第52回 Ariesta Birawa Group | サイケデリック漂流記

第52回 Ariesta Birawa Group

ARIESTA BIRAWA GOURP vol.1 Indonesia
Ariesta Birawa Group
ARIESTA BIRAWA GOURP vol.1 Indonesia

インドネシア産天然ものサイケの至宝!

このジャケ、そそるでしょう? 辺境物サイケとか好きな人なら絶対買ってしまうんではないかと思います。でも、いい意味で裏切られるというか、ジャケのイメージから期待する以上の素晴らしい内容です。

ジャケ写から想像するに、パワートリオ系のヘヴィロックで、フィリピンのJuan De La Cruzをもっとグサグサにしたみたいな感じか、と思われるかもしれません。しかし、演奏自体はよくこなれていて上手いし、リズムもしっかりとしていて、欧米の普通のロックと違和感のないもの。楽器もキーボードやフルートやパーカッションが入っていて、トリオ編成という感じも特にしません。

何が特別なのかというと、やっている音楽のスタイルというより、演奏している人間そのものの素朴さ、優しさが、感動的なまでに音になって現れているところ。こんなに素朴で優しいロックは、ほかにはないのではないでしょうか。まわりに漂う空気感も、いかにも東南アジアしてて、幸福でのどか。サイケ的にも、激渋ファズギターや、(英語の1曲以外)現地語で歌われるイナタい感じのボーカルがなごみます。

とはいっても、単に素朴でイナタいからいいというのではなく、その背景には音楽的な土壌が肥えているインドネシアという土地柄もあるように思います。ガムランとか、世界最古のポピュラー音楽といわれるクロンチョンとか、 Elvy Sukaesih(エルフィ・スカエシ)のダンドゥットとかを生んだ土地だからこそ生まれ得たものかもしれません。

ただ、このバンドに関しては、欧米のロックへの純粋な憧れ(1曲目なんかサンタナみたい)があって、ヘンにガムランなんかのエスニックな要素が強くないところが、かえって良かったように思います。奇跡の「純真サイケ」! 一生もののお宝アイテムです。