2006-08-02 00:03:06

三島由紀夫 『美しい星』

テーマ:その他の本

    人間の思想は種切れになると

    何度でも、性懲りも無く、終末を考え出した。

    人間の歴史がはじまってから、来る筈の終末が何度もあって、

    しかもそれは来はしなかった。

    しかし、今度の終末こそ本物だ。
    何故なら、人間の思想と呼ぶべきものはみんな死んでしまったからだ。

                             (『美しい星』 羽黒教授言)


悲観主義、楽観主義、そういった主義主張、主観的な思考様式を突き放し、

現代社会を見つめてみると、私たちの住む世界というものが、いかに危ういものかが見えてくる。

もちろん、それは比喩として言っているわけではなく、物理的、現実的な問題としての話だ。


七月も半ば過ぎ、どうしてセミがミンミンジワジワ鳴かないのだろう。

どうして亜熱帯でしか生きられない昆虫が日本で生きていけるのだろう。

なんでモルジブという国が島を一つ潰したのだろう。

どうして子どもたちがこれほど互いに傷つけ合う世の中になってしまったのだろう。


ただ安穏と暮らしているだけでも、それくらいの疑問は心の内に沸いて来はしないだろうか。

テレビの情報から土地開発、温暖化、早熟、様々な要因が見つかると思う。

そしてそれらは概ね正しいことだと思う。


しかし、それら問題の要因が見つかったところで、一体何になろう。

私たちは滅ぶ運命にあり、宿命の定める通り、滅びなくてはならない存在だ。

自然の力により緩やかな下降曲線を描きながら滅び行く運命にあるのか、

気まぐれの核爆発により急勾配な下降曲線を描きながら滅ぶ運命なのか、

そのどちらかはわからない。 ただ私たちには次の氷河期を行きぬく力がないことは確かだ。


そのように私たちは滅びる運命にあることを前提として地球という星を見てみると、

その星のきれいなこと、その星の抱える生命の尊いこと、その星の持つ可能性の未知なること、

私たち人間がそれらをどうにかしようとすることのおこがましさをヒシヒシと感じてしまう。


あるがままに生き、生産できる限り生産し、破壊の限りを尽くす。

私たち本来の生き方を続けることの必然性を意識し、

控えすぎず、やりすぎず、中庸を保った個々の生活を営むことこそ、

この美しい星をより輝かす動力になるような気がしてならない。


本日紹介しますは、三島由紀夫のSF 『美しい星』 です。

弥がおうでも地球について考えさせられる文学作品ではないでしょうか。


三島 由紀夫
美しい星

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地球とは別の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚めた一家を中心に、核兵器を持った人類の滅亡をめぐる現代的な不安を、SF的技法を駆使してアレゴリカルに描き、大きな反響を呼んだ作品。著者は、一家を自由に動かし、政治・文明・思想、そして人類までを著者の宇宙に引込もうとする。著者の抱く人類の運命に関する洞察と痛烈な現代批判に充ちた異色の思想小説である。

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日本文学の持つイメージと最もかけ離れた小説だと思う。

過去百年の間に、一体誰が文学とSFを融合しえただろうか。

またSFといってもそれまでのSF論に忠実な正統派ではなく、

一家全員ばらばらの星から来た宇宙人であったり、オレンジと緑に光る安ピカものの円盤であったり、

とにかく初めから終わりまで破壊的かつ創造的な作品だったと思う。


破壊的かつ創造的、この二項対立すべき観念が両立する世界を描いた作品のようにも思える。

そしてその世界とは、つまり、私たちの住む現実的な世界であったりもするのだ。

つまり、逆理的な話ではあるけれど、このフィクションの最端にある 『美しい星』 の世界は、

ノンフィクションの最端にある私たちの住む現実社会と似通ったものがある。


荒唐無稽な設定であるにも関わらず、なぜかそこに一つの理性を感じてしまう。

その理由は、この小説が一個の思想をはらんでいるからだと思う。

その思想とは、思想無き現代における思想の復活、ではないかと感覚的に読み取れる。


作中、救う思想と滅ぼす思想の激論が交わされたりと、常に思想が話の主体となっている。

もちろんそこには美の追求者である三島の装飾が伴うわけだけれども、

結局のところ、単純化すると話の本筋は思想の有無に関わってくる。


思想が世界を変える。


荒唐無稽ではあるけれども、あながち的を外した話ではない。

思想は認識を伴うものであり、認識は世界を変える感覚でもある。

認識により視点を少し変えることで、世界はがらりとその姿を変えるからだ。

つまり、認識を生み出す思想こそ世界を変えることのできるものだと言える。

実際はどうであれ、三島は 『美しい星』 の中でそのことを実践している。


とにかく、これほど骨太なSF文学を読んだことは無い。

現代の文学作品にもこれほど骨太な思想は無い。

とんでもないSF作品を見せ付けられたような気がする。


ぜひ買い&読みです。

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2006-07-19 23:45:47

三島由紀夫 『金閣寺』

テーマ:その他の本

業火に包まれる金閣寺


池と観光客に囲まれて安穏と佇む現在の金閣寺から想像することができようか。

水面に反射する陽光を受けきらきらと暖かい黄金色の光を発する金閣寺。

その金閣寺が、かつて全焼したことがあるなんぞ、一体誰が信じられよう。


昭和25年7月2日、鹿苑寺・金閣が全焼した。

国宝級の木像、仏像、掛軸、経巻、仏教本など全て灰となって燃え尽きた。

放火だった。


犯人は林という21歳の青年であった。

林は生まれつきの吃音であり、貧しい寺の息子であり、
「いづれは金閣の住職に」という母の過大な期待を受けた子どもであり、

そして、不幸なことに、賢しかった。


金閣裏の山で薬物を飲み刃物で腹を刺したにもかかわらず、

林の命は助かってしまった。

逮捕される瞬間、血を流しながらうずくまる彼は何を感じていたのだろう。


本日紹介いたしますは、三島由紀夫 『金閣寺』 です。

三島文学の最高峰と名高い作品が、私の三島デビュウ作でした。


三島 由紀夫
決定版 三島由紀夫全集〈6〉長編小説(6)

