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2006-07-26 00:37:20

ポール・オースター 『幽霊たち』

テーマ:ミステリー小説

探偵小説―――推理小説とはまた違う味を持った小説群。

ミステリアスな事件、姿の見えない犯人、そして探偵する人物。

これらが必要不可欠な要素なのかもしれません。


では、これらのうちどれか一つが欠けた場合、

その小説のプロットは探偵小説として機能しなくなるのだろうか。


今回のポール・オースターの 『幽霊たち』 は先の条件のうち2つを欠いた探偵小説なのです。


ポール・オースター, 柴田 元幸, Paul Auster
幽霊たち

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私立探偵ブルーは奇妙な依頼を受けた。変装した男ホワイトから、ブラックを見張るように、と。真向いの部屋から、ブルーは見張り続ける。だが、ブラックの日常に何も変化もない。彼は、ただ毎日何かを書き、読んでいるだけなのだ。ブルーは空想の世界に彷徨う。ブラックの正体やホワイトの目的を推理して。次第に、不安と焦燥と疑惑に駆られるブルー…。’80年代アメリカ文学の代表的作品。

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自己の存在意義をテーマに取るところからポストモダニズムの香りを強く感じる。

確かにこの作品はポストモダニズムの文学作品だと思う。

読後、心に残る得も言えぬ違和感。

これは近代の文学作品によく見られる読後感なので、文学作品であることは間違いない。


では、探偵小説としてみたときはどうだろう。

何か一つの物事を追求し探求する主人公ブルーの姿はまさに探偵小説の探偵役そのもの。

そして事件の内容は、いたって平凡かつミステリアス。

姿の見えない犯人、これも全く問題ない。 犯人の姿は全く見えない。


全く見えないどころではない。

小説が始まった時点では、事件はまだ起きていない。

そしてその 「事件が起きていない」 そのこと自体が非常にミステリアスな話で、

「つまらない、つまらないはずなのに、ページを繰る手が止まらない」

そんな怪現象にまで見舞われる始末。


まさに幽霊たちに見舞われる小説。


とても読ませられる作品かつ手ごろなボリュウムなので、

未読の方がいらしたら、お読みになられたらいかがかと存じ上げ候

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2006-06-12 21:49:15

清涼院流水 『ジョーカー 涼』

テーマ:ミステリー小説

ブラーヴォ、清涼院流水!!


思わずそう叫びたくなる一冊でした。

推理小説というジャンルにおいて手放しでこれほど楽しめた小説、

ありそうでなかなか無かったように思えます。


今日紹介いたしますは清涼院流水の紹介 『ジョーカー 涼』

読者のミステリ魂を試される一種の試練のような一冊なのではないでしょうか?


清涼院 流水
ジョーカー涼

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1974年8月9日兵庫県生まれ。京都大学経済学部在学中の1996年に、『コズミック世紀末探偵神話』(2分冊の下巻が講談社文庫に本書と同時収録)で第2回メフィスト賞を受賞しデビュー。同書は型破りな設定やストーリーが発表当初から大きな反響を呼んだ。第2作となる本作品『ジョーカー旧約探偵神話』は『コズミック』と対をなしており、両作品を通読してはじめて浮かび上がる仕掛けが施されている。その後も問題作を多数発表、ミステリー界で特異な地位を占めている。著書に『19ボックス新みすてり創世記』、3分冊で原稿枚数4200枚におよぶ『カーニバル』シリーズ(すべて講談社ノベルス)など。

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今日も今日とて清涼院流水・・・

『ジョーカー清・涼』、『コズミック流』 と読み進め、さきほど 『コズミック水』 を買ってきてしまいました。

まさかこれほどハマるとは・・・ 人生何があるかわかりません。


何にはまったかと言うと、『ジョーカー清・涼』 そのものにです。

アマゾンの評価を見ると、おもしろいことに、最高評価と最低評価に分かれています。

なるほど、確かに評価の割れる面白い作品だったと思えます。


この作品を受け入れられない人は、よほど本格ミステリが大好きなのでしょう。

愛している人と言っても差し支えないかと思います。

しかし、『コズミック・ジョーカー』 を壁に投げつける前にちょっとだけ待って欲しい。

そして一瞬だけ考えてもらいたい。


あなたの好きなミステリって何なの? と


この小説がどういうジャンルに当てはまるのか、僕にはわからない。

キャラ萌えものかもしれないし、本格かもしれないし、アンチミステリかもしれない。

もしかしたら推理小説ですら無いのかも知れない。

感覚から言えば、counter-mystery、とでも名付けたら僕は満足できてしまう。




《読後感想文》


最高の頭脳を持つ探偵集団JDCに所属する探偵たちによる推理の饗宴・・・

とまでは行かなかったりするのでした;

