2006-01-23 19:03:26

ディケンズ 『オリバー・トゥイスト』

テーマ:ディケンズ

どうやら映画化に伴って、岩波文庫から復刊するらしいです。


そんなわけで、今日はディケンズの 『オリバートゥイスト』 を紹介。

チャールズ・ディケンズ, 北川 悌二
オリバー・ツイスト (上)
チャールズ・ディケンズ, 北川 悌二
オリバー・ツイスト (下)

『オリバー・トゥイスト』 の話をする前に少々作家ディケンズについて補足

ディケンズは19世紀イギリスを代表する作家ですが、

それと同時にポウに次ぐ、探偵小説黎明期を支えた推理小説作家でもあるのです。


イギリス初の長編推理小説は、ウィルキー・コリンズ 『月長石』 と言われています。

実際そうで、ディケンズはコリンズと文通し、その推理小説という小説の構造に興味を持ちました。

そこで生まれた純粋な短編推理小説が、ディケンズのHaunted Down 『追いつめられて』 です。


最も注目すべき点は、ディケンズの 『バーナビー・ラッジ』 とミステリの父ポウとの関係でしょう。

『バーナビー・ラッジ』 は言わば歴史小説の形をとった推理小説なのですが、

その 『バーナビー・ラッジ』 の第一話が雑誌に掲載されたとき、

それを見たポウがトリックを見破り結末を言い当てたことはあまりにも有名。


ディケンズは他にも、史上初の人間性を持った探偵役バケット警部の出る 『荒涼館』 や、

未完の長編推理小説 『エドウィンドルードの謎』 などなど、多くの推理小説を世に出しています。


彼の最も初期の推理色の強い作品 『バーナビーラッジ』 の発表された年は 1841年

世界初の推理小説と言われるポウの 『モルグ街の殺人』 の発表年も 1841年

この符号をどう解釈するかは自由ですが、ディケンズが推理小説作家でもあったことは確かなのです。


そのディケンズの名作 『オリバー・トゥイスト』 が新しく映画化されたようです。

以前にも 『オリバー!』 という題名で映画化はされているのですが、

より原作に近い内容になっているのではないでしょうか。


そして、その映画化に伴い、岩波から文庫で再出版されるもよう・・・

訳は北川悌二さん。北川悌二さんの訳は味わいがあり、原文を想起させる興味深いものですが、

いかんせん今の人には受け入れられる訳では無いと思います。

むしろ中村能三訳の方が・・・なんて思いますが、欲張りは言っていられません。


映画を見る前に一読いかがでしょうか?

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2005-08-30 21:17:28

ディケンズ 『荒涼館』

テーマ:ディケンズ
今日ご紹介するのはディケンズの 『荒涼館』 Bleak House です。
Charles Dickens
Bleak House

この作品、だいたい『ディヴィッドコパフィールド』が終わるやいなや書き始められたようです。

しかし 『ディヴィッド』 で見られたような明るさや教育問題などが

この作品で煮詰められている気配はありません。

そう言った点で、この 『荒涼館』 では作家が別なことを表現したかったと考えられます。


この作品の構造上のおもしろいところは、

半分が語り部によって、あとの半分が主人公エスタサマソンの一人称で語られているところです。

語り部とエスタの回想が交互に繰り替えされ、ストーリーが進行していきます。

また、語り部のパートは現在形、エスタのパートは過去形と、時制の工夫もみられます。

作家ディケンズが構成に気をつけて計画的に書いていたことが伺い知れます。


この作品、論文の中では推理小説(探偵小説)として言われることがあります

時期的にはポウの 『モルグ街の殺人事件』 (1841) の次であるので、

二番目の探偵小説、となるのでしょうか。

探偵たちの手で徐々に明らかになるエスタの出生の謎、

読んでいて引き込まれます。


物語の本筋は ジャーンディス対ジャーンディス という訴訟問題で、

その莫大な遺産をめぐって果てしない訴訟が続く。

いわば法の遅延が問題提起になりそうなものです。

しかし様々な金銭問題や人間関係を通して、

プロットというプロットはエスタの出生およびその生き方に収束していきます。


謎の人物ニモ Nemo (ラテン語で no name の意)や自然発火、

植民地への援助や天然痘など伝染病のこと。

19世紀イギリスのあわただしさやいかがわしさ、

そういったものが作品のあちらこちらに影を落としています。

『ディヴィッド』とは全く色味の違う作品であることがわかります。


まさに題名の通りの作品です。

長いものですが、一度読んでみてはいかがでしょうか。

↓邦訳があるのでご参考までに。

C.ディケンズ, 青木 雄造
荒涼館 全4巻セット
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2005-08-27 21:52:05

ディケンズ 『憑かれた男』

テーマ:ディケンズ

ディケンズ第二弾は 『憑かれた男』 The Haunted Man です。

Charles Dickens
Christmas Stories: A Christmas Carol, the Chimes, the Cricket on the Hearth, the Haunted Man, a Christmas Tree, What Christmas Is As We Grow Older, the Poor Relation's

