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2007年11月28日(水)

境界サイケ特集 その8

テーマ:サイケデリック
Ananda Shankar and His Music
Ananda Shankar
Ananda Shankar and His Music

サイケファンでシタールが嫌いって人は、まずいないんじゃないでしょうか? もちろん、私もかなりのフェチで、Ravi Shankarのタイトルを揃えたり(というか安売りしてたらつい買ってしまうという感じですが)、シタールが入った曲ばかりを集めたコンピの"Electric Psychedelic Sitar Headswirlers"シリーズを探し歩いたりしていました。そのコンピで知ったのが、Ravi Shankarの甥のAnanda Shankar(故人)。取り上げられていた数曲が、ナイスチューンながらも、わりとまともなシタール・フォークサイケ~サイケロックだったので、「ほう、叔父さんよりもずいぶんヒップな人だな」くらいな印象でした。

その後、わりと最近になって、FalloutからCD再発された"...And His Music"(1975)を聴いて、ぶっとんでしまいました。プシュ~ン ピショ~ンとムーグシンセが駆け巡り、スッコンボッコン忙しいタブラやチープなオルガン、「ナマステ~」な女性コーラスなどを縫うように、ビヨ~ン ビヨヨ~ンとシタールが鳴り響くさまはあまりにも怪しすぎ! インド古典音楽のミステリアスさと、トルコ勢のノリに近いような天然のコテコテさが同居した、素晴らしくも胡散臭い傑作モンドサイケアルバムなのでした。

Ravi Shankarはインド音楽を西洋に伝えるべく、ロックミュージシャンたちとも積極的に交流し、モンタレーやウッドストックに出演するなど、サイケ文化に大きな影響を与えたことはご存知のとおりです。しかし、本人の音楽自体はあくまでもインドの古典音楽を重視していて、ポップミュージックをシタールで演奏したりということは、私の知る限りではありません(コラボ作もPhilip Glassとかクラシック/現代音楽関係だったりする)。

でも、甥っ子のAnandaには、インドの伝統音楽を正しく紹介しようなんていう「しばり」にまったくとらわれていない、突き抜けたような自由奔放さがあります。というか、かなり異端的で、叔父さんからすると「こまったちゃん」な存在だったのではないでしょうか? でも、通俗的でチープなモンド的味わいだけではなくて、ときには本格的な古典っぽい演奏があったり、フルートが沁みるトラッド/フォーキーな曲があったりと、いろいろ楽しませてくれます。彼のスタイルはシタールファンクとも呼ばれているそうで、クラブDJなどからも愛好されているようです。


Ananda Shankar
Ananda Shankar
Ananda Shankar

これは1970年のセルフタイトル。上記の"And His Music"と並ぶ代表作です。ムーグシンセと女性コーラスが入った、先頭の"Jumpin' Jack Flash"から早くも本領発揮。まるで大正琴みたいなコテコテのシタールにプシュ~ンなシンセが絡む名曲の"Snow Flower"、この手のラーガインストアルバムでは定番の "Light My Fire"と続いたかと思えば、その次は意表を突いてボッサな "Mamata"。アッパー系アシッドチューンの"Metamorphosis"から、約13分のディープな"Sagar"へと続くクライマックスでは、サイケ度も増してトリップ必至。ラストの"Raghupati"は、脱力ボーカルが涅槃にいざなう、最強の「イースト・ミーツ・ウェスト」チューン(インドのトラッドがいつの間にか「ヘイ・ジュード」になる)。というぐあいに、一分のスキもなく展開する素晴らしい内容です。参加メンバーとして、Paul Revere & the RaidersのDrake Levin(ギター)、GoldenrodのJerry Scheff(ベース)、Electric PrunesのMark Tulin(ベース)、のちにBreadに参加するMike Botts(ドラム)などがクレジットされています。


Missing You/a Musical Discovery of India
Ananda Shankar
Missing You/a Musical Discovery of India

