2011年12月21日(水)

「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」

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グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ
デイヴィッド・ミーアマン・スコット ブライアン・ハリガン
グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

先ごろ発売された本書は、David Meerman Scott & Brian Halliganの"Marketing Lessons from the Grateful Dead"(2010)の邦訳本です。昨日の時点でamazonの本のベストセラーランキングで18位、R天やK国屋(ネット)では品切れになっていたので、よく売れているのでしょう。

でもこれ、日経BP社発行のれっきとしたビジネス書なんです。私は普段ビジネス本なんてまったくといっていいほど読むことはなく、「もしドラ」でさえ読んだことないんですが、本書はあっという間に楽しく読了することができました。それはまず、マーケティングのプロでありながらデッドヘッズでもある著者と、翻訳を担当したスコット氏夫人の作家、渡辺由佳里さんたちのデッドに対する愛が素直に伝わってくるからだと思います。ビジネス書という体裁をとりながらも、(これまでほとんど存在しなかった)グレイトフル・デッドというバンドに対する日本語の入門書としても、うってつけの一冊となっています。

ヒッピーカルチャーが生んだフリー&シェアの精神。ライブを録音しシェア(トレード)するのも自由。ライセンス料を払えば関連グッズを制作して売り買いするのも自由。管理をユルくしてファン(=ユーザー)の裁量を尊重する。代理店を介さずにチケットを直接ファンに届ける。ファンによる口コミを重視し、それがさらなるファンと膨大なコミュニティーを生む。・・・といったデッドのユニークな手法が、ネット時代の最先端のビジネスの成功とつながっていることを、実例とともに簡明に解説してくれます。

もうひとつ、本書を読んで痛快だったのは、日ごろ違和感を覚えていた、強圧的な著作権侵害の取り締まりや、動画コンテンツの強制削除といった行為が、いまとなってはむしろ逆効果であることを指摘してくれていること。もちろん、アーティストの著作権を尊重することにやぶさかではありませんが、当ブログでも利用させてもらっているYouTube動画が「誰々の申し立てで削除されました」なんてことになっていると、「アーティストにとって、これほどいい宣伝になることはないのに・・・」と残念に思っていたのでした。

考えてみれば、私のコレクションの中では、タダでいくらでも音源や映像が手に入るデッドのCDやDVDに、いちばん多額のお金を注ぎ込んでいるんじゃないかと思います。特にデッドばかりを追いかけるデッドヘッズというわけでもなく、ドアーズやバーズやその他もろもろのバンドの中のワンオブゼムなんですが・・・。

そして、一般的には60年代のドラッグカルチャーやヒッピームーブメントが、失敗に終わったナイーブで未熟な一過性の若者文化だったという評価を見事に覆してくれていること。どんなことでも、つきつめていけば、最先端に突き抜けてしまうことがあることを、デッドの40年の活動が証明してくれます。

私なんかはヒネクレているからか、その60年代(サイケデリック文化)の未熟で稚拙でダメなところをこそ愛しているのですが、某ロック評論家がそれを理由にサイケデリックロックを真面目に批判しているような記事を読んで、鼻白むようなことがありました。この本は、「ほら、サイケデリックやヒッピーも、(現実社会にとっても)まんざらムダではなかったでしょう」ということを示してくれます。

ちなみに、本書の翻訳が実現することになったのは、監修者の糸井重里さんが原書の発行をたまたまネットで知ってツイッターで「つぶやいた」ところ、著者の奥さんの渡辺由佳里さんがそれに反応したのが始まり、というネット時代を象徴するようなエピソードがあります。そのへんのいきさつは「ほぼ日」のこちらのページに詳しく載っています。

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2011年05月20日(金)

レココレ・サイケ号が復刻!