まるでドストエーフスキィの 『罪と罰』 に出てくるラスコーリニコフのようだ。

『金閣寺』 の主人公である宿命の子・溝口はそういう人物だ。

生まれながらの劣等感、抑うつされた虚栄心、そして選民思想・・・

思想、まさにこの小説は思想書ともいえる三島由紀夫渾身の一作だと思う。


主人公の持つ鬱々とした感情は決して性欲など下世話なものには転化されず、

美の追求、主人公の思考は必ずこの想念に立ち返っていく。

そして彼の美とは 《金閣寺》 そのものなのであった。


彼がなぜ金閣寺と仲違いすることとなったか、

また彼がなぜ金閣寺に惹かれていったのか、

それらの謎は全て小説 『金閣寺』 の中で明示されている。


ストイックなまでに美を追求した文体。

演劇 『鹿鳴館』 で強烈にミシマを感じさせられたが、

『金閣寺』 で再び圧倒されることとなった。

一生に一度は読まなければならない一冊だと思います。




追記:


私はもともと反・三島由紀夫でありました。

というのも、彼の人生最後の行動が到底許せるものではなかったからです。

文学者は決して武に走ってはならないのです。


クーデターを起こすことは、文学を否定する行動であり、文学者の取るべき行動ではない。

その証拠に、彼が民衆に決起を促した際、誰一人として立ち上がらなかった。

それは彼の思想に問題があったわけではなく、

方法が完全に間違っていたことを如実に表している。


そんなこんなで私は三島由紀夫を憎んでいましたが、

先日見た演劇 『鹿鳴館』 でついにその洗礼を受けるに至ったわけです。

三島の思想は日本の宝だと確信を持っていえます。


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2006-07-18 21:47:58

ポール・オールスター 『ムーン・パレス』

テーマ:その他の本

    「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」

                              (テスラの格言:『ムーン・パレス』)


かつてシラノが旅行し、ジュール・ヴェルヌが夢見た月世界。

月に手が届けさえすれば――

私たち人類はとかく月を夢見ていた。


しかし1969年、ニール・アームストロング船長の一歩により、

私たちの夢は無残にも踏みにじられ、汚され、そして完膚無きまでに破壊されてしまった。

月面着陸という人類最大の偉業の達成とともに、月という夢にはぽっかりと穴があいてしまった。


他の人はどう思うか知らないが、とにかく、私にはそう感じられた。

そして、月を思うとき、月の表面につけられたあのいびつな丸い足跡が、

それこそ悪夢のように付きまとい、純粋な夢を見ることができなくなってしまった。


それだけ月に対する想いは強く、それゆえに月を扱う本には過大な期待を持ってしまうのでした。


本日紹介させていただきますは、ポール・オースター 『ムーン・パレス』


ポール・オースター, 柴田 元幸, Paul Auster
ムーン・パレス

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人類がはじめて月を歩いた春だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた…。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。

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この小説にはあらゆる種類の喪失が切々たる痛みを伴う文体で描かれている。

それはくどくどしいものでも、お涙頂戴的なものでも、扇情的なものでもなく、

ただ淡々と喪失の美醜が描かれています。


喪失の美と一言で片付けることは、この小説に描かれているものの壮大さから考えると難しい。

「清貧洗うが如く」という故事成語が語りかけるように、

何も無いというのは洗ったように清らかなもの、つまり喪失はそのような清浄感が付きまとうものでもある。

しかし、この小説で描かれている喪失はそういった形ばかりのものではない。


人格の喪失、尊厳の喪失、過去の喪失・・・

偶然のような必然に導かれ、ときおり喪失により何かを得ることができるが、

それでもやはりそれは喪失への序曲にしか過ぎない。


まさに喪失の小説と言っても過言ではないと思う。


表紙の美しさから、月の美を期待してしまうと少々物足りないかと思う。

それよりも、小説裏(上記)のアマゾンの紹介文を読み、少しでも気を惹かれるものがあったら、

迷わず購入してみるのもいいかもしれません。


多くの人にとって大事な一冊となる可能性を秘めた、実に魅力的な本でした。


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2006-04-27 23:02:11

中島らも 『人体模型の夜』

テーマ:その他の本

    遠くかすかに、

    ふつり

    ふつり

    泡のような呟きが響いてきた。

               (プロローグ:地の文)

この引用、何だろう、とてもとても生々しい文章に感じてしまいました。


題名を聞いただけで、一発ノックダウンな怪奇小説でした。

この春ネトミスの新会員となってくだすったMさんの薦めで、即購入したものです。

オススメだけあって、おもしろかった!

