この度本を出版することになりました。
明日発売です。
初めての単著です。
裁判実務をやってみて感じる労働法の仕組みを自分なりに書きました。
以下は、第1章の一部を抜粋したものです。
今後ブログであまり他の本に書いていない独自の記載をご紹介したいと思います。
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(3) 雇用契約と所有権
雇用契約において、使用者が労働力を買い取った結果得られる権利は「所有権」の概念に当てはめると、理解しやすくなります。
所有権は売買契約などにより得られる権利ですが、その内容は使用、収益、処分に分けることができます。
土地を買い取る行為を例にあげれば、「使用」とは、土地の上に家を建てて住むというように、文字通り自ら使用することをいいます。「収益」は、買い取った土地を駐車場として他人に使用させ、その対価として賃料を得るなどの行為を、「処分」はその土地を他人に売ることなどを指しています。
この所有権を、雇用契約において得られる権利にあてはめてみると、次のように考えることができます。
①労働者を使用する
たとえば、ある運送会社でAさんを管理職として雇ったとしましょう。ところが、Aさんはなかなか運転手をうまく管理できません。そこで、Aさんを配置転換して、別の事業所で働いてもらうことにします。全国展開をしている会社であれば、Aさんに他の都道府県で働いてもらうことや、管理職ではなく、運転手として働いてもらうことも十分可能です。こうした処置に問題はありません。
また勤務態度が良くないのであれば、使用者はその社員を注意指導する権利があります。たとえば、Aさんに部下との言い争いが絶えず、部下が続々やめていくようなことがあれば、当然、運送会社はAさんに注意指導ができますし、場合によっては懲戒処分を行うこともできます。
このように、使用者は雇用契約により労働力を買い取っているため、原則として労働力を様々な用途で使用する権利や、労働力としての質を高めるために注意指導する権利が認められているのです。
②労働者で収益を得る
収益については、派遣会社の例で考えるとわかりやすいでしょう。派遣会社は、自社で派遣社員を雇用し、他の会社で使用させて、派遣契約にもとづいて派遣料金を得ています。
つまり、買い取った労働力を他に使用させて利益を得ているわけですから、所有権における収益と似ているといえます。
③労働者を処分する
あまり知られていないことですが、期間の定めのない雇用契約について、民法上は自由に解約することができます(※1)。
①の事例の場合、特に制限もなくAさんとの雇用契約を解約することができるのです。理論上、雇用契約を解約するという点においては(民法第625条1項の場合などを除きます)使用者は買い取った労働力を処分することが可能なのです。
以上のように、雇用契約によって使用者が得る権利は、労働力を買い取り、買い取った労働力を使用するという点において、所有権に似た性格があります。
ただし、使用者の権利に、所有権の概念がそのまま当てはまるわけではありません。先に述べたとおり、これらの点は労働法および民法の一部の条文によって様々な制約を受けることになります。


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