●鷹巣山~六ツ石山          霧 曇り

  東京都 鷹巣山(1736m) 六ツ石山(1478m)  温泉

     2008年10月25日(土)


 <冬の鷹巣山はこちらへ ●2010年2月の鷹巣

<参考コースタイム>

 奥多摩駅(バス・)→峰谷バス停→(60分)奥集落の最奥→(10分)浅間神社→(1時間40分)避難小屋→(20分)鷹巣山山頂→(1時間15分)六ツ石山山頂→(1時間15分)稲荷神社→(45分)奥多摩駅

 ●歩行時間:6時間25分

 日帰り温泉:もえぎの湯

YAHOO map     

今回の山旅は、紅葉と温泉、駅前食堂で澤乃井の地酒を楽しむのが、主なモクロミだが、この時期、山はすでに紅葉し始めているだろうか?


 

選んだのは、奥多摩湖の真北に位置する標高1,736mの鷹巣山。さらに鷹巣山から六ツ石山を経て奥多摩駅に至る約14Kmほどの長いコース。山稜の延長線上には、七ツ石山や雲取山が連なっている。



 

鷹巣山山頂へのアプローチは何種類かあるが、ポピュラーなのは、中日原バス停から稲村尾根を経るコースと、ほぼ反対側の奥多摩湖畔から峰谷バス停に入り、浅間尾根を経て山頂に登るコース。

前者は急坂があるが短時間。後者は比較的楽なコースだが、交通の便が悪く、歩行時間も少し長くなる(当然後者を選択)。

後者の峰谷行きのバスは、早朝7時50分発のあとは、12時台(土曜日)しかないので、6時頃に(相棒は5時頃)に家を出た。



 

予報では、前日の大雨も上がり、気温が高い晴天のはずだが、あいにくの曇り空。気温が少し高く、奥多摩湖畔から眺める山々にはすでに霧がかかっている。

バスの車内から観た奥多摩湖
8時20分頃、終点の峰谷のバス停に着。ここから徒歩で「奥」集落まで歩き、浅間神社の登山道から浅間尾根に取り付くことになる。

終点の峰谷バス停

バス停から林道を登り、高度を上げると、すでに紅葉し始めた樹林が見えてくる。丁度山襞に霧がかかっていて幻想的な風情が感動的。

30分ほど歩くと、「奥」という集落に着く。深まり行く秋、清新な朝の気配に、集落がすっぽり包まれている。


 

峰谷には、「峰」と「奥」という、かなり標高の高いところに民家がある。「新編武蔵野風土記稿」によると、峰の集落を含む留浦村は、「江戸日本橋より二十三里余、民戸百十九軒、道の両傍および山中に散在せり」とある。峰や奥の集落は、高地にあるため「天界の集落」とも言われているそうだ。「ここが本当、に東京都?」と思わせるほど、周囲を山に囲まれた集落だ。新緑や紅葉の季節は、天界の集落めぐりだけを目的に、このあたりを歩いても良いほど。

奥集落の入口付近

「奥」の集落までは舗装された林道があるので、車を利用する人がいるようだが、昔ながらの、この美しい眺めの山道を歩かないのは何とももったいない。

「奥多摩の山には熊が生息しています」という登山口の掲示板を待つまでもなく、われわれも、集落に入る前からカウベルを着けて熊除けの用心に怠りはない。


 

  奥集落の中心近くまでもう少し

                                       すでに寒桜?の花が咲いている

バス停から1時間ほどで、集落の最奥、林道の終着点に着く。

あまりの景色の良さに、写真を撮るのにかなりの時間を割いたせいか、遅れ気味。奥集落の標高は900mあたりか。バス停の標高が590mだから300mくらいは登ったことになる。

雲海を横目で見ながら、浅間神社までは10分ほど。

浅間神社からはいよいよ本格的な登山道になるが、予想通り緩やかな登り。今度はブナやミズナラの林を歩くことになったが、目を見張るような紅葉に感動





カウベルのほか、何ひとつ音のない深閑とした森の中で、時おり、ポトッ、ポトッとかすかな音がする。気のせいかとも思っていたが、どうやらコナラの木から落ちたドングリのようだ。

この森は、広葉樹が多いので、動物たちにとっては食料の宝庫?

浅間神社からは尾根歩きだが、左右の見晴らしは利かない。

尾根筋の景観よりは、形容のしがたい、色彩豊かな錦のトンネルが美事。まだ紅葉しきっていない緑の葉のコントラストも一層、彩を添えている。

山道を少し登ったところで、「ズドン」と数発の銃声が聞こえてきたが、

シカか、イノシシか、熊か?