1977年の"Missing You"と、1978年の"Musical Discovery of India"がカップリングされた2on1。"Missing You"は、ダンサーだった亡き父にささげられたアルバムで、全編メランコリックなムードが横溢するエレジーで占められた好盤。 "Almora"なんか、思わず「貧しさにぃ~負けたぁ~」と歌ってしまいそうになるくらいのコテコテなメロディが嬉しい。


Sa-Re-Ga Machan
Ananda Shankar
Sa-Re-Ga Machan

"Charging Tiger", "Jungle King", "Monkey's Tea Party", "Dancing Peacocks", "Jungle Symphony"といった、ジャングルや動物にちなんだ曲名が並ぶコンセプトアルバム(1981)。南米密林サイケみたいなテイストを持つ、エキゾな怪作。フルートをフィーチャーした南米フォルクロアみたいな素朴系フォークサイケもあり。ワウギターが登場するかと思えば、コテコテのメロディや「飛び出せ!青春」みたいなベタベタなストリングアレンジも満載された、これもスゴすぎるシタールモンドサイケ!


2001
Ananda Shankar
2001

オリジナルは1984年のリリース。こちらは"Voyageur", "Lost Galaxy", "Planet X", "The Alien", "2001"といった曲目が並ぶSF的なコンセプト作です。しかし、いかにも80年代のトホホなジャケや、無理矢理な曲名とは裏腹に、音はいつもどおりAnanda節全開のシタールファンク。"Lost Galaxy"が、まるで「神田川」なのがおかしい。

というわけで、Ananda Shankar、ひとことでいうと「変態」です。さすが、Falloutが再発の目玉にしているだけあります。





BGMは"Ananda Shankar And His Music"(1975)の
先頭曲"Streets of Calcutta"。映像とは無関係です。
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2007年11月25日(日)

境界サイケ特集 その7

テーマ:サイケデリック

Alan Lorber
Lotus Palace

Alan Lorberは、以前特集したボスタウン・サウンドの立役者であるプロデューサー/アレンジャー。Ultimate Spinach, Chamaleon Church, Orpheus, Puff, Bobby Callenderといったアーティストの作品を手がけました。本作は彼が率いるAlan Lorber Orchestraによるラーガソフトロックのインストアルバム(1967)。

5th Dimensionの"Up, Up and Away"、「サージェントペパーズ」の"Lucy in the Sky~"に"Within You Without You"、バート・バカラックの"Look of Love"、モンタレーでも演奏されたBlues Projectの"Flute Thing"、Gandalfで有名なTim Hardinの"Hang on to a Dream"などのカバー曲(オリジナルもあり)が、全編大活躍のシタールとタブラがフィーチャーされたインストルメンタルで奏でられます。

というと、Folkswingersの“Raga Rock”を連想されるかもしれませんが、西海岸の"Raga Rock"と東海岸の本作では、まったくといっていいほどノリがちがうのが面白いところ(残念ながらファズギターも入っていない)。中途半端にキレイにまとまってるような感じだとか、かなりディープに展開する曲でも、どこかあっさり淡白な印象だったりとか、やはりここにもボスタウン系らしい特徴があらわれています(というとつまらない音みたいですが、これはこれで良いのです)。




Lord Sitar
Lord Sitar
Lord Sitar

1968年産の「英国もの」ですが、むしろこちらのほうが"Raga Rock"のノリに近い感じ。かなり強烈なファズギターも入ってます。Lord Sitarというのは、ジミー・ペイジやリッチー・ブラックモアの師匠的存在で、英国有数のセッションギタリストだったBig Jim Sullivanの変名。当時(1967~68年ごろ)はシタールが弾けるセッションマンということでも希少で、ひっぱりだこだったようです。先ごろFalloutから再発されたBuzz Linhartなどのアルバムでもシタールで参加しています。

ビートルズの"I Am the Walrus", "Eleanor Rigby", "Blue Jay Way"、モンキーズの"Daydream Believer"、ビージーズの"Like Nobody Else"、ザ・フーの"I Can See for Miles"などを、シタールがメインのバンドサウンド(オルガン入り)+管弦楽器のインストルメンタルでカバーしています。シタールがギターみたいな感覚でコテコテにメロディを奏でたり、オーケストラアレンジなんかもベタベタだったりで、おバカ度がかなり高いのが嬉しいところ。特にズブズブのファズギターとシタールがからむところはたまりません。