探偵たちの前評判に期待しすぎたためか、

次々に出てくる探偵たちの能力に少々頭をかしげてしまうこともあったりなかったり・・・

JDC、大丈夫かー!?


そんな中、一際だったのがトンチ探偵・龍宮城之介、名前もすごいが推理もすごい。

留まることをしらない疾走する想像力を駆使し、隠されたメッセージを読み解く・・・

おそらく清涼院流水さんにとって最も書き易い探偵さんだったのでしょう。

一番輝いていたかと思います。


肝心のミステリとしての内容ですが、『虚無への供物』 の呪縛から逃れられない、一個の話です。

中井英夫さんは一人の文学者として敬愛しているものの、

『虚無への供物』 を遺したという大罪に関しては強い憤りを感じております。

一体どれほどの著名な推理小説作家が 『虚無への供物』 を読み、だめになったか。

『虚無への供物』 を生み出したこと、推理小説界一番の犯罪だと思います。


フロイト学派やサイードの論、ウェーバー、マルクス・・・数を上げれば限り無いですが、

優れた論文や思想が表れると、一家を成すべき大家までその論に飛びつき、

その論のコピーや副産物を排出するようになる。

そういったものを見せられて、一体誰が感化されるのであろうか。

作者が自らのオリジナリティを自身で減退させ、それで自己満足してしまう。

非常にもったいない話だと思います。


何はともあれ、幻影城連続殺人事件、おもしろかったと思います。

これほどのアイディアを惜しげもなく使う姿、やはり泡坂妻夫さんを思い出します。

オモチャ箱をひっくり返したような乱れ散るミステリ、ミステリ、そしてミステリ。


自分がどういうミステリが好きなのか考えながら読めば、きっと壁に投げつけないかと思います。


これを使って犯人当てなぞやったら面白いのではないでしょうか??


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2006-05-28 23:37:09

清涼院流水 『ジョーカー 清』

テーマ:ミステリー小説

『コズミック 流』 に引き続き今日も今日とて清涼院流水。

読んだ作品は 『ジョーカー 清』 帯にあるとおり、清流 in 流水の順に読み進めております!

しかし、何て読むんだろう? ジョーカーきよし、と読んでおりましたが、絶対違いますよね?


清涼院 流水
ジョーカー清

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屍体装飾、遠隔殺人、アリバイ工作。作中作で示される「推理小説の構成要素三十項」を網羅するかのように、陸の孤島・幻影城で繰り返される殺人事件。「芸術家」を名乗る殺人者に、犯罪捜査のプロフェッショナルJDC(日本探偵倶楽部)の精鋭が挑む。

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コズミックという大宇宙の中で踊る踊るジョーカー。

『コズミック』 において1200の密室殺人を予告した密室卿に対し、

『ジョーカー』 では36の本格推理小説構成要素を全て満たすべく、

連続殺人を打ち出した犯人<芸術家>そしてJDC所属の名探偵群・・・

1200の密室、36の殺人技、癖のある探偵たち、その一つ一つで推理小説ができてしまう。

こんなことをする作家は余程の・・・、天才です。


本格ミステリの本流の中、あちこちに点在するアンチミステリという名の渦。

その渦の中心にはいつもロンブローゾの 『天才論』 が見え隠れしている。

今回の清涼院流水の 『ジョーカー 清』 にそれがあったかどうかというと・・・

結論から言えば、無かったと言わざるを得ない。


何があったか?そこには遊び心、読者のみならず作者をも楽しませる稚気、

まるでオモチャ箱をひっくり返し、こぼれ出たオモチャの一つ一つを眺める楽しさがあった。

言い過ぎになるけれど、メタ・アンチミステリと言うよりは、泡坂妻夫の 『乱れからくり』 の稚気、

そちらの方に近いものを感じてしまった。


その原因は、『ジョーカー 清』 があまりにも 『虚無への供物』 を奉っていることにあると思う。

登場人物の名前、装置、読者に与えたい効果、どれを取っても 『虚無への供物』。
残る 『ジョーカー 涼』 『コズミック 水』 を読み終えていないため、感想は難しいものですが、

