2005年07月31日(日)

Bosstown Sound (Part 2)

テーマ:サイケデリック
まずは三大ボスタウン・サウンドといえる基本バンドから。(いずれもMGM所属で、Alan Lorberのプロデュースです。)

Ultimate Spinach
ボストンのローカルバンドだったUnderground Cinemaが母体。アラン・ローバーによって見出され、Ultimate Spinachと改名させられて、Bosstown Soundの第一弾の目玉商品として売り出されました。男女混声のジェファーソン・エアプレイン・タイプのグループで、チープ系オルガンが入ってることで、ある意味JA以上に王道サイケ感があります。若干もっさりしてますが、絵にかいたような60sサイケです。

この王道感には、どこかツルリとしたマネキンのような感触があり、これはポップス系のアラン・ローバーが自分のイメージする「サイケデリック」サウンドを作ろうとした、いわばアシッド版モンキーズ(けなしているのではありません。私はモンキーズ大好きなので・・・)といえるようなプロダクションに因るものなのかもしれません。しかし、ソングライティングは全曲メンバーのIan Bruce-Douglasによるものだし、本人たちによる演奏もしっかりしてるので、普通に60sサイケの秀作として楽しむことができます。

セカンドアルバムの"Behold and See"(1968)も内容はデビュー作同様に充実したもので、ファーアウトな長尺ナンバーが増えて、アシッド感はむしろ高まっています。ただ、チープオルガンがほとんどエレピ系に変わってしまっているのが個人的には残念なところ。

問題はサードアルバムの"III"(1969)で、オリジナルメンバーは女性メンツのバーバラ・ハドソンのみとなり、まったく別のバンドになってしまっているので、くれぐれもこれを最初に聴かないようにご注意を・・・。ちなみに、このときのメンバーに、のちのスティーリーダン~ドゥービーズのジェフ・バクスターがいます。

紹介しておいて申し訳ないですが、現在このバンドのCDは入手が難しくなっているようです。中古屋やオークションで1stか2ndを見かけたら迷わずゲットしてください。内容は保証します。




Chamaeleon Church
サタデーナイトライブのコメディアン/俳優のチェビー・チェイスが在籍(ドラム、キーボード、ボーカルを担当)していたことで有名なバンド。「ソフトロックAtoZ」の巻頭グラビアで紹介されているくらいのソフトロック寄りの音ですが、ファズや(アラン・ローバーお得意の)シタールを使ったサイケ的な色合いもしっかりと入った、ソフトサイケファン必聴の名盤です。(アルバムは1968年の一作のみ。)

繊細でしっとりとしたメロディ。全編に漂うメランコリックなムードに、夢見心地なエコーのかかった美しいコーラス。不足でもなく過剰でもない絶妙のバッキングアレンジ・・・。特に一曲目のLeft Bankeを思わせるようなバロックポップ風ナンバーから、メランコリックでミステリアスな二曲目への流れは、何度聴いてもため息が出るほどです。このアルバムなどを聴くと、ボスタウン・サウンドという「似非ムーブメント」もまんざら無駄ではなかったのかなと思ってしまいます。


Chamaeleon Church
Chamaeleon Church


Orpheus
これも、むしろサイケファンよりソフトロックファンに有名なグループ。(そんなこんなで、「ボストン・サウンド」というのは「バーバンク・サウンド」などと並ぶソフトロックの一派だと認識している人も多いようです。) 

アルバムは4枚出してますが、最高傑作とされるのはデビュー作(1968)で、ここでは、Chamaeleon Churchでは控えめだった、アラン・ローバーのいかにもソフトロックな素晴らしいオーケストラアレンジが大活躍しています。しかし、逆に(跳ねるようなドラムが前面に出てたりして)ビート感はこちらの方が強いのが面白いところ。共通しているのは、アルバムの終盤で曲想がサイケになってくるところで、Chamaeleon Churchと聴き比べてみるのも一興かと思います。