また、Big Jim Sullivan名義で、本作より前?に録音された"Sitar Beat"(1968)というアルバムもリリースされています。こちらも、ドノバンの"Sunshine Superman"、プロコルハルムの「青い影」、ビートルズの"Within You Without You"などのカバーが主体のラーガロックインストアルバム。ギターのJohn McLaughlinやJimmy Page、一説にはJohn Paul Jonesもベースで参加しているらしい。ほとんど同趣の内容ですが、こちらのほうが「まとも」な印象で、おバカ度ではLord Sitarに及ばないかもしれません。

Sitar Beat
Big' Jim Sullivan
Sitar Beat (日本盤はこちら。)

ちなみに、一時「Lord Sitarの正体はGeorge Harrisonではないか?」という憶測が広まったこともあったそうです。


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2007年11月21日(水)

境界サイケ特集 その6

テーマ:サイケデリック
Astro Sounds From Beyond the Year 2000
101 Strings Orchestra
Astro Sounds From Beyond the Year 2000

101 Stringsの"Astro Sounds"(1968)は、モンド/ラウンジ関係ではカルト的な人気を誇る大名盤(ジャケも最高!)。Folkswingersの“Raga Rock”もひれ伏してしまうほどの、最高にグルーヴィでイカしたインストアルバムです。

101 Stringsというのは、「60sヒット集」とか「ビートルズ名曲集」とか「映画ラブソング集」とか「ラテン名曲集」とか、さまざまなテーマの膨大な数のレコードを量産してきた(60年代にはそれが飛ぶように売れたらしい)、有名なイージーリスニング楽団。そんな彼らがサイケデリックに挑戦したのがこの"Astro Sounds"です。

私は、はじめて聴いたときは、レココレのサイケ特集号の「・・・101ストリングスの音楽的野心溢れる冒険作。C級SF映画から想を得たようなわけの判らないノイズとギターのひずんだ音色が雄大な弦と溶けあい現出させる光景はまさにモンド。」という記事による予備知識のみだったので、ほんとに聴いてビックリしました。異様に歪んだファズギターやエフェクトがストリングスと融合する有様は、並のプロパーなサイケバンドが裸足で逃げ出すくらい強烈にサイケデリック。「いくら60年代だからといって、イージーリスニングのレコードにこれはありえないだろう」と思ったのですが、やはりその裏には、いかにも60sらしいエピソードがあったのでした。

実はこのアルバムには元ネタがあります。101 Stringsの演奏以外のサイケなバンドサウンドの部分はすべて、1967年のAnimated Eggというグループによる同名アルバムの全10曲と、そっくりそのまま同じ曲、同じテイクが使われているのです。60年代の映画のダンスホールのシーンなんかでかかっていそうな、ファズギターやグルーヴィなハモンドオルガンをフィーチャーした、「なんちゃってサイケ」テイスト溢れる美味しいインストナンバーたち。このバンド演奏にフェイザーやレズリースピーカーでエフェクトをほどこし、101 Stringsの弦をかぶせて、曲名をSFっぽいものに変えて並べ替えたものが"Astro Sounds"というわけです。


Animated Egg
Animated Egg (リンクはamazon.com)

ところが、このAnimated Eggというのも「なんちゃってバンド」でありまして、ジャケに写ってるお兄さんたちは中身の音とはまったくの無関係。実体のない架空のグループによる似非サイケ(インスト)アルバムなのでした。それなら、実際に演奏してるのはいったい誰なのか? ・・・これがサイケファンには結構有名な、Idというグループだということがわかりました。

Idの実質は、プロデューサーのPaul Arnoldを中心に、ギターのJerry Cole(Byrdsの"Mr. Tambourine Man" やBeach Boysの"Pet Sounds"などに参加)らのセッションマンによるスタジオプロジェクト(バンドとしての活動も試みたが失敗に終わった)。1967年にRCAから"The Inner Sounds of the Id"というアルバムを1枚出しています。このときのセッションによるアウトテイク(歌なしインスト)をPaul Arnoldが勝手に持ち出し、101 Stringsの所属レーベルであるAlshireに許可なく売り払ったのが、Animated Egg~Astro Soundsの音源となったのです。