現時点において、『コズミック 流』 で感じた輝きは見られないように思えます。


その理由の第一は、3ページと待たずに繰り出される異化作用を狙った文章。

作家のトリック、ミスディレクション等々、それなりの意図があるのでしょうが、

異化作用というのは、「これは推理小説です」 と 小説内の人物に言わせることで、

読者に虚構であることを認識させ、現実世界にある虚構を認識させる効果がある。


しかし、それは効果的に使った場合に発揮されるものであって、

いわば伝家の宝刀のようにたった一度の鋭い切れ味に全てをかける意気込みで使わなければならない。

『ジョーカー 清』 のように濫用しては切れ味が鈍り、ただのなまくら刀になってしまう。

その結果、読者の中には食傷気味になる人も出てくる。


『ジョーカー 清』 がやりたかったことはとてもよくわかる。

また、清涼院流水が仕掛けた罠に快く乗ることもできる。

しかし、あまりにももったいない感じがしてならない。

作中に出てくる装置、そのどれもがもっともっと魅力的な問題に繋がるにもかかわらず、

それを知ってか知らでか、故意かどうかわからないけれど、充分に魅力を発揮できていない。


非常にもったいない《コズミックシリーズ》第2弾でした。


人物描写に関しては、『コズミック 流』 とは打って変わり、よりそれらしく書いているようです。

しかしながら、どうしても 『コズミック 流』 の方がより好ましく思えてしまう。

――技法の問題か、トリックの問題か、はたまた好みの問題か。

これから続く世紀末探偵神話に期待が高まります!


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2006-05-20 19:50:06

清涼院流水 『コズミック 流』

テーマ:ミステリー小説

中井英夫全集 『黒鳥譚』 を読み、独特の美に触れ、

中井英夫の戦中に書かれた日記を読み、涙がぼろぼろとこぼれる。

御察しの通り、まるで渦に飲み込まれるかのように、気持ちは沈む一方。

まさにダウンワードスパイラル。


こんなときどんな作品を読んだら楽しいだろうか・・・

否、こんなときじゃないと楽しめない作品を読もう!


そう思い立って読み始めた作品 清涼院流水さんの 『コズミック 流』

良くも悪くも世間の評判を勝ち得た怪作に挑戦してみました。


清涼院 流水
コズミック流

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「1年に1200人を密室で殺す」警察に送られた前代未聞の犯罪予告が現実に。1人目の被害者は首を切断され、背中には本人の血で「密室壱」と記されていた。同様の殺人を繰り返す犯人「密室卿」の正体とは?推理界で大論争を巻き起こした超問題作。第2回メフィスト賞受賞。

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ドラマであることをドラマにする、そういう作品をメタドラマという。 (僕はそう理解しています)

それと同じ考え方でいくと、この作品はメタミステリになるのかもしれません。


中井英夫の 『虚無への供物』 に現代新本格の流れ、その原始の一滴を見ることができるならば、

この 『コズミック 流』 は底の見えない奔流に巻かれる一個の渦だと思います。


同じメフィスト受賞者の 霧舎巧さんの 《あかずの扉研究会シリーズ》 がストレートな新本格ならば、

第二回メフィスト賞を受賞した 清流院流水さんの 《コズミックシリーズ》 は変り種です。

しかし、変り種でありながら別物ではない、そんな本格風味もあるのだからおもしろい。



《読後感想文》


人物が描けていない、そう批判がされる書き方がされているかと思います。

しかし、この世にどれだけ人物が描けている小説があるだろうか。

まして推理小説に関して言えば、どんな作家にも当てはまる都合の良い批評だと思います。

僕個人の意見としては、人物描写なんてこれくらいがちょうど良いと思います。


本書で予告された被害者の数は1200人、一日三人ペースで人殺しをするわけだから凄まじい。

各事件において被害者は一人なわけですが、そこに係る人は二三人。

それだけ大勢の人が係る小説なだけに、人物に対する書き込みや思い入れは自然と薄くなる。

もっとも、この小説に書かれているほど内容のある人生を送った人は少ないと思う。

事実僕はもっと薄っぺらな人生を送り、これからも送り続ける予定ではあります。


なぜ、こんなにこの作品をプッシュしているかと言うと、(一応反転)

