推進と賠償の打ち切りを東大生は知ってか知らずか、「浪江定食」は初日から飛ぶように売れていた



【「復興に役立てれば」と東大生】

 原発事故など今は昔。放射性物質の拡散から4年後の居住制限区域で収穫された新米が、次々と東大生の胃袋に収まって行った。正午を過ぎ、安田講堂にほど近い学生食堂に長い列が出来ると、次々と「浪江定食」が売れていく。福島第一原発から10kmほどの浪江町酒田地区で収穫されたコシヒカリに野菜の天ぷら、岩手県大船渡市産の小女子(コウナゴ)の南蛮漬け、鮭やニンジン、ダイコンなどがたっぷり入った紅葉汁で500円。「120食を用意しましたが、予想以上の売れ行きですね」と女性スタッフも驚くほどだった。

 「単純に安かったのと、応援というか、どんな味か食べてみたくて…。ほら、福島のお米って美味しいって言うじゃないですか」。3年生の男子学生は、安全性への不安を否定した。同じく3年生のカップルは、2人とも浪江定食を食べた。「美味しかったですよ。安全性?不安は無いですね。こうやって食べることで少しでも復興に役立てればうれしいですね」と男子学生。隣席の女子学生も「きちんと数値も出ているし、食べても大丈夫だろうと思います」と話した。別の男子学生も「店で売っていたら進んで買うことはしないかな」と話したが「不安や心配はないですよ」と浪江産の米を食べた。

 「浪江定食」を注文すると、2014年から始まった浪江町での米の実証栽培の様子や生産者からのメッセージが記された紙が手渡される。その中で、同大アイソトープ総合センター長・児玉龍彦教授が「福島と食の安全」と題して、こう綴っている。

 「1000万袋の米袋全部を検査し、世界一厳しい基準以下のもののみを出荷している世界一、放射線に関しては安全なお米です福島農民の支援とともに食の安全を再構築していくために、ぜひ福島での復興への新米を一緒にあじわっていただけませんでしょうか」
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浪江町で収穫された米を使った「浪江定食」は500円。

売れ行きは上々だった=東大生協中央食堂


【「笑顔で食べて」と生産者】

 浪江町農林水産係によると、2013年に環境省が酒田地区の水田を除染。放射性セシウムで汚染された表土を5センチの深さまで取り除き、汚染されていない地元の土を入れたという。昨年から、酒田農事復興組合が米の実証栽培を始めた。昨年、収穫された227袋(30kg)のうち、226袋が25ベクレル未満だったという。東大は浪江町と復興支援協定を結んでおり、今年1月には馬場有町長や濱田純一東大総長、生産者が出席して米の試食会が開かれたほど。この際、600kg分の米が販売され、売上金は町に寄付されている。
 今年も6000kgのコシヒカリを収穫。200袋のうち、198袋が25ベクレル未満。1袋が25~50ベクレル、もう1袋は51~75ベクレルだったという。定食に添えられた生産者からのメッセージには「まだまだ風評の多いなかのご協力に感謝致します」、「愛着のある土地で精一杯の努力で作った米です。どうぞ、笑顔で食べてください」と書かれている。

 東大生協の購買部では1袋400円(1kg入り)で販売されており、生協関係者は「米の安全には自信を持っている。東大生が食べるわけだから、何かあってはいけない。大丈夫だから売っている。食べて応援ですね」と胸を張る。浪江町の職員も「個々の判断はあるだろうが、国の基準を満たしているわけだから安全。販売して生計を立てるという本来の姿に戻すのは当然だ」と話す。

 ちなみに、酒田地区は年間放射線量が20mSv超50mSv以下の「居住制限区域」。「酒田集会所」のモニタリングポストは30日の時点で0.4-0.5μSv/h、少し離れた「苅宿公民館」は1.3μSv/h前後、「加倉運動公園」では2.6μSv/h前後と依然として高い値を示す。水田が仮に除染出来ていたとしても、農作業中の生産者の被曝の危険性は残る。
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生協購買部では1kg400円で販売も。大学をあげて

「食べて応援」に取り組んでいる


【「被曝しながらの農作業」と町議会】

 浪江町議会は2014年6月17日、「浪江町居住制限区域の米の配布自粛を求める意見書」を馬場有町長宛てに提出している。

 意見書は「浪江町は全袋全量検査体制による食品の基準値以下であれば出荷販売してもいいと判断しているようですが、米消費者の立場からすると安易な対応であります」、「いつ帰還が可能なのか見通せない居住制限区域で、少ない線量とはいえ外部被ばくしながらの農作業であることを認識し、食の安全について慎重な対応をしていただきたい」と町の姿勢を批判。「浪江町の居住制限区域の米をイベント等で不特定多数に配布することについては、風評被害の払拭を目的としているもののかえって逆効果になり新たな問題が生じる可能性があるので、自粛すること」と釘をさしている。
 原発被害者である生産者には、何の罪もない。将来の帰還を望むのなら、生活の糧としての農業再開を目指そうという想いは理解できる。しかし、福島産の農作物を避けることは「風評加害」だろうか?すべてを「風評」で覆い尽くして「食べて応援」を推進することで、新たな被曝の危険は生じないのか。米の全袋検査では放射性セシウムしか測らない。そもそも原発事故によって失われた営農の機会や収入は、加害者が責任を持って賠償するべきなのだ。

 福島県須賀川市の主婦は言う。

 「初期被曝させられたうえに、追加被曝を強いられる構造を止めなければいけない」

 安倍政権は、原発事故被害者に「自立」を促す。帰還政策の加速化と表裏一体の「食べて応援」拡大。それでも東大生は、実体の無い「応援」を続けるのだろうか。


(了)

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