ちなみに、Idのアルバム本編は歌入りのガレージ風サイケナンバーが主流で、レココレのサイケ特集号でもガレージ系の名盤として紹介されていました。しかし、他のガレージサイケ物とはかなり趣きの異なる奇妙なテイストがあるのは、セッションマンによる「企画もの」の色合いがあったからかもしれません。本編の印象はAnimated Eggとは異なるものの、CD収録のボーナストラックを聴くと、別テイクながら確かに彼らがAnimated Egg~Astro Soundsのソースであることがわかります。


Id
The Inner Sounds of the Id

もともとAlshireというのは、音楽をホットケーキかなにかのように考えているようなモンドなレコード会社で、Animated Eggを出したのも、当時「サージェントペパーズ」などでポップス界にも「サイケデリック」な気運が盛り上がっていたからでした。そして、翌68年には「2001年宇宙の旅」やジェーン・フォンダ主演の「バーバレラ」の公開があり、SF映画のサントラ的な音楽の需要の高まりが見込まれていました。

"Astro Sounds"は、使いまわしの音源(しかも盗品)を利用して、流行りのサイケとSFを合体させ、レーベルのドル箱楽団のアルバムに仕立て直して売ってしまおうという、徹底的に姑息で商魂たくましい動機から生まれたレコードだったのです。いってみれば、60年代「企画もの」アルバムの極北。それがこんな素晴らしい作品に化けてしまうのだから、60年代ならではのマジックなのかもしれません。特に、フェイザーやエコーなどのエフェクトがかけられた、エキセントリックなストリングスの音が異様にサイケでクセになります。

ところで、Animated EggやIdセッションからの別テイク(101 Stringアレンジを含む)は、Alshireレーベルのほかのレコード("Black Diamonds: A Tribute to Jimi Hendrix"というタイトルや映画のサントラなど)にも再利用されています。それだけにとどまらず、Paul ArnoldはId音源をあちこちのレコード会社に売り歩いていたらしく、Projection Companyの"Give Me Some Lovin'"(1967)や、T. Swift and the Electric Bagの"Are You Experienced"(1968)、Associated Soul Groupの "Top Hits of Today"(1968)といったタイトルも、この音源を利用したアルバムだとか。(盗用とまではいかなくても、セッションミュージシャンによる匿名音源を使いまわしたりするのは、特に60年代には結構よくあったことらしい。)


T. Swift & the Electric Bag
Are You Experienced?

面白いことに、これらの音源を作曲/演奏した張本人のJerry Coleは、この件に関して数年前にインタビューされるまで、"Astro Sounds"の存在さえ知らなかったそうです。アルバムを聴かされて、"No doubt, that album is entirely me ..... every tune."と言ったとのこと。

追記:
2008年にSundazedからリリースされたAnimated Eggのコンピ"Guitar Freakout" のライナーによると、その後Jerry Cole(同年に逝去)は前言をひるがえして「Animated EggはIdのセッション音源ではない」と言っているようです。「それなら、プロデューサーが音源を勝手に持ち出したという話はどうなるんだ?」と思ってしまいますが、彼が否定したのはIdの本編とAnimated Eggのサウンドがあまりにも異なっているからということで、確たる記憶があるわけではないようです。


Animated Eggの最も「どサイケ」な曲、"Sock It My Way"(1967)。
101Stringsの"Flameout"の雛型となった(これにストリングスが重なる)。

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2007年11月18日(日)

Psych-Outの予告編

テーマ:YouTube
映画“Psych-Out”(邦題「嵐の青春」, 1968)のカッコイイ予告編がYouTubeにアップされていました(とはいっても大分前からあったみたいで、私が気づかなかっただけですが・・・)。ご存知SeedsやStrawberry Alarm Clockが出演している60sサイケファン必見の映画です。詳しくは過去記事で。

2007年11月16日(金)