被害者1200人という数字になんとなくある仕掛けを感じるからであり、

その仕掛けを有効に活かすためには、人物描写なんて単純であればあるほど良い、

そんな気がしてならないからです。

( 『ジョーカー』 を読んでまったく違うと感じるかもしれませんが )


ただ気になるところも2点ほど・・・


1.ミステリとは接点のない登場人物がやたらとミステリ用語を使うのは・・・

  作家さんになるくらいどっぷりミステリの世界に浸ると、日常用語になってしまうのかもしれません。

  皆さんも無意識のうちに、ミステリ用語を連呼しているかもしれません。


2.密室の件

  犯人・密室卿の名前が示す通り、殺害現場は全て密室と呼べる状況下にあるのですが、

  『コズミック 流』 に描かれた密室は、カーの密室講義の範疇から出ないものばかりだと思います。

  新しい密室を期待する読者には少々物足りないかもしれません。

  『ジョーカー 清』 に期待が高まります。


『コズミック 流』 は物事の発端にしかすぎません。

これから続く 《コズミックシリーズ》 に期待!!


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2006-05-10 01:13:55

若竹七海 『悪いうさぎ』

テーマ:ミステリー小説

    「おじさん、ねえ、そのうさぎ、どうして檻に入れてるの?」

    ミチルが大きな声で男に尋ねた。 男はまじめくさって答えた。

    「ああ、こいつはね、悪いうさぎなんだよ」

                             (『悪いうさぎ』 地の分)


タイトルにもなっているキーワード 「悪いうさぎ」 ですが、

この言葉、皆さんはどのように受け止めたでしょうか?


今日読み終えた作品、 若竹七海さんの 『悪いうさぎ』 からの文章でした。

毎度若竹さんの作品からは精神的な衝撃を受けるわけですが、

この小説でも、やっぱり同じ印象を受けるのでありました。


若竹 七海
悪いうさぎ

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少女たちはどこに消えたのか?
家出中の女子高生ミチルを連れ戻す仕事を引き受けた私は、彼女の周辺に姿を消した少女が複数いることを知る。好評葉村晶シリーズ

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『依頼人は死んだ』 に続き女探偵・葉村晶シリーズ第二段 『悪いうさぎ』 です。

葉村晶は一見さばさばしており、繊細さに欠け女性っぽくなく、仕事一本の女性に見えるのですが、

その実、部屋作りに凝ったり、他人の領域に踏み込んだりと、

人間的にとても奥の深い魅力的な女性なのです。


そんな彼女の最も魅力的なところは、どんな状況下においても生活を愛しているということ。

この部分が本当に好きで、葉村シリーズを読むのが楽しみな毎日でした。

生活が好き、そんな人と一緒にいたくなる、そう思わせてくれます。


さて作品


冒頭の事件が全てを物語っているかと思います。

ただ仕事をしただけの葉村、ただその場にいただけの葉村、

それなのに全ての関係者が葉村の方を見る。

そして、色んな人が葉村の足を踏んづけていくのです。


身も心もズタボロになりながら、それでもカーテンを作ったり、

他所行きの靴を持っている葉村の姿を目にすると、思わず心が揺れ動きます。

どうしてこんなに酷い状況下なのに・・・ でも、そこなんですよね。

勝手に同情すんな、と葉村に言われそうです。


事件の発端は、ある女子高生の失踪にありました。

そして、その女子高生の行方を探るうちに、

一人、また一人と行方知れずとなった人が・・・


そしてその一人一人を結びつける、一つの言葉。


 「うさぎ」


この意味に気がつき、葉村は真相へと一歩一歩近づいていく。

そしてそんな葉村を襲う容疑者たち!