そんな 『人体模型の夜』、初めて読んだ中島らもさんの作品だったりします。


中島 らも
人体模型の夜

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一人の少年が「首屋敷」と呼ばれる薄気味悪い空屋に忍び込み、地下室で見つけた人体模型。その胸元に耳を押し当てて聞いた、幻妖と畏怖の12の物語。18回も引っ越して、盗聴を続ける男が、壁越しに聞いた優しい女の声の正体は(耳飢え)。人面瘡評論家の私に男が怯えながら見せてくれた肉体の秘密(膝)。眼、鼻、腕、脚、胃、乳房、性器。愛しい身体が恐怖の器官に変わりはじめる、ホラー・オムニバス。

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怪奇小説には、ゴシック小説のような古風なものと、都市伝説のようなモダンなものがあるように思える。

中島らもの 『人体模型の夜』 はモダンな怪奇小説だと言えます。


物語の舞台となる館、通称 「首屋敷」

この名前でKOなわけですが、入口が三階に付いている、外界と隔絶されている、云々・・・

もう何だろう、この好奇心をくすぐる設定は!

そして暗い部屋に置かれた人体模型・・・


人体模型と聞いて、理科室などにあったアレを思い浮かべてはいけません。

「首屋敷」 の人体模型はハンパじゃないです!

詳細は本を読んでのお楽しみですが、この人体模型・・・ いいですなあ。


さて読後感想文



≪読後感想文≫


  邪眼

    邪眼はシェイクスピア好きが食いつくネタ。フランコ・ゼッフレリ監督好きが食いつくかも。

    構成としては短編推理小説のようなもので、ラスト1行が効果的です。


  セルフィネの血

    楽園のような島国での怪奇話。これもやはりラスト1行が効果的に書かれています。

    夢に描いたとおりの楽園、そしてその真実の姿。その違いは・・・


  はなびえ

    これは純粋な怪奇話。推理小説めいた感は受けるものの、ホラー話です。

    
  耳飢え

    一番好きな話だったかもしれません。江戸川乱歩、までは行かずとも、充分な変態性。

    怪奇小説と変態性はきってもきれぬ仲なので、怪奇小説としての出来はバッチシ!


  健脚行―43号線の怪

    小説中、最も爽やかな印象を受けました。

    ホラーか?と言われると頷けませんが、怪奇小説であることは確か!


  

    人面瘡の話。これも好きな話でした。奇怪な物語と後味の悪さ、秀逸です。


  ピラミッドのヘソ

    1991年の文庫ということを踏まえて読むととてもおもしろい。


  EIGHT ARMS TO HOLD YOU

    ビートルズを巡る謎。ジョン・レノンが作った、というよりも、シド・バレットが作りそうな歌

    でも、何故かジョン・レノンの声が聞こえてきそうな、妙にリアリティのあるものでした。

    
  骨喰う調べ

    これも好きです。特にラストの展開はグッと来ます!

    ラスト一歩手前の状態が特にグッと来ますが、やっぱりこの終わり方でしょう。

    冷血霊園セールスマンの歩む人生が垣間見えます。


  貴子の胃袋

    怖い怖い。子どもを持つことが少し怖くなるような話です。


  乳房
    綾辻行人さんの 『時計館~』 を既読の方は、少しだけニヤリとするかもしれません

    ちょっとだけ、ちょっとだけニヤリとしてしまいましたよ。


  翼と性器

    これは、グロテスクもグロテスク怪奇小説はやっぱりこうでないと面白くないです!

    この話があると無いとでは小説全体の印象も変わっていたことでしょう!

    イヤーな気持ちになりつつも、どこかそれを楽しむ自分に気が付きました。



その他にも、プロローグとエピローグがあるのですが・・・

本編よりもそっちの方が気になって気になって仕方無い!

そんな気持ちでラスト10行を読んだとき、思わず 「やられたー」 と思いました。


登場人物全員に見られることですが、皆頭が良い印象を受けます。

小説のどこを切っても「中島らも」といった感じ。

それが良いか悪いかは作家を好きか否かで決まるわけですが、

「中島らも」好きの人は必読でしょう。


そんなわけで、Mさんありがとう。 とても楽しめましたー!

『ガダラの豚』 は三巻本のようで、長さに断念。 仕事が落ち着き次第読みます!


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2006-04-09 15:08:36

泡坂妻夫 『泡坂妻夫の怖い話』

テーマ:その他の本

    ただし、あまり見事な名推理を読まされると、かえって信憑性が薄くなるような気もする。

                                     ( 『泡坂妻夫の怖い話』 "永日" 地の文 )