境界サイケ特集 その5

テーマ:サイケデリック
今回も電子音楽/シンセつながりです。前回は現代音楽系でしたが、今回のはジャンル分け不能な感じ。でも、こちらも感覚としては濃厚にサイケ。いずれも、特に近年、世代やジャンルを超えてリスペクトを受けまくっている有名な作品/アーティストです。


An Electric Storm
White Noise
An Electric Storm

1969年に英Islandレーベルからリリースされたアルバム。中心人物はアメリカ生まれのDavid Vorhausで、彼は徴兵をのがれるために英国に渡り、大学院でエレクトロニクスを修めるとともに、クラシック音楽(コントラバス)も学んだという人です。

White Noiseの原形は、DavidがBBCのRadiophonic Workshopの主要メンバーだったDelia Derbyshire女史(→動画)やBrian Hodgsonらとともに制作したテープ。Radiophonic Workshopというのは、ミュージックコンクレートや電子楽器などによる新しい音楽を追求していた集団で、Dr Whoのテーマなどを手がけました。発掘音源のコンピCDが出ていて、数年前にはBBCで彼らを取り上げたドキュメンタリー番組("Alchemists of Sound")も制作されています(→動画)。White Noiseの録音は、昼間の仕事が終わったあと、BBCにはナイショでWorkshopのスタジオで録音されたそうです。

その曲がアルバムにも収められている"Love Without Sound"と"Firebird"で、Islandの社長のChris Blackwellがそれを聴いていたく気に入り、アルバムを制作することを条件に契約を結んだのでした。しかし、Davidが前シンセ的な電子機器とテープ編集を駆使して、ときには1曲を作り上げるのに数か月を要し、アルバムが完成するまでに1年以上もかかってしまいました。

出来上がったアルバムは、グループ名やタイトルから推測されるほどには「プシュ~ ピロピロ」な音ではありません。大きな影響を受けたと思われるUnited States of Americaそっくりな曲もあって、楽曲自体はポップで聴きやすい(こちらも女性ボーカル入り)。でも、なんといってもこの作品が尋常でないのは、「編集病」ならぬ偏執病的なサウンドコラージュのアバンギャルドさでしょう。(一音一音、テープを切ったり貼ったりつなげたりスピードを変えたり、電子楽器も鍵盤で一定の音が出るような簡単なものではなかったりで、気の遠くなるようなアナログな作業の連続だったはず。)

男女がチョメチョメしてる時のあえぎ声(実際の行為の最中に録ったものも使われているらしい)とか、女性の泣いている声とか、クラッシュ音だとか、叫び声とか、ちょっとコワいくらいにパラノイアックで、狂気をはらんだような不気味ささえ感じます。最初は一見とっつきやすそうだけど、聴いているうちに脳の深奥部まで侵されてしまうようなマインドトリップサウンド。そのへんが強烈にサイケデリックです。精神状態が不安定で、妄想と現実のあいだを行き来しているような人が聴いたら、完全にあっちの世界にイってしまいそうなアブナさを秘めています。




Dreamies
Bill Holt
Dreamies

前述の"Electric Storm"とともに、Mojo Music Magazineのリーダーが投票する "50 Most Out There Albums"に選出されていたエクスペリメンタルポップ/ドリーミーサイケの名作(1974年)。ほかに選ばれているのがビートルズの"Sgt. Pepper's~"、ジミヘンの"Bold As Love"、ベルベッツの"White Light~"、ピンクフロイドの"Piper~"といった名盤たちなので、その評価の高さがうかがわれます。(サイケ関連では"United States of America", "C.A. Quintet/Trip Thru Hell", "Tim Buckley/Starsailor", "Alexander Spence/Oar", "Os Mutantes", "Monks/Black Monk Time", "The Moray Eels Eat the Holy Modal Rounders"、などなど。)

Bill Holt氏は音楽業界とは無関係な一般人だったのが、1973年に何を思ったのか突然会社をやめてこのアルバムを作り始めたという奇特な人。Moog Sonic Sixシンセサイザーや4トラックのテープレコーダーなどの機材を買い込み、White Noiseに勝るとも劣らないようなイっちゃってるサウンドコラージュ作品を、宅録で作り上げてしまったのでした。

