4年前、毎日新聞の投書欄「みんなの広場」で70歳を超える男性が「立ち上げる」への違和感を表明し、NHKに乱用の「言語的根拠」を問いただしていた。

 毎日新聞用語集では「誤りやすい慣用語句」のコーナーで「コンピューターのソフトを起動させるなどの場合以外には使わない。『設立する』『組織する』『スタートさせる』『つくる』『設置する』『起こす』など表現を工夫する」と言い換えを指示している。00年3月14日の当コラムなどでも取り上げられ、拡大解釈にクギを刺していた。ところが、08年発行の広辞苑第6版に「立ち上げる」の意味として「組織・企業などを新しく始める」が付加された。むしろ、凡庸に映る「設立する」より、能動感あふれる「立ち上げる」のほうが世間では魅力的なのかもしれない。

 投書の男性の言語的違和感は、「立ち上げる」を「立つ」という自動詞プラス「上げる」という他動詞の複合動詞と見るからだろう。「立ち上げる」自体を一つの他動詞と理解すれば受け入れやすいかと思う。とはいえ、「立ち上げ」の“隆盛”にお手上げの私個人の意見を言えば、「誤りやすい慣用語句」から外す時期に来ているように感じる。    【校閲グループ・林田英明】

            ◇ 

 ◇00年3月14日の「読めば読むほど」

 「最近頻出する『立ち上げる』という言葉には違和感を覚えます」というお便りをいただきました。

 確かに近ごろ、政治家が○○審議会を「立ち上げ」たり、財界人の××推進会議が「立ち上がっ」たりする記事を目にするようになりました。これらは「発足させる」「(組織などを)結成する動きを見せる」というような意味で使われますが、もともとはコンピューター関係の技術者の方々が使いだしたようです。

 必要な操作をして、コンピューターを稼働できる状態にすることを、他の機械一般と同様に「起動させる」と言いますが、それを話し言葉で平易に表現しようとしたのでしょう。「起」の連想で「立ち上がる」、さらに「させる」という使役の動詞の連想で下一段型の活用に変化させて「立ち上げる」--こんな推測をしています。ただ「立ち上がる」という自動詞の感覚が残るため、「~を」という目的語をとった他動詞の使い方に違和感が生じるのではないかと思います。

 辞書に載ったのも最近のことで、広辞苑(岩波書店)では1998年11月11日発行の第5版第1刷から登場しています。しかし、コンピューターに限っていて、前述のような「発足させる」という意味の拡大解釈は採用していません。

 毎日新聞でも98年6月に定めた内規で「『立ち上げる』はコンピューター以外には極力使わない」ことにしています。

 でもやっぱり、政治家の方々や財界の方々は、「使役」の動詞がすきなんでしょうね……。【松居秀記】

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