2005-03-29 20:58:08

英語学習法の検証 ATR

テーマ:心理学 (言語)

ATRという会社が 英語の聴き取りの教材 を出している。この会社は学習効果を確認するために心理学の実験をして学習効果を示している。なのでその効果は確からしい。この論文によると、この学習方法の良い点と悪い点が見える。ちなみにこの論文で検証されているのはLとRの音の聞き分け学習だ。この会社自体は他にも母音の聞き分けなどの学習を提案しているが、この論文には載っていない。

訓練方法としてはLとRだけが違う単語(例えばliceかrice)を聞いてそれがどちらの単語かを2択する。選んだ瞬間に正答が教えられる。全体で言うと学習前では65%の正答率だったのが3週間(計15時間)これを繰り返した後では正答率が78%にまで上がった。なので全体としてはこの訓練は使える。

LとRは単語の中での位置によって正答率が著しく異なる。語尾にL/Rが来るのは分かりやすい。例えばBearとBellなど。学習は83%→96%とほぼ完璧に習得できている。語頭(LedとRed)68%→78%や語中(OleoとOreo)56%→75%はそこそこの効果がある正答率の推移だ。このくらいの正答率なら実生活でも十分使えるだろう。

効果が少ないのが語頭重子音(FlyとFryなど)だ。57%→63%。伸び率も低いし、これじゃ学習後でも2択の偶然当たる確立(50%)と大して変わりが無い。この学習方法は何かまずい点があるのだろう。

この学習の欠点はズバリお手本表示が不明瞭という点だと思う。お手本というかLとRの違いをまず明確に見せなければ、その違いが分からない学習者にとっては一生分からないままだ。つまりLとRが違う音を長く聞き続けたからといって聞き分けられるようになる訳ではない。それは12歳くらいまでは余裕で獲得できる能力でも、二十歳過ぎると自然の獲得は困難になってくる。この学習法はその第一歩のところを抜かしている。第一歩というのは2つの音が違うことをまず確実に示すこと。

この会社の学習方法は学習の第一歩目が抜けているものの、その効果は大きい。全体の聞き分け度は冒頭にも書いた通り65%→78%に上昇している。なのでLとRの聞き分けの初心者にとってはかなり有効だろう。更にその効果を実験で検証したりするところから、この会社は真剣に良い学習方法の開発に取り組んでいるようだ。ただ長年英語を聞いていてもLとRが分からない人にとってはこの学習方法から得るところは少ないかと思われる。

この会社の人(または競合他社)は僕を雇ってくれないかな。より良い学習教材を一緒に作りませんか。なんならうちの大学院でそれを裏付ける実験もしましょうか?院生は貧乏で仕事にガツガツしています。

元の論文:
Lively, Pisoni, Yamada, Tohkura & Yamada (1994). Training Japanese listeners to identify english /r/ and /l/. III. Long-term retention of new phonetic categories. J. Acoust. Soc. Am. Vol 96(4). Oct 1994.

ATRのホームページ。 幾つかの資料はここから抜粋させてもらいました。

関連記事:成人後からでも外国語の音を聞き分けられる (2005/07/12)


検索キーワード: 心理学 認知心理学 言語心理学 言語獲得 臨界期 

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