彼がインスパイアされたのはサイケ期ビートルズとWhite Albumの"Revolution 9"、そしてJohn Cageの実験的な音楽の方法論でした。オリジナルのLPはそれぞれの面が"Program Ten"と"Program Eleven"という約25分の曲で占められていて、繰り返し現れる主題は、アコースティックギターがメインの浮遊感のあるビートルズ風ポップサイケナンバー。それに、ケネディの演説やNASAの会話やスポーツ中継や虫の鳴き声や水の音や笑い声や街の音やビートルズの曲の断片など、ありとあらゆる音がコラージュされて、さらにそこにシンセサイザーのプシュ~ンやビョヨヨ~ンが交錯するという、これも何かに取り憑かれたかのような強迫神経症的作品。

ポップサイケの分類でいうなら、White Noiseはアバンギャルド系、Dreamiesはドリーミー系と、音の印象は異なるものの、こちらも後半に進むにしたがって狂気度が昂進して、だんだん脳内トリップメーターの針の振れがヤバくなってくるようなところなど、両者は驚くほど共通しています。ちなみに、未聴ですが、続編の "Dreamies: Program Twelve (The End Is Near)"というタイトルも制作されているようです。




Electric Lucifer
Bruce Haack
Electric Lucifer

1970年リリースの最高にヒップでポップでサイケな「ローファイ」エレクトロニックミュージック。ブルース・ハークは("Odelay"の)ベックなどもファンと公言する、エレクトロ・モンド人間のチャンピオンです。自作のヘンテコな電子楽器群を駆使した、チープ感覚あふれる「テクノサイケ」サウンドは、ハッピーでチャーミングであると同時にクレージーで斬新。

ファラッド?とかいうらしい自作楽器は1980年ごろに一世を風靡したテクノサウンドのボコーダーそのもので、私はそっち方面に疎いのでよく知りませんが、当時としては「十年進んだ音」ではなかったでしょうか。そのへんのキテレツな部分だけでなく、楽曲が(特にラスト近くで)まったり「どサイケ」に展開するのも嬉しいところ。(こちらも続編あり。)

"Electric Lucifer"はレココレのサイケ特集号でも取り上げられていた有名な傑作アルバムですが、同時にサイケファンにオススメしたいのが、日本でCD化された1969年の"Electronic Record for Children"。Country Joe~Doorsみたいなヒッピーサイケロック(この芯の楽曲の部分だけでも素晴らしい)に、ビョヨヨ~ンな電子音と「ニャーニャニャ~」みたいな奇妙なコーラスや赤ん坊の泣き声などのエフェクト、さらにストーリーを語るナレーションがかぶさる有様は強烈にモンドでサイケデリック。もう、ブッ飛んでます。これが子供向けに作られたものだというからオドロキです。やっぱり60年代はスゴい!

THE ELECTRONIC RECORD FOR CHILDREN
ブルース・ハーク
THE ELECTRONIC RECORD FOR CHILDREN
2007年11月12日(月)

すべてをあなたに

テーマ:映画

すべてをあなたに
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
すべてをあなたに

トム・ハンクスの初監督作品で、60年代のガレージバンドをテーマにした青春映画、「すべてをあなたに」("That Thing You Do!", 1996年)の廉価版DVDが発売されています(2008年1月25日までの期間限定)。

ビートルズが嵐のように上陸した1964年、アメリカの一地方都市でのお話。地元のタレントコンテストに出るつもりだった名もないガレージバンドのドラマーが、直前に腕を骨折してしまった。急遽やとわれたドラマー(主人公)が、本番になって思いつきでバラードナンバー"That Thing You Do"をアップテンポで演奏しはじめると・・・会場は熱狂、コンテストに優勝するとともに、さっそくハウスバンドとして出演依頼が舞い込む。

メンバーの親戚に頼んで、いわば自主制作で出したその曲のシングルは、ついに地方のラジオ局で取り上げられる(その時のメンバーたちの喜ぶシーンがちょっとウルウルします)。そして、その曲の噂を聞きつけたメジャーレーベルとめでたく契約。全米でリリースされた"That Thing You Do"は、あれよあれよという間にチャートを上昇していく・・・。

