2010-08-31

創作活動(キーワード:「夏の終わり」「忘れ物」「帰り道」)

テーマ:物書きもどき
人生80年、それは四季に例える事が出来るという。

『春』 木々草花が芽吹き、生命の誕生と瑞々しさが人生の始まりを感じさせ
てくれる頃。
『夏』 痛いほど強く降りそそぐ日の光を全身に受け、力強く枝葉を茂らせ、
来るべき時に備えて広く、そして深く根を張る大樹が如く。
『秋』 輝ける刻に、蓄えた力を存分に奮い、色づき、そして実を結ぶ。
『冬』 三つの季節を通り過ぎ、ようやく四季を知る。

四季で言えば夏の終わりを迎えた私の人生。
果たして広く深く根を張ることが出来ただろうか?
秋の輝ける刻に色づき、実を結ぶことができるほど枝葉を茂らせ、力を蓄える
ことが出来たのだろうか?
しかし、たとえそれが適わずとも、一筆書きの人生はそれを取りに戻ることは
許されない。
振り返り、振り返り、だんだんと遠くなっていくその忘れ物を、ただ見つめる
だけ・・・

公園からの帰り道、まだ幼い娘の手を引き眺める夕焼けに染まった西の空は、
昨日より今日、今日よりも明日、暮れゆく時間を着実に早めていた。
2010-08-24

創作活動(キーワード:「文化祭」「佐渡」「再開」)

テーマ:物書きもどき
 2009年8月、僕らの町にトキがやってきた。
 第一次放鳥で放たれた、個体番号No.3の雌のトキだ。
 高校で写真部に入っている僕は、物珍しさと実際自分の手でトキという鳥を
写真におさめてみたいという好奇心で、時間さえあれば他の部員と一緒にその
トキを追っていた。
 実際この年の秋の文化祭の時に、撮りためたトキの写真で特集コーナーまで
作るほど入れ込んでいた。
 しかし、そんな僕らの気持ちとはよそに、数ヶ月後、No.3は僕らの町から姿
を消すことになる。
 各地を渡り歩いているNo.3だ、僕らの町にもただフラッと立ち寄っただけな
のだろう。



 No.3が去って5ヶ月経った2010年夏、No.3が佐渡に舞い戻っているとの情報
を聞き、僕はNo.3と再会すべく海を越え、トキの舞う島へ渡った。
 野営の準備を満載した自転車で、その場所へ向かう道を走る。今こうしてい
る間にも、No.3が目の前に現れるのではないか? そんなはやる気持ちが、何
度も空を仰ぎ見させる。
 額から流れ落ちる汗が僕の目に入り、仰ぎ見た空の風景を滲ませたその絵で
すら、朱鷺色の羽を広げた君に見えるほどに。

 出発前から何か予感めいたものがあった。
 「海を渡れば、島へ渡れば、僕はきっとあのNo.3と佐渡で再会する」
 しかし、それはただの妄想だったのかもしれない。
 3日間粘り、それでも諦めきれなくてもう一日粘ってはみたが、No.3はおろ
か、他のトキと出会うことすらできなかった。
 妄想というまやかしが触媒となって期待が最高潮に達していた僕は、失意の
まま島を離れることとなった。
 それと時期を同じくして、あれほど目撃情報の多かったNo.3が、その後不思
議と姿を表さなくなる。
 もともと行動範囲が広かったNo.3、またどこか離れたところにひょっこりと
現れるだろう、そう思っていた。
 だが、1ヶ月が過ぎ、3ヶ月が過ぎ・・・一冬を越え春を迎えてもなお、そ
の姿が目撃されることはなかった。



 20XX年夏、僕は今佐渡にいる。
 2011年に人間の手を介さず自然界で孵化に成功して以来、トキは急速にその
数を増やし、今では佐渡、新潟のみならず、日本のあちらこちらでその姿を見
ることができるようになっていた。
 写真家となり、日本の風景を撮り続けている僕の原点である佐渡。
 日本の原風景、夕焼け空に群れをなして飛ぶトキの姿は、長い時をかけてそ
の姿を佐渡で甦らせていた。

 田んぼや畦で羽を休めているトキの群れを、ファインダー越しに慈しむかの
ように切り撮っていく僕の目に、何か懐かしいものが映った。
 「桃黄・・・・・まさか」
 何度も瞬きをしてみるが、その姿は変わらなかった。これは妄想じゃない、
脚に付けられた桃黄のカラーリング、あれはNo.3のものだ。
 諦めた、いやあの時以来押しとどめていた想いが、堰を切ったように流れ出
し、僕はシャッターを切り続けた。

 「ターァ!」

 一声啼いたNo.3は羽を大きく広げこちらをみる。
 それはまるで両手を広げ、僕を迎えてくれるかのようだった。

 「海を渡れば、島へ渡れば、僕はきっとあのNo.3と佐渡で再会する」

 長い時をかけ、佐渡がトキの舞う日本の原風景を取り戻したのと同じように、
僕のあの時の妄想もまた長い時間をかけて今、現実となった。
2010-08-10

創作活動(キーワード:「真夏日」「先輩」「涙」)

テーマ:物書きもどき
前日の雨も上がり、真夏の太陽もまたその輝度を取り戻していた。
昨日連続真夏日が途切れたとはいえ、今日もまたその日差しは強く、お昼を迎える前には真夏日を記録していた。
僕はひとり丘の頂上へと繋がる坂道を歩いていた。

もう何度目だろう、この坂をひとりで登るのは。
7年前、僕がまだ学生だった頃、同じワンダーフォーゲル部の先輩が、山で命を落とした。
先輩は山登りの初心者だった僕に一から山登りを教えてくれた人。
僕にとって先輩は先輩と言うだけではなく、師匠とも呼べる存在、憧れの存在だった。

お墓にお花を供え、手を合わせる。
今日は先輩に報告があったのだ。
「先輩、あの時言ってくれましたよね。一緒にエベレストを征服しようって
僕、とうとうエベレスト登頂に成功しました。
約束が果たせたかどうかわからないけど、先輩に貰ったお守り、先輩だと思って一緒に登りました。」
そう言うと僕は首から提げていたペンダントを先輩のお墓にかけた。

「先輩がいてくれたから、登り切れたんだ・・・」

僕は天を仰ぎ見る。
晴れ渡った空、どこまでも続く青色。この空はエベレストにも先輩の元へも続いている。
今まで緩やかに吹いていた風が一瞬強く吹いた。
木々が揺れ、ざわめく音が聞こえる。
風が止む頃、僕の右頬のあたりに一滴の水滴が落ちた。
「あ・・・先輩」
それはあの憧れの先輩が僕のために流してくれたうれし涙のようだった。
僕はそう、信じている・・・

Amebaおすすめキーワード

    アメーバに会員登録して、ブログをつくろう! powered by Ameba (アメーバ)|ブログを中心とした登録無料サイト