2009-03-25 11:23:50
日本がWBC連覇してもMLBだけが輝く仕掛け
テーマ:ブログ
昨日、野球のWBC=ワールドベースボールクラシックの決勝、日本対韓国は、日本が延長10回、5対3で勝って2大会連続の優勝を決めました。
日本代表の原辰徳監督は「世界のつわものたちを相手に堂々と勝利したというのは、非常に価値がありますね。日本のファンのみなさんと喜びをわかち合えることが何よりもうれしいです」と優勝の喜びを語りました。
また、イチロー選手は「苦しい大会でしたが、最後に日本のファンの人たちに笑顔を届けられて最高です。日本のみなさんや球場に来てくれたファンなど、すべての人に感謝したいです」と話していました。
ライブ映像で日本球界における歴史的瞬間を見たいと思った私は仕事中にも関わらず試合経過を度々確認していました。 それだけ侍ジャパンのWBC連覇は景気低迷で気分が沈みがちな私たちに大きな勇気を与えてくれたわけです。 それとは対照的に米国民の関心の薄さには拍子抜けします。
国際オリンピック委員会(IOC)が2012年のロンドン五輪から野球を正式種目から除外する決定をしたことでワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が“真の世界一”を決定する国際大会だと私たち日本人は思い込んでいますが、米国国内では「公式シーズンの前座として開催されるエキシビションマッチ」程度に捉えられています。 ですから日本代表チームの「レギュラーシーズンを犠牲にしても構わないという気持ち」に多少の驚きをもって感想を述べられることも仕方ありません。
この温度差は、MLBが自分たち以外の世界と協調することを考えていない「閉鎖型モデル」を採用していることに由来します。
閉鎖型モデルでは、リーグがチーム数とその所在地を厳密に管理しています。 つまり、各チームには、一定地域におけるビジネスの独占権(フランチャイズ)が与えられるわけです。 もし新規参入しようとすれば、巨額の参加費が必要となります。 言ってみれば、一見さんお断りの有料会員制クラブのようなものです。 「自分たちこそ世界最高峰」であり「その外に自分たちより高い山はない」という世界観を持ったビジネスモデルです。 全米選手権を「ワールドシリーズ」と呼ぶことからも、その発想が垣間見えます。
一方、これと対照的なのが、欧州サッカー界が採用している「開放型モデル」です。 このモデルの特徴は、リーグが階層的に組織されており、上位リーグの弱いチームは下位リーグに降格し、下位リーグの強いチームは上位リーグに昇格するという「昇格・降格システム」が採用されている点です。 このモデルでは、各チームに地理的な独占権はなく、新規参入についても参加費を払うことなく最下層のリーグから興行を開始することが可能です。 こちらは、出入り自由の将棋クラブといったイメージでしょうか。
外界との協調を前提としている開放型モデルでは、国際大会がうまく機能します。 例えばサッカー界では国際サッカー連盟(FIFA)を中心に各国サッカー協会が協力体制を築いています。 だから「ワールドカップを世界最高峰の大会と位置づけ、各国内リーグはこれに協力する」というコンセンサスが取られています。 「ワールドカップ>国内リーグ戦」という優先順位が明確になっているので、基本的に代表チームからの招集をクラブが拒否することはできません。 大会開催期間についても、FIFAは2006年のドイツ大会から国内リーグ終了を大会開始の約1カ月前に設定し、確実に選手が休養期間を取ったうえで大会が実施されるように配慮しています。
「真の世界一を決める」はずのWBCで、世界最高峰の選手の出場辞退が頻発しているのは「自分たちが戦っている場所が“世界”なのだ」という発想でビジネスモデルが構築されてきたMLBにとって、WBCという大会自体が「想定外」の存在であるためです。 仲間内(MLB加入チーム)だけで世界が完結し、その中で利益を最大化するビジネスシステムが既に出来上がってしまっているため、開催時期やチーム編成、選手のインセンティブなどの面から、WBC と国内リーグ戦の整合性が確保できていないのです。 MLBや選手会としても、頭が痛い問題でしょう。
では、外の世界を認めないMLBが、なぜその発想と相いれないWBCを始めようとしたのでしょうか?