もちろんフィクションですが、60年代に星の数ほど存在した「一発屋」のガレージバンドの多くに、実際にこのようなことが起こったんだろうなと思わせるところがリアル。"One Hit Wonder"(一発屋)という主題に絞った、軽快なタッチの佳作となっています。(最初のバンド名がWondersをもじったOnedersだったのが、みんなが「ワンダーズ」ではなく「オーニーダーズ」と読んでしまうので、メジャーデビューではWondersに変えさせられたというエピソードが、暗示的なパンチラインになっている。)

トム・ハンクスは監督・脚本のほかに、ブライアン・エプスタインを思わせるような辣腕マネージャー役でも出演。また、劇中歌の作詞作曲まで手がけているという多才ぶりを発揮しています。制作者の60年代に対する愛惜の念が、ウブに表出されているのが嬉しいところ(トムは1964年には18歳だった)。また、ヒロインとして、エアロスミスのスティーヴン・タイラーの娘であるリヴ・タイラーが出演しています。


追記:なんと、レココレ・サイケ号で取り上げられていたOrange Colored SkyがWondersのモデルだそうです。


2007年11月10日(土)

グラム・パーソンズ、FBB時代のライブ発売

テーマ:News
Gram Parsons Archive 1 (Dig)
Gram Parsons, Flying Burrito Brothers
Gram Parsons Archive 1 (Dig)

Gram Parsons在籍時のFlying Burrito Brothersが、1969年4月にシスコのAvalon Ballroomで行った公演を収録した、CD2枚組のライブ盤が発売されます。これはグラム・パーソンズの未発表音源をリリースするアーカイブ・シリーズの第1弾となるもので、11月12日(日本盤は12月20日)の発売予定です。

この公演は69年4月4日から6日にかけての3日間にわたって、AumとともにGrateful Deadのオープニングをつとめた時のもの。Disc1には4月4日の、Disc2には4月6日の演奏が収録されています。また、Disc1にはデモ音源(グラムによるピアノの弾き語り)のボーナストラックが2曲収められている模様。

このライブ音源は、特に4月6日の公演は地元のKPFA FMでオンエアされたこともあって、ブートレグやトレーディングなどで流布していたものです。しかし、今回のリリースは、アシッド製造者にしてデッドのアーカイビストでもあったOwsley "Bear" Stanleyが録音したテープをマスターにしていて、格段に高音質になっているとのことです。下はこの公演のポスター(2種類あり。クリックで拡大)。


2007年11月08日(木)

境界サイケ特集 その4

テーマ:サイケデリック
Morton Subotnick: Silver Apples of the Moon; The Wild Bull
Morton Subotnick
Silver Apples of the Moon; The Wild Bull

電子音楽系の「境界もの」といえば、Morton Subotnickの諸作もハズせません。なにせ、代表作の"Silver Apples of the Moon"(1967)は、以前無人島ネタで取り上げたSilver Applesのバンド名の由来となっているほど(もともとはイェーツの詩の一節)。

"Silver Apples~"と、レココレのサイケ特集号でも紹介されていた次作の"The Wild Bull"(1968)は、ムーグではなくてブックラというシンセサイザーのみで作られています。「プシュ~ ピロピロ ピョヨヨ~ン」みたいな、いかにもシンセな音で、楽曲も無調の現代音楽みたいな無機質な感じ。でも、聴いているうちに不思議とメロディやリズムやイメージが浮かび上がってきて、展開なんかも意外にドラマチックで面白い。なにより、いかにも60sっぽいチープなテイストが横溢していて、ある意味とてもサイケデリックです。

まず最初に連想されるのはB級SF/ホラー映画。"Silver Apples~"は広大な宇宙空間を漂流するようなシーンのBGMにぴったりな感じだし、"Wild Bull"は「怪奇!地下納骨堂 彷徨う亡霊」みたいな映画で使われていてもおかしくなさそう。とにかく、われわれが思う「現代音楽」というイメージとは違って、とても親しみやすいチャーミングな音です。ちなみに、上のCDはこれらの二作がカップリングされた2on1。



