ヘヴィサイケ特集 その33 | サイケデリック漂流記

ヘヴィサイケ特集 その33

Twentieth Century Zoo
アリゾナ州フェニックス出身の5人組。西海岸に出て活動・レコーディングしていました。1968年に"Thunder on a Clear Day"という唯一のアルバムを残しています。

本作はヘヴィサイケクラシックともいうべき名盤で、そのスジのファンにとっては「安心アイテム」の筆頭です。あまりにもストライクゾーンど真ん中すぎて、びっくりして見逃し三振してしまった、みたいな王道感にあふれています。凶暴に歪む激渋ファズギター、ブンブンうなるベース、ナイーブ系のボーカル、基本はブルースベースながらも若々しくガレージっぽい感覚。シスコのAvalonあたりで、オイルプロジェクターかなんかのサイケなライトショーをバックに、延々とドロドロまったりのジャムを繰りひろげている・・・そんなイメージが浮かんできます。

ファズギターの歪み度はヘヴィサイケ界でもトップクラスで、英国のHigh Tide級に歪みます。全編ではないものの、ときおり入るチープ系オルガンもナイスで、60年代っぽいBooker Tみたいなプレイもいい雰囲気です。(ギターがふたりいてツインリードみたいなスタイルなんですが、オルガンが入るときにギターが一本だったりするので、ギターのひとりがオルガンを弾いてるのかもしれません。) アルバム先頭の"Quiet Before the Storm"などは、曲名が暗示するように、メロウサイケ風のもんやりとした導入部から、ファズこってりのヘヴィサイケデリアに変化する展開が素晴らしい。

ところで、私が持っているのは1999年再発のSundazed盤で、シングルなど9曲のボーナストラックをアルバム本編の前後に配したコンピレーションとなっています(現在amazonでは在庫切れ)。下のリンクは2003年再発のRadioactive盤で、こちらはボーナストラックなしのオリジナル7曲のみの収録となっています。

Thunder on a Clear Day
Twentieth Century Zoo
Thunder on a Clear Day



Magic
ミシガン出身の5人組で、有名なデビュー作"Enclosed"(1969)はフロリダで録音されました(ミシガンとフロリダの両地で活動していたらしい)。しかしながら、音はモロにB級(マイナー)シスコサウンドという感じになっています。

基本はR&Bベースの黒っぽい60年代西海岸(シスコ)風ですが、全体的にメロディがキャッチーで、ややメインストリームの60sポップス寄りのスタンスも感じられます。しかし、ときおり強烈なファズギターが入ったり、本編のラストは約12分のまったりドロリなインプロが展開したりで、QMSやKakを思わせるようなヘヴィサイケ感覚もしっかり備えています。

若い頃のボブ・シーガーを連想させるボーカルやヘヴィなツインギターもキマっていて、それほどドロドロではないけどコシのあるシスコサウンド風ヘヴィサイケを聴かせてくれます。ただし、後半のボーナストラック(Gear Fab盤)はほとんど非ヘヴィサイケですが・・・。ちなみに、1972年にセルフタイトルの2ndを出していますが、こちらの方は1stほどの魅力はないそうです。

Enclosed
Magic
Enclosed



Sacred Mushroom
オハイオ出身の5人組で、唯一のアルバムは1969年の作。バンド名やサイケ心をくすぐるジャケからイメージするより、はるかに「まっとうな」音です。ヘヴィサイケというよりヘヴィブルースというほうが近い感じ。

まっさきに連想したのがSteppenwolfで、かなり意識してると思います。でも、Steppenwolfほど「やさぐれ」てなくて、ボーカルもジョン・ケイよりある意味で上手い(ジョン・ケイは音程がハズれるところがいいんですが)。ツインのギターサウンドがカッコよくて、キーボードが入ってない分、よりコアな感じがします。特にクリーム(=クラプトン)フォロワーな感じのリードギターがシブい。

キンクスの"I'm Not Like Everybody Else"(このカバーは文句なしにカッコイイ!)以外は全曲オリジナルで、楽曲も演奏もボーカルもメジャー感漂うハイレベルなもの。でも、売れなかったのは、(ジョン・ケイのように)同時に嫌悪する者もいるほどの強烈な個性に欠けていたからかもしれません。

サイケ度は高くないですが、このジャケはズルい、絶対に買ってしまいます。

Sacred Mushroom
Sacred Mushroom
Sacred Mushroom