2010-09-24

創作活動(キーワード:「朝」「秋雨が」「濡らした」)

テーマ:物書きもどき
「あなた・・・あなた・・・」

(ポタン・・・・・ポタン・・・)
雨樋の罅(ヒビ)からしたたり落ちる滴が、軒先に忘れられたバケツに落ちる音で目が醒めた。
枕が濡れていた。
目尻から耳にかけて一筋濡れたような感覚がある。
私、どうやら泣いていたみたい。

秋に降る雨は、あらゆるものをゆっくりと濡らし、そして染み込んでいく。
寝室の窓から見えるそれもまた、秋雨に濡れていた。
その秋雨が濡らしたのは季節外れのあさがお。
あの人が好きだった遅咲きのあさがお。
私が「あさがおって夏に咲くものでしょ?」というと、あの人はいつも決まってこう言った。
「他のあさがおが咲き終わる頃に咲くあさがお。このあさがおは他のあさがおとは時間の流れ方が違うんだよ。
ゆっくり、ゆっくり、自分のペースでね。まるで俺みたいだろ?」
だけど、あの人が旅立つのは早かった。あんなゆっくりでマイペースな人だったのに・・・

あの人が旅立ってから2度目の秋。
今、私はあの人の好きだった遅咲きのあさがおを育てている。
毎年、毎年種をとり、それをまた翌年育てる。
あの人と私は結局子は成し得なかったけれど、あの人が残してくれたこのあさがお、これがあの人と私の大切な子供。
花開くたびにひとつずつあの人の笑顔を思い出す。



 夢枕 君立つ朝の 秋雨が

   濡らしたあさがお 思ひでの花



いつの間にか雨はあがっていた。
雲間からこぼれ落ちる朝の陽が、濡れたあさがおの雫と相まって地面に落ちる。
萎み気味だった花がゆっくりと開いた。

あ。。。あの人が笑ってる・・・・・
2010-09-14

創作活動(キーワード:「深夜に」「駅で」「見かけた」)

テーマ:物書きもどき
「あそこで入れられるのはヤバイって・・・なんでもうちょっと堪えられないかな・・・」
贔屓のサッカークラブがロスタイムで逆転負けした夜、俺はひとり居酒屋でやけ酒をかっくらっていた。
いつもは馴染みの赤提灯で軽く景気づけをしたあとにスタジアムへ向かうのだが、今日は試合前にイベントがあるということで、赤提灯には寄らずに今こうして居酒屋で呑んでいる。
勝利の美酒とはよく言ったものだ。今日の酒はそれと真逆の味がする。でも味が真逆なのに酒の量が減ることはない。むしろ不味い酒のほうがペースも上がる。
酔いつぶれる様にテーブルに突っ伏した俺が居酒屋の店主に起こされたのは、時計の針が真上に並ぶちょっと前だった。
勘定を払い店を出る。政令指定都市といえど、そこを通っているのは田舎のローカル線だ、この時間になれば終電も出てしまっている。
また女房にどやされるなと苦笑いしながら、タクシーを捕まえるべく駅へ向かった。
終電が出てしまった駅は人もまばらで、駅でタクシー待ちをする人か、深夜に駅向かいのコンビニでたむろう若者くらいしかいない。
空には星も月もなく、夜空でも解りそうなくらい重く暗い雲が立ちこめていた。
(・・・ん? ギター・・・唄声?)
俺はタクシー待ちの列から離れ、反射的に音がする方へ向かう。
はたしてその音は、一人の青年がつま弾くギターから流れ出しているものだった。
しばらく俺はその青年の唄を聴いていた。
えも言えぬ懐かしい感情が俺の心に蘇ってくる。
(そういえば俺も昔、仲間と深夜のモールで唄ってたっけ・・・)
沸き上がる情熱と衝動を不器用にさらけ出していたあの頃。苦しいほど膨れあがる自分の中の世界を、吐き出すように外界へ吐露し続けたあの頃。
青臭くて目を背けたくなるような過去。でもあれは精一杯生きていた証。
(ああ・・・ちっちゃくなったな・・・俺)
深夜に駅で見かけた青年にそんなことを気づかされ、ちょっと心が痒い気がした。
2010-09-07

創作活動(キーワード:「恋多き」「ふたりが」「手を繋ぐ」)

テーマ:物書きもどき
「ケンちゃんと片貝花火に来たのって初めてだったっけ?」
「初めてだよ、来るのはね。ドタキャンなら去年されたけど。今年もまたされ
るんじゃないかって思ってたけどね」

そうだった。去年はちょうど彼と別れて暇だったから、ケンちゃんに「花火連
れてけー」ってメールしたんだった。
でもそのすぐ後に新しい彼ができちゃったから、ドタキャンしてその彼と来ち
ゃったんだよね。

柏崎、上越、長岡、新潟、今年も毎晩のようにどこかで行われた花火大会。
全国でもこれほど花火大会の多い地域はないという。
その新潟県の花火大会を締めくくるのが片貝花火。
暦の上では一月も前に秋を迎えているのだけれど、本当のところ、私はこの片
貝花火が新潟の夏の終わりなんだって思っている。