Terry Riley: A Rainbow In Curved Air
Terry Riley
A Rainbow In Curved Air

テリー・ライリーは正規の音楽教育を受けた現代音楽家で、ミニマルミュージックの立役者のような人。最も有名な作品はミニマル即興音楽のお手本みたいな"In C"(1964)ですが、1969年の"Rainbow in Curved Air"はプログレからテクノやアンビエントまで、その後のロック界に多大な影響を与えた「ポップな」作品。初期のSoft Machineにモロなフレーズが出てきたり、The Whoの"Who's Next"のPete Townshendのシンセなんかにも、その影響が明白です。英国のCurved Airはここからバンド名を取ったというのも有名な話。

電子オルガンやシンセのループから閃く、カラフルな音の洪水とイマジネーションは、サイケデリックな感覚との親和性も高く、これがウッドストックで演奏されていたとしても違和感はなかったでしょう。実際テリーは60年代には、まるでアシッドテストみたいな「オールナイト・コンサート」を主催し、テープループやディレイマシンなどを使った即興演奏を終日繰り広げていたというサイケな人でもあります。(カップリングで収録されている"Poppy Nogood and the Phantom Band"はそのころの定番曲。)

また、Velvet UndergroundのJohn Caleとのコラボ作"Church of Anthrax"(1971)もサイケ的に興味深い作品。ミニマル/ドローンな前衛音楽家としても知られるジョン・ケイルと組んだアルバムは、意外にも?カンタベリー風ジャズロックみたいな感じになっています。でも、タイトル曲などはミニマルなフレーズがサイケなインプロとも相似性があるのが再確認できて面白い。


2007年11月05日(月)

Janis Joplin紙ジャケ再発

テーマ:News
Summer of Love40周年ということでシスコ関連の紙ジャケリリースが続いていましたが、おそらくこれがトリとなるでしょう。Holding Company時代を含むジャニス・ジョプリンのアルバム4作が紙ジャケで再発されます。いずれも税込1,890円で12月19日の発売予定。なお、音源およびボーナストラックは1999年のデジタルリマスタ盤と同様とのことです。


ジャニス・ジョプリン
ファースト・レコーディング(紙ジャケット仕様)


ジャニス・ジョプリン
チープ・スリル(紙ジャケット仕様)


ジャニス・ジョプリン
コズミック・ブルースを歌う(紙ジャケット仕様)


ジャニス・ジョプリン
パール(紙ジャケット仕様)
2007年11月04日(日)

ロジャニコ、40年ぶりの新譜

テーマ:News
フル・サークル
ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ
フル・サークル

Millenniumの"Begin"などとともに、日本のソフトロックブームの火付け役となった名盤"Roger Nichols & the Small Circle of Friends"(1968)。彼らの40年ぶりのセカンドアルバム(!)"Full Circle"が12月19日にリリースされます。

メンバーは、ロジャニコにマレイ&メリンダ・マクレオド兄妹という、ロジャー・ニコルス・トリオ時代からのオリジナルメンバー。新曲に加え、マイフェイバリットソングのひとつ"The Drifter"(*1)や、American Breed(*2)の"Always You"など他のアーティストに提供していた曲が、このメンバーで再録されているのも楽しみなところ。

すでに聴いた人の話によると「涙ちょちょぎれ」らしいです。でもこれ、日本のファンがいなければ陽の目を見なかったんじゃないでしょうか。本国アメリカでは、「ロジャー・ニコルズ?、誰??」って感じらしいですね。

発売元のビクターエンタテインメントのページはこちら

*1
オリジナルアルバム発表後にリリースしたシングルで、コーラスにはセッション・シンガーが起用されていた。「コンプリート・ロジャー・ニコルズ~」にボーナストラックとして収録されている(通常盤には未収録)。

コンプリート・ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ
ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ
コンプリート・ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ

*2
シカゴ産のソフトロックグループ。"Bend Me, Shape Me"(1967)は全米5位のヒット(→動画)。
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