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2005-07-29

僕らの部屋の法則 (3-7)

テーマ:僕らの部屋の法則
「あと、〇・四一六七切り上げ時間くらいですよ」

 兎の中の女の子が残り時間を告げた。その声にすっと現実に引き戻された智鳥は、残り
時間四〇分を切ってから五分おきに時を刻む意味を聞いてない事を思い出した。
 しかし聞く事は出来なかった。と言うのも、残り時間が無くなって慌てたのか、兎が智鳥
の手をがしっと掴んで押し入れに向かってどすどすと走りだしたからだった。
 兎は押し入れの戸をどがどがと開けると、布団も何も無くなった石の壁の洞窟に入って
いった。智鳥の叫び声をセリカと響に残して・・・。
 それを聞いたセリカは溜め息をつくと、うきうきしている響を連れ、飼い主を追いかけ
洞窟に入っていった。

2005-07-27

僕らの部屋の法則 (3-6)

テーマ:僕らの部屋の法則
「・・・で、この押し入れを開けると海に行けると思います」
 響が兎の質問に答えた。海に行く道を聞いて満足したのか、兎が「ききき」と軋るよう
な笑い声をあげた。
 兎に言わせると、『なんとなく』で生まれたものは名前を持たず、名前を付けた者は『
なんとなくの法則』により、なんとなく精神的に繋がりを持つそうなのだ。
『迷惑な法則だ』こんな状態になってもこう思わない者は、まずいないと思う。現に智鳥
はそう思っていた。

 余談ではあるが、少し気になった智鳥は響の名付け親を兎に聞いてみた。最近生まれた
響がどこでこの『響』と言う名前を貰ったのか、もし自分だったらなんとなく厄介が二倍
になってしまうような観を受けたからだった。
 そして答えはさらに混乱を呼んだ状態となった。
 兎が本から探し出した結果、名付けた者はセリカと言う事が判明したからだった。
「どうやって付けたんだ?」とセリカに聞いた所、響が代わりに答えた。
 それによれば、生まれた時に起こそうとしたが一人と一匹はなかなか起きず、せめて名
前をと言った所セリカが響の『腹』に当たるところにあるラベル・・・正確には響と書い
てある場所を前足で差した、と言うことだった。
「ファーストネームはサントリーウイスキーよ」
 こう聞いた智鳥は本気で目眩を起こしそうになった。

2005-07-25

僕らの部屋の法則 (3-5)

テーマ:僕らの部屋の法則
「おまたせしました」
 皆の様子を見ているうちに目的のページを見つけたのか、小々興奮したした面持ちで兎
は叫んだ。
「えっと、名前はジャーマンに改名。名付けた者は…草切智鳥だそうです。知っています
か?」
「え?」
 兎の言葉に智鳥は惚けたような声を出した。無論、自分の名前が出てきた事が、何でなの
か理解できなかったからだ。
「ですからジャーマンもしくは草切智鳥と言う人を知りませんか?」
 何がなんだか分からなかったが、直感としてここでな名乗れば拍車を掛けた訳の分から
ないことに巻き込まれる。少なくともこれ以上は、『常識的』精神に非常に悪い事は今ま
での事で分かっている。ここは無視に限る。頭の中でそう思いつつ黙りこくる智鳥に代わ
り響が一言答えた。こちらに指を差しながら・・・

「あなたと同じ名前ですね」
 この一言は効いたらしい。現に兎がこちらの方に向かってくる。言い繕おうとしたが、
少し遅いような感じだった。
「あなたでしたか。で、どこに行ったんです。いや、どこに行こうと思っていました。さあ
早く言いなさい」

 剣幕は凄かった。兎に言い寄られながら智鳥は否定を諦めていた。彼では跳ね返す事が
出来ないのを、彼自身分かっていた。
 そのため、後戻りの出来ない決定打をもう一言漏らしてしまった。

 そう、一言『海』と言う単語を・・・。

2005-07-23

夏のにほひ

テーマ:物書きもどき
夏のにほい


梅雨明け。

太陽の輝度が増したせいか、空気の色が変わった。

眩しい。

密度が薄くなった空気の中に光が溶け込んで、空気が光って見える。

大きく息を吸い込むと、夏のにおいがした。

夏のにおいは空気に溶け込んだ光のにおい。

そして改めて感じる。

夏だね・・・って。

2005-07-19

夏がくるとき

テーマ:物書きもどき
aoi



花は季節を教えてくれる。

たとえ時計やカレンダーのない生活を送ったとしても、四季の花が咲く花壇があれば、私は季節を感じ取れる。


たちあおい。


私はこの花で夏の始まりを感じ取る。

梅雨時期の花といえば、なんといっても紫陽花が有名だけど、私はこの花のほうが好き。

この花は梅雨の始まる前にたくさんのつぼみをつけ、梅雨を迎えたころから下から上に向かって

だんだんと花を咲かせていく。


高い背丈、夏を待ちわびるように太陽に近いてっぺんを目指して咲いていくたちあおい。

そしてその花がてっぺんまで上り詰めたとき、

その時が夏の始まり・・・

2005-07-16

僕らの部屋の法則 (3-4)