ケンちゃんと私は、ふたりが小学生だった頃からの付き合い。もう15年にな
る。
小学校4年生の時、私の方から告白して付き合ったんだけど、手を繋いで一緒
に帰ったところをクラスの男子に見られてからかわれたのが原因で別れた。
ほら、あの頃の男子って、友達にからかわれたりするだけでもうダメじゃない?
ケンちゃん「俺、別にユキのこと好きじゃないし」って言って、私の手を振り
ほどいて行っちゃったっけ・・・
それからしばらくケンちゃんの方から避けてる感じがあって疎遠になったけれ
ど、お互い高校も同じ所へ行ったこともあってまた普通に話せるようになった。
惚れっぽくて恋多き女なんて言われている私、今ではそんな私にとって女友達
以上のいい相談相手になっている。
ケンちゃんもあれから何人か付き合った人がいるけど、社会人になってからは
仕事が忙しくて、恋愛なんてしていられないみたい。
でも私は構わず呼び出しちゃうんだけどね。


「ねぇ、片貝ってこっち?」
「うん、こっちだよ」

私が知っている越路から片貝へ抜ける道ではなく、そこから逸れて山を登って
いく。しばらく山道を進むと、急に視界が開けた。丘の上の田んぼ? そんな
感じの場所。

「ねぇ、やっぱりここって神社の方じゃないよ・・・ね!?」

そう私が言い終わより前に、夜空に大きな花が咲いた。

「ここは神社の裏のほう。こっちの方が他に明かりがないしひらけてる。それ
にユキは表のほうからはもう何度もみたことがあるだろ? だからこっちへ来
てみた」

確かに一面田んぼで、建物の明かりといったら、振り返ると遠くにみえるチカ
チカと光る大きな何かがあるくらい。
林の向こうから打ち上がる花火が、送電線越しにこれでもかというくらいくっ
きりと見える。
轟音が送電線を震わせ、「ビュンッ!」と鳴る。

「さっ、いくよ。車降りて」

農道の脇に停めた車から降りると、外は昼間とはうって変わって、頭(こうべ)
を垂れた稲の上を流れる風が少しひんやりと感じるくらいだった。

「ここ、降りるよ。段差があるから気をつけて・・・ほらっ」

そういうとケンちゃんは先に降りて私に向かって手を差し出した。
私はそれに捕まって、ケンちゃんのところまで降りる。私より少しだけ温かい
手。ケンちゃんの手。

「ありがと」

ケンちゃんは繋いだ手をそのままに、暗くて細い畦道を時々打ち上がる花火の
明かりだけで進んでいった。
どのくらい進んだだろう。繋いだケンちゃんの手から伝わった温もりで私の手
が満たされた頃、ちょっとした広場の様なところに出た。

「ここからだと送電線に邪魔されずに見えるんだよ」
「へぇ~、こんなところがあるんだ。もしかしてケンちゃん的穴場? 私じゃ
なくて他の女の子とか連れてきたほうが良かったんじゃないのぉ~?(笑)
・・・っていうか、手。いつまで握ってるのよ」

ケンちゃんは、私がそう言っても手を離さない。
スターマインがパチパチと音を立てて上がっている。

「・・・・・覚えてる? 小学生の時のこと。 あの時さあ、俺、からかわれ
て恥ずかしくてたまらなかったんだよなあ。今考えるとなんであんなに恥ずか
しかったんだろ?」
「それは仕方ないんじゃない? だってあの頃の男の子って、友達にからかわ
れたりしたらそれだけでその女の子のことを嫌いになっちゃうでしょ?」
「んー・・・俺さあ、あの後ユキと喋らなくなったのって、嫌いになったとか
じゃないんだよ。あんなことしちゃったから、どう話しかけていいか解らなく
てさ」

左手で軽くかしげた頭を掻く。

「そうなんだ・・・私ね、あまり付き合っても彼と手とか繋がないのよ。なん
かね・・・ちょっとね・・・なんとなく・・・」
「うわー、それってもしかして俺のせい? トラウマ?」

ちょっと慌てるケンちゃん。

「うん、そうかも(笑) でも、手を繋ぐっていうのもいい感じ。なんか新鮮。
また時々手繋いでよ。リハビリ、リハビリ(笑)」

そう言うと私は、握った手に少しだけ力を込めた。
大きくなったね、ケンちゃんの手・・・

「仕方ないよな~、んじゃ、次のカレシが出来るまでな。まあユキのことだか
らすぐに出来ると思うけど(笑)」

一際大きく夜空にひらいた花火、二人が手を繋いだ影を大地に映す。
間を置かず轟音と衝撃が身体を震わせた。

この人にはもう絶対恋愛感情なんて抱くわけがないと思っていた。
この人に恋愛感情なんて抱いちゃいけないと思っていた。
・・・でもね・・・・・

四尺玉の残り火が落ちてくる様は、季節外れのホタルの光のようにゆらゆら、
ゆらゆらと夜空を漂っていた。


おしまい。

あ、私の次のカレシはすぐにやってくるんだけど、それはまた別の物語・・・

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