9日。

仕事帰りに、近所の店のカウンターで食事。

店に行くつもりはなかったが、帰り道で高校の友達から電話があり、

「結婚しまーす」

と低~い声で報告されたので、

「じゃ、ひとりで乾杯しまーす」

ということになったのだ。


なぜか後ろの方の席では、寄り道したメンバー土屋氏が、
何やらパソコンを広げて仕事をしている。

車だし、仕事だしで、酒を飲めない彼には申し訳ないが、
こっちにも都合がある。

(すまんがひとりで乾杯させてもらうよ。)

とはいえ、なんとなく申し訳ないような気がしたのか、しなかったのか、
頼んでいたアボカドのサラダを半分、店員さんに頼んで彼の席へ運んでもらった。

もちろん、店員さんには

「あちらのお客様からです」

と昔ドラマで見た、あの粋な一言を添えてもらった。


(なんて粋なはからいができる男なんだろう…)

そう思ったに違いないが、彼は何も言わなかった。

それでいい…、
シャイな男だからな。

付き合いも長くなると、それくらいは分かるのだ。

密かに、彼が注文していたほうれん草のサラダが、
半分お返しで来ることを期待したが、それは来なかった。

それでいい…、
知らなかったが、きっとほうれん草が大好きなんだろう。


次にこういう機会があったら、ほうれん草のサラダを半分あげることにしよう。

「アボガドじゃなくてアボカドね、の4月9日は粋な記念日」