「ワールドシリーズが世界(全米)最強チームを決める大会だとすれば、WBCは世界最強国を決める大会だから」というのが、MLBの喜ぶ模範解答かもしれません。 しかし、真相は違います。 実は、既に飽和してきた国内市場とは別に、国際市場を開拓・育成して、MLBにその果実を取り込むためだと考えられます。
過去の歴史をひも解くと、MLBはこれまで球団拡張(エクスパンション)によって国内市場を開拓してきました。 1903年の発足以来、60年まで16チーム体制が続きましたが、61年に実施された最初の球団拡張以降、6回の球団拡張によって98年に現在の30チーム体制が出来上がりました。
「では、もっと球団数を増やせばいいではないか」との声もあるかもしれません。 しかし、球団拡張にはリスクが伴います。
第1のリスクは、プレーのレベルの低下です。 1球団における1軍選手枠は25人ですから、16チームから30チームになったことでメジャーリーガーの数は400人から750人にほぼ倍増した計算になります。 これはすなわち、技能レベルが相対的に低い選手が流入することを意味しますから、試合のレベルが下がるわけです。 実際、エクスパンション直後には必ず1球団の平均本塁打数が増加しています。 投手のレベルが下がって、強打者が本塁打を打ちやすくなるからです。
第2のリスクは、球団と都市の需給バランスを崩してしまうことです。 MLBはその閉鎖型モデルにものをいわせて、球団数を巧妙にコントロールしています。 球団を誘致できる経済力を持つ都市の数が、球団数よりも多くなる状況を作り出すことで、常に球団が都市に対して交渉上の優位を確保できるように仕向けています。 つまり、チームがスタジアム建設にあたって税金を注入してもらい、さらにスタジアムからの収入を得られるようにコントロールしているわけです。 球団数を増やし過ぎると、地元自治体に対する優位性を失ってしまうのです。
では、どうやって収入をさらに増やすのか――。 この課題に対してMLBが出した結論が「国際化の積極推進」でした。
人口に占める才能ある野球選手の割合は限られているため、メジャーリーガーを米国内だけで調達しようとすればおのずと限界があります。 そこで、各国のトップレベルの野球選手をMLBに取り込み、国内の「人材不足」を補う手段にしてしまえ、という発想です。 また、海外トップタレントの獲得は、国際市場開拓の起爆剤にもなります。 海外選手を取り込めば、海外へのテレビ放映権が販売しやすくなり、グッズなども売り込むことが可能となります。 さらには、スポンサーシップ収入も期待できるわけです。 現在、MLBではおよそ4人に1人が外国人選手です。 マイナーも含めれば外国人比率は選手全体の40%を超え、出身国も30カ国以上に上ります。
確かに、WBCは野球界の国際発展のためのツールであることは間違いないのですが、世界を取り込むMLBにとっては「世界的な野球の普及=MLBの利益の増大」ということになります。 つまり、WBCは国際化を積極的に推し進めるMLBが、その果実を効率的に手にするために作り出した大がかりな「仕掛け」でもあるのです。 誤解を恐れずに言えば、WBCは、MLBにとっての公開トライアウト(選手採用テスト)のような存在なのかもしれません。
実際、第1回WBCの日本代表メンバーの中からは、松坂大輔選手(現ボストン・レッドソックス)、上原浩治選手(現ボルチモア・オリオールズ)、岩村明憲選手(現タンパベイ・レイズ)、福留孝介選手(現シカゴ・カブス)ら中心選手がMLBに移籍しています。
MLBが世界最高峰のプロ野球リーグとして君臨し続ける限り、WBCをテコにしたMLBの国際戦略は崩れることがありません。 MLBが世界のタレントを取り込んで成長していく限りにおいて、MLBは拡大した各国の野球市場の一部を、テレビ放映権やグッズ販売といった形で手にすることができるからです。
極端な話、別にWBCで米国代表チームが優勝しなくてもいいのです。 「MLBこそ世界」であり、米国代表チームが勝とうが負けようが、多国籍軍であるMLBの評判は下がらないからです。 今回、日本代表チームが連覇しましたが、中心選手はメジャーリーガーですから、MLB自体の評判は下がりません。
確かに、WBCに参加することによって日本でもそれまで野球に関心を示さなかった層の取り込みや、キャンプ地への経済効果などの果実もあるでしょう。 しかし、それらは国内市場に対する限定的な効果であり(しかも、必ずしもNPBが手にするリターンではない)、MLBが手にする国際市場からの果実と比べると相対的に小さなものです。
