第3回大学生のための論文コンクール(後編) | プロパンガス

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いっしょうけんめい働いた人が
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【3】 Prospering Tokyo


(1) Urban Parks
 東京都建設局公園緑地部が発行している、『東京都の公園』というパンフレットによれば、都内の都市公園を総合すると、その面積は約3000haになるという。この大きさはほぼ杉並区に相当する。また対象を山手線の環内(代々木公園を含む)に限定しても、合計約192haもあり、これは、後楽園球場の150倍いじょうである。(つまり、一時的には800万人を収容できる広さだ。)

 もちろん、この全てを宅地化せよろいうわけでもなく、すべてをビジネス街にせよというわけでもない。ここで言いたいのは、日本人は早急に発想転換しなければならないということだ。

 巷では、盛んに社会資本の充実が叫ばれている。確かに日本は、他の先進諸国に比べてフロー経済では勝っているもののストック経済では完全に立ち遅れている。都市公園とてその例にもれず、相対的には極めて不充分である。

 公園にはいくつもの機能があり、大気の浄化や景観の美化に役立つ。そして最大の機能は、市民の休息・憩いの場となることであろう。しかし、ここで考え直さなければならない。住むところさえない人間にとって、憩いもへったくれもないのだということを。東京都は昭和75年までに都市公園の面積を都民一人あたり6㎡にすることを目標とした計画をたてているらしいが、ほとんどプッツンだ。6㎡を3㎡に変更し、その分の土地にマンションを建設すれば、建ぺい率50%、4階建てで200万人以上が住める。しかもこれが公団となれば、都民は公園と住居のどちらを選択するか、答えは明白だ。それともう一つ。都心に公園は必要ない。都心の公園を利用するのは、都心の住民だ。恵まれた境遇にある都民に、わざわざ都が憩いの場を与える必要はない。どうしても都市公園を作りたいなら、都心から90分、120分、150分というあたりに建設し、日頃長距離通勤の重労を担っているサラリーマンたちにゆっくり骨を休めてもらえばいい。行政とは、そういうものだ。

(2) Campus Removing
 都内だけで、大学のキャンバスは250以上もある。その1つ1つもかなり広い。場所もよい。渋谷の青学、大塚の御茶ノ水、三番町の大妻、三田の慶応、紀尾井坂の上智、白金台の明学、駿河台の明治、早稲田・戸山・大久保の早稲田etc.数えればキリがないほど。敷地面積はいったいどれ程あるのだろうか。

 大学が東京都にある必要性は、まったくない。だいたい、大学のキャンパスというものは、学問の場所というよりも、学生たちの遊びやサークル活動などモラトリアムライフの場となっている。一般に四年間という期間は学問研究をするためには短すぎる。もしもこの短い期間で集中的に学問を修めようとすると、人間形成の面での大きな障害となりかねない。いっそのこと、遊びやサークル活動を通して、人間づきあいや、社会の仕組みを学び、自分の将来のことでも考えた方がためになる。その意味でキャンパスがモラトリアムライフの場となるのは、悪いことではない。しかし、モラトリアムのために、大切な国民の共有資産であるところの“東京”を提供する必要はない。

 東京都はもちろん、藤沢以東、大宮以南、千葉以西には、大学を建設させず、既設の大学も強制移転させるというのはどうだろう。大学が消えれば、まず広大な敷地が利用できる。都心や駅近くの一等地がビジネス地に転換できるわけだ。しかも、学生が東京から出ていく。住居用地が学生からサラリーマンの手に渡る。特に賃貸住宅では、今のワンルーム中心から、2DK~3LDKレベル中心にシフトせざるを得なくなり、土地運用の利回りが低下し、地価抑制にも役立つかもしれない。あるいは、学生が消えることによって、原宿、六本木、麻布などの若者向け産業が維持できなくなる。いいことだ。いずれの地区も、新しいビジネス街、第3、第4のアークヒルズを建設するには、もってこいだ。学生がいなくなることは、ファッション産業等の若者向け産業にとっての大危機だという意見もあるかもしれないが、心配御無用。この種の産業の担い手たちは、たいへんにユニークな感性の持ち主であり、フロンティア・スピリットに溢れている。必ずや、大学・学生とともに地方に進出し、地方文化・地方経済に貢献してくれるに違いない。一方、「大学をレジャーランドとして利用している学生にはそれでいいかもしれないが、我々のように真面目に学問研究に取り組んでいる者にとっては、大変な迷惑だ」という人も少なくないだろう。だが勘違いしてもらっては困る。私が移転先として挙げたのは、地方とはいえ、北海道や鹿児島ではなく首都圏近郊である。必要があるなら、電車に乗って東京まで出かけて行けばよい。サラリーマンは、毎日その距離を通勤しているのだ。