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レココレ・アーカイヴズ6 サイケデリック&エクスペリメンタル
レココレ・アーカイヴズ6 サイケデリック&エクスペリメンタル

レコード・コレクターズ誌の過去の特集記事をテーマに沿って復刻・再録した増刊号、「レココレ・アーカイヴス」の第6弾「サイケデリック&エクスペリメンタル」が発売されています。

今回の目玉は、待望の「サイケデリックの狂乱」(2002年7月号)、別称「レココレ・サイケ号」の復刻! この特集がなければ、当ブログも存在しなかったであろうバイブル的な記事です。当時、日本語ではまったくといっていいほど存在していなかった60sサイケのディープな情報は、音源収集の絶好の道標となるとともに、数多くの新たなサイケファンを目覚めさせたのではないかと思います。

いまとなっては誤った情報も散見されますが、やはりこの記念碑的な名特集は全サイケファン必読といえるでしょう。バックナンバー未入手だった方は、この機会にぜひどうぞ。特集記事は「サイケデリックの狂乱」のほか、「ソフト・ロック」(2000年7、8月号)、「カンタベリー・ミュージック」(2002年3、4月号)、「ジャーマン・ロック」(2000年6月号)が収録されています。

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2010年11月10日(水)

Fuzz, Acid & Flowers Revisited Expanded Edition

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Fuzz Acid and Flowers Revisited: A Comprehensive Guide to American Garage, Psychedlic and Hippie-rock (1963-1977)
Fuzz Acid and Flowers Revisited: A Comprehensive Guide to American Garage, Psychedlic and Hippie-rock (1963-1977)

amazonで6月に予約していたFuzz, Acid & Flowersの新版がようやく今日届きました。旧版から300ページ増えて約1400ページになっているというので、紙はもっと薄いのに変更されているのかと思いきや、そのまんまでした。なので、そのボリューム感はハンパでなくスゴいことになっております(下の画像参照)。重さも約3kgから約3.5kgに増え、DIYで自室の壁に取り付けた本棚の耐久性が心配です(とても旧版と2冊並べては置けない)。

さて、内容ですが、1964~1975年から1963~1977年へと扱う範囲が増えて、たとえば70年代ではBig Starなんかも新たにエントリーされています。以前からの記事もかなりの部分が書き換えられていて、当ブログで指摘した、Fear Itselfがサンフランシスコのバンドだとか、Ol' Paintがカリフォルニア出身らしいとか、Glitterhouseが実体のないスタジオグループだとかいった誤りも、しっかり訂正されていました。当然ながら、旧版の出版以降にリリースされたCDなどもフォローされています。

さらに、アーティストエントリーに、Kak (CA)のように州の略称が表記されるようになり、これまで本文を読まなければどこのバンドかわからなかったのが、一目でわかるようになっています。しかも、巻頭に州名とその略称が書かれたアメリカ地図が掲載されているので、本やネットで調べなおす手間も省けます。

それにしても、やっぱりこの本はスゴい! ただただ圧倒されてしまいます。ありがたくて、神棚に飾っておきたいくらい・・・。

$サイケデリック漂流記
旧版(右)からさらに27%ボリュームアップ!


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2010年02月24日(水)

「Psychedelic Moods」

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PSYCHEDELIC MOODS(サイケデリック・ムーズ ) ‐Young Persons Guide To Psychedelic Music USA/CANADA Edition
PSYCHEDELIC MOODS(サイケデリック・ムーズ )
‐Young Persons Guide To Psychedelic Music USA/CANADA Edition


サイケデリックミュージックに特化した国内初のディスクガイドが、ついに2月20日に出版されました。これまでは雑誌の特集記事(レコード・コレクターズ 2002年7月号「サイケデリックの狂乱」)という形でしか存在せず、しかも近年は入手が難しくなっていたので、このようなガイド本を待ち望んでいた新たなリスナーも多かったんじゃないでしょうか。

全138ページというボリュームは決して多くはありませんが、精選された400タイトルのわかりやすい解説がアーティストのアルファベット順に整理されていて読み(引き)やすい(レココレ・サイケ号はジャンル別で、索引がなかったのが不便だった)。巻末には州別にまとめられたアーティスト索引がついているのも重宝しそうです。