探偵小説を読んでいると、理屈を越えた推理や、ともすると飛躍とも思える推理に出くわすときがある。

そういった推理に出会ったとき、何だか童心に返ったようなワクワクした気持ちになる。


例えばホームズやデュパンなど黎明期の探偵は、人を一目見ただけで、職業や性質、

その他様々な情報を読み取ってしまう。

推理小説ファンの中には、そういった超人技の不可能性を指摘する人もいるかもしれませんが、

最近、そういった超人技に楽しみを覚えています。


一目でワトスンが軍医であると見抜けるからこそホームズであり、

ボケーっとしている主人公が何を考えているか見抜いてこそデュパンなのですよね。

数ある選択肢の中から、必ず正しいものを選び、そこから論を進めていく、

アリストテレスの弁証法で言う、信ずるべき "善き" 前提を見抜く力こそ探偵能力なのかもしれません。


泡坂さんの描く探偵や推理小説には、その "善き" 前提を受け入れやすいような気がします。

《亜愛一郎シリーズ》は文体からは感じさせないけれど、とんでも無く複雑なトリックや、

奇抜極まりないトリックがまるでおもちゃ箱のように詰まっている。

それだけ雑多にも関わらず、読み終えてみてスッキリと気持ちよくいられるのは、

一重に泡坂さんが "善き" 前提を文中に散りばめているからなのでしょう。


今回紹介します 泡坂妻夫さんの『泡坂妻夫の怖い話』 にもそのような傾向がありました。


泡坂 妻夫
泡坂妻夫の怖い話

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夫の態度が急に変わったのは浮気、それとも?美人女優とキスした夢から喜んで目覚めると…!終電間際の駅で連続して死傷事件が起きた理由は?添加物に汚染されていない究極の自然食品を探したら…。ドキドキするような艶っぽい話から、ゾッとするような日常の恐怖まで、それぞれ鮮やかな手品のようにトリックを効かせたショート・ショート集。一日一話で一ヵ月を愉しむ全31篇。

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一日一話でがまんできる人がいるのだろうか、と思ってしまいます。

一日で、否、1時間半くらいで読み終えてしまうくらいおもしろいです。
豪華も豪華、短編でも通用しそうな面白さのあるショートショートが詰まりに詰まった一冊。


解説文にもあるとおり、男女の色恋ものから、怪談めいたものまで、

とにかく泡坂妻夫さんが怖いと思うものを集めたもののようです。


泡坂さんが怖いと思うものが、おもしろくないわけがない!と、

某本屋さんの検索機で見つけた瞬間、購入予約いれてしまいました。

そして、それが届いたという知らせを仕事中に受け、銀行への出張と称し、

仕事中に手に入れてきてしまいました・・・


そして、仕事後に企画されていた食事会をキャンセルし、

足早に家に帰り、これでもか!ってくらい読みふけりました。

女性・友人・仕事仲間 < 泡坂さんの小説

という図式が見事なまでに証明された瞬間でもあります。


というわけで読後感想文、31編全部は無理なので、とくにおもしろかったものだけを紹介します。



《読後感想文》


  解坂中腹

    事故の相次ぐ解坂には怨霊が取り付いているという噂が立った。

    主人公はその噂を検証するために、あらゆる調査を行い、ついに正体を見破る!

    そんな流れは期待通りなのですが、一筋縄ではいかないラストに驚愕

    そこに泡坂さんの良さがあります!


  ミュージシャン

    静蒼園に 「水谷さま」 という元華族の老女がやってきた。

    「水谷さま」 は世にも不思議なオルゴールを持っているのだが・・・

    水谷さまが髪に手をやるしぐさなど、泡坂さんの描く独特の色気を感じます

    艶やかとは言えないかもしれませんが、経年の衰えを見せない美しさがあります。


  階段

    ある駅で、最後に降りた乗客が階段から転落するという事故が多発した。

    新聞などの分析から、主人公は自ら最後の乗客となり、事故の検証をするのだが・・・

    今回最もゾッとした話でした

    これは恐ろしい、ゾッとするどころじゃなく、悪意に戦きました。

    今まで読んだ推理小説の中で、最も完全犯罪に近い事件だと思います。


  影人形

    スタント用の人形の視点から書かれた珍しい小説。

    読んでいるとなんとも言えない独特で艶やかな情景を目の前に浮かべてしまう

    泡坂さんの表現力とアイディアには毎回驚かされます。

    思わず生唾を飲み込んでしまった話。


  烏が

    三日連続で一万円札を拾う男性。団地に増えたカラス。

    何も共通点の無い二つが互いに複雑に絡まりながら一つの話へと成る。

    何と言うか、どす黒い悪意を見せ付けられたような話です。


  悪夢

    悪夢を見るとびっしょり汗をかき、前後不覚の状態に陥ってしまうことがある。

    この話では、その悪夢の後味の悪さが最大の魅力です。

    眩暈の起きるような悪夢、恐慌状態に陥る表現とか好きです。

  

  分身

    綾辻さんの 『眼球綺譚』 に収められていそうな、不思議な話。

    これを怖いと思うか否かは人によりけりだと思いますが、

    とにかくおもしろくて、読む手が止まりませんでした。


  牡丹記

    舞台は中国、若い男女が一目を忍び、逢瀬を愉しんでいたとき・・・

    とにかく、泡坂さんの描く女性と花との相性の良さは尋常ではありません


官能的とも言える、泡坂さんの筆は今回ちょっと刺激が強すぎたかもしれません。

読んでる最中、思わずドキッとしてしまう箇所がそこにもここにも。

一週間くらいかけて読もうと思っていたところだったので、

あまりにも早く読み終えてしまい、もったいない感じがしました。


なかなか長編の方は進みませんが、短編の推理小説をどんどん読んで行きたいかと思います。

どなたか泡坂さんの短編で、進めてくださる本があれば、ぜひ教えてください。

泡坂さん以外でも短編のおもしろいもの、どなたか教えてくださると幸いです。

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2006-03-29 22:59:00

京極夏彦、中山市朗、木原浩勝、東雅夫 『怪談の学校』

テーマ:その他の本

怪談をテーマに据えて一つミステリを書いてみようと思い立ち、

一つ怪談をこしらえてみたのですが・・・

これがなんともはや、全く怖くない(笑)


本人が怖がりであるため、怖さのハードルが低いのかもしれません。

読んでくれた人に本の少しでも "怖さ" を感じてもらいたいため、

真剣に "怖さ" について考えてみたくなりました。


一般的に言われることに、"怖さ" を構成する要素として 「日常の崩壊」 があります。

平々凡々と続けられていた日常生活がほんのささいな怪異により瓦解してしまう。

怪談などでそういう話を聞くと、なんとも不安な気持ちになり、

その怪異が自分にも降りかかるのでは?なんてゾッとしてしまいます。


「日常の崩壊」 が故意的に作れるようになれば、それなりの怪談が創作できるのでは?

