SPEAR (3)

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選手権まであと10日程となったので、今日はライエルに対するプレッシャ~の総仕上げに入ることにする。年に一度のこの大プレッシャ~は最先端計数将棋学的に恒例化[*1]しつつあるが、逆にコレがなければこのブログの熱心な訪問者に申し訳ないので、全身全霊を込め、入魂のプレッシャ~を掛けるつもりである。先ずはこの10年間のSPEARと謎電の壮絶な順位争いを以下にまとめてみる。


7th
('97)
8th
('98)
9th
('99)
10th
('00)
11th
('01)
12th
('02)
13th
('03)
14th
('04)
15th
('05)
16th
('06)
SPEAR 23 25 25 22 16 20 23 20 16 22
謎電 24 27 15 19 22 27 22 19 17 19

この長期に及ぶ(低レベルな)好勝負が計算機将棋の歴史の中に隠されていることを知っているのは、計算機将棋の神様と真の計算機将棋ファンのみだろう。謎電は去年、2年周期でトータル順位が入れ替わる悪夢を断ち切ることが出来た。残るは直接対決で倒すだけの話となったが、それはSPEARが一次を突破出来ての話だ。以前、「SPEARが一次予選を突破出来ない確率は3割ある」と書いたが、これは何の根拠もなく言っていたわけではない。


何と言っても今年の一次には棚瀬将棋(仮)が居るしマイムーブも決勝に進むことになっている。棚瀬将棋(仮)の二年連続キャンセルは考え難いし、


マイムーブ西村選手も一度開発日誌に書いたことは

命を賭して守る漢、そう、男の中の漢だ [*2]


従って一次予選でありながら決勝に駒を進めるプログラムが2つもあることになり、去年以上の激戦になることが既に確定している。現在SPEARは一次予選中トッププログラムであるから、棚瀬将棋(仮)およびマイムーブに当たる確率は極めて高く、且つこれらのプログラムに対してSPEARが太刀打ち出来るとは到底思えない。そのような理由で、


SPEARが一次予選を突破出来ない確率は3割ある [*3]


というワケだ。が、本当はそれだけが根拠ではない。大体「言ったとおり切れ負けじゃない」とか「BitBoardは非BitBoardの2倍速い」とか「コウフンする」とか言ってて山形大学で助教授が務まっているのが不思議でしょうがない。そいえば、数年前のKFEnd戦の時なんか、サーモメータ有岡選手に向かって「穴熊に組むとは勇気がない」とか負ける前から負け惜しみだかイヤミだか言ってたよな。そんなんで良いのなら俺なんか、


M.I.T.かスタンフォードか、

あるいは早稲田で教授が務まる気すらするよ。


特に早稲田では時々教授の欠員が出るらしいし、大槻教授も早稲田だし、いや、それは冗談だが大槻教授といえば宮城なんだよ、宮城って知ってるかライエル。山形の右隣の県だ。で、大槻教授の日本語、微妙に「北」が入ってるのが判るか、飯田教授もそうだ。その東北独特のアクセントとイントネイションをマスタするか、その区別が出来ない限り、教授にはなれないということだ、多分、きっと。というわけで、頑張れライエル。とにかく俺は二次で待ってるぜ(笑)


[*1] 念の為断っておくが決して高齢化しつつあると言っているわけではない。

[*2] とか言ってサリゲなくマイムーブ西村選手にもプレッシャ~を掛けておく。

[*3] (c)2006 某選手(特に名を秘す)のご発言を、再度参考にさせて頂いた。

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Shore

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うおおおおおおおおおお驚いた。彼はマジだ。


Science Geek!!


謎電の作者、いきなしちょーピンチ。これはヤバ過ぎる。だいたい謎電はShore(旧礒部将棋)に勝ったことがないし(笑) ベストアマチュア賞を獲ったこともある礒部青年のことであるから、将来が楽しみである。Shoreの最終形はまだ良く判らないが、とにかく、好敵手として最先端計数将棋学的に予約。


【追記】 http://ameblo.jp/isobe/entry-10012474467.html
> (5) FPGAで専用プロセッサが作れるよう、シンプルなプログラムにする。

かなり鋭いポイントを抑えていると思う。魚釣りに出掛けるとしよう。


【更に追記】

実は謎電の作者は、試験用にもう一つ評価キットを持っている。左写真は、NiosII評価キット 。デバイスは初代Cycloneの1C12なので、Chrillyの探索コア1つすら入らない小さなものなのだが、簡単な回路の実験用では重宝している。因みにNiosというのは一言でいえばAlteraのソフトコアで、FPGA内にCPUの回路を作って動かすというものである。余談だが、Niosは、FPGAの資源が許す限りいくつでもFPGA内に置くことが出来る。NiosIIはそのVer.2。これを使って探索を行うという目的ではなく、FPGA内にプロセッサを置いておくとデバグは勿論、マルチコア化した時のコア制御・ホスト(メインプロセッサ)間通信用等として使えて便利そうなので簡単な実験用に持っていた。USB接続(電源もUSBから)なので、ノートパソコンで使うのが楽だからである(最近のノートパソコンはRS232Cもパラレルもないので)。これを持って新宿2丁目のVELOCEへゴー(笑)

つい先日、QuartusII Ver.6.0 Web Editionと、NiosII Embedded Design Suite 6.0 Evaluation Edition がリリース されたので、それを使ってちゃんと動くか確認やってて参戦記が疎かになってしまった。結果として一応動くようである。新しい開発環境は、旧版と比べて合成が速く、色々便利になって使い勝手が良さそうである。少し不安はあるもののこっちに移行しようかと思う。


