「現代の戯作者」として観客に愛され、時代に流されない社会風刺で日本と日本人を見つめてきた井上ひさしさんが亡くなった。

 肺がんと闘いながら新作戯曲を執筆するなど、創作に全力を尽くした人生。巨星の死を悼む声が全国から寄せられている。

 11日午前、都内で記者会見した三女でこまつ座社長の井上麻矢さん(42)によると、井上さんは昨年11月から4度に及ぶ抗がん剤治療を受けていた。その後も入退院を繰り返したが、自宅では、5月の「ムサシ」ロンドン公演を心待ちにし、沖縄戦をテーマにした新作「木の上の軍隊」の今夏上演に向け、プロット(筋立て)作りに取りかかっていた。

 このほか井上さんは、広島の被爆者を描いた「父と暮せば」の続編として「長崎の被爆者のことを書きたいと以前から話していた。“母と暮せば”的なものだと思う」と麻矢さんは残念そうに語った。

 先月中旬に再入院。9日朝、自宅に戻ったが、同日夕に体調が急変。妻のユリさん、長男、麻矢さんの3人にみとられ、静かに眠るような最期だったという。

 麻矢さんは「(父は)自分の作品をお読みいただくこと、劇場に足をお運びいただくことができますのなら幸せです、と言って旅立ちました」とのコメントを発表。「井上作品が皆様に末永く愛されることを願っております」と涙を懸命にこらえながら、気丈に語った。

 井上さんは、一貫して「笑い」にこだわった。「笑いは全く違う人々が同じ立場になる瞬間を作り出す。そして、相手を理解したと思った瞬間に、人は喜びを感じる」からだ。この信念をもとに「道元の冒険」「吉里吉里人」「父と暮せば」などの傑作が生み出されていった。

 40年来の友人だった哲学者の梅原猛さん(85)は、「ユーモアととぼけたペーソス漂う柔らかい表現で厳しい体制批判、社会批判を行うという、日本に例のなかった独特の喜劇のかたちを創出した。一貫して庶民の側に立ち、そこには虐げられた者への愛情があった」と盟友を失ったことを惜しむ。

 一方では、直木賞や読売文学賞など数多くの文学賞の選考委員を務め、後進の育成に尽力した半生でもあった。

 井上さんの「東京裁判三部作」を上演中の新国立劇場(東京・渋谷区)では、観客に「井上氏へのメッセージカード」を配り、追悼の思いを遺族に届けることにしている。

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