仁木悦子 『棘のある樹』
テーマ:ミステリー小説私はジョロを放りだし、私たちをとりかこんでいる大小さまざまなシャボテンどもを、
いまいましくにらみまわした。
( 地の文・仁木悦子の心 )
ジョロやシャボテンといった当時の生きた言葉が文章に表れてくると、
ひどい事件であるにもかかわらず、なぜだか微笑ましく思えてしまう。
そんな仁木さんの文章の魅力に僕はたまらなく引かれてしまう。
本日紹介しますは、仁木悦子さんの 『棘のある樹』 です。
写メールでの画像であるため粗いのはご容赦。
それにしても黒猫いいなあ。
- 仁木 悦子
- 刺のある樹
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知る人ぞ知る名探偵コンビ、仁木雄太郎、悦子兄妹を、ある日一人の紳士が訪ねてきた。ここしばらくの間に何度も命を狙われるような体験をしたので相談に乗ってほしいというのだ。
紳士の話では、一度は、横丁から飛び出してきた車にひき殺されそうになり、二度目は川の中に突き落とされたという。しかも最近、怪しい男に自宅を覗かれるに及んで、遂に仁木兄妹を頼ることにしたわけだ。話を聞いた兄妹は、早速事件解決に乗り出した。だがその矢先、紳士の妻が何者かに絞殺されるという事件が起きた・・・・。
軽妙なストーリー展開と綿密な構成、燻銀の巧さが光る傑作長編推理!
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仁木さんを「日本のクリスティ」と評する時もあるのですが、構成能力や語り口のやわらかさ、
一見アクロバティックに思えがちでもその実手堅いトリックを使っている方法、
クリスティの筆を思わせる筆力を感じることから、旨い喩えだと思います。
今まで読んだ仁木さんの作品を通して言えることに、サスペンスドラマを見ているような、
妙な現実感を小説内に感じる瞬間があります。
前述のシャボテンなどの愛らしい言葉や、雄太郎の植物に関する知識など、
様々な事件とは関係のない魅力がそうさせているのでしょう。
『棘のある樹』 は雄太郎が温室でシャボテンに水遣りをしている場面から始まる。
乾燥した気候を好むシャボテンに水をかけてやってもいいのだろうか?
そう疑問に思う悦子に雄太郎は 「これだから素人は困る」 といった顔つきで
どういったシャボテンに水が必要とされているかについて説明する・・・
なんだか一つ頭が良くなった気分にさせられました。
今回の事件は、ポワロが乗り出してきてもおかしくないくらい本格的な事件でした。
絞りきれない容疑者、崩せないアリバイ、そしてちらつく謎の人物の影・・・
黄金時代の香り漂う純粋なwhodonitののおもしろさがあります。
また、探偵役の失敗や、不謹慎なほどに興味を持つ悦子の姿など、
作者の発するメッセージにハッとさせられてしまう瞬間があります。
ちょびっとほろ苦い瞬間を味わうことで、より二人の魅力が増しているのかもしれません。
解決後の雄太郎の後姿に人間的な成長を見ることができました。
まるで映画やドラマを見ているような、とても安定した筆力に乗せられてしまい、
ひさびさに全てを忘れて読書に没頭してしまいました。
仁木さんの小説は安心して読むことができ、純粋に楽しむことができて嬉しいです。
この本を惜しげもなく僕にくださった副会長Bに感謝!
whodonit や whydonit 、クリスティが好きな人は買いです!





1 ■「刺のある樹」
読んだ記憶はあるのですが、筋立てが思い出せなかったので(あるいは積ん読状態だったのかも?)今再読中です。