☆圭太サイド19☆
テーマ:ブログどくん…どくん…
トクトクトク…
『………』
静かな部屋に響くような心臓の音を聞きながら、僕はゆっくり腕を緩めた。
『…羽月ちゃん』
『ま、待って!謝らないで!』
え…?
『さっきも言ったけど…圭太くんがサクラちゃんを忘れてないのは分かってるから!』
羽月ちゃんは恥ずかしいのか、下をむいたまま首をブンブン振っている。
『だからっ…キスしたこと、謝らないで』
なんか…そんなに恥ずかしそうに言われると、僕もたまらなく恥ずかしくなるんですけど…。
本当は僕だってこんな状況初めてで、恥ずかしくて死にそうだけど…
『…謝ったりしないよ』
『え…?』
羽月ちゃんがとっさに顔をあげて、バチっと目が合う。
でもその不思議な瞳からは目が離せないんだ。
『僕がしたいと思ったからしたんだ。それに…』
『それに…?』
『あんな瞳で見つめてきた羽月ちゃんが悪いんだからな!』
僕の言葉に羽月ちゃんの丸い瞳が、さらに丸くなった。
『…ふふ…良かった』
そう言ってまた俯こうとする顔を優しく手で包んだ。
『圭太く…』
『ありがとう。そんで…ごめん』
『え…』
『あ、これはキスしたことにたいしてのごめんじゃないからな』
小さく笑う羽月ちゃんが本当に可愛くて、思わず自分の頬が緩むのが分かる。
『僕、自分のことしか見えてなくて羽月ちゃんを傷つけてたよね』
『そんな…』
『…僕は…』
次の言葉を言おうとすると、頭の中にサクラの笑顔が広がる。
ずっと想ってきたサクラ。
サクラが誰を想っていても、サクラは僕の”特別”なのかもしれない。
『僕は…確かにサクラを忘れられてない。』
僕を見つめたまま頷く羽月ちゃんを、もう一度腕の中に包んだ。
『ずっと…サクラは特別だったんだ。そんな簡単に…何にもなかったことになんてできない』
『…うん。分かってるよ』
諭すような優しい声に、また弱い自分に戻りそうになる。
『でも…羽月ちゃんのそばにいると幸せな気持ちになれるんだ』
”想われてる”
この感覚は、味わったことのないもの。
『サクラといた時の気持ちに似てるんだけど…そうじゃなくて…うまく説明できないけど』
『…うん』
『羽月ちゃんの目をみると…色んな感情がでてくるんだ。可愛い、守りたい、そばにいてあげたい…』
ぴくっと羽月ちゃんが反応する。
どの言葉に反応したんだろう。
『何で目を見ただけで、こんな風になるんだろうってずっと思ってたんだけど…』
軽く腕を緩めて、その不思議な瞳を覗き込んだ。
恥ずかしそうだけど、やっぱりその瞳は僕を吸い込みそうになる。
『今日キスして分かったんだ。羽月ちゃんの…瞳から…僕を想ってくれてる気持ちが…伝わってるんじゃないかって』
『えっ…!!!』
羽月ちゃんは反射的に顔を手で覆った。
『ば、ばればれってこと!?』
『いや、そうじゃなくって…』
ドキドキしたり、わくわくしたり、同じようなことをサクラとも経験した。
サクラを抱きしめて、守りたいって、可愛いって思った。
ずっと側にいたことで、色んな感情と出会った。
『彼氏としてサクラのそばにいたのに…羽月ちゃんがくれた”僕を想ってくれる視線”をサクラから感じることは一度もなかった』
そう、一度もこんな気持ちになったことなかった。
『…”想われる”ってこんなに幸せなんだね』
ギュッと羽月ちゃんを抱き締めれば、背中に細い腕が回ってきた。
その腕からも、こんなに伝わる。
『…びっくりした。』
『え?』
『圭太くんが…そんな風に言ってくれるなんて思ってもみなかった。ちゃんと…私も圭太くんの目に映ってたんだね…』
羽月ちゃんの言葉で、初めて自覚した。
もうずっと前から、羽月ちゃんを意識してたこと。
もちろん、それが恋なのかって言われたら、そうじゃないのかもしれない。
でも、サクラ以外をそんな風に意識したことなんてなかったんじゃないかな…