そう安直に考え、買ってしまいました。


本日紹介いたしますは、京極夏彦 他 『怪談の学校』


怪談之怪
怪談の学校

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怪を蒐め、怪を語り、怪を著す怪談をこよなく愛する怪談之怪、京極夏彦、木原浩勝、中山市朗、東雅夫の四人が、すべての書き手に怪談の作法を徹底的にレクチャー。

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僕が最もゾッとした怪談に、椎名誠の短編 "月の夜" があります。

ネットリからみつくような文体、ぞわぞわっとする語り手との感覚のズレ、

「悪逆咆哮七鬼面像の裏彫り」 「タブマノギャア」 など不可解な小物、

それらに対して 「桜」 「月夜」 「艶っぽい文体」 が美しい。

最後の一文のキレも素晴らしいと思ってしまいます。

( "月の夜" は椎名誠の 『ねじのかいてん』 に収められた一話です。 )


そんな怪談を書きたい!っと思って購入したのが本書。


結果から言うと、参考にはなりますが、本書の帯にあるような

「この一冊で怪談作家になれる!」

という表現には疑問を感じてしまいます;


怪談のスペシャリストたちが、素人の投稿した怪談を分析したり、添削したり、

その過程で "怖さ" のポイントを語ったりするわけですが、いかんせん主観的。

本人たちの口から 「客観的」 という言葉が連呼されているにも関わらず、

本書の肝心要である作家の分析が主観的な印象を受けてしまう…


例えば、「怖さのキモを設定する。」 と言われて、何人の人が実行できるだろう。

まず、怖さのキモってなんだろう?キモってどうやって設定するのかな?

設定したけどキモの場所ってここで合ってるのかな?

そういった疑問がふつふつとわいてきます。


そして悩める怪談創作者に与えられる助言はたった一つ。

「技術が必要とされるので難しい」

…この一冊で怪談作家になれる…

ハウツー本には騙されないつもりでしたが、見事騙されました;


そのように、怪談創作のマニュアルとして購入した場合、本書は期待外れに終ると思います。

しかし、悪い例→添削後、両方の文章を見比べていると、

作家さんたちが分析の中で言わんとしていることが何となくわかる。

受身的ではなく、能動的に理解しようとすることで教科書的役割を果たすのかもしれません。


何はともあれ、この 『怪談の学校』 でヒントをいくつか掴んだので、

オリジナル怪談、もう少し怖くできるかもしれません!?



追記:

現在、午前2時も過ぎ間もなく半になろうかという頃、

トイレの電気が突然、パチンッと切れました。

怪談を読んでいる最中だというのに、真っ暗なトイレに入ることになるとは・・・


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2006-03-17 10:39:49

D・B・ワイス 『ラッキー・ワンダー・ボーイ』

テーマ:その他の本

    すると、第三幕はステージIIIに対応するわけだ。《ラッキーワンダーボーイ》が大好きで、

    ほんとうによく知っている人なら、前人未到の地に突入した、あるいは、

    少なくとも別人の証言を通じてそのあこがれの地をじっと見つめたことがあるはずだ。

    探偵の頭が必要になってくる―――

                                 (ラッキー・ワンダー・ボーイ: 地の文 p.192)


この本の表紙を見た記憶を最後に、一瞬時間が飛び、いつの間にかレジに並んでいる自分を発見した。

「世界中にいる全ての僕のための小説だ」 一目見た瞬間に、そう感じた。

マリオのジャンプに夢を見て、インベーダーのレインボーフラッシュに感動した僕たち。

80年代をブラウン管の中で過ごした全ての人なら必ず手に取る小説かもしれない。


現在急ピッチで進めている、会誌投稿用の原稿を書いている合間合間に、

息抜きで書いているオリジナル小説 『飛べ、マリオ!』 と重なるところがあったので、

この小説を手に取ったことは偶然ではなかったのかもしれない。


そんなわけで、D・B・ワイスの 『ラッキー・ワンダー・ボーイ』


D・B・ワイス, 鈴木 豊雄
ラッキー・ワンダー・ボーイ

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任天堂出身のプログラムマー、イタチ・アラキが作った伝説的ゲーム“ラッキーワンダーボーイ”。ほぼ到達不可能の隠しステージが用意されているというこのゲームの攻略に、アメリカのおたく青年アダムは青春のすべてを賭けた。恋も仕事も放り投げ、イタチが住むという日本の京都へと旅立ったのだが…はたして、幻のステージ3に待ち受けるものとは?パックマンなど懐かしのゲームが満載のアメリカン・おたく・グラフィティ。

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ファイナルファンタジー12が発売された日、僕はマリオのジャンプについて考えていた。

マリオの世界では努力で超えられない障害はない。

BダッシュをしてAでジャンプをすれば、ワールド中に置かれた様々な障害を飛び越えることができる。

障害物だけじゃない、その気になれば画面枠外へと飛び出すことだってできた。

そんな 『スーパーマリオブラザーズ』 が本当に好きだった。


土管から生え出てくる "パックンフラワー" だって例外じゃない。

マリオのジャンプの最高地点は "パックンフラワー" をぎりぎり飛び越えることのできる高さだ!

