ペップ・バルセロナ+シメオネ・アトレティコ=無敵艦隊 | Weltmeisterschaft

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UEFA EURO 2016グループDの第2戦で3連覇を狙うディフェンディングチャンピオンのスペイン代表はトルコと対戦した。

まずは大まかに試合内容を振り返ってみたい。スペインは4-1-4-1で、ビセンテ・デル・ボスケ監督は初戦のチェコ戦と同じメンバーをスタメンに送り込んできた。一方のトルコのファティ・テリム監督は初戦のクロアチア戦で最前線に起用したジェンク・トスン(ベシクタシュ/トルコ)に代えてブラク・ユルマズ(北京国安/中国)を起用してきた。

試合は7分にスペインのアルバロ・モラタ(ユヴェントス/イタリア)がペナルティーエリアの外から強烈なシュートを放つなど、スペインのペースで進むが、トルコもハカン・チャルハノール(バイヤー・レヴァークーゼン/ドイツ)のフリーキックなどで時折チャンスを作る。

そんな中で迎えた34分にマヌエル・ノリート(セルタ・デ・ヴィーゴ/スペイン)が左サイドから上げたクロスにモラタが頭で合わせてスペインが先制するとその3分後にはセスク・ファブレガス(チェルシー/イングランド)の浮き球のパスのこぼれ球をノリートが流し込んでスペインが前半で2点のリードを奪った。

さらに後半も開始早々の48分にアンドレス・イニエスタ(バルセロナ/スペイン)のスルーパスにオフサイドラインぎりぎりで抜け出したジョルディ・アルバ(バルセロナ/スペイン)のパスを受けたモラタがダイレクトでゴールに押し込んで3点目を奪い早々に試合を決定づけた。

その後、カウンターからブラク・ユルマズがDFラインの裏に抜け出してシュートを放つなど、トルコも何度か決定的なチャンスを生み出したが結局は得点を奪えず。スペインが危なげなく勝利した。



この試合でスペインの攻撃を司っていたのは間違いなくインサイドハーフに入ったイニエスタだろう。MOMもイニエスタで文句なしだ。トルコの守備陣の間の狭いスペースに入り込んでボールを受けては、緩急を織り交ぜたドリブルとリズムをずらした長短のパスを織り交ぜて攻撃を活性化させた。もちろん3点目の起点となったスルーパスは見事だが、それ以外にもギャップでボールを受けてから左右に散らすなど、まさしく世界最高のMFと呼ぶにふさわしいプレーを見せてくれた。スペインの''Tiki-taka''は2年前のブラジルワールドカップ以降、シャビ・エルナンデス(アルサッド/カタール)やシャビ・アロンソ(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)、ダビド・ビジャ(ニューヨーク・シティFC/アメリカ)ら黄金期を支えた主力が抜けても健在だったが、新たにそのティキ・タカの中心となったのがイニエスタだった。

そして今回のスペイン代表は戦術面でも''ペップ''ことジョゼップ・グアルディオラのバルセロナの影響を受けたフットボールを実践していたが、特に守備面には、同じく国内で躍進している''チョロ''ことディエゴ・シメオネ率いるアトレティコ・マドリーの影響も見受けられた。

スペイン(ペップ・バルサ)はボールをポゼッションして相手を押し込み、ボールを奪われても奪われた地点から積極的にプレスをかけ、いわゆるボール狩りでボールを即座に奪い返すことで相手にチャンスを作らせなかった。しかしトルコ戦では激しいプレッシングを突破されたり即座に奪い返すのが難しい場合には無理にボールを奪いに行かず、左ウイングのノリートが中盤に引いてサイドハーフとなり、中盤が右サイドにズレることで4-4-2の守備ブロックを形成して守っていた。

この4-4-2の守備ブロックを作って守るやり方はシメオネがアトレティコでやっている2トップも含めたフィールドプレーヤー10人全員で守備ブロックを形成するというやり方の影響を受けていることはほぼ間違いないだろう。この形で最前線に並ぶモラタとダビド・シルバ(マンチェスター・シティ/イングランド)の2人はアトレティコにおけるフェルナンド・トーレスとアントワン・グリーズマンの2トップと同様に、最前線で相手の最終ラインでのビルドアップを牽制しつつ、中盤への縦パスを入れさせないという重要な役割を担い、ボールをどちらかのサイドに追い込む。そしてサイドに追い込んでからはボールホルダーに対し厳しいチェックを繰り返してボールを奪う。こうして今大会のスペインはバルサ式ティキ・タカだけでなくこのようなシメオネ・アトレティコ式の守備もこなせ、相手や局面に応じて使い分けることができるようなより万能性のある、いわば今シーズンのCLを制したレアル・マドリーのようなチームとなってきていると言ってもいいだろう。スペインが今後もこのトルコ戦のようなパフォーマンスを見せ続けることができるのであれば今大会もまたスペインの大会となる可能性も十分にある。

また従来のバルセロナ・スタイルだけでなくそれとは一見相反するように見えるアトレティコのスタイルも柔軟にチームに取り入れることに成功した料理人デル・ボスケの手腕もまた、褒められて然るべきだろう。この温厚なサラマンカ出身指揮官は今大会限りでの退任も噂されている。このままEURO3連覇で有終の美を飾ることができるのかにもまた注目だ。