いつもの如く四面楚歌といった状況下において、

葉村が取った行動は、真相を突き止めること・・・

そのひたむきな姿にまたもや心を動かされm(ry


脅威のリーダビリティ、460ページにも及ぶ長編なのですが、

ページをめくる手が止まりません!

あれよあれよというまに事件が展開していき、

いつの間にか最後のページへとたどり着いている・・・


「事件の謎」 「中盤のサスペンス」 「意外性のある結末」 はミステリにおいて重要な要素ではありますが

この 『悪いうさぎ』 では特に中盤のサスペンスが優れていた!

中盤というか全編に渡りサスペンスフルな物語でした。


葉村シリーズ好き、女性同士のケンカ、若竹さん好き、普通のミステリに疲れた方、是非購入の方向で!


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2006-05-03 18:06:50

若竹七海 『サンタクロースのせいにしよう』

テーマ:ミステリー小説

シャーロッキアンがドイルの 《ホームズシリーズ》 を聖典と呼ぶならば、

僕は若竹さんの作品を聖典と呼びナナミズムを信奉したいと思う。


今まで読んできた若竹七海さんの作品、そのどれもが好きなものでした。

『依頼人は死んだ』 『スクランブル』 この二冊がとくにお気に入りなのですが、

そこに 『サンタクロースのせいにしよう』 も加わりました。


今日読み終えたのは、若竹七海さんの 『サンタクロースのせいにしよう』 です。

本当におもしろかった!


若竹 七海
サンタクロースのせいにしよう

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一戸建てを二人でシェア、料理さえ作れば家賃はタダ。そんなおいしい話を見逃す手はない―。というわけで、気はいいけれど変わり者のお嬢様・銀子さんの家に居候することになった私。しかし、引っ越し早々、幽霊は出るわ、ゴミ捨て場の死体騒動に巻き込まれるわ…なぜかトラブルが続発。郊外の平凡な住宅地を舞台に、愛すべき、ちょっと奇妙な隣人たちが起こす事件を描くミステリ短編集。

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ハムレットと同じ問題がこの本では扱われている。そう思いました。

お師匠にあたる先生が生きていたならば、

初めて薦めることができた本になっていたかもしれません。

それだけ人間関係の本質に迫った本に感じました。


読んでいるうちに何度と無く冷や汗が流れ落ちました。

ミステリ部分はあくまで 《日常の謎》、銀子さんという同居人との気の抜けるような会話、

そういった楽しさの端々にグサリと突き刺さるナイフのような言葉があります。


そういった言葉を目にするたびに、僕は、

生きていく自信を無くし、

なんだか今まで間違って生きてきたと感じるわけです。

確かに間違って生きてきました。


『死んでもなおらない』 という作品が言うとおり、

たとい僕が死ぬようなことがあっても、やっぱりこの性格は治らないわけであって、

なんだかなあ、と思ってしまうわけです。

生きていくことを考えさせる推理小説作家さんって他に居ないんじゃないでしょうか?


若竹さんの推理小説はそういったことを考えさせてくれます。

だから、心の底からオススメしたいと自信を持って言えます。


つらつらと自分の感じたことを書いてしまいましたが、とにかくおもしろかったのです。

作品についてのよりアツい感想は、カラクリリリカルの記事をお読みくださいませ。


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2006-04-30 19:43:55

泡坂妻夫 『蚊取湖殺人事件』

テーマ:ミステリー小説

働き始めて一ヶ月、職場で付いたあだ名が 「ジェントルマン」 ・・・

本名より長いあだ名って考えものな気がする。

仕事にバドミントンに忙しく、もっぱら短編集ばかり読んでいる会長Pです。 こんばんは。


さて、本日読み終えた一冊は、泡坂妻夫さんの 『蚊取湖殺人事件』

書店で見かけた瞬間、迷うことなくレジに持っていける作家さんがいる。

それって幸せなことですよね。


泡坂 妻夫
蚊取湖殺人事件
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スキー場にやって来た慶子と美那。二人はゲレンデならぬ氷上で絞殺死体に遭遇してしまった。被害者の首には包帯が!?警察は二人を疑っているらしい。そこで彼女たちは身の潔白を証明するため、スキー場で知り合った男と協力して犯人捜しを始めるが…(表題作)。「謎解き」「奇術」そして「伝統職人もの」、バラエティに富んだ泡坂マジック、巧みの世界。
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決して評価が高いとは言えない作品群なのかもしれませんが、

僕個人の意見としては、とてもとても楽しく読めた一冊でした!