取り上げられているタイトルは、レココレ・サイケ号に載っていた「基本アイテム」や、すでに評価が定まっているサイケクラシックスのみならず、近年あらたに「発見」「発掘」されたようなアルバムやアーティストも含まれています。ほとんどがCD化されているものが選ばれているのも、ビギナーに優しい編集になっています。

これまでは「サイケはオリジナル(アナログ)を聴いてなんぼ」みたいなところが敷居を高くしていたということもあるように思います。確かにそうもいえるんですが、想像力を逞しくして、CDを聴いてオリジナルの雰囲気を思い描くというのもまた楽しいものです。

本にはアルバムレビュー以外にも、サイケ関係者(アーティスト、レーベルオーナー、ビニールコレクターなど)へのインタビューや「RUSTY EVANS ~サイケを切り開いた男」「宗教とサイケデリア」「アラン・ローバーとボスタウン・サウンド」といった記事も掲載されています(嬉しいことに、ファンサイトのコーナーでは当ブログも紹介していただいています)。


ところで、シンコーのディスクガイドなんかにあってもよさそうなのに、なぜこれまでサイケのガイド本がまったく出ていなかったのでしょうか。この本の制作動機もそういう素朴な疑問から始まったようですが、やっぱりそれは単純にサイケのディスクガイドを作るのが難しいからなんでしょう。

サイケというのはアーティスティックな意味での「名作」「傑作」をあげつらえばいいというものではありません。一般の音楽評では批判や悪口となるような文句がサイケでは賞賛のことばとなり、マイナスのものがプラスになるような価値観の逆転する特異な地平が広がっているのです。「ヘタクソ」「音程の狂った」「ぐちゃぐちゃなリズム」「ひとりよがり」「分裂気味」「未熟なナイーブさ」「イナタい」「時代から取り残された」「ワンパターン」「お馬鹿」「変態」「ダメダメ感」「煮え切らない」・・・といったキーワードが当ブログでも褒めことばとして使われています。

これらのマイナス要素の逆転現象というのは、サイケデリックミュージックというのが「音楽そのもの」を最終目的としているのではなく、ある種のトランス状態(イタコ化)によって異形のビジョン、「あちらの世界」を垣間見せてくれる表現手段であるということと密接な関係があるんじゃないかと思っています。

もちろん、ただヘタだからレアだからといってそれがサイケになるわけでもなく、逆に演奏が上手いからメジャーだからといってそれがサイケにならないわけでもない。そこには聴く側のイマジネーションの波長、「あちらの世界」とつながるパイプの規格のようなものも大きく係わってきます。「健全な」ロックファンが聴いて、どこがいいのかと首をかしげるような出来損ないの音楽に、サイケファンはたまらなく心揺さぶられるというのも、そのへんの事情があります。

そんなヘンテコリンで一筋縄ではいかないジャンルを総括して一冊の本にまとめるというのは大変な作業だったと思います。本の制作に携わったスタッフの皆さんに、心からの賛辞をお贈りします。
2009年04月07日(火)

ディスクガイド♯37 Acid Folk (続)

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ディスク・ガイド・シリーズ アシッド・フォーク (ディスク・ガイド・シリーズ NO. 37)
シンコーミュージック・エンタテイメント
ディスク・ガイド・シリーズ アシッド・フォーク (ディスク・ガイド・シリーズ NO. 37)

これはちょっと予想外な展開でしたね。ちまたでは賛否両論が巻き起こっている模様。私は、いきなり冒頭の監修者序文で目が点になってしまいました。ニーチェの「永遠回帰」??、(反)系譜学??、おバカな私にはまったくちんぷんかんぷんでした。

取り上げられているアーティスト/アルバムも、全世界・全時代という広範なものであるにもかかわらず、「え、これも入れてしまいますか」というのが結構ある。作品解説も序文同様かなり難解・・・、とくると「否」の方かといえば、そうでもなくて、これはこれでアリなんじゃないかと思います。