 

見事な紅葉はベニカエデの葉か?
避難小屋までは、階段状の登りではないが、テンポ良く登っていると、やはり足腰が張ってくる。決して楽な登りでもない。浅間神社から1時間40分、「嫌になる登りだなあ~」と2度ほど心の中でつぶやいた。
陽も照っていないが、Tシャツ一枚でも汗びっしょり。

濃い霧が、やがて雨滴となって、枯葉に音立てて降ってきた。そのとき丁度いい具合に避難小屋が見えてきたので、ここで大休止。


小屋は土間に板敷きのある部屋で清潔感がある。

時計を見ると、11時20分、出発から3時間弱というところ。

先客の登山客が「寒い寒い」といっている。気温は12度という。

汗が引くと寒くなるので、Tシャツを着替え、長袖のシャツと防風ジャケットを着込み、早めの昼食を摂ることにした。

小屋で40分ほど休憩して、鷹巣山頂目指して出発。幸い雨はもうやんでいた。

小屋から少し急坂があり、20分ほどで山頂に着く。

頂上はやはり相当の濃霧。3組のほどのパーティが霧に中で昼食を摂っていた。

広くゆったりしている鷹巣山山頂

濃霧のため展望が利かないので、すぐに頂上を出発。急坂を下ると開けた尾根道が続いている。ふかふかの枯葉のじゅうたん。

標高が低いところはカエデ類の赤く色付いた葉が少なかったようだが、頂上付近は、褐色の桜やカエデの落ち葉が堆積している。

霧は一向に晴れる気配はないが、紅葉がここも素晴しい、いまが最盛期か?
山   写真 温泉
山   写真 温泉


尾根道はなだらかで、美しいカヤト。晴れていればここからの景観が楽しめただろうが、それは次回のお楽しみ。


次に目指すのは、標高1478mの六ツ石山。途中、水根山、城山、将門馬場などを通過するはずなのだが、霧が徐々に濃くなったためか全く標識らしきものに気がつかない。

それどころか、周囲に目を取られていると、落ち葉と濃霧のせいで道を見失いそうになる。尾根の起伏で道を判断するしかない。

山頂から1時間ほど歩いたところで、分岐の標識に出くわしたが、それが将門馬場かと思いきや、六ツ石山頂への分岐点。随分早いペースで下りてきたことになる。

分岐から10分で六ツ石山頂に着。

細長い六ツ石山山頂

当初の予定では、ここから水根尾根を下り、奥多摩湖に降りるはずだったが、分岐まで戻り、このまま石尾根伝いに奥多摩駅まで歩き通すことにした。ガイドブックによると2時間10分ほど歩かなければならない。

水根尾根の急坂を下るより、時間はかかっても勾配のゆるい石尾根を選択したのが理由。

ところどころ急坂があるが、概して緩やかな勾配。そうは言っても、ここまですでに5時間ほど上下を繰り返しているので、足腰がパンパンになってきた。落ち葉で足が滑りそうになるので、勾配のある坂道は余計足を踏ん張らなくてはならない。

落ち葉で斜度が分かりにくいが、考えてみれば山頂からゴールまでの標高差は1200mもあるのだから、それなりの勾配があることになる。

途中、本日初めて熊の糞を発見。

熊の餌になるドングリやクリがこの山には豊富にあるようだが、本当のところはどうだろう。

そういえば、山道にアブラチャン(あとで聞いた)という、ドングリより丸みのある、実を沢山見つけた。硬い皮を剥いで口入れてみるとドングリの味に少し似ているが、油分が強いようだ。

漢字では「油瀝青炭」と書くように、昔、果実や樹皮を灯油にしたそうだ。


鷹巣山頂を出発してから、およそ3時間15分ほどで、稲荷神社に着。小さな祠があるだけの神社だが、石垣を積んだ参道や廃屋があるので、往時は参拝する人も多かったのだろう。

脇にある石仏には「享保(1700年初頭)」の文字が見える。

興味深いのは野仏の傍らに、風神の石仏があるところ、色々な野仏を見てきたが、風神の像とは珍しい。

登山の無事(熊に襲われず?)のお礼に、ちょいと立ち寄って参拝。



石垣の参道あと

その後、林道に出て、45分歩いてようやく16:00ゴールに着。

そこから本日第2の目的地の「もえぎの湯」に、重い足を引きずって向かうばかり。

ゆっくり湯に浸かり、お決まりの生ビールで乾杯。缶ビールをもう1本飲んで、ここは早々に切り上げて、本日第3の目的地、駅前の食堂に向かって暗くなった道をぶらぶらと。

ここでは、奥多摩の地酒である澤乃井を常温で一本。次は熱燗でもう1本。

なぜかここで飲む澤乃井は格別、旨く感じるのはどうしてだろう?

以前のように、本日の秋の収穫と一緒に記念撮影をば・・。

手前の丸い実がアブラチャン

酒を飲みながら本日の総括を。踏破歩数、約26,000歩、所要時間7時間30分、正味歩行時間は6時間25分なり。

電車の時間を気にしながら、食堂と同じ経営の土産店で、澤乃井のワンカップ冷酒と奥多摩名物「草だんご」を購入。

乗客のほとんどいない車内で、ささやかな酒盛り。電車が少し混んできたころには、もうウトウトと・・。



 

それほどに うまきかと ひとの問いたらば 何と答へむこの酒の味
牧水