二時間弱で全て読みきれてしまう楽しさ、手軽さ、

そしてそれらの裏には決して表面にはあらわれない作家の巧さがありました!


さっそく読後感想文に入ります。


《読後感想文》


  雪の絵画教室

    一言で言ってしまえば雪密室もの。盲点とはこういうところにあるのかー、と感心しちゃいました。

    雪密室と絵と事件を結び付けてしまう泡坂さんに感服。

    『空中朝顔』 や 『椛山訪雪図』 のような妖しいまでの美しさとは違う、

    とこかしら牧歌的な面白みのある作品でした。

    出てくる刑事は 『煙の殺意』 で出てきたある刑事さんです。


  えへんの守

    泡坂さんの芸は見たことも無く、実名で出されている著作を手に入れたいと苦心しております。

    この作品は、奇術師としての泡坂さんの好みがにじみ出ているように思えます。

    型にはまった伝統芸能の粋に達した奇術も良い、ショービジネスの奇術も良い、

    だけど一芸に打ち込んだ奇術師の "一芸" が最もおもしろい! そんな印象を受けました。

    一度で良いからそんな奇術を観に行きたいです。


  念力時計

    曾我佳城さんを偲び、思わず涙が一筋・・・

    この作品は 『奇術探偵曾我佳城全集』 と世界を同じにする怪奇小説なような感じです。

    奇術道具愛好家の社家さんが経営する 「機巧堂」、そこに集まる奇術愛好家たち。

    そんな彼らの元に例のミステリーニに関わる奇術道具が・・・ ぐっときます。


  蚊取湖殺人事件

    純然たる犯人当てもの。泡坂さんの作品は色艶があり、人物の心情の描写があり、

    事件には必ず幻めいたものがあり、それでいてどこまでも本格・・・

    まさに理想的な作家さんなわけですが、そんな泡坂さんの犯人当て。

    《問題編》 と 《解答編》 に分かれていて、とっても燃えました!


  銀の靴殺人事件

    奇術師という観点から様々な謎とめくらましを作品内に散りばめる泡坂さん。

    この話で見せてくれた幻影は煌びやかにして見事なものでした。

    なんとなく、エドガー・ドガの作品が脳裏に浮かんで離れない話でした。


  秘法館の秘密

    惣太郎は三十センチほど上に飛びあがった。富子は肥っているので十センチほど飛びあがった。

    こんな文章がとても好きです。まじめな場面であるにも関わらず、ずっこけてしまう描写。

    稚気溢れる内容に加え、本格的な謎と解決が魅力の短編。


  紋の神様

    この話を読んで、女性には着物を着ていただきたいと思わない男性はいないはず!

    紋章について細に入って書かれているだけにも関わらず、

    その文章の隙間隙間からは艶やかな女性の魅力が漂う。

    うーん、これは見事、と思わずうなってしまいました。



やはり泡坂さんは素晴らしい、最近はミステリ好きというより、泡坂さんが好きなのかも?

なんておもうようになってきてしまいました。

ヨギガンジーのしあわせの書、見つけて買いたい!


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2006-04-23 18:30:48

泡坂妻夫 『湖底のまつり』

テーマ:ミステリー小説

副会長のBに就職祝いとして頂いた記念の一冊。

B曰くに 「めくるめくるめくるめくるめく」 推理小説とのことでした。

何だかよくわかりませんが、読み終えて、その意味を体感したように思えます。


本日紹介しますは 泡坂妻夫さんの 『湖底のまつり』 です。

これはすごい一冊だー!


kotei
泡坂 妻夫
湖底のまつり

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旅先で突然増水した川に流された若い女性紀子は、投げられたロープに縋り救助された。その夜助けてくれた若者晃二に身をまかせるが、翌朝彼の姿は消えていた。祭で賑わう神社で晃二の消息を問うと、ひと月前に毒殺されたのだと告げられる。では昨日の人物は何者なのか。文学的香気を漂わす描写のうちに著者の仕掛けた謎があなたを惑わす。

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かつて中井英夫が「マジック」と評した 泡坂妻夫の 『湖底のまつり』。

相当の期待をもって読み始めましたが、その期待を大きく上回る一冊でした!