この作品、1843-49年の間に出されたクリスマスブックスの内の一編なのです。

クリスマスブックスには有名なもので 『クリスマスキャロル』 なども収められています。

『憑かれた男』 はあまり長くなく、とても読みやすい部類に入るかと思います。


この 『憑かれた男』 僕は一番好きです。

評価はそれほど高くはないけれど、

それでも苦悩の内に人の内面に迫ろうとする作家の姿勢には感銘を受けます


この作品を取り上げた理由は好みだからというわけではありません。

『憑かれた男』、実は作家のもう一つの自伝的作品とも言える作品なのです。

ちょうど 『デイヴィッドコパフィールド』 がディケンズの明るい面を表現しているとすれば、

この 『憑かれた男』 は暗黒面を映し出したものといえます。

水素と反水素のように表裏の関係にある作品です。


ストーリーがおもしろいのであまり紹介はできませんが、

最初のシーンで、疲れきった男が自分の影(悪魔)と語り合う姿

鳥肌が立ちます。

悪魔との対話や浮浪児とのふれあいなどで、

徐々に主人公が何に心を悩まされているかなどが明らかになっていく、

文学性の高い短編なんじゃないかなと思っています。


ピンとこられた方もいらっしゃるかと思いますが、

この自分の影(悪魔)との対話というシーン、

カラマーゾフの兄弟におけるイヴァンの悪魔との対話に似ていると思います。

ディケンズを読み漁ったというドストエーフスキイがこのイメージに影響されたということは

十分にありえることだと思います。

発展性と内面の表出というとてもいいイメージがあります。


おそらく『憑かれた男』のみの邦訳はあぽろん社から出ているこれだけかもしれません。

興味を持ってくださった方、是非買って読んでみてください。

チャールズ・ディケンズ, 藤本 隆康
憑かれた男
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2005-08-26 16:14:18

ディケンズ 『ディヴィッドコパフィールド』

テーマ:ディケンズ

ディケンズを扱うと言いつつ数ヶ月、やっと一つ二つ紹介できるくらいになりました。

第一弾は 『ディヴィッドコパフィールド』

Charles Dickens, Ben Kingsley
David Copperfield

だいたい1849-50年くらいに発表された小説です。

もっともディケンズの活動が活発であった時代の一つに書かれたものです。


ディケンズの特徴として 「長い」 ということが挙げられます。

ペンギン版でぎっちり716ページ・・・


分厚いペーパーバックを手にした瞬間、戦慄に似た感を覚えます・・・


しかし!

ディケンズの最も優れた特質として 「決して飽きない語りのテクニック」 があります!

似た時代を生きた詩人バイロンの語りのテクニックに通じるものがあります。

脱線に継ぐ脱線、しかしそのどれもが本筋と深く絡み合い、

どの挿話にもドキドキわくわくしながら没頭してしまう。

これがディケンズのすごみなのです。おそろしい。


今回の『ディヴィッドコパフィールド』も同様の魅力に溢れています。

主人公のディヴィッドは、批評家の批判にもあるように、無個性であり、

ちょっと物足りなさを感じる人もいるかもしれません。

しかし、そのディヴィッドを引き立て、彼独自の人格の良さを引き出すサブキャラ

このサブキャラの濃さがなんともいえない!


美辞麗句、美文体で話すミスタ・ミコーヴァ。

悪名高き寄宿学校セイレムハウス校長ミスタ・クリークル。

信義に篤く、足るを知る友トラトルズ。

バイロン的英雄性を持つスティアフォース。

そして英文学史上に名を残す偽善者、ユライアヒープ。

この人物たちの描写一つ一つに命が篭っています

決して飽きる事のできない顔ぶれ。


『ディヴィッドコパフィールド』 の特徴は他にもあります。

最大の特徴と言えるものは 全編一人称で書かれている ということです。

一人称 I を使い過去形で語りながら、

ふとした瞬間に現在形で語るその口調はまさに神業

まるで自分の実体験のように錯覚します。


I を使っていること、ディヴィッドの幼少期の経験、

この両方から『ディヴィッドコパフィールド』はディケンズの自伝的小説と評されます。

実際には作家の人生と大小の点で異なりますが、

作家が誰にも言えない幼少期の苦痛をこの小説で表出することで、

カタルシスを得ようとしていたことは明らかです

しかし、実は自伝的小説はこれだけに留まらないことも言っておきます。

その小説については日を改めて書きます。


『ディヴィッドコパフィールド』 秋の夜長に向けて枕元に用意してみてはいかがでしょう。

19世紀イギリスの下層~中産階級までの描写に優れます。

チャールズ ディケンズ, 石塚 裕子
デイヴィッド・コパフィールド〈1〉
邦訳もたくさん出ています。
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