なお、CDはベスト盤のほかに、イタリアのAkarmaから全4作をまとめた2枚組の"Complete Orpheus"が出ています。


Orpheus
Best of

【次回に続く】


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2005年07月29日(金)

Bosstown Sound (Part 1)

テーマ:サイケデリック

Various Artists
Bosstown Sound 1968 (*1)

1967年のサマー・オブ・ラヴによるサンフランシスコのミュージックシーンの隆盛に触発された大手レコード会社は、このサイケデリック景気に便乗して一山当てようとあれこれ画策しはじめます。そんな動きの中で、最も悪名高く、大失敗に終わったムーブメントとしてポップ史に汚名を残したのがボスタウン(ボストン)サウンドです。

1968年、西海岸のシスコに対抗して、東海岸のボストンを新たな音楽ムーブメントの拠点として売り出そうと、MGMやVerveといったメジャーレーベルが一大プロモーション作戦を展開します。ところが、実際には当時のボストンの(ロック)ミュージックシーンが他の土地に比べて特に盛り上がっていたというわけではありませんでした。

もちろん、それ以前にもRemainsやRockin' Ramrodsといったバンドの活躍や、有名なBoston Tea Partyというクラブでの当時のビッグネームや英国の新鋭バンドのいち早いギグなどによって、ボストンのロックシーンは独自の展開を遂げてはいました。しかし、最初に仕掛けたMGMによって"Bosstown Sound"と銘打たれたムーブメント(謳い文句は"anti-drug, anti-hippie")は、レコード会社によって無理矢理でっち上げられたものだったのです。(これは私の勝手な想像ですが、この土地が選ばれたのは、NYの北に位置するボストンが、LAの北に位置するシスコと類似する点が多かったという、単にそれだけの理由だったのかもしれません。)

MGMによるキャンペーンは、Newsweek誌にヤラセの特集記事を載せるほどのダーティなものでした。宣伝効果により、最初はそれなりのレコードセールスを記録したようですが、ドアーズやジェファーソン・エアプレインに対抗するような何か新しい音を期待した聴衆は、特にどうという特徴のない、一見パッとしないサウンドに戸惑ったのでした。

当然のことながら、そのようなほとんど詐欺に近いようなやり方は長続きするはずもなく、まもなくRolling Stone誌をはじめとするメディアによって、その化けの皮が剥がされてしまいます。そして、悪評はレコード会社のみならず、才能を秘めた前途有望なバンドまでが泥をかぶってしまったのです。

ボストンのロックシーンがこの打撃から回復するのに、それから3年以上もかかりました。かの地出身のJ.ガイルズ・バンドにメジャーレーベル(アトランティックのことでしょう)が関心を示したとき、自分たちがボストン出身であるとは言えなかった、というエピソードがあります。

さて、そのような悪評ふんぷんたるボスタウン・サウンドに魅力があるのかというと、意外や意外、聴いてみるとこれが面白い。ただ、その面白味はかなり微妙なところにあるので、(いくつかの傑作アルバムを除いて)声を大にしてお勧めするというわけにはいかないのですが・・・。

Ultimate Spinach, Beacon Street Union, Chamaeleon Church, Orpheus, Phluph, Puff, Tangerine Zoo, Eden's Children, Front Page Review .....

ざっと主なバンド名を並べてみましたが、その特徴はまずマイナーであること。一般のロックファンはほとんど名前すら聞いたことがないバンドばかりだと思います。私も60sサイケやソフトロックにハマらなければ、生涯知ることはなかったでしょう。

音の傾向をおおまかにいうと、(ボストンという土地柄に因るのでしょう、)端正ながらもメランコリックでどこか翳りのある、英国的な陰影を感じさせるものです。全体的に地味で、アンダーグラウンドというより、「こりゃ売れないのも無理ないな」というマイナー感がそこはかとなく漂っています。ラジオから流れてきたら「あ、○○だ」とすぐにわかるような明快な個性に欠けているという印象もあります。

