2006-05-25 03:16:21

新しい案を学ぶ時はまず辞書、そして教科書

テーマ:心理学 (教育)

心理学で自分の知らない項目を学ぶのに、僕がいつも使う方法がある。この方法には3段階のプロセスがある。(1)一言解説、(2)一ページ解説、(3)一章解説、という順番でいつも調べる。


人間の脳というのは未知の案を幾つもいっぺんに理解できない。作動記憶(ワーキング・メモリー)の容量にも速度にも限界があるからだ。なので知らない単語や案が出てきた時にはそれを一つ一つやっつけていく必要がある。その順番としては当然、まず大枠のアイディアを知り、そしてその後に詳細を学んでいくということになる。このやり方に則って、僕が実践している方法はこうだ。


(1)一言解説

辞書など短い一文で解説されているのが分かりやすい。例えば利他主義(altruism)という案が分からないとする。まずは辞書、特に心理学辞書が良いでしょう。僕が定義するとすれば「自分の利益よりも他人の利益を優先する行動」といったところでしょうか。僕のお勧めする辞書はこれ(Sutherland, The International Dictionary of Psychology )。


(2)一ページ解説

もう少し知りたい時に使うのが、その案が一ページくらいで解説されている本。これには初級心理学の教科書か心理学の歴史の本がお勧め。ちなみに僕が愛用している本「心理学」(Bernstein, et al.Psychology )では「利他主義」に関して、ひとはなぜ他人を助けるのかを5ページに渡って解説している。これは僕の理想よりもちょっと長めだけど、小見出しがいくつか付いているので読みたいところだけ拾い読みができるのでなかなか良い。


(3)一章解説

もっと知りたい場合はその案を章単位で解説している論文や本が必要になる。これは大抵(2)の本が引用しているのを辿れば良い本が見つかる。



授業の課題で論文を読む時とか学部にいる時とかはとにかく論文から読んでしまいがちなんだよね。でも大枠の案が分からないまま論文を読んでも意味不明のままだ。なんで、そんな時もまずは基本の案を辞書でひいて、その案について教科書を一ページだけ読んで、それから論文を読むことをお勧めします。


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心理学のお勧め辞書

N. S. Sutherland, Stuart Sutherland
The International Dictionary of Psychology
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2006-05-20 02:16:20

訓練の効率をソフトボールに見てみる。

テーマ:心理学 (教育)
訓練の効率をソフトボールに見てみる。

ソフトボールをしていて心理学のことが頭に浮かんだんでちょっと紹介。「訓練の伝達率」とか「訓練の効率」(transfer of training)という心理学の案がある。訓練がどのくらい実践に役立つかを計算できる式で表される。



ソフトボールが大得意で州大会で優勝したこともあるケイティーちゃんの場合、山なりに落ちてくるボールに対して水平に振るバットとの交差点を点で捉えようとしていた(上図)。これだと空振りする確率が高い上に、子供用のふわふわボールは伸びきった芝生の上で殆ど転がらないんでまったくヒットにならないんだよね。なのでケイティーちゃんは訓練を4年間くらいした割りに、その訓練の効率は低かったことになる。言い方を変えれば、ソフトボールの経験はふわふわボールにはあまり活かせない。



それに対して、僕はソフトボールの経験なんて中学の休み時間にした程度なんで、何も知らない。今回、友達がボールの進入角度に対して平行にバットを振るのを見まねて(上図)、打ち上げてただけなんだけど、守りが二人しかいないんで(走者は透明ランナー)、フライは大抵がヒットにつながるというおいしい人数。この場合、僕が受けた訓練は「観察による学習」(observational learning)がほんの1分間くらいで、成果が大きかったことになる。


つまり、いくら似通ったスポーツや職種であれ、訓練がどのくらい効率よく実践に活かせるかというのは場合によって異なるので、教育者は訓練効率が高い教え方を選ばなければならない。ちょっと強引な結論へのもって行き方だけど、そんなところよ。運動の指導者も教育の指導者も生徒が何を学べるかを主眼に置いた教育をすると効率が上がるでしょう。



