最後に第15回決勝戦について考察する。前回、散々罵詈雑言を吐いてしまったので、非常に感想を述べ辛くなったが、具体的に局面を挙げるのはやめて、投了条件の傾向だけを分析してみることにする。
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1) 激指:全勝なので不明
2) KCC将棋:詰め上がりまで指す (激指戦のみ)
3) IS将棋:詰め上がりまで指す (激指,KCC)
4) YSS:3手詰めまで(激指,KCC,IS,GPS)
5) 備後将棋:詰め上がりまで指す(激指,KCC,IS,YSS)
6) TACOS:詰め上がりまで指す(激指,KCC,IS,YSS,備後)
7) 竜の卵:詰め上がりまで指す(激指,IS[*1],YSS,備後,TACOS)
8) GPS将棋:必至(頓必至含む)の段階で投了する
   -激指戦:必至上がりで投了
   -KCC将棋戦:恐らく頓必至に気が付き、水平線効果現出後投了
   -IS将棋戦:水平線効果の1手はあるものの、必至上がりで投了
   -備後将棋戦:必至上がりで投了
   -TACOS戦:3手必至の段階で水平線効果現出後投了
   -竜の卵戦:不明
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調べた限り8分の5のプログラムが「詰め上がり」まで指したのだった。これには全く気が付かなかったが、辛い。実に勝負に辛い。詰め上がりまで指す理由は、相手の時間切れ負けまでを考慮したものだと思われるが、勝負とはそういうもの、勝ちに行くとはそういうことなのだと、改めて認識させられる。但し、GPS将棋の「詰め上がりまで指さない仕様」が決勝最下位になった理由ではないことは確かだ。


全く余談なのだが、決勝の棋譜をざっと見て、不思議な手を見つけた。

・激指-YSS戦:149手目▲13歩不成→何故に不成が優先する!?

計算機将棋同士の対局では、即詰が存在する局面は一瞬で過ぎ去るので、リアルタイムで観測不可能。その場では気が付かないことが殆どである。


[*1] IS将棋-竜の卵戦の、IS将棋側の棋譜では、最終手▲41角成の手が欠けているので注意。

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前項では、作者すら投了した理由が直には判らない模範例を示した。本項では、人の道を外れた[*1]計算機将棋の典型的にして代表的な投了図(下左図)を示し、また、その投了図へ至る即詰のある局面(下右図)も併せて示すことにする。なお、対局者(プログラム)名は伏せることにする。これには深い意味はない[*2]。

さて、何故右図から指し進めて後手の持駒が妙に増えた左図になるのか。人間なら友達を無くす指し方を、そこは計算機、意に介さないのである。

そもそも右図は、普通に詰ませば、「▽97歩▲同玉▽67飛成▲98玉(▲同角だと▽96香▲同玉▽95香まで、▲87桂は▽96香▲同玉▽95歩▲同桂▽85銀まで)▽97歩▲同銀▽78竜右(左も可)以下の13手詰」である。しかし実戦は、「▽97香▲同玉▽67飛不成▲同角▽96香▲同玉▽85銀▲97玉▽83玉▲93飛▽同香▲94銀▽同香▲95桂▽同香▲96歩▽同香」と17手に渡り訳の判らない手順になっている。

初手は歩で充分だし、3手目の「不成」の意味が判らず、かと思えば、93合~94合~95合~96合という連続無駄合。「こいつら、将棋わかってんのか?」とお叱りを受ける詰手順である。これが決勝、大衆の面前で指された将棋ではないことが救いであった。遥々木更津の山奥まで来て、こんな将棋を見せられた日には暴動が起きかねない[*3]。計算機将棋が創り出す棋譜が、人間様に認められる為には、自尊心とは何か、恥とは何か、をまず理解できなければならないのかもしれない[*4]。そして、次のことを決して忘れてはならない。


詰を憎んで、人を憎まず。[*5]


[*1] 計算機が指しているのだがら、人の道は外れて当然ではあるが。

[*2] と書きつつ浅い意味はある。本blogの別の目的の一つに、密かに敵プログラムの陰口を叩くこともあったのだが、選手権参加者の大半に読まれているらしく、そういうことが出来なくなって非常に困っている。

[*3] 奇しくも、この対局は5月4日に行われている。

[*4] と、自分のことを棚に上げる私は管なみである。

[*5] これが今回のオチである。ウケない可能性を否定できない。

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これまで「選手権の実戦に見る必至」をシリーズ化して分析してきたが、今回は少し視点を変えて、将棋プログラムの投了について考察してみる。最初の素材として、第15回選手権二次予選KFEnd-GPS将棋戦(左図)を採りあげてみることにした。

この将棋は、結果的に見れば両者の決勝進出を占う一局でもあったわけで、KFEndにとってはこの一敗が非常に痛かったところだが、逆に言えばGPS将棋が勝ったことは、決勝進出が自力であることを証明する充分な根拠になっていると思う。

さて、ここでKFEndは投了しているが、左図の直前の手は▲68銀打で、それを▽同とと取られたところである。となれば▲同銀で飛車当たりとなり、金銀4枚が守ってまだ粘ばれそうに見えるが、84の飛車の働きが素晴らしく、▽78銀以下必至がかかる。例えばそこで▲59銀なら▽79銀成まで必至、だからといって▲59銀に替えて▲89歩は▽88飛成以下頓死になる。

KFEndは3秒で負けを読み切って[*1]投了している。それはそれで凄いことである。後手玉は王手すら掛からないゼ[*2]なので、逆転筋が全くなく、どう指しても頓死か頓必至になっていることを素早く読み切れたのだと思う。計算機将棋としては極めて異例と言える潔い投了図だ。謎電の、詰め上げられるまで指す棋風とは雲泥の差[*3]である。


[*1] 何故3秒の考慮時間で投了していることが判るのかといえば、KFEnd側のCSA形式棋譜をメモ帳等のテキストエディタで開き、%TORYOの直後にその記録を見ることが出来たからだ。

[*2] 絶対詰まない、の意。

[*3] 但し、過去に1手詰で負けの局面で相手がハングし勝ったことがある。そういう経験的体験のある選手権参加者は結構多かったりする。

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