同時代のシスコやロスのサイケ/フラワーミュージックに原色のカラフルなイメージがあるのに対して、こちらは水彩画のような淡い色彩のイメージです。これは、Ultimate SpinachやBeacon Street Unionといった、ボスタウン・サウンドの中でも最もサイケ寄りのバンドの、いわゆる「どサイケ」チューンでも同じで、どんなに歪んだファズやファーアウトなインプロを展開しても、どことなく淡白で風通しが良い感じがします。

そんな音がなぜ面白いのかというと、前述したような「フェイク」的なプロダクションが、ほかにはない風変わりな感触を与えているからではないかという気がします。ボスタウン・サウンドの音作りを主導したのはMGM関係のプロデューサー/アレンジャーのAlan Lorberですが、制作側主導のソフトロック的なプロダクションを主流サイケにまで拡大させた結果が、この独特の肌触りを作り出しているのではないかと思います。

実は前回の「無人島サイケ」で紹介したBobby CallenderもAlan Lorberのプロデュース/オーケストラアレンジによるボスタウン・サウンドの一員です。ということで、その音がどこか奇妙で英国的な響きがあるのは偶然ではなかったのです。

それでは、これから数回にわたって、私がこれまでに聴いたボスタウン・サウンド関係のアーティストを紹介していきたいと思います。

【次回に続く】


*1
こちらで全曲試聴できます。
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2005年07月25日(月)

キャピトル・サイケデリック・コレクション

テーマ:News
9月にキャピトル(東芝EMI)から、「サマー・オブ・ラヴ キャピトル・サイケデリック・コレクション」として、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスなど、シスコサイケ関連の紙ジャケ10タイトルが発売されます。ラインナップは以下のとおり。

【9月7日発売】

クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス
クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス(紙ジャケット仕様) (1968)


クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス
愛の組曲(紙ジャケット仕様) (1969)


クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス
シェイディ・グローヴ(紙ジャケット仕様) (1969)


クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス
ただ愛のために(紙ジャケット仕様) (1970)


クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス
ホワット・アバウト・ミー(紙ジャケット仕様) (1970)

【9月28日発売】

ジョイ・オブ・クッキング
クロサー・トゥ・ザ・グラウンド(紙ジャケット仕様) (1971)


ジョイ・オブ・クッキング
キャッスルズ(紙ジャケット仕様) (1972)


サンズ・オブ・チャンプリン
ルースン・アップ・ナチュラリー(紙ジャケット仕様) (1969)


ザ・サンズ
ザ・サンズ(紙ジャケット仕様) (1969)


サンズ・オブ・チャンプリン, ザ・サンズ
フォロー・ユア・ハート(紙ジャケット仕様) (1970)


ジョイ・オブ・クッキングとは、またシブいところを出してきたなと思いますが、彼(彼女)らはバークレーのグループで、女性ふたりがフロントマンとして、ソングライティング、演奏(ギターとキーボード)、リードボーカルをつとめています。音(R&B、ゴスペル、ラテンなどが入ったルーツ/スワンプ風情)は違いますが、ウィルソン姉妹のハートに似てるかもしれません。

お勧めタイトルは、以前にも紹介しましたが、QMSの1stと2nd(「愛の組曲」)と、あとサンズの「ルースンアップ~」でしょうか。いずれもシスコサウンドやサイケデリックという枠だけでなく、ロック史上有数の名盤だと思います。
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2005年07月23日(土)

第30回 Bobby Callender

テーマ:無人島サイケ

Bobby Callender
Rainbow

最近いちばんハマったのが、このボビー・カレンダー。この人のことを知ったのは、"Electric Psychedelic Sitar Headswirlers"という、シタールが使われている世界中のサイケ曲を集めた超強力なコンピ(*1)に、2巻にまたがって収められていたのを聴いたのがきっかけです。