このように、WBCは「世界を取り込んで、自分たちだけが繁栄していく」という閉鎖型モデルの発想を持つMLBが主催しているだけに、日本球界としても「寄らば大樹の陰」的なアプローチでWBCに参加し続けることは危険です。 かといって、MLBと真っ向勝負するには体力差がつきすぎてしまいました。
1995年当時、日本プロ野球(NPB=日本野球機構)の売り上げは推定約1200億円、MLBのそれは約14億ドル(約1400億円)と言われていました。 しかし、それから13年後の2008年には、NPBの売り上げにほとんど変化がないと言われているのに対して、MLBは約60億ドル(約 6000億円)にまで売り上げを伸ばし、マーケットを4.3倍に拡大しました。
この背景には、厳格なビジネスとして「拡大再生産に資するチーム経営」というDNAを持つMLBと、親会社の宣伝広告ツールとして「広告費の枠内でのチーム経営」というDNAを持つNPBの組織としての性格の差があるのではないかと思います。 グローバル化が進展し、MLBとNPBが市場を奪い合う競合としての色彩を一層強める中、NPBのリーグ経営のあり方が根本的に問われていくことになりそうです。
大会のMVPに選ばれた松坂大輔投手は「MVPは自分ではなく、決勝戦で投げた岩隈投手だと思っていたので申し訳ない気がします。自分の投球内容には満足していませんが、大会では勝つことが一番大切なので、勝てて良かったです」と話していました。
なぜ岩隈ではなく、松坂だったのでしょう。 私は「岩隈投手にMVPを与えたらMLBに移籍させる際に契約金が跳ね上がってしまう恐れがあると心配したからではなかったんだろうか」と勘ぐってしまいました。
ソフトバンクの川崎宗則選手は日本の第1回WBC優勝に多大な貢献をし、その中で怪我をしました。 怪我を理由にシーズンの開幕戦の出場選手登録を外されました。 2軍スタートとなったわけですが、彼が2軍で過ごすこの期間は出場選手登録日数に加算されないため「150日の登録日数×9年」(一部選手は10年)をクリアすると取得可能となるフリーエージェント(FA)権が遠ざかったわけです。 メジャーリーグ挑戦の意思の有無にかかわらず、自由な選択が可能なFA権取得を多くの選手が待ち望んでいます。 こうした事実がほとんど認知されず、それを問題視しようとする論調すら生まれない今の日本の野球界に嫌気が差して今大会で活躍した選手達がMLBに流れていき、日本プロ野球(NPB=日本野球機構)の人材が希薄にならないことを祈っています。
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日本代表の原辰徳監督は「世界のつわものたちを相手に堂々と勝利したというのは、非常に価値がありますね。日本のファンのみなさんと喜びをわかち合えることが何よりもうれしいです」と優勝の喜びを語りました。
また、イチロー選手は「苦しい大会でしたが、最後に日本のファンの人たちに笑顔を届けられて最高です。日本のみなさんや球場に来てくれたファンなど、すべての人に感謝したいです」と話していました。
ライブ映像で日本球界における歴史的瞬間を見たいと思った私は仕事中にも関わらず試合経過を度々確認していました。 それだけ侍ジャパンのWBC連覇は景気低迷で気分が沈みがちな私たちに大きな勇気を与えてくれたわけです。 それとは対照的に米国民の関心の薄さには拍子抜けします。
国際オリンピック委員会(IOC)が2012年のロンドン五輪から野球を正式種目から除外する決定をしたことでワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が“真の世界一”を決定する国際大会だと私たち日本人は思い込んでいますが、米国国内では「公式シーズンの前座として開催されるエキシビションマッチ」程度に捉えられています。 ですから日本代表チームの「レギュラーシーズンを犠牲にしても構わないという気持ち」に多少の驚きをもって感想を述べられることも仕方ありません。
この温度差は、MLBが自分たち以外の世界と協調することを考えていない「閉鎖型モデル」を採用していることに由来します。
閉鎖型モデルでは、リーグがチーム数とその所在地を厳密に管理しています。 つまり、各チームには、一定地域におけるビジネスの独占権(フランチャイズ)が与えられるわけです。 もし新規参入しようとすれば、巨額の参加費が必要となります。 言ってみれば、一見さんお断りの有料会員制クラブのようなものです。 「自分たちこそ世界最高峰」であり「その外に自分たちより高い山はない」という世界観を持ったビジネスモデルです。 全米選手権を「ワールドシリーズ」と呼ぶことからも、その発想が垣間見えます。