いずれにせよ、シリーズの中でも最も個性の強い、クセのある一冊であることに間違いないでしょう。アシッドフォーク同様、サイケ周辺ジャンルである「ガレージパンク」編と読み比べてみると、その語り口の違いが対照的で面白い。

そういえば、もうひとつの周辺ジャンルのソフトロックは「おしゃれ」的な立場で、ガレージパンクは「反現実逃避」的な立場で、アシッドフォークは「知性」的な立場で、「サイケと一緒くたにしないでくれ」みたいな微妙なプライドを感じるのもおかしい。

2009年03月19日(木)

Mojo 4月号の付録はUSサイケコンピ

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Mojo Magazine 2009 April


英国のロック誌、Mojo Music Magazine 2009年4月号の付録はUS 60sサイケのコンピCD。本誌特集記事の"A to Z of US Psych"に連動したもので、13th Floor Elevators, Music Machine, Bubble Puppy, Lost & Found, Chocolate Watch Band, Golden Dawnなど、全15曲が収録されています。

"I Can See for Miles: Lost Tracks from America's Psychedelic Underground"
01. First Crew to the Moon - The Sun Lights Up the Shadows of Your Mind
02. Mystery Trend - Johnny Was a Good Boy
03. Terry Manning - Guess Things Happen that Way
04. 13th Floor Elevators - Levitation
05. Red Crayola - Hurricane Fighter Pilot
06. Bubble Puppy - Days of Our Time
07. Balloon Farm - A Question of Temperature
08. Music Machine - The People in Me
09. Chocolate Watch Band - Are You Gonna Be There
10. Ashes - Let's Take Our Love
11. Lost and Found - Don't Fall Down
12. Free Spirits - I'm Gonna Be Free
13. Golden Dawn - Starvation
14. Endle St. Cloud - Come Through
15. 13th Floor Elevators - You Don't Know (Live at the Avalon Ballroom)

この特集は、6月にリリースが予定されている13th Floor Elevatorsの10枚組ボックスセット"Sign of the Three-Eyed Men"にちなんだものでもあるとのこと。amazonでは取り扱っていないようなので、下にディスクユニオンさんのリンクを載せておきます。残り少ないかもしれないので、お早めにどうぞ。ちなみに、本誌の表紙はピート・タウンゼントのものとロジャー・ダルトリーのものの2種類があります。
http://diskunion.net/rock/ct/detail/04IA17470

また、Mojoのサイトに、これに関連した動画がリンクされています。どれもサイケファンにとっては「永久保存もの」ばかり。(動画の保存にはこちらのサイトが便利です。)

2007年10月17日(水)

究極のGSガイド本発売中

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日本ロック紀GS編 コンプリート
黒沢 進
日本ロック紀GS編 コンプリート

1994年に発売されながらも絶版となっていたグループサウンズの研究本「日本ロック紀GS編」が、大幅に改訂されて「コンプリート」として復刊されています。全118(!)グループのレコードジャケットもすべてカラーで掲載されているとのことです。

近年は海外でも注目されている日本のGS。そのすべてのシングル、LPが網羅されているというこの本の完全版は、まさに究極のグループサウンズマニュアルといえるでしょう。
2007年10月11日(木)

Japrocksampler

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Japrocksampler: How the Post-war Japanese Blew Their Minds on Rock 'n' Roll
Julian Cope
Japrocksampler: How the Post-war Japanese Blew Their Minds on Rock 'n' Roll

Echo & the Bunnymenなどとともにリヴァプールのネオサイケデリアシーンを主導したTeardrop Explodesのリーダーで、のちのソロ活動や、著作およびネット(Head Heritage)での博識なレビュー活動でも知られるJulian Cope。彼が60~70年代日本の黎明期ロックに光を当てた本、"Japrocksampler"がamazonで発売されています(表記は英語)。

Japrocksamplerのサイトはこちら。日本のアーティストの動画へのリンクも掲載されています。

追記:日本語版も発売されています。
JAPROCKSAMPLER ジャップ・ロック・サンプラー -戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか-
ジュリアン・コープ
JAPROCKSAMPLER ジャップ・ロック・サンプラー -戦後、日本人がどのようにして独自の音楽を模索してきたか-
2007年01月05日(金)

