今回の総選挙の争点のひとつである「子育て支援」「教育」政策。自民党と民主党の政策を比較してみたい。



1.政策概要


【自民党】

①幼児教育(3歳~5歳児)の無償化

②高校、大学における給付型奨学金の拡充

③低所得者への高校授業料無償化

④保育サービスを集中整備


【民主党】

①子ども手当(中学まで年額31.2万円)の支給

②高校授業料(公立高12万円、私立高24万円)の支給

③大学、専門学校生の希望者全員が受けられる奨学金制度創設

④待機児童の解消

⑤出産一時金の増額(38万円→55万円)



2.考察


一言で言うと、自民は間接給付型、民主は直接給付型の政策が並んでいる。自民党は低所得者を優遇する政策が多いのに対して、民主党は所得に関係なく一律に支援する政策が多い。


両党の目玉政策を比べてみよう。


自民党の幼児教育無償化。

幼稚園の保育料(入園料含む)は、全国平均(08年度)で、公立が年額7万8000円、私立が同29万9000円となっている。10年度から段階的に軽減し、3年目の12年度から無償とする。

財源は年間8000億円。


民主党の子ども手当。

現行の児童手当支給対象は小学6年生まで(所得制限あり)。支給額は、3歳未満が月額1万円、3歳以上は同5000円(第3子以降は同1万円)。10年度は半額、11年度から満額支給。

財源は年間5.3兆円。財源の一部(1.4兆円)は扶養控除及び配偶者控除の廃止で対応する。




3.検証


①本来の目的の実現

そもそも「子育て」「教育」を支援する政策の目的は、少子高齢化対策にある。言い換えると、「子育てをしやすい環境整備(親の支援)」、「将来を担う子どもたちへの支援(子どもの支援)」という側面を持っている。


この観点から考えた場合、支援を直接給付で行うか間接給付で行うかによって、大きな違いが出てくる。


直接給付型では、親の支援には一定の効果がありそうである。

しかし、各種手当が、親に支給されるということ、親が子どものために手当を使うことが担保されていないことから、子どもの支援には大きな問題を孕んでいる(後述)。


その点、間接給付型では、親の支援と子どもの支援の両立が可能である。



②不正への対応

ここで問題となるのは直接給付型である。


直接給付型では、親の良識に頼る面が大きい。

親の意思次第で、(自民党の石原氏が指摘したように)「パチンコに使われてしまう。」可能性は多分にある。


そもそも授業料不払い、給食費不払い、出産費用不払いなどが横行する中で、費用対効果を考えて、果たして本来の目的を達成できるかは甚だ疑問である。


③財源問題

自民党の目玉政策の必要財源は8000億円。その他の政策の必要財源ははっきりしないが、現実的に捻出可能な金額と言える。


これに対し、民主党の目玉政策の財源は5.3兆円。高校無償化でも4500億円と見込む。そのうち、扶養控除廃止等で1.4兆円捻出しても、国の年間の歳入は約46兆円であるから、その9分の1近くの金額をこの政策につぎ込むことになる。果たしてこれが現実的と言えるだろうか。



④どこまで支援するか。
自民党の政策は、原則として、幼児~小学生(現行の児童手当)まで支援する。児童手当には所得制限があり、高所得者は支援されない。


これに対し、民主党は、幼児~中学生(高校に通う場合は高校生)まで支援する。所得に制限なく支援される。


自民党案は少子高齢化対策のインパクトに欠けるが、民主党案は高所得者層まで支援する必要性があるのかが疑問。




⑤誰が負担すべきか。
自民党の政策の財源は税金。つまり全世帯にわたって広く負担する。


一方、民主党は扶養控除等廃止により、65歳未満の専業主婦世帯の負担が増加する。見方によっては、子どもを生まない、働かない女性に対して、懲罰的な意味合いにもとれる。また、既に子育てを終えた世代には不満があるだろう。



4.結論


なるべく公平に検証したつもりであるが、どう考えても民主党の政策には問題が多い。


直接給付型の政策では、不正が起こる可能性が高い。そもそも集めた税金をそのまま現金で返すのであれば、そもそも税金を集める必要がないのではないか。国の役割は集めた税金で制度や枠組みを作っていくことではないか。見方によっては、それは、国の役割を放棄したとも取れる。


そして、何と言っても財源には問題が多い。

そもそも5兆円も使うのであれば、もっと有効な使い道があるはずである。例えば給食費や教材費を無償化して義務教育の「完全無償化」を実施するとか、希望者全員が入れるだけの保育所を作るとか。そうせずに民主党がバラマキを選択したのは、ただ票がほしいからに他ならない。私には無駄に5兆円が費やされる気がしてならない。巨額の税金を投入する割には期待した効果が得られないのではないか。これこそ民主党がいつも言っている「無駄使い」なのではないか。


確かに自民党の政策では、少子高齢化対策としては不十分である。しかし、方向性は正しいと思う。少なくとも民主党よりは、はるかによい政策だと思う。


我々が、「目の前に吊るされた人参」だけに気をとられていると、子どもたちが大人になる頃には、日本は財政破綻しているかもしれない。子育て世代もそのことを肝に銘じて賢明な選択をすべきである。


とはいえ、自民党も民主党もバラマキ合戦になってしまった感があるのは残念である。本来は、待機児童の解消など少子高齢化に対する国の制度面でアピールすべきであると思うのだが。



○参考記事(読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090802-OYT1T00156.htm?from=main1

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news1/20090805-OYT1T00059.htm






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