一方、これと対照的なのが、欧州サッカー界が採用している「開放型モデル」です。 このモデルの特徴は、リーグが階層的に組織されており、上位リーグの弱いチームは下位リーグに降格し、下位リーグの強いチームは上位リーグに昇格するという「昇格・降格システム」が採用されている点です。 このモデルでは、各チームに地理的な独占権はなく、新規参入についても参加費を払うことなく最下層のリーグから興行を開始することが可能です。 こちらは、出入り自由の将棋クラブといったイメージでしょうか。
外界との協調を前提としている開放型モデルでは、国際大会がうまく機能します。 例えばサッカー界では国際サッカー連盟(FIFA)を中心に各国サッカー協会が協力体制を築いています。 だから「ワールドカップを世界最高峰の大会と位置づけ、各国内リーグはこれに協力する」というコンセンサスが取られています。 「ワールドカップ>国内リーグ戦」という優先順位が明確になっているので、基本的に代表チームからの招集をクラブが拒否することはできません。 大会開催期間についても、FIFAは2006年のドイツ大会から国内リーグ終了を大会開始の約1カ月前に設定し、確実に選手が休養期間を取ったうえで大会が実施されるように配慮しています。
「真の世界一を決める」はずのWBCで、世界最高峰の選手の出場辞退が頻発しているのは「自分たちが戦っている場所が“世界”なのだ」という発想でビジネスモデルが構築されてきたMLBにとって、WBCという大会自体が「想定外」の存在であるためです。 仲間内(MLB加入チーム)だけで世界が完結し、その中で利益を最大化するビジネスシステムが既に出来上がってしまっているため、開催時期やチーム編成、選手のインセンティブなどの面から、WBC と国内リーグ戦の整合性が確保できていないのです。 MLBや選手会としても、頭が痛い問題でしょう。
では、外の世界を認めないMLBが、なぜその発想と相いれないWBCを始めようとしたのでしょうか?
「ワールドシリーズが世界(全米)最強チームを決める大会だとすれば、WBCは世界最強国を決める大会だから」というのが、MLBの喜ぶ模範解答かもしれません。 しかし、真相は違います。 実は、既に飽和してきた国内市場とは別に、国際市場を開拓・育成して、MLBにその果実を取り込むためだと考えられます。
過去の歴史をひも解くと、MLBはこれまで球団拡張(エクスパンション)によって国内市場を開拓してきました。 1903年の発足以来、60年まで16チーム体制が続きましたが、61年に実施された最初の球団拡張以降、6回の球団拡張によって98年に現在の30チーム体制が出来上がりました。
「では、もっと球団数を増やせばいいではないか」との声もあるかもしれません。 しかし、球団拡張にはリスクが伴います。
第1のリスクは、プレーのレベルの低下です。 1球団における1軍選手枠は25人ですから、16チームから30チームになったことでメジャーリーガーの数は400人から750人にほぼ倍増した計算になります。 これはすなわち、技能レベルが相対的に低い選手が流入することを意味しますから、試合のレベルが下がるわけです。 実際、エクスパンション直後には必ず1球団の平均本塁打数が増加しています。 投手のレベルが下がって、強打者が本塁打を打ちやすくなるからです。
第2のリスクは、球団と都市の需給バランスを崩してしまうことです。 MLBはその閉鎖型モデルにものをいわせて、球団数を巧妙にコントロールしています。 球団を誘致できる経済力を持つ都市の数が、球団数よりも多くなる状況を作り出すことで、常に球団が都市に対して交渉上の優位を確保できるように仕向けています。 つまり、チームがスタジアム建設にあたって税金を注入してもらい、さらにスタジアムからの収入を得られるようにコントロールしているわけです。 球団数を増やし過ぎると、地元自治体に対する優位性を失ってしまうのです。
では、どうやって収入をさらに増やすのか――。 この課題に対してMLBが出した結論が「国際化の積極推進」でした。
人口に占める才能ある野球選手の割合は限られているため、メジャーリーガーを米国内だけで調達しようとすればおのずと限界があります。 そこで、各国のトップレベルの野球選手をMLBに取り込み、国内の「人材不足」を補う手段にしてしまえ、という発想です。 また、海外トップタレントの獲得は、国際市場開拓の起爆剤にもなります。 海外選手を取り込めば、海外へのテレビ放映権が販売しやすくなり、グッズなども売り込むことが可能となります。 さらには、スポンサーシップ収入も期待できるわけです。 現在、MLBではおよそ4人に1人が外国人選手です。 マイナーも含めれば外国人比率は選手全体の40%を超え、出身国も30カ国以上に上ります。