もちろん数ドットでもジャンプ地点を間違えればパックンの餌食になってしまう、

その "ぎりぎり" に何かしら人生へのメッセージを僕は感じていた。


今日紹介することにしている 『ラッキー・ワンダー・ボーイ』 は、

そんな8ビットゲームに情熱を注ぎ、人生の全てをかけた青年アダム・ペニーマンの話です。

アダムの人生をかけることになったゲーム、その名も Lucky Wonder Boy。


「ワンダーボーイ」 という言葉を聞いてピンときた人はどれくらいいるだろう?

かつて16連射で伝説となり、技の毛利名人と歴史的一戦を繰り広げた僕たちのヒーロー、

「高橋名人」 の名前が浮かんだ人は、それはそれはたいしたもの、

「ワンダーボーイ」 は 「高橋名人の冒険島」 のコピー元だったりするのだ。


「ラッキー・ワンダー・ボーイ」 と 「ワンダー・ボーイ」 には関連はなさそうに思えた。

セビロなんて名前の敵は出てこないし、茫漠たるステージを彷徨うステージIIも見たこと無い。

関係ないのかな?と思うけれど、鏡とか小物が似ていたりする・・・

まったく別ものでありながらどこかで同じ雰囲気を感じる、そんな関連性があった。

でも残念なことに、 「ラッキー」 は架空のゲームだったのだ。


長々とゲーム談義、以後読後感想




《読後感想》


TRICK+TRAP MONTHLY vol.2 にて、戸川さんが述べていたことの一つに、

ミステリとして書かれたものではないのに強く探偵味を感じる小説がある

という言葉かそのような事が書かれていたかと思う。

この小説でその言葉を実感した。


謎があり、執拗な姿勢で謎を解明する、そのような 《様式》 が探偵味を出すのかもしれない。

「ラッキー」 の主題 「謎の第三ステージを解明する」 はその様式にぴったり合う。


それほど楽しいと思えなかったにも関わらず、ブログで紹介するつもりになったのは、

そんな探偵味に触れたからかもしれない。


小説全体の感じとしては、村上春樹の小説を想像したらだいたい合っていると思う。

つまりミニマリズムの感触があちこちから感じられたわけです。


村上春樹の小説は色々読んでみたけれど、好みの小説ではなく、

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』 以外は満足に読めなかった記憶がある。

( 『世界の終わり~』 はひきこもり世代のさきがけを感じさせる良書だった!)

「ワンダー」 も8ビットゲームの懐かしさが無ければ読みきることはできなかった。


しかし、ミニマリズムの特徴?とでも言うか、村上春樹の特徴とでも言うか、

物語が進行していく過程で、徐々にメインプロットはメタ次元へと沈降していって、

終盤では主客の転倒が顕著なものとなってしまう。

僕が望んでいた世界とは全く違う世界になってしまった。

倒錯した愛。 日本、もしくはアジアに対する歪んだ愛を感じ取ってしまった。


作者のレトロゲームに対する薀蓄はおもしろかったけれど、

それに付随する考察(マルクス主義や形而上学的な考察など)には食傷気味になるかもしれない。

薀蓄を語るのも小説の醍醐味なのだけれど、どうも最近ソレを受け入れられない。

推理小説にしても、突然薀蓄を語り出す小説は、読んでいて興ざめな感じがする。

もっともっと小説の中にのめりこませて欲しい!そういう気持ちになってしまう。


マリオ、パックマン、ポン、ドンキーコング、村上春樹、これらのワードにピンときたら買い。

では映画 『サイレン』 最終日なので行ってきます!

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2006-03-11 08:21:49

ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』 トーベ・ヤンソン画

テーマ:その他の本

トーベ・ヤンソンの挿絵による 『不思議の国のアリス』 購入しました。

ムーミンが好きで、彼らの不思議な間の取り方や独特のセリフ回しや、

一見的を外しているようでその実正鵠を射る観念など、

トーベ・ヤンソンのセンスが好きで好きでたまらないわけです。

情報くだすったBに感謝。


そんなトーベ・ヤンソンがルイス・キャロルの 『不思議の国のアリス』 を訳していた!

ルイス・キャロルの 『不思議の国のアリス』 もとても好きな本なのですが、

この二人の良さが合わさったとき、一体どんな作品に生まれ変わるのだろう?

とても興味をそそられました。


ルイス キャロル, Lewis Carroll, Tove Jansson, 村山 由佳, トーベ ヤンソン
不思議の国のアリス

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守ってあげたいアリスです。村山由佳(直木賞作家)の新訳。トーベ・ヤンソンの“幻のアリス”40年の時を経て初公開。
キャロル自身がアリスに語り聞かせる口調をそのまま文章にした、永遠の少女たちと、彼女を守りたいと願う永遠の少年たちに捧げる新訳。「ムーミン」で知られるトーベ・ヤンソンの「幻のアリス」、40年の時を経て初公開。

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トーベ・ヤンソン版の 『アリス』、 ヤンソンの本国では既に絶版らしいです。

ということは、ヤンソン版の挿絵が使われている本書はそれだけでも価値がある!