San Francisco Oracle CD-ROM版

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Allen Cohen
The San Francisco Oracle: A Complete Digital Recreation of the Legendary Psychedelic Underground Newspaper Originally Published in the Haight Ashbury During the Summer of Love

以前Fuzzy Floorのおすすめ本を編集した時にはamazonで在庫切れ状態だったので載せなかったのですが、少し前にまた商品が入荷されていたので、ここで紹介しておきます。

San Francisco Oracleというのは、サイケ文化の発祥の地といえるサンフランシスコのHaight-Ashburyで生まれた“Underground Newspaper”で、1966年から1968年の3年間にわたって発行されました。いわば60sのカウンターカルチャー、フラワームーヴメント、ヒッピー文化などのコア中のコアで、思想・音楽・詩・アートなどすべてのサイケデリック文化を集約する精髄といえるような存在ではないかと思います。

特に、カラー印刷されたRick Griffinをはじめとする「サイケデリックアーティスト」たちによるグラフィックが素晴らしく、記事を読まなくても、そのレイアウトを眺めているだけでサイケな気分が盛り上がってきます。面白いのは、1966年の最初の数号は白黒印刷でサイケムードもおとなしめだったのが、カラー印刷になった1967年1月のHuman Be-In特集号からSummer of Loveに向ってサイケデリックな感覚が爆発していることで、そのへんを目で追ってみるだけで文章の記事を読むよりずっと直截的に当時の雰囲気を理解することができます。


※この紙面の画像は発行元のRegent Pressのサイト
(http://regentpress.net/oracle/)から借用しました。


ところで、この版は1990年に発行されたFacsimile Edition(復刻版)をデジタル化したもので、amazonの商品タイトルには「ハードカバー」とありますが、冊子ではなくCD-ROMに収められた電子書籍(PDFファイル)です。PDFなので、気に入ったページを印刷して部屋に飾るというのもオツなもんです。(ただし、かなりのボリュームなので、全部印刷しようと思うと、相当な時間やインク代の覚悟が必要かと思われます。)

さらに付録としてDVDがついていて、エディターのAllen Cohenのインタビューなど約70分の映像が収録されています。インタビューなどは字幕がないのがキツいですが、当時のHaight-Ashbury周辺の様子やサイケな映像もたっぷり収められているので、こちらも眺めるだけでもじゅうぶん楽しめるでしょう。

絶版・在庫なしになると高値が付いて簡単には買えなくなると思うので、興味のある方はいまのうちにどうぞ。
2006年11月20日(月)

クール・クールLSD交感テスト

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トム・ウルフ
クール・クールLSD交感テスト

一万年ぶりくらいな本ネタですが・・・。Fuzzy Floorの「おすすめ本」を編集してて、「おっと、これまだちゃんと紹介してなかったな」と思い至りまして。やはり、60sサイケ関連のレビューやってて、この本について書かないわけにはいかないでしょう、というわけで少し・・・。

私がこの本をはじめて読んだのは、60sサイケにハマってからのことでした。それまでは「どっかで聞いたことがあるな」くらいの認識だったんですが、読んでみて「ひゃー、こんな本だったのか!」と、目からうろこポロポロ状態になってしまいました。

著者のトム・ウルフは新聞記者出身のジャーナリスト/作家で、ニュー・ジャーナリズムの旗手と呼ばれた人。日本では「ラスト・アメリカン・ヒーロー」「ライトスタッフ」「虚栄の篝火」といった映画の原作者として有名ではないかと思います。本作(1968年)を執筆中は30代半ば過ぎで、すでにベストセラー作家となっていました。そんな彼が、ヒッピーのコミューンでメリー・プランクスターズらと生活を共にし、ハンター・トンプソンのゴンゾー・ジャーナリズム(*1)的な手法で描いたドキュメンタリー・ノベルが、この「クール・クールLSD交感テスト」(原題"The Electric Kool-Aid Acid Test")です。