なんだろう、この眩暈感・・・ なんだろう、この幻惑感・・・

めくるめく物語の奔流にのまれ、気がつけば、華麗な幻想の世界を見ていました。

『湖底のまつり』 泡坂さんの最高傑作群の一つに入るのではないでしょうか!?


解説にあるとおり、一ヶ月前に死んだはずの 「晃二」 の正体を探る小説なのでしょう。

しかし、そういった探偵要素はきっかけにしか過ぎず、

幾重にも重なる物語そして眩暈感、これらに主眼が置かれているのかもしれません。

匂い立つ文章そして謎、最高級品だと思います。


中でも、紀子を初めとする女性の心の機微、その巧緻さは天下一級。

これほどの色気を感じたことは今までありません。

遠くから聞こえてくる祭囃子のような文章・・・


謎解きというよりも、幻惑され翻弄される快感を感じる物語。

数理的ロジックや分析的なものではなく、あくまで艶かしくも妖しい幻想美。

泡坂妻夫の描く幻想美の頂点がここにある気がします。


もう何をどう紹介して良いのかわかりませんが、

とにかく未読の方は是非読まれると良いかと思います。

間違いなく本棚に一冊あるべき小説です!


就職祝いにこれほど素晴らしい本を選んでくれたBに感謝。


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2006-04-22 12:13:56

若竹七海 『クールキャンデー』

テーマ:ミステリー小説

最近、風邪を引いたのか、咳が出てきたので、咳が酷くなる前に眠ってしまう作戦中。

おかげさまで推理小説をほとんど読みすすめられていません。

『湖底のまつり』 の世界に迷い込んだ夢をみたりと、ちょっと危ないわけですが、

まあ、元気にやってます。



本日紹介しますは 若竹七海さんの 『クールキャンデー』 です。



coolcandy
若竹 七海
クール・キャンデー
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「兄貴は無実だ。あたしが証明してやる!」誕生日と夏休みの初日を明日に控え、胸弾ませていた中学生の渚。だが、愉しみは儚く消えた。ストーカーに襲われ重態だった兄嫁が他界し、さらに、同時刻にそのストーカーも変死したのだ。しかも、警察は動機充分の兄良輔を殺人犯として疑っている!はたして兄のアリバイは?渚は人生最悪のシーズンを乗り切れるか。
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「14歳の少女渚の味わう最悪の夏休み」 を描いた推理小説。

この読後感、若竹さんの作品ならではの感です!

そっけなく積まれた物語が、最後の最後で反転大崩壊・・・

毎度のことではあるけれど、若竹さんの作品には驚かされてばかりです。


さて、今回の 『クールキャンデー』 ですが、

おそらく ≪葉崎シリーズ≫ に入るのかもしれませんね。

舞台は鎌倉近辺の葉崎市でした。


じりじりと照り付ける日差し、蒸し暑さ、ギラギラと照り返す波。

そんな雰囲気の中、氷のように冷たい事件が起きるわけです。

渚の熱い行動力で事件は徐々に溶け出し、最後には核だけが残る。

その核のキツイことキツイこと・・・


小説内の各所各所に、この結論に達するにふさわしい条件が描かれているわけですが、

どうしてそれに気が付かなかったのか、若竹さんのうまさに感服。

「あ、そういえばそうだったね」 と思わず呟いてしまいました。


読み終えて一見単純な推理小説かと感じてしまうかもしれませんが、

小説内にちりばめられた言葉を収集し分析すると、

この話のおもしろさがどんどんにじみ出てくる!!

するめみたいだ! ・・・なんて言うと一気に魅力がなくなりますね;


味があるんですよ。


何よりも嬉しかったことは、『クールキャンデー』 の中である小説が出てきてました。

その小説とは、泡坂妻夫さんの 『湖底のまつり』 でした!

何とも奇遇、現在読んでいる小説がタイムリーに出てきたので、飛び上がる嬉しさ!

泡坂さんも若竹さんも本当に最高の作家さんです。


紹介しようにも中編小説なので紹介しづらいわけですが、

賞味一時間、とても楽しく読みきれました。


時間が無い人、若竹さん好き、夏が好き、そんな方は買いだと思います!