テーマ:僕らの部屋の法則
「あと、八・三三切り捨て時間くらいですよ」

 女の子の人形が分かりにくい言い方で何かの残り時間を示した頃、兎は電話帳程まで膨
らませた手帳をぺらぺらとめくり何かを探していた。
 智鳥はと言えば、 
「なあセリカ、俺達寝ている間に変な所に来たんじゃないか?」
 などと兎の熱気に押され話しかける事もできず、横にいるセリカに問い掛けているし、
当のセリカはどう思っているのか、にゃあと一鳴きしたのみで知らん振りを決め込み、響
はといえば表情はともかく、この状況を楽しんでいるようだった。

2005-07-14

彼女のにおい

テーマ:物書きもどき

彼女のにおい



今日、今年初めて蝉の鳴き声を聞いた。

たしか去年も今頃初めて、聞いたんだった。


昔に比べて季節の移り変わりに鈍感になっている自分。
ちょっと前まではなんとなく色々なところから感じられた夏。
カノジョでない彼女が教えてくれた。
でも今は職場は屋内で帰宅時間も日没後なせいか、もっぱら朝の通勤途中で見る稲穂の成長でしか
季節の流れを感じないようになっていた。

あの夏の終わりに彼女はボクの前から姿を消した。
あの夏を最後に、ボクは彼女の姿を見かけることはなかった。


そろそろ梅雨が明ける。
夏ってやつはその気配を生暖かい雨に隠しながらやってくる。
でもね、アンタ個性強すぎ(笑)
いくら何かで隠そうとしたって、それがアンタのにおいでプンプンにおうよ。
何年経ってもアンタのにおいは嫌いになれないだろうな。
それは私が産まれた季節のにおいだし、彼女のにおいでもあるからね。。。

2005-07-14

僕らの部屋の法則 (3-3)

テーマ:僕らの部屋の法則
 兎は人形ごと時計をつかみ取り出すと、少しの間眺め、無造作に胸の裂け目の中に押し
込んだ。それは、ちょうど心臓を取り出し眺めた後、押し込むような感じに見えた。ただ、
心臓の代わりに時計を取り出し、血飛沫のわりに木の屑が床を汚している。
「すいませんが探し物をしているんです。歳は五一七三分で出身はドイツ。体を様々な色
に塗ったコンクリート片で銀製の古い懐中時計を持っています。名前は・・・」
 名前を忘れてしまったのか、兎は懐から一冊の手帳を取り出すと、縁の部分の突起して
いる所に口を当てた。
 次にする事は予想がついた。威張れることでは無いがそれ以外は、考えもつかなかった。
余りにも馬鹿馬鹿しい、アメリカアニメの使い古された手段で、今まさに兎は手帳を本く
らいまで膨らまそうとしていた。
 この滑稽さに精神は刺激され、冷静さが戻ってきた。兎が本の中に空気を入れ始めると
同時に・・・。

2005-07-13

僕らの部屋の法則 (3-2)

テーマ:僕らの部屋の法則
「あと、一時間くらいですよ」

 兎の方から女の子の声が聞こえた。
 そこには兎の他に何もいなかった、訳では無い事を思い知らされた。
 兎の胸の中ほど辺りが裂けたかと思うと、そこから懐中時計を持った青い目をした女の
子のお人形さんが、ひょっこりと出てくるのを見たからだった。
 一匹と一瓶はともかく、一人は硬直していた。
 血は出てこなかった。代わりに木の屑がぼろぼろと零れてくる。
 こんな時でも掃除の事を考えてしまうのは、非常識な事態に慣れてしまったせいだろう。
 少なくとも、血飛沫飛び散るスプラッタは智鳥とセリカ、そして多分ではあるが響も好
きではなかった。

2005-07-13

7月13日

テーマ:コラムもどき

去年のこの日、何があったか覚えてる人は少ないと思います。




一年前にことだもんね、覚えてなくて当然。だって、大半の人は3日前の晩に食べたものすら思い出せないんだから。






2004年7月13日、新潟県中越地方で大水害があった日。


三条、中之島、見附、長岡・・・


惨劇が連日ニュースを賑わせました。

大切な人を失った人・・・家を失った人・・・仕事を失った人・・・

当時はそれはそれはひどいものでした。


私の家は幸い(あと1mちょっと川の水位が上がっていたらアウトだった)無傷でしたが、会社の同僚や友人宅が浸水、その惨劇も目にしました。

こういうことがあると、大自然にいい気になっている自分が窘められている気分になります。


去年と同じ日の今日も、またどこかで大量の雨が降っているのだと思うと、人事のようには思えません。




人間も地球上の生き物として、自然には逆らうことはできません。

しかし、人間には他の動物より秀でた知恵と文明があります。

それらで自然に逆らうのではなく、自然の驚異を受け流すことができると思います。




今朝、去年決壊した五十嵐川堤防付近を通り抜けてきましたが、あれから一年経つのに、まだ堤防工事、拡幅工事が行われています。

やはり受け流すといっても相手は自然、そう簡単には行えないのですね・・・・・


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