●思親山 

   山梨県 1,031m  2008年3月15日(土) 快晴

<参考コースタイム>

 内船駅(徒歩の場合)→(1時間30分)佐野峠→(50分)思親山頂→(35分)ハング グライダー跡→(25分)林道出合い→(30分)八木沢集落→(50分)井出駅

歩行時間:4時間40分(佐野峠まで徒歩の場合)

 

関東地方で今年最高気温が予想される3月15日、午前6時にわが家を出発。

昨夜の酒がまだ残っているようで、足元がややふらつき気味。昨夜は、上京した友人と互いに「深酒は控えよう」、「だがそういうときに限って、なぜか深酒になる・・」などと言っていたのだが、結局3軒ハシゴのお約束。 身延線の車窓からみた富士川

向かうは、身延線の冨士駅から特急で約40分の「内船(うつぶな)駅」を基点とする「思親(ししん)山」。内船駅前には、満開の河津桜が咲き誇る。

思親山は、東京から行くには遠く、交通の便も悪い。身延線の上り下りは1時間に1本で、13時と14時台の電車がないので要注意。そのせいか、登山客も稀。

しかし関東富士見百景のひとつに数えられている通り、雲上の冨士の姿は、一見の価値あり。

当初の計画では、内船駅に10:00頃落ち合って、そこから佐野峠まで歩くか、タクシーを利用するか決めようと思っていたのだが、私の方が乗った電車の遅れで内船駅には1時間の遅れ。

途中、携帯電話で連絡を取り合って、相棒は徒歩で佐野峠を目指し、こちらはタクシーで後を追うことにした。

ガイドブックによると、内船駅から佐野峠までは、徒歩で2時間15分、車で20分の距離。標高差は700m近くもあるからそれなりの坂道だ。

旧道に入ると道が荒れ、ガードレールもないカーブのある道が続く。車が1台通れるほどの狭い道幅で、スピードをあげるとちょっとしたスリル。「運転手さん怖いね」と言うと、「でも木があるからね」という。崖から落ちても樹木があるから、下まで転がらないという意味か?カゼ

佐野峠まであと1/3のところで、ようやく追いついたのだが、このまま歩き通すというので、頂上にて合流することにした。

佐野峠の駐車場からも富士山が真正面に見える(雲にかかっているが)

佐野峠からいよいよ登山道。しっかりした木道が続いているので、安心して登ることができる。これといった急な登りもなく、なだらかな鞍部も2~3あって、40分ほどで頂上に着く。

 

階段の先がもう頂上
頂上は広く、視界も広い。あいにく着いたばかりのときは、ほとんど富士山が望めなかったが、徐々に雲が切れてきて、写真のようにきれいな冨士山を拝むことができた。これまで西側から富士山をまともに見る機会がなかったが、これでほぼ富士山の全容を見たことになる。

ここからだと、ちょうど中央に見える、V字に深く切れ込んだ「大沢崩れ」もはっきりと分かる。実は大沢崩れというのはこれまで知らなかったので、あらためて調べてみると、1000年前から現在まで続いている崩壊現象とか。1日あたり、大型トラック30台分(約280トン)の崩壊量が今でも続いているそうだ。



そもそも思親山という名前は、身延山で修行中の日蓮上人が、山頂から故郷の房州の父母を偲んだ、という伝説に由来するとか。

だった広い山頂の樹林からは、北岳や八ヶ岳も遠望できる。東の方にうっすらと見えるは、駿河湾か?
 
山頂で昼食をとり、たっぷり富士山の写真を撮影して、下山開始。

山頂から30分ほどヒノキ林を下ると、パッと視界が開ける「ハンググライダー飛び台跡」に出る。ここから右折して、内船駅に下る道もある。

ハンググライダー飛び出し台跡

思親山のコースは基本的に東海自然道と重なっているので、上りも下りも決してキツクはないが、だらだらした下りは、ジワリと足に来る。

ハンググライダー飛び台跡から30分歩くと、最初の林道出あいに出る。そこから山道と林道を横切り、やがて八木沢の集落に到着。

集落と言っても数軒の農家と源立寺があるだけのようだ。


八木沢集落

梅の香りが漂うところで、頃や良し、ホーホケキョとウグイスが鳴く。

これ以上ない、のどかな山間の景色。

登山道の出口に、見知らぬ果実がタワワに実っている。

デコポンのように、果実の真ん中にへそがある。あとで教えてもらったのだが、この果実は「サンボウカン(三宝柑)」という。みかんと夏みかんとオレンジを掛け合わせた果実とか。

庭先にいた老人が不意に現れて、「まだスイ(酸い)だが、どれでも取っていきなせ~」といってくれた。

 初めて見る果実に興味もあって、二つばかりもぎ取ると、今度は茶畑の向こうを指差して、「あそこには夏みかんもある、その横が金冠、良かったら、それも持っていきなせ~」と気前良いお言葉。みかん農家ではなく、余技で作っているらしい。
茶畑に入ると、陽だまり中に沢山の「フキノトウ」が芽吹いている。

まさに春爛漫。たくさんのフキノトウに感動していると、「持っていきなせ~」。


結局、サンボウ柑と夏みかん、金柑、フキノトウなど予期せぬ土産物を沢山もらい、後ろ髪を引かれる思いで、ゴールの井出駅を目指して出発。地元の人たちとの出会いも、また山旅の楽しさでもある。

集落からは、ほとんど舗装道路が続くのだが、予想以上に長い距離には閉口した。

50分近く歩いて、ようやく井出駅に着く。駅といっても改札も、駅舎もあるわけではない。ましてや駅前に店舗があるわけではない。ホームと待合所があるだけのさっぱりとして風景だが、目の前には春の陽光を受けて富士川が悠然と横たわっている。

なんとなく、ずいぶん遠くへ来たもんだ、という気持ち。

井出駅

この日は、温泉はなし。乗り継ぎのために下車した熱海駅で、冷えたビールをちょいと一杯。

本日のドアトゥドアの総所要時間は16時間なり。