アメリカの黒人ですが、R&Bっぽさはまったくなくて、ドノバンやニルバーナといった英国のソフト(ポップ)サイケ系の雰囲気に近いものがあります。特にドノバンからは歌い方や曲調(全曲自作!)などに大きな影響を受けた跡がうかがえます。

しかし、そのポップ感覚はかなり変態で、ナルシシズムというとちょっと違うかもしれませんが、自分の世界の中に入り込んでしまって、ふつうなら「これ以上やったら聴いてる人は引くだろうな」みたいな常識的なポップセンスからの抑圧がハズレているような印象があります。

ふつうはそういう独りよがり的な白日夢のような世界は敬遠されるのでしょうが、この人の場合はその(ポピュラー性やエンターテイメント性からすると)洗練されないもっさり感みたいなのが、逆にトリップ感やストーン度、神秘性を高めていて、独特の魅力となっています。

デビューアルバムの"Rainbow"(1969)は、前述のコンピに2曲が収められていることもあり、シタールをふんだんに使ったサイケ度の高いもので、ソフトサイケ・メロウサイケファンには特にお勧めの逸品です。

セカンドの"The Way (First Book of Experience)"(1970)ではほとんどシタールは聴けなくなってしまいましたが、"The Bodhi Tree", "Satori", "Karma Yogi"といった曲名からもわかるように、いっそう東洋志向を高めたコンセプトアルバムになっています。独特のもっさり感も健在で、これも前作に劣らぬ素晴らしい内容です。(もう一枚1972年にアルバムを出しているようですが、こちらは未聴です。)


*1
現在第9集(!)まで出ているようです。わがモップスやフラワートラベリンバンドなども入ってます。シタール好き・東洋風サイケ好きはほっぺた落ちるの保証します。いつかあらためて紹介します。

2005年07月20日(水)

ロックンロール・ゴールドマイン【日本版DVD】

テーマ:News

ハピネット・ピクチャーズ
ロックン・ロール・ゴールドマイン

ケイシー・ケイサムのロックンロール・ゴールドマイン・シリーズから4話を収めた日本版のDVD(2枚組[*1])が8月26日に発売されます。収録タイトルとアーティストは以下のとおり。

[Disc 1]
●ブリティッシュ・インヴェイジョン(約40分)
1. 恋のテクニック(ジェリー&ザ・ペイスメイカーズ)
2. 愛なき世界(ピーター&ゴードン)
3. マイティー・クイーン(マンフレッド・マン)
4. 朝日のない街(アニマルズ)
5. デルタ・レディ(ジョー・コッカー)
6. ユー・リアリー・ゴット・ミー(キンクス)
7. ソルティ・ドッグ(プロコル・ハルム)
8. 兄弟の誓い(ホリーズ)
9. 恋はワイルド・シング(トロッグス)
10. ハートせつなく(ヤードバーズ)
11. フォーティ・サウザンド・ヘッドメン(トラフィック)

●ザ・シックスティーズ(約40分)
1. ホワイト・ラビット(ジェファーソン・エアプレイン)
2. まぼろしの世界(ドアーズ)
3. マイ・ジェネレイション(ザ・フー)
4. マジック・カーペット・ライド(ステッペンウルフ)
5. サンシャイン・ラヴ(クリーム)
6. 紫のけむり(ジミ・ヘンドリックス)
7. トライ(ジャニス・ジョプリン)
8. オランダにて特別インタヴュー(ビートルズ)

[Disc 2]
●ザ・ソウル・イヤーズ(約40分)
1. アイ・フィール・グッド(ジェームス・ブラウン)
2. トライ・ア・リトル・テンダーネス(オーティス・レディング)
3. リスペクト(アレサ・フランクリン)
4. スタンド・バイ・ミー(ベン・E・キング)
5. ホールド・オン(サム&デイヴ)
6. マイ・ガール(テンプテーションズ)
7. フィンガーティップス(スティーヴィー・ワンダー)
8. リヴァー・ディープ・マウンテン・ハイ(アイク&ティナ・ターナー)
9. 男が女を愛するとき(パーシー・スレッジ)