確かに、WBCは野球界の国際発展のためのツールであることは間違いないのですが、世界を取り込むMLBにとっては「世界的な野球の普及=MLBの利益の増大」ということになります。 つまり、WBCは国際化を積極的に推し進めるMLBが、その果実を効率的に手にするために作り出した大がかりな「仕掛け」でもあるのです。 誤解を恐れずに言えば、WBCは、MLBにとっての公開トライアウト(選手採用テスト)のような存在なのかもしれません。
実際、第1回WBCの日本代表メンバーの中からは、松坂大輔選手(現ボストン・レッドソックス)、上原浩治選手(現ボルチモア・オリオールズ)、岩村明憲選手(現タンパベイ・レイズ)、福留孝介選手(現シカゴ・カブス)ら中心選手がMLBに移籍しています。
MLBが世界最高峰のプロ野球リーグとして君臨し続ける限り、WBCをテコにしたMLBの国際戦略は崩れることがありません。 MLBが世界のタレントを取り込んで成長していく限りにおいて、MLBは拡大した各国の野球市場の一部を、テレビ放映権やグッズ販売といった形で手にすることができるからです。
極端な話、別にWBCで米国代表チームが優勝しなくてもいいのです。 「MLBこそ世界」であり、米国代表チームが勝とうが負けようが、多国籍軍であるMLBの評判は下がらないからです。 今回、日本代表チームが連覇しましたが、中心選手はメジャーリーガーですから、MLB自体の評判は下がりません。
確かに、WBCに参加することによって日本でもそれまで野球に関心を示さなかった層の取り込みや、キャンプ地への経済効果などの果実もあるでしょう。 しかし、それらは国内市場に対する限定的な効果であり(しかも、必ずしもNPBが手にするリターンではない)、MLBが手にする国際市場からの果実と比べると相対的に小さなものです。
このように、WBCは「世界を取り込んで、自分たちだけが繁栄していく」という閉鎖型モデルの発想を持つMLBが主催しているだけに、日本球界としても「寄らば大樹の陰」的なアプローチでWBCに参加し続けることは危険です。 かといって、MLBと真っ向勝負するには体力差がつきすぎてしまいました。
1995年当時、日本プロ野球(NPB=日本野球機構)の売り上げは推定約1200億円、MLBのそれは約14億ドル(約1400億円)と言われていました。 しかし、それから13年後の2008年には、NPBの売り上げにほとんど変化がないと言われているのに対して、MLBは約60億ドル(約 6000億円)にまで売り上げを伸ばし、マーケットを4.3倍に拡大しました。
この背景には、厳格なビジネスとして「拡大再生産に資するチーム経営」というDNAを持つMLBと、親会社の宣伝広告ツールとして「広告費の枠内でのチーム経営」というDNAを持つNPBの組織としての性格の差があるのではないかと思います。 グローバル化が進展し、MLBとNPBが市場を奪い合う競合としての色彩を一層強める中、NPBのリーグ経営のあり方が根本的に問われていくことになりそうです。
大会のMVPに選ばれた松坂大輔投手は「MVPは自分ではなく、決勝戦で投げた岩隈投手だと思っていたので申し訳ない気がします。自分の投球内容には満足していませんが、大会では勝つことが一番大切なので、勝てて良かったです」と話していました。
なぜ岩隈ではなく、松坂だったのでしょう。 私は「岩隈投手にMVPを与えたらMLBに移籍させる際に契約金が跳ね上がってしまう恐れがあると心配したからではなかったんだろうか」と勘ぐってしまいました。
ソフトバンクの川崎宗則選手は日本の第1回WBC優勝に多大な貢献をし、その中で怪我をしました。 怪我を理由にシーズンの開幕戦の出場選手登録を外されました。 2軍スタートとなったわけですが、彼が2軍で過ごすこの期間は出場選手登録日数に加算されないため「150日の登録日数×9年」(一部選手は10年)をクリアすると取得可能となるフリーエージェント(FA)権が遠ざかったわけです。 メジャーリーグ挑戦の意思の有無にかかわらず、自由な選択が可能なFA権取得を多くの選手が待ち望んでいます。 こうした事実がほとんど認知されず、それを問題視しようとする論調すら生まれない今の日本の野球界に嫌気が差して今大会で活躍した選手達がMLBに流れていき、日本プロ野球(NPB=日本野球機構)の人材が希薄にならないことを祈っています。
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1 ■無題
野球界の裏事情を初めて知りました。
岩隈が何故取れなかったのかしら・・と不思議な気持ちは大方の今回のWBCを見た方達が感じた感想だと思いますが、そんな背景があったのですか。
それから、選手として、ムードメーカーとしても最高だった川崎選手のお話も初めて知って驚いています。NPBも変化していかざるを得ない所に来ている事を感じているといいのですが・・