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訓練の効率についてはこの本の第7章がうまくまとまっている。


Christopher D. Wickens, Justin Hollands
Engineering Psychology and Human Performance

検索キーワード: 心理学、工業心理学、工学心理学、認知心理学、ヒューマン・ファクターズ心理学、エルゴノミクス、

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2005-11-10 00:30:13

高卒と大卒の人の能力の違い

テーマ:心理学 (教育)

college students


大学生や大卒は勉強する能力に長けている。それを知能指数とかで表す試みもある。例えば、アンダーグラッドの学部生は知能指数の平均が105から110くらいだというのをどこかで読んだな。引用元は忘れたけど。知能指数は否定はしないけれど、僕はあまり好きではないアイディアだ。知能指数で測れるものはかなり限定されているし、頭が良いイコール知能指数が高いみたいな誤解を生んでしまっている。頭の良さというのはいろんな種類があるので知能指数だけでは測れない。


僕は研究柄、民間人(学校関係者じゃない人)と会って話をしたり、僕の専門分野の知識を教えたり、ということが頻繁にあるのだけれど、そうやっていろんな人に会っているとなんとなく学歴の傾向が見えてくる。僕の感覚では、高卒と大卒の主な違いは学習したことの応用力だと思う。つまり習った事を他の事に当てはめる能力が、大卒の方が高いと思う。新しい知識を覚えた時に、それを自分の仕事にどのくらい生かせるか。


例えば、文章の分かりやすい書き方の例として、主語と動詞を近くする、ということを習ったとする。そうすると、多くの人はそれを生かして文章を読みやすく書けるようになる。しかし、見た目の形状が変わると、多くの高卒の人は応用することを完全に忘れてしまう印象を僕は受ける。ダイアグラムを描いてください、とかお願いすると、大卒の人の多くは、主語と動詞の関係を思い出して、ダイアグラムでも関係のあるものを近くに書くように変化を見せてくれる。だが高卒の人にそういう応用を期待するのは難しい。


そしてこの違いは、生まれ付きのものではなく、大学で学んだ経験から来る後世的な能力だと僕は個人的に考えている。大学に行った人は4年間も習ったことを応用する訓練をしてるのだから、応用できて当然だ。とりあえずアメリカの大学はそういう訓練をする場所だ。日本の大学は知らないけど。


もちろん、高卒と大卒の間にくっきりと線があるわけではない。ただ、僕の個人的な経験則から言って、高卒の集団と話す時には、僕が話したことを実生活でどう応用するのかも加えて話すようにしている。大卒の集団と話す時には、彼らにどう応用できるかを聞くことで、彼らも話に積極的に参加してくれるようになる。


視聴者の経験により話者は話の内容を変えるのが当然だと僕は思うんだけど、教師でも話を一方的に進める人は多いよね。大学生と院生の違いはまたの機会に書こうと思ってるよ。

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2005-03-02 15:26:38

2種類の解法を耳と目で理解させる

テーマ:心理学 (教育)
小学生に算数を教える際に、身振りと話し言葉で2つの別の解き方を教えた時に小学生の理解度が格段に上がった。興味深いことに、他の方法では効果が無かった。つまり2種類の解法の両方を話し言葉で教えても効果が無かったし、1種類の解法を身振りと話し言葉で教えても効果は無かった。

この研究者の考察では、2種類の解法を教えることはそれぞれが補完し合って良い効果を産むのだろう、としている。また、言葉だけで2種類の解法を教えても効果が無いのは、開放の理解が難しくなってしまうからだろうと推測している。

これは今後が楽しみな研究分野だな。子供に勉強を理解させるのって難しいと実感するよ。問題の解き方自体は簡単な作業でも、その解き方を子供に伝えるのはとても難しい。

この問題は子供だけじゃなくて大人でもあると思う。教科書とか読んでても、簡単な内容を変な書き方して難しくている教科書をよく見かけるよ。心理学では情報の提示の仕方と理解度の関係がたくさん研究されているんで、そのうちに紹介してくよ。