●ザ・サンフランシスコ・サウンド(約40分)
1. ドミノ(ヴァン・モリソン)
2. ボールとチェーン(ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー)
3. トラッキン(グレイトフル・デッド)
4. ジンゴー(サンタナ)
5. アイム・フィクシン・トゥ・ダイ・ラグ(カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ)
6. アメリカ万歳(スティーヴ・ミラー・バンド)

ロックンロール・ゴールドマイン・シリーズはすでに海外版では単品タイトルやボックスセットなどで売られていますが、この日本版は60s好きにはかなりお得なセットになっていると思います(米国版5枚組ボックスからエルビス・プレスリーの巻を除いたものと同等内容)。

私が持っているのは「ブリティッシュ・インヴェイジョン」と「サンフランシスコ・サウンド」の2話がセットになったブラジル版のDVDですが、初見の映像も多く、ケイシーの解説も簡潔・的確で、なかなか良かったです。ただ、肝心の「サンフランシスコ・サウンド」の巻は、好きなだけに物足りなく感じましたが・・・(ヴァン・モリソンがここに入っていて、シスコサウンドの象徴といえるジェファーソン・エアプレインが抜けているのは疑問です)。


Grateful Dead / Truckin'


*1
4枚組ボックスと表記されている場合がありますが、2枚組の誤りだと思います。
2005年07月12日(火)

Vinyl Classics盤Surrealistic Pillow発売

テーマ:News

JEFFERSON AIRPLANE
Surrealistic Pillow (Ger)

7月25日にドイツのSony/BMGから、CDのレーベル面をアナログレコードに模した(黒く塗って溝が彫られている)Vinyl Classicsシリーズの新タイトルとして、Jefferson Airplaneの"Surrealistic Pillow"が発売されます。
(追記: Amazon.co.jpでの発売予定は8月16日。)

このシリーズのサイケ関連としてはJanis Joplinの"Pearl"Byrdsの"Mr. Tambourine Man"などがすでに出ていますが、いずれも中身は現行のCDと変わらないとのこと。アナログ気分を味わうため、またはコレクターズアイテムとして、高い値段を払うかどうかは微妙なところですが・・・。
(追記: と思ったら、値段が安くなってるようです。)

ただ、この手のCDは珍しいものではなくて、EMIとかIslandとかでも同様のものが出てたと思います。普通のCDと思って買ったら、デザインがアナログみたいだった、というほうが嬉しいかもしれません。



2005年07月10日(日)

第29回 Damon

テーマ:無人島サイケ


カラ梅雨から一転、じめじめとした天気が続いていますが、こんな時にピッタリなのがダウナー系サイケの最高峰、Damonの"Song of a Gypsy"(1968)です。

とにかく全編「」。先頭のタイトルナンバーからいきなり、"Today I feel like cryin', Today I feel like dyin'..."ですから。呪術的で催眠的なリズム。深く内面に沈みこむようなボーカル。それを縫うように全編を駆け巡る強力なファズギター・・・。

まあ、好みはいろいろあるでしょうが、「これが気に入らない人は60sサイケファンじゃない」と断言したくなるような素晴らしい内容です。難があるとしたら、収録時間が約28分と短めで、「もっと聴きたいぞ~」という欲求不満になることくらいでしょうか。

アルバムはこれ一作のみですが、ぽっと出の新人という感じではなく、手だれた演奏や曲作り、豊かな表現力(録音の音質も最高)からして、かなりの下積み経験を重ねていたのではないかと思われます。ちなみに、Damonというのはリーダーでアメリカン・ジプシー(ジョーン・バエズやシェールなんかと同類?)のDavid Del Conte(Vo,G)の愛称で、バンド全体の名称でもあります。それにしてもDamonさん、怪しすぎです。



なお、1998年にリードギターのCharlie Careyとのコラボで、David Del Conte名義の新作アルバム"Gypsy Eyes"が制作されましたが、残念ながら未聴です。
2005年07月09日(土)