珍しい試みなので、買っておいて損はありません。


挿絵ですが、テニスンの挿絵よりも幻想的な雰囲気が出ております。

テニスンの挿絵は風刺めいたところがあり、ややグロテスク。

ともするとクドく煩わしく感じることもあったりします。

それに対しヤンソンの挿絵は、あくまで世界を描くのみに留まっています。

よって絵だけ見ていても物語性があって良いです。


そして、一番評価が分かれる≪訳≫の問題ですが、

ちょっといただけない感じがいたしました。

言葉遣いが文語から口語風に変わってしまったことが残念。


口語レベルに落とした例として、マッドハッターが関西弁なのは許せるわけですが、

詩的な部分まで口語レベルに落とされると、ちょっと興ざめの感。

例えば、気狂いお茶会の席にて有名な詩:


    輝け、きらきら、小さなこうもり、おまえのめあては何だろう!

    この世をはなれて高く飛ぶ、ちょうどみ空に茶盆のよう。

                                輝け、きらきら   (岩崎民平訳)


    ちーかーちーかーひーかーるー おーそーらーのーコウモリよー

    はーるーかーなーせーかーいー お盆のよーにーとんでゆくー

    ちーかーちーかーひーかーるー・・・                  (村山由佳訳)


     "Twinkle, twinkle, little bat!

   How I wonder what you're at!"


    "Up above the world you fly,

   Like a tea-tray in the sky.

         Twinkle, twinkle—"' (ルイス・キャロル文)


やっぱり 「ちかちか光る」 よりも 「輝けきらきら」 の方がきれいな感じがするなあ。

この歌の後に続く、ドーマウスの "Twinkle, twinkle, twinkle, twinkle" のうるさい感じも、

「ちーかーちーかー」 より 「輝け、きらきら、輝け、きらきら」 の方が好きだなあ。

好みの問題なので仕方ありませんが、訳は岩崎民平訳のがいいです。


そんなこんなでしっかり楽しんだ トーベ・ヤンソン絵 『不思議の国のアリス』

ムーミン好きやアリス好きな人は即買いの方向でいかがでしょうか?

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2006-01-10 18:32:01

ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』

テーマ:その他の本

    「輝け、きらきら、小さなこうもり、おまえのめあては何だろう!

     この世をはなれて高く飛ぶ、ちょうどみ空に茶盆のよう。

                             輝け、きらきら―――」

                        (キ印お茶会にて マッドハッターの歌)


『不思議の国のアリス』 には様々な歌が出てきますが、そのなかで最も好きな歌です。

とくに、この後で寝惚けた眠り鼠が 「輝け、きらきら、輝け、きらきら―」 と繰り返すところが、

なんともかわいらしくて好きです。 うるさいッと皆にツネられるのはかわいそうな話ですが、おもしろい。

下の方に皆さんに聞いてみたいナゾナゾもあるのでお暇な方は考えてみてください。


本日紹介させていただきますのは、ルイス・キャロルの 『不思議の国のアリス』 です。


alice
Lewis Carroll, 岩崎 民平, ルイス・キャロル
ふしぎ国のアリス

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おおあわての白ウサギを追いかけてアリスが穴に飛びこむと、奇妙で不思議な冒険がはじまります。オックスフォードの数学者が創り出した、ユーモアとことばあそびに満ちたイギリス児童文学の古典。

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『アリス』 は様々な文学、漫画、そして推理小説に多大な影響を与えた作品です。

とくに中井英夫さんは傑作短編集 『不思議の国のアリス・ミステリー傑作集』 を編んだり、

また暗号小説 『秘文字』 の冒頭では 『アリス』 の有名な冒頭の一文を引用したりしています。

『アリス』 のなかには誰もが頭をかしげてしまうような謎が満ち溢れている


なかでも、マッドティーパーティは狂った論理の飛び交う諧謔趣味溢れるものです。

一見、めちゃくちゃなことを言っているようで、よくよく考えてみるとなるほどと納得してしまう。

例えば帽子屋が 「この帽子は売るためにかぶっている」 と言うのですが、まともに考えると変な話です。

しかし、テニエルの挿絵を見てみると、なるほど、ちゃんとその帽子には値札がついている。

めちゃくちゃな話をしているにも関わらず、どこか一本筋の通った会話、それがお茶会の会話です。

全編を通して言えることではありますが、それが 『アリス』 の面白いところなのかもしれませんね。


今回紹介させてもらいました岩崎民平訳、これがまた味があっていいのです。

巻末についた訳者注が語り口調で書かれており、まるで訳者の岩崎さんと話しているようです。

また訳者の岩崎さんも諧謔趣味があるようで、訳注のあちこちにシャレめいたことが書かれており、

読んでいて、おもわず笑ってしまいます。


さて、ここまで読んでくださった皆さんに一つお聞きしたいがあります。

作中に出てきた帽子屋の謎かけ、皆さんの考える答えを知りたいのです。


    Why is a raven like a writing desk?