ケン・キージーとプランクスターズたちの生態、LSDをめぐるドタバタ、アメリカ大陸横断のサイケなバスツアー、アシッドテストにトリップフェスティバル、ケンの逮捕とメキシコへの逃亡、帰国後のアシッドテスト・グラデュエーション・・・。それらの狂騒的な出来事が、ケン・キージー、ティモシー・リアリー、ニール・キャサディ、ジェリー・ガルシア、のちのガルシア夫人のマウンテンガール、グレイトフルデッド・ベアの「元ネタ」にしてLSD製造者オーズリー・スタンレーら、サイケ関係者総出演といった感じで綴られていきます。

この本がスゴいのは、そのようなドキュメンタリー的な側面だけではなくて、文体というか描写というか、その表現そのものがサイケデリックでファーアウトで、まるでこの本自体がある種のドラッグのような効果を持っていて、読んでいるうちにハイになることでしょう。翻訳文のぎこちなさや誤植までもがプラスの要素になっている感じで、まったりとしたシスコサイケなんかを流しながら読むとまた格別です。

以下は、アシッドテストの場面からの引用。

・・・四時間ほど前そうとう数の人たちがLSDを飲み、その第一波に襲われ、恍惚となろうとしている。二つのプロジェクターが照射されている。バスとプランクスターズがロッジの壁の上を転りはじめる、とバップスとケーシィはしやべりはじめる、バスは巨大なすがたをさらし、震動し、はずむ。ノーマンはフロアに坐り、陶酔し、半ば恐怖し、半ば恍惚とし、脳裏でこれがアシッド・テストのパターンだと意識し、坐り、見つめ、LSDの襲撃に陶酔する、午前三時か四時、マジック・アワーだ、踊る──なんとすごいLSDの襲撃だ! ムービーだ。ロイ・セバーンのライト・マシンはロッジのコーナーじゅうにSF的な赤い銀河の海を写し出し、そして油・水・食物・カラーに色が塗られ、それがガラスの皿のあいだにはさまれ、巨大な大きさに拡大されて映像化され、放射されるから、どろどろした創世記の細胞と化し、大気中に流れ出すように見える。デッドは海中でばかでかいビブラートのサウンドを震わせている。そのサウンドはアリューシャン列島の岩石をゆるがし、カリフォルニア湾のパシャ・グリフン断崖を震わす。グワーンブワーン。デッドのクレージーなミュージック! 苦悩と恍惚! 海底の中のサウンドだ! 半ば乱調子で、ものすごくやかましい。まるで滝の下に坐っているとききこえるような音だが、同時にエレキギターの一本一本の弦が半ブロックも長く、それが天然ガスのたまった部屋にブーンと響くかのようで、グール(墓をあばいて死体を食う鬼)たちがショーをやらかしているときのあのビブラート音が轟く・・・
(飯田隆昭 訳)


1966年、Haight-Ashburyにて。右から、Tom Wolfe,
Jerry Garcia, Rock Scully(デッドのマネージャー)。


原書で読んでみようという猛者(もさ)の方はこちら。


Tom Wolfe
The Electric Kool-Aid Acid Test


*1
ゴンゾー・ジャーナリズムとは、本来は客観的で公正中立のはずのジャーナリスト的立場を捨て、自ら取材対象の中に入り込んで、主観的なドキュメンタリーとして記事を書くというスタイル。ハンター・トンプソンは60年代にヘルス・エンジェルスと生活をともにして本を書いた。ケン・キージーとプランクスターズらにヘルス・エンジェルスを紹介したのも彼で、そのエピソードは「クール・クールLSD交感テスト」の中にも登場する。その結果が、めぐりめぐって「オルタモントの悲劇」につながり、フラワー文化の息の根を止めてしまったのは皮肉である。ハンター・トンプソンの原作を元にした映画「ラスベガスをやっつけろ」の過去記事はこちら

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