----------
仕事募集:
教科書を作るのを手伝います。心理学のデータで裏付けされた理解しやすい技術を使い、教科書を作りかえます。どんな科目でも、解りやすく表現する方法を知ってます。教科書に限らず情報を理解しやすく提示する手伝いをします。

Melissa A. Singer & Susan Gold-Meadow (University of Chicago) (2005) Children Learn When Their Teacher’s Gestures and Speech Differ. Psychological Science. vol.16(2). p85-89.
(PDF) http://www.psychologicalscience.org/pdf/ps/gestures_learning.pdf (PDF)
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2005-01-22 23:48:45

理解度を地図として表す

テーマ:心理学 (教育)
授業で学んだことを地図のように書かせてみた。これは生徒の理解度を示すのに使える、という記事。

うん、確かにこれは理解してないと書けないだろう。更にこの地図を書くことによって学んだ内容が系統立てられて、書き上げた時に理解度があがるだろう。実験して欲しい。ひとつのクラスでは授業の終わりごろに学んだことを地図に書かせる。もうひとつのクラスは教官が言葉でおさらいをする。そして期末試験でその2クラスを比べる。

引用元
Jacobs-Lawson, J. M. (2002). Concept maps as an assessment tool in psychology courses. Teaching of psychology. Vol.29(1). 25-29.
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2005-01-22 23:25:27

毎授業で試験すると期末成績上昇

テーマ:心理学 (教育)
ある大学のクラスで、毎クラスごと(日本語?)に試験を行ったところ期末試験の成績が上がった。この前の期は、試験は10クラス日に1回だけだったがそれを1クラス日に1回の試験というやり方に変えてみた。すると、「学習と記憶」のクラスではクラス平均が81%から89%に上昇。心理学クラスでは74%から80%に上がった。

研究としては穴だらけ。クラスの期も違うし、教官も期待しながら教えていたかもしれない(いや、きっとしていたはずだ)。でもこれは信じられるな。誰かちゃんとした環境で実験しないかな。

引用元
Leeming, F. C. (2002). The Exam-A-Day procedure improves performance in psychology classes. Teaching of psychology. Vol.29(3). 210-212.

教育心理学は認知心理学とは視点が違う
http://edhs.ri.aoyama.ac.jp/~susan/archives/2004/10/post_20.html#trackbacks
教育心理学は認知心理学とは視点が違うという話。僕のこの記事の引用元である学会雑誌(teaching os psychology)を読むと、これを認知心理学風に実験すればもっと面白くなるかも、と思うことは多かったです。
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2005-01-22 22:44:33

大学生が見る最良のクラスとは

テーマ:心理学 (教育)
大学生に最良のクラスとはどんなものかを問う質問を行った。その結果、大学生に支持されるクラスとはこんなものだった。
居心地が良い。
科目が面白い。
教官にユーモアが有り、面白い。
教官が情熱的に語る。
生徒が良い成績をもらえる。

生徒は教官の人間性を重視していて、授業形態などは二の次にされてるのは意外。だけど質問の集め方にも問題がある。生徒に細かい項目を聞いても、それが直接的に最良のクラスを作る要素ではない時もある。例えば民主主義で有権者に聞けば、税金が安いほうが良い、と言う答えが多くなるだろうけれど、税金を安くすることが最良の国家を作るわけではないだろう。同じように生徒に聞けば、生徒が過ごしやすいクラス環境を選ぶのは当然で、回答全体として最良のクラス環境を指し示してるとは思えにくい。でもこの研究は生徒がどんな質問に同回答するのかを見れて参考になる。

goblue1さん(http://goblue1.exblog.jp/m2004-12-01/#1253814)
も言ってるように、アメリカ人はスピーチする人の態度を重視する、と言うのと似た結果が出た。

引用元
Levy, G. D. & Peters, W. W. (2002). Undergraduates' views of best college courses. Teaching of Psychology. V.29 (1). 46-48.
http://www.ithaca.edu/beins/top/top.htm

教育学への道 プロローグ (dennou3さん)
http://dennou3.exblog.jp/m2004-10-01/#767882
大学の教育を自分で経験しながら考えているdennou3さん
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