ブリット

テーマ:映画

サンフランシスコが舞台の映画というと、まず思い浮かぶのがこの映画。ハードボイルド系の刑事アクションで、使われている音楽もほとんどジャズなので、フラワーな感じや60sロックは期待できませんが、60年代のシスコの街の景観や雰囲気がよく伝わってきます。

坂道のカーチェイスシーンは有名ですが、アクション映画として今観ると、ちょっとかったるいかもしれません。でも、私はこういう感じの60sっぽい、まったりとした語り口が大好きなんです。特に好きなのが主演のスティーブ・マックイーンの目。この映画を観るまで、マックイーンは特にどうとは思ってなかったのですが、この目とクールで静かなヒーロー像に惚れてしまいました。


ワーナー・ホーム・ビデオ
ブリット
2005年07月07日(木)

第28回 Euphoria

テーマ:無人島サイケ

Euphoria
A Gift From Euphoria

前回のCharlatansは、KaleidoscopeとかNirvanaとかと同様、同名のバンドがあってややこしい(買い物とか調べ物するときに困る)例でしたが、実は60sサイケ/ガレージはこのような同名異バンドの宝庫なんです。(The Modsというバンドなんか、Fuzz, Acid & Flowersのエントリーでは7つあります。)

Grateful Deadが、元のWarlocksという名前のバンドがほかにあるということを知って改名したというエピソードは有名ですが、大多数のサイケバンドがローカルでアンダーグラウンドな存在だったことを思えば、今のようにネットなどで簡単に情報を得られるわけでもなく、同名のバンドが存在しても知るよしがなかったというのが実情でしょう。

このEuphoriaも、その意味がドラッグでの高揚感・陶酔状態を表すということで、日本のバンドを含め、私が知る限りでも6つの同名バンドがあります(30以上あるという説アリ)。その中で(60sサイケファンに)最も有名なのが、名盤"A Gift from Euphoria"(1969)のEuphoriaです。

バンドというより、ボーカル担当のW.D. Lincolnとギター担当のH.W. Wattの男性デュオなんですが、これが唯一のアルバムで、発表後はロック史から姿を消しています。作品の内容はかなり変態で一筋縄ではいかないのですが、個人的には大好きなアルバムです。

いきなり、歌劇の序曲のようなコテコテのオーケストラで始まったかと思うと、囁くようなフランス語の歌が・・・。と思えば、これまたコテコテのカントリーナンバーが登場。それに続くのはファズびんびんのサージェントペパーズ風サイケチューン・・・。というぐあいに、初めて聴いたときは「どんな展開なんだ」と、めまいがしそうになるかもしれませんが、これが後からジワジワと効いてくるんです。私のような変態好きで、しかもルーツ系サイケ好きなら、きっと最初からもう一度聴き返したくなると思います。

サイケデリック・カントリー・ロック」と呼ばれているそうですが、とてもこのアルバムをひとことで形容できるような言葉は思いつきません。レコード会社が大いに期待して金かけて作った(*1)のに、出来上がったものがあまりにブッ飛んでいたためにまったく売れなかった(売りようがなかった)という、Millenniumの"Begin"と同質の感触があります。

全編に漂うメランコリックなムード(ラストの"World"は最高!)。繊細さの中に顔をのぞかせる不気味な肌ざわり。支離滅裂なようで不思議な統一感のある展開。特に、アコースティックから激ファズまで縦横無尽のWatt氏のギタープレイが素晴らしく(*2)、これも一作だけで消えてしまったのが非常に残念なユニットです。

ちなみに、レココレのサイケ特集号や1996年発売のCD(英国盤)のライナーに、メンバーのひとりはのちに性転換したらしいという記述がありますが、これはこのふたりではなく、初期のメンバーで本作のレコーディングには参加していないDoug Delain氏のことで、確かに彼は性転換手術をして、Angela Douglasという女性になってしまわれました。