    「黒鴉が机に似ているのはなあぜ?」


作者ルイス・キャロルの話によると、話を作ったときには解答なんぞは無かったけれど、

あまりにも読者から解答を求められるので、以下のような答えを用意したらしいです。

(ネタバレでも何でもありませんが、一応反転。)


著者解答: Because it can produce a few notes, tho they were very flat;

      少しはnote (鳴き声、ノート) を出せるが平ったい(音が、形状が)ものだから。


おもしろいなぞなぞであるため、訳者も自分で解答を考えていたりします。

訳者解答: どちらも ink-black (インクのように黒い、インクで汚れて黒い) ものだから。


もちろんでたらめな謎かけなので正答があるわけではありません。

おもしろいつながりが見つかりましたら、コメントまでお願いします。

僕も一応考えてみました;


Pの解答: どちらも勉強しているから。 

       (カラスは他の生き物を見て、行動を学習し、頭が良くなる。)

       (いくらその上で勉強しても、頭が良くなるのは机ばかり。)



四角四面に考えたって始まらないので、楽しんで考えたくなります。

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2006-01-09 07:30:49

池田あきこ、佐藤かずよ 『ダヤンのおかしな国のお菓子の本』

テーマ:その他の本

B氏から頂いた好物の 『とうもろこしチョコ』 を食べつつ、本日紹介させてほしいのは、

池田あきこ、佐藤かずよさん による 『ダヤンのおかしな国のお菓子の本』


池田 あきこ, 佐藤 かずよ
ダヤンのおかしな国のお菓子の本


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不思議の国"わちふぃーるど"に住むダヤンは、好奇心旺盛な猫。ある日、魔女の魔法で嗅覚を取り上げられ、なんの匂いも分からなくなってしまいます。ケーキ占いに示された、匂いを取り戻す旅に出ることに―死の森では魔王につかまって、影を取られそうになったり、ドラドンの鼻息でふき飛ばして貰ったり。旅で出会った物語とお菓子のレシピ23点。
------------------------------------------------------------


とうもろこしチョコの秀逸なところは、以前にも言及したかと思いますが、

とうもろこしのサクっとした食感とホワイトチョコの滑らかな舌触り

そしてコーンの軽い香ばしさとそれに絡まるチョコの濃厚な甘さ

この二つの対立する要素が見事に溶け合っているのです。

お土産ものにうまいもの無し、とはよく言いますが、これに限りその言葉は当てはまりません!


とうもろこしとチョコレートのベストマッチングとでも言うのでしょうか。

マッチングといえば、ワインと料理のマッチング、『マリアージュ』

生牡蠣とシャブリ、ロックフォールチーズとソーテルヌ、キャビアとシャンパーニュなどなど、

この食べ物にはこのワイン!という最高の組み合わせがあるようです

是非一度試してみたいものです!!


一応誤解を解くために言わせていただきますが、僕が食事に喜びを見出すのは、

何も食いしん坊だからというわけではありません。

現に普段の食生活において、それほど目立つ量を食べているわけではないのです。

むしろ家族からは小食といわれるほど食べなかったりもします。


食は生きる上で最も重要な要素であり、生き死にの問題に密に関わっております。

また料理だけに限らず、周りの雰囲気、共にテーブルを囲む友達、友達同士の何気ない会話、

それら全てをあわせて食事だと僕は思っています。

つまり、食事を愉しむことは、生きることと生活することを愉しむことだと考えています。


そんなことを言っているうちに 『とうもろこしチョコ』 は無くなり、鮭トバに移るのでした・・・


すっかり紹介がおろそかになってしまいましたが、『ダヤンのおかしな国のお菓子の本』

お菓子作りは経験者はわかるでしょうが、非常に手間がかかる上、

分量や方法、果ては一分一秒単位の正確さが要求される大変なものなのです。

そして苦労して作ったわりには盛り上がりに欠けるものであったり、

市販の方がおいしかったりと落胆も多い料理なのです。


そんなお菓子作りの労苦を少しでも和らげてくれるのが、この本です

(この本です、と言いながら、この本のレシピ、一度も作ったことは無いのですが;)

僕はダヤンが好きというわけではなく、ダヤンの周辺に跋扈するクリーチャーたちが好きなのです。

実に想像力をかきたてられるクリーチャーたちで、自分が昔描いていた絵を思い出します。


ちなみにブログトップや自己紹介欄にいる丸いキャラクターは

四年ほど前、授業中に考案したキャラクターで、『ダニエル』 と言います。 

玉子のクリーチャーでオムレツ好きというカニバリズム溢れる設定であります。

絵本を作ってみたり、GIF動画を過去にHP上で配信したりと思い入れの深いキャラクターなのです。


話を元に戻しますが、今回のお菓子作りの本で最も驚かされたものは、

おいしい紅茶の入れ方です。そこには驚くべき方法が書かれていました。

以下引用:


<大事な客のための紅茶>


1 ポットもカップもソーサーもすべて温める。

2 ポットにリーフティーを、一人分茶さじ一杯を人数分いれる。

3 そのままポットごと熱いお湯につけてしまう

4 3分待って、茶こしを使い一滴残さずカップに注ぐ。


  ◆ ティーコゼーで保温するより、ポットごとお湯につけた方がさめにくい。
    とっておきのお客様のための、大胆ないれ方です



目からうろこが落ちる思いでした!ポットごとお湯につける…考えたこともありませんでした!

誰か大切な人を家に招待するときは、ぜひ実戦してみてください。


追記:
鮭トバは意外と油が多いので、ウーロン茶や日本酒などが合いそうですね。
『マリアージュ』 じゃないですが、おすすめの飲物がありましたらコメントまでお願いします。

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