(3) Shitamachi of Tokyo

 山手線を一周ぐるりと回って気付くのが、南西地区と北東地区のギャップ。池袋~秋葉原を結ぶラインの北東側には、ほとんど高い建物がない。特にひどいのは上野。これが本当に、北国への玄関かと疑いたくなる。銀座線に乗っても同じこと。渋谷から神田ぐらいまでは非常に都会的な雰囲気があるが、神田~浅草間は、駅もさびれており、トンネルもボロボロ。これはいったい何なのだ?この上野・浅草地域の再開発は急務だ。一体いつまで「下町」にこだわっているつもりなのだ。東北線、高崎線、常磐線、東武、京成が運び込めるサラリーマンの量はポテンシャルには多大だ。早急に上野・浅草地域にビジネス基地を建設し北関東・房総地方の労働力を有効活用しなければならない。しかも、前述のように、新潟や仙台からの労働者が新幹線を利用してやって来るようになれば、上野はますます発展・再開発を求められるようになる。だがJRなどは、いつまでも上野依存では自社の損害につながると判断し、東北・高崎両線のターミナルを池袋にシフトしようとしている。新幹線の利用客も、東京駅乗り入れによって奪われてしまうかもしれない。そうなってしまってからでは遅すぎる。上野・浅草地区は、汐留よりも広く幕張よりも都心に近い。このビジネス適地を、パンダとスキヤキとキモノとカミナリモン・ゲートだけの街として退廃させてしまうか、再開発して飛躍的に増大するインテリジェント・ビル需要に応え、ビジネス都市東京の1つの中心とするか判断は容易であろう。



(4) Stop! The Tax Reform

 どいつもこいつも、税の本質についての理解がないから困る。「来るべき高齢化社会に備えて、間接税の比率を引き上げる必要がある。」と。どういう意味だ?なるほど、「勤労者の数が減少する以上、その勤労者に高い租税負担ウェイトをかけると、結局、税収不足に陥る」という説明は分からないでもない。しかしこの論法、裏を返せば「勤労所得に課税してもダメなので、消費への課税にしよう。消費課税なら、所得の有無にかかわらず徴税できる。所得のない老人にも、税をしっかり払ってもらおう。」という意味だ。年金生活者から税金をとって国を支えるなんてこと、本気で考えているのか。バカも休み休み言い給え。

 それから、土地ころがしに対する課税。確かに、地価抑制には役立つかもしれないが、税の意味を取り違えている。「国の(あるいは地方自治体の)営みのために必要なお金をそれぞれの経済力に応じて負担し合おう」というのが税だ。社会悪根絶のための手段ではない。税金は罰金とは違うのだ。この点では『農地への宅地並課税』論言い出しっぺの大前研一氏も過ちを犯している。氏の言う通り首都圏から農業を廃絶するのは、大切なことだ。だが、農家にとっての農地への課税は、サラリーマンにとってのネクタイへの課税のようなものであって、ほとんどイヤガラセにすぎない。『ゼロベースでの思考』は結構だが税と罰金とイヤガラセの区別くらいはしてほしい。

 では、日本に本当に適した税制改革とは、どのようなものか。

 宮沢大蔵大臣の『国民資産倍増計画』を始めとして、「日本経済の重点をフローからストックへ移行すべきである」という意見が多く出されている。そこのはフロー経済がいつまでも繁栄を続けるという大きな誤信があるのだが、少なくともストック経済を重視していこうということには変わりない。現行税制では、所得税と法人税が中心となっていることからも明白なように、フロー経済に対して課税がなされている。しかし、経済成長の中心をフローからストックに移していくなら、課税対象もフローからストックへと切り換えて行く必要がある。(その意味では、売上税などは完全に時代に逆行していると言える) ストックへの課税、と一口に言ってもいろいろある。貯蓄残高、有価証券、貴金属などへの課税も考えられるが、やはり、固定資産への課税がメインになる。最近、固定資産税減税という案も出ているが、とんでもない。即刻、『第三次地租改正』を断行すべきである。いまや、日本全土の地価総額は軽く1000兆円を超えている。税率を「実勢地価の3%」とすれば、税収額は3040兆円となり、なんと国家予算から国債費を除いた分に匹敵する。新間接税はおろか、所得税も不要になる。あるいは、税金は誰もが払いたくないものだから、この地租導入は地価抑制にも役立つかもしれない。

 地価の算出基準、徴税方法、公私合弁法人への課税等、いろいろな問題は残っているが、調整を重ねることによって、地租は必ずや、21世紀の日本を支えうる税制となるだろう。



【4】 Epilogue



 以上、私が述べてきたことを箇条書きにまとめると、

日米間の貿易摩擦を解決売る手段としては円高ドル安などはマイナスにしかならず、農産物輸入の全面自由化以外にはあり得ない。

農業過保護は、全くナンセンス。段階的にでもよいから米の輸入を解禁しなければならない。

名古屋、新潟、仙台と東京間の新幹線を大増発し、あるいはリニアモーターカーで結びそれぞれの都市を巨大住宅都市として再建設する。

ほぼ杉並区の面積にも匹敵する都内の都市公園の、せめて半分でもよいから、住居、ビジネス用に解放してくれ。山手線環内等の都心住民に、行政が憩いを提供する必要はない。

都心の一等地を占有する大学キャンパスを郊外に追放せよ。大学生がモラトリアムライフをエンジョイするのは悪いことではないが、大切なビジネス適地で遊ぶのはヤメテクレ!

上野・浅草地区はいつまでも下町やパンダにこだわらず地の利に見合うだけの貢献をしてほしい。

直間比率の見直し等、小手先の改革だけではまるで不十分。『第三次地租改正』による抜本的な税制改革を!



 大学生が、乏しい情報、貧しい知識、稚い思考力からひねり出した拙論であるため、現実から乖離したものであり、また、多数の利益のために少数の犠牲を容認しているような面も多々ある。しかし、その分かえって、原点に帰った、抜本的な、思い切った意見でもある、と自負している。

 都市再開発、都市活性化に直接関与されている諸氏にとっての「木から落ちたリンゴ」となることを願いつつ、ワープロのキーボードから指を離すことにする。