*1
レコーディングはハリウッドとナッシュビルとロンドンでおこなわれたということで、そのへんが本作を解読する鍵のひとつになるかもしれません。

*2
"Do You Know What I Mean"のヒットで知られるLee Michaelsの1968年のアルバム、"Carnival of Life"にギターで全面参加しています。

2005年07月04日(月)

チェット・ヘルムズ (1943~2005)

テーマ:News

シスコサウンドの立役者、チェット・ヘルムズ(Chet Helms)が先月25日に亡くなりました。享年62歳。脳卒中だそうです。サンフランシスコの病院で、近親や親しい友人たちに見守られ、さよならパーティのように歌やお話で送られて、安らかに息を引き取ったとのこと。ご冥福をお祈りします。


チェット・ヘルムズはシスコのロックシーンの黎明期から、ビル・グラハムと並ぶプロモーターとして、またジャニス・ジョプリン(ホールディング・カンパニー)らのプロデューサーとしても活躍しました。「彼は真にサンフランシスコのミュージックシーンの心と魂だった。単なるプロモーター以上の存在だった。・・・」と、グレイトフル・デッドのミッキー・ハートが言っています。

そもそもはヘイト・アシュベリーの地下のボールルームでジャムセッションを取り持ったのが始まりで、そのときの常連だったホールディング・カンパニーをプロデュースすることになります。そして、(育った土地)テキサスの大学時代に同窓だったジャニス・ジョプリンをシスコに呼び寄せて、バンドのボーカリストにします。つまり、彼がいなければロックスターのジャニスもいなかったかもしれません。(カントリー・ジョー&フィッシュのギタリストのバリー・メルトンいわく、「チェットがいなければ、グレイトフルデッドも、ホールディング・カンパニーも、ジェファーソン・エアプレインも、カントリー・ジョー&フィッシュも、クイックシルバー・メッセンジャー・サービスも、誰も彼もいなかったかもしれない。」)

1966年にチェットはビル・グラハム(1991年にヘリの事故で逝去)とチームを組んで、Fillmoreでいくつかのショーをプロデュースしますが、その後袂を分かち、ビルはフィルモアを、チェットはFamily Dogの名のもとに、Avalon Ballroomでのショーをプロデュースすることになります(*1)。(ふたりの人となりは対照的で、チェットが「柔」で「アート至上主義」なら、ビルは「剛」で「ビジネス至上主義」。しかし、そのライバル関係は友好的で、終始和やかなものだったようです。)


実は5年くらい前にチェット・ヘルムズはすでに自分の葬式を出しています。チェットが亡くなったという誤報が流れたのに対して、死から蘇るパフォーマンスを行ったのです。彼は霊柩車の棺に収まってゴールドコースト・レストランに乗りつけ、ウェイヴィ・グレイヴィらの友人に抱えられた棺で入店。棺の蓋が開けられると、チェットの胸の上には花々と携帯電話が。その電話が鳴ると彼は起き上がって返事をし、まわりの喝采とフラッシュの中を歩き去る・・・というものだったそうです。

半年前にはスペンサー・ドライデン(ジェファーソン・エアプレインのドラマー)が、昨年末にはテリー・メルチャー(バーズのプロデューサー)が亡くなったりと、ここのところ60sサイケ関連の訃報が続いていますが、サイケデリック元年?の1965年からすでに40年が経つので、自然の摂理というものなんでしょうか・・・。それにしても、40年前の音楽の方が(私にとって)今の音楽よりも刺激的で新鮮に聞こえるというのはどうなんでしょう。なんだか複雑な気持ちです。


*1
経営手腕に欠けていたチェットは、まもなくAvalonからの撤退を余儀なくされ、一時オーシャンビーチの古いスロットカーレース場をFamily Dog on the Great Highwayとしてショーを継続しますが、それも一年足らずで破綻して、1970年にはコンサートビジネスから足を洗ってしまいます。

[Blog記事はSan Francisco Chronicleの記事を参考(引用)しました。]

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