入学・卒業式などの行事だけでなく、平日にも国旗を掲げる「常時掲揚」を大阪府立高校で唯一、実施してきた元校長がいる。抵抗勢力は国旗掲揚に反発する教職員組合だけではなかった。「府教委は常に『現場でもめたら困る』と弱腰。国旗を降ろせという圧力も感じた」。事なかれ主義に染まった大阪の教育行政の実態を元校長が告白した。

  [グラフで見比べる]民主党と日教組の政策の類似点

 奈良市在住の辻村●雄(くにお)さん(66)。平成12年4月から4年間、府北部の府立高校で校長を務めた。当時の大阪の学校では、すでに学習指導要領で明確に規定されていた入学・卒業式での国旗掲揚ですら教員から激しく抵抗されたという。

 「職員会議で国旗を式場に持ち込むと言うと、教員から『ばか言うな』『ナンセンス』とヤジが飛ぶ。異常な教育現場を正常化しなければと強く思った」

 職員会議は事実上の最高議決機関として運用され、多数決ですべてが決まるため校長の権限は形骸(けいがい)化していた。実権を握っていたのは、共産系の全日本教職員組合(全教)や民主・旧社会系の日本教職員組合(日教組)などに所属する教員らだった。

 「国旗の常時掲揚こそが正常化の第一歩になる」。長期戦を覚悟した辻村さんは布石を打った。

 14年春、教員から「独裁者」と反発されながらも、職員会議の規定について校長の権限を制限してしまうとして、無効を宣言。その上で《職員会議は校長が主宰する》との内規を設け、校長の補助機関と明示した。校務運営にも携わる主任らの人事権を組合主導から校長の任命制に変えるなど、組合の抵抗を封じる改革を進めた。そして15年10月、職員会議で常時掲揚を報告しただけで校舎屋上に国旗を掲げた。

 校内で混乱はなかったが、その後に府教委と府立学校の各校長が参加する1泊2日の研修会が京都・嵐山で行われた際、府教委から横やりが入った。

 大広間での夕食。府教委の幹部職員が突然近づいてきて、「あの常時掲揚は何や。学習指導要領に規定があるのか」と大声で突っかかってきた。周囲は静まり返った。辻村さんが「府庁に掲げられた国旗を降ろしたら私も降ろす」と冷静に応じると、職員は引き下がった。近くにいた当時の教育長は職員を制止せず、黙って眺めていたという。

 「現場でもめることを避けたがる府教委は国旗に終始弱腰だった。国歌も同じ。子供が『君が代』の歌詞を知らないので卒業式の式次第に印刷すると、幹部がすぐに苦言を寄せてきた」

 辻村さんが16年春に退職した後もこの高校では常時掲揚が続けられているという。ただ、府立高校を含む官公庁での国旗掲揚を求める決議が昨年末の府議会で可決された後、新たに常時掲揚を始めた高校がゼロであることが市民団体「大阪の教育を正す府民の会」の調査で判明している。

 辻村さんは「府教委の指導は足りないが、校長も指示待ち人間では駄目。校務に全責任を負う校長が決断すればすぐにできる。国を思う気持ちを子供に持たせるためにも、国旗・国歌では絶対に妥協してはならない」と話している。

 ●=森の木が刀

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