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2006-04-17 18:24:18

米澤穂信 『夏期限定トロピカルパフェ事件』

テーマ:ミステリー小説

昨日、バレエ鑑賞をした帰りの電車で 『春期限定いちごタルト事件』 を読み終わり、

その後、その日のうちに読破してしまいました。

話の運びがうまく、まるでライン下りを愉しんでいるかのように、あれよあれよと話が進む。

「とりあえず一章」 と読み始めると、三章くらい読んでしまう気軽さがあります!


何の話かというと、米澤穂信さんの 『夏期限定トロピカルパフェ事件』 です。

いやはや、おもしろうござんした。


米澤 穂信
夏期限定トロピカルパフェ事件

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小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を! そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは<小佐内スイーツセレクション・夏>!? 待望のシリーズ第二弾。

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『春期限定いちごタルト事件』 がその名前の示す通り、

いちごタルトのような爽やかさと甘ったるさを感じさせるものであったのに対し、

『夏期限定トロピカルパフェ事件』 は、まさに南国フルーツそのもの。


僕の南国フルーツに対する考え方は、この小説のラストで感じたものと同じであるため、

題名と作品全体が合致した良作だと思ったのですが、皆さんはどう感じましたか?


デビュウ作 『氷菓』 や続編の 『愚者のエンドロール』 にも見られるように、

米澤さんの作品からは 「ミステリのおもしろさ」 を開拓する意思が感じられます

『夏期限定』 からも同じ意気込みを感じることが出来ました。

その意気込みを感じるだけでも本作は買う価値があると思います。


肝心の内容ですが、前作にも増してキャラクター性が高くなったような気がします。

それを評価できるか否かは、各キャラクターに対する思い入れ度に依るかと思います。

僕は地の文に少々のつっかかりを覚えながらも、全体としては楽しんで読めました。


謎に関しては 『春期限定』 の方が熱中して楽しめたかもしれません。

しかし、今回の "シャルロットだけはぼくのもの" と "シェイク・ハーフ" この2つは秀逸!

まあ、"シャルロット~" は出てくる 「シャルロット」 というスイーツがおいしそう!って話なのですが;

それだけじゃない、推理合戦のように静かなバトルもあるので、楽しいですとも。


"シェイク・ハーフ" に関しては、昔からある探偵小説そのもの!

なんだろう、このワクワクする感じは・・・ なんだろう、このページをめくりたくない気持ちは・・・

提示された謎を楽しんで解く、そんなことを思い出させてくれた話でした。

不謹慎な話ですけれど、小説は小説として割り切って、存分に楽しまないともったいないです。


さて今回の目玉ですが、『春期限定いちごタルト事件』 でもそうであったように、

ラストの一話 "スイート・メモリー" に焦点が集まるかと思います。

『春期限定』 を読んだ後や、浮いた一文が目についた方は予測がついてしまうかもしれませんが、

そんなこと無粋に追求せず、思いっきり驚いてみたらどうでしょうか。

驚けた方は絶対に 「おもしろい!」 と思うはず!


さてさて、そんな目玉を通りこし、余談の域に入ります。

「こんなものかな」 と 『春期限定』 ではスルーした問題について (ネタバレ反転):


  小鳩少年と小佐内さんの2人は依存関係でも恋愛関係でもなく、

  互恵関係にあると本文でくどいほど説明されていますが、

  『春期限定』 や 『夏期限定』 を読む限り、どの辺りが互恵関係なのか謎でした。

  「2人は完璧に依存関係にある」、僕はそう感じてしまい、

  地の文を読むたびに違和感をずっと感じ、つっかかりつっかかり読んでしまいました。

  ・・・が、『夏期限定』 ではその違和感が解消されており、とても好印象!

  今回のオチの付け方で、ますます米澤さんが好きになりましたとも。


例のごとく、主観的な感想ですが、個人的に不満が解消されたので、とてもよかった!

春期・夏期と来たならば、おそらく秋期・冬期と続くのかもしれませんが、

続いても続かなくても、このシリーズはおもしろいと思います!


甘党の皆さん、絶対に買いだと思います。


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