ひばりくんは止まらない 後編 | 腐ってやがる・・・ぷログ

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時々、というか度々ネタが生えてきます。
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今回の文章は、安斉トモ子さんへ「文章を書く」プレゼントをし、受けたリクエストに基づいて書いたものである。

携帯などで読みやすいように前後編に分けて送ります。


ここまで、大空ひばりを彼女と呼んでいる。通常は彼呼ばわりなのだと思うが、ここでは大空ひばり本人の意向を尊重したいと思う。

このように男性の肉体を持つ少女である彼女に関しては様々な面で物議をかもす事もあり「大空ひばりは女装して欲情しないのか」と言う人もいた。
私は、それは考えた事もなかった。夢の中のオカズがあの耕作君という人が女装で欲情はしない気がする。
もっとも女装は女性でも何らかの感情を呼び起こしている気もしなくはない。
ただ女性の場合ポジティブな感情へ変換されるものが、男性はネガティブな感情へ変換されるのではないかと・・・、ただそんな常習性の毒も毎日摂取していれば、肉体の方が慣れてしまう。そして日常になれば、ただのプロセスと化す。
かのように、その問いは愚問なのだが、世の中には「女装は欲情するもの」と語りたがる人がいるらしく、ネットで、そういう相手に反論をしたら、IPから素性を暴かれたという話を聞いた、恐ろしい話である。

まあ、兎に角、ひばりくんが男性で主人公の耕作が「それを良しとしない」ということでないならば、そのまま恋愛へなだれ込んでもおかしくない。いやそこが見せ場なのであろうが、兎に角ひばりくんは隙のない惚れるレベルでかっこいいキャラクターとして描かれている。

特に彼女はめちゃくちゃ強いと言う設定であり、描写もある。私は今までその特色は彼女が男性であるという演出だと思っていた。というよりこの部分を過大に信じてひばりくんを男性として好きな女性ファンもいたのではないだろうか。
しかし、改めて見てみるとこれも「うる星やつら」のしのぶのように、「少女に怪力」と言うややギャグ入ったキャラ付けであったようだ。
もっともそれが事実であれば、作者江口もひばりくんを何処か女性であるように描いていたのではないか、とも思えるのであるが、作品中で人間としての魅力が描写されているのは耕作の方である。

それも、ふだんはひばりくんが男だからと袖にするくせに、女のひばりくんに負けられない(作品中で女と断言しているのはここだけでは?)と発奮してボクシング部に入るなどという、男らしく(しかし冷静に考えれば身勝手な気も・・・、ただ相手がうる星やつらのラム並の押しかけ女房属性のひばりくんなので、同情を引く描写もないばかりか、ボクシング部に入った彼はひばりくんに対して女の子はボクシング部に入れないんだっけとか、男性の肉体を持つ彼女の複雑な胸中を一蹴する作品中で一番酷い事を言っているにもかかわらず)、ポジティブに描かれている。

実際、この作品は文庫二巻に収まるほど少ないが、これは作者の江口寿史が最初に投げ出した作品だから完結していない。
最近完結したらしいが、それはあえて扱わない。

作品としては、初期から真ん中までのあたりが一番面白い。
また、ちょうどアニメ化されたのもその部分なのだ。

後半を楽しみにして、二巻を読むとだんだん・・・、休載も多かったのかもしれないが、特定のキャラの言動がマンネリしてきていて、それを作中でネタにしたり、梃入れ的に新キャラの登場、旧キャラの復活とか色々あって、突然終わってしまっていた。

作品がひとつの世界なら、あの世界は突然消滅したのだ。

しかし、この世界の主人公である大空ひばりはなんだったのか、彼女の感情は主観で殆ど描かれる事はないが、本音が描かれていない訳ではない。
それは、「嘘がない」と言う事である、だから嘘をついた人には容赦しない。
たとえ、草の根分けても探し出して殺すと脅されて、恐れて逃げた相手であろうが容赦しないのである(まあ、件の襲撃には姉の失恋の復讐と言う側面もあったのだが)。
男なのに女性として通学しているじゃないかという向きもあろうがが、彼女の心が女性であるのは嘘じゃない(対して「ミントな僕ら」ののえるは女装は本意でない上に、脅して秘密漏洩を防いでいた・・・)。


余談だが、対照的な話として種村有菜の「紳士同盟クロス」でひばりくんの系統を継ぐような女装少年が登場するが、突如男性に戻り、「主人公の親友」から「恋人」になろうとしたが、主人公に倒されて元に戻る。

これは彼女が逃避のために男になろうとしたのが嘘であると看破された為である。

ギャグ作品の自由な世界で「放浪息子」のように、現実の運命に翻弄されずに作品世界を自由に飛び回っていたひばりは、ある日作品世界から飛び去った。

そして「ストップ!!ひばりくん!」は終わった。
当時の江口寿史は明らかにひばりくんのキャラクターをもてあましており、その限りにおいて、かなり苦しんでいたようではある。
作品が作者の意図から離れていったからだと人は言うが真実はわからない。
20数年越しのリクエストに応えて、完結させてしまった今では尚の事。

作品と言うものは、好きな人のものだと私は思っている。
その限りにおいて結末は、現実の世界のひばりくんに委ねられたのだと思う。
実際、その道へ進んだ人の道標になったと言う話はよく聞くのだが、結局この作品は時代が生み出したともいえる。
だからこんな中途で終わったのに忘れられるどころか伝説として残っている。

大空ひばりは現実の世界で希望になったのだ。

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