【一応追記】 QuartusII Web Editionの活用方法(ダウンロード~ライセンス更新)
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SPEAR (2)

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選手権まであと3週間となった。ライエルに対するプレッシャ~を更に強めていこうかと思う。とりあえず、前回までの成績をまとめ直してみる。

7th
('97)
8th
('98)
9th
('99)
10th
('00)
11th
('01)
12th
('02)
13th
('03)
14th
('04)
15th
('05)
SPEAR 23 25 25 22 16 20 23 20 16
謎電 24 27 15 19 22 27 22 19 17

3年連続1位差というのは、まったくふざけた話だ。しかも2年周期できれいにトータル順位が入れ替わっている。この悪循環を断ち切るには、第16回の直接対決でSPEARにビシっと勝つしか道はないと謎電の作者は考えている。


去年の選手権での話だが、▲SPEAR▽謎電戦が始まる直前に、ライエルグリムベルゲンさんは次のようにネイティブな日本語で述べています。


勝負は、やる前から決まっている。


あのなライエル。オランダではそういう諺があるのかも知れないが、日本ではそういう言い方はせんのだよ。


A) 勝負は、塵を掃くまで判らない。

B) 勝負は、胃液吐くまで判らない。

C) 勝負は、下駄を履くまで判らない。


さて、どれでしょう。てな冗談はさておき、次回SPEARと当たることがあれば、とっておきの秘策を謎電は用意しているから楽しみにしていてくれ。

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KFEnd

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全世界三千万人の計算機将棋ファンの皆様こんにちは。計算機将棋研究一筋八十余年の謎電の作者です[*1]。今回は、あの「1位・2位を撃破した将棋プログラム」をdefeatしたKFEndをご紹介致しましょう。


はっきり言って謎電最大の好敵手である。いや、強豪であり難敵と言った方が正しいかもしれない。SPEARは勿論、KFEndに勝つまで私は計算機将棋開発者であることを辞めないつもりでいるのだが、今のところその実力差は、実績を見れば歴然で比較しようもないところである。しかし、少しづつながら近づきつつあるので、後ろから追いかける側というのはダウンヒルバトルと同様、楽しみが多いところであると思っている。


と言いながら、作者の有岡さんとは(ほとんど無理矢理)親しくさせて頂いているし、またお世話にもなっている。ので、個人的なことについてはここでは詳しく書かない。多くの開発者が、ABC探索を語らせればMcAllesterの右に出るのが有岡さんだと言っても過言ではないほど只者ではないことを認めるところではないだろうか。それは "Inside KFEnd" を読まれたことのある殆どの方がご存知だと思うところである。但し極く一部、具体的には少年A(特に名を秘す)を除く[*2]


KFEndの魅力は終盤力である。それは一言でいえば、谷川にも似た踏み込みの良さにある。「コンピュータ将棋や囲碁の掲示板」に勝又先生からよせられたコメント(2000/03/16)から判るように、専門棋士ウケするほどの棋風だ。以前、「川端将棋-KFEnd戦に見る名手 」でも書いたが、例の▽53飛を私はリアルタイムで見ていた。その時、丁度勝又先生がこの将棋を解説されており、▽53飛にいたく感心されていらっしゃったのを良く覚えている。恐らく掲示板でのコメントは、この将棋の事を特に指されているのではないかと思うところである。


また、2003年の第13回選手権二次▲KFEnd▽TACOS戦でのKFEndの終盤力を、「佐藤(康)ばりの寄せ」と称されたのは飯田先生である。この将棋の103手目▲14歩から7手必至[*3]を掛ける時、KFEndはほぼ消費時間0で読み切っている(記録上は1秒だが、それはルールなので)。


さて、「あっ」と一言叫んで心臓が1.5秒くらい止まる程個人的に感動したKFEndの将棋を改めて紹介する。左図は、第11回選手権二次▲竜の卵▽KFEnd戦。53手目に竜の卵が78にいた金を79に引いたところ。恐らくこの手は疑問手だが、ここでKFEndが指した次の一手には心底タマゲた。これ以上に絶対的に速い手はないと思えたからである。


▽66角!!


この手が指し過ぎか否か、私ごときでは判断不可能である。しかしながら私にとっては、その手順は魂を揺さぶる魅力的な寄せに見えた。勝負は過程ではなく結果であるとするなら、▽66角こそが「最短の勝着」と言える手であり、谷川の「光速の寄せ」を凌ぐ「タキオン[*4]の寄せ」と称したいところだ。KFEndと比べれば謎電の終盤力は、まだまだターディオン級である。


54手目▽66角以下、▲同金▽77銀▲同桂▽同飛成▲89玉▽97桂打▲同香▽同桂不成▲98玉▽79竜と僅かに10手進めて左図だが、もうこうなるとどうにも凌ぎようがないように思う。最後は、▲97玉に▽95歩以下3手必至。本譜は詰め上がりまで含めて74手で終っている将棋である。図の左右を見比べれば、如何にKFEndが一方的に攻めたかが判る。


ところでKFEndには「3年に一度決勝へ行く」というジンクスがある。第8回デビュー以来、第10回、第13回、と3年周期で決勝へ進出している。次回は第16回で、その3年周期に当たる年だ。そういった意味からも、かなり気合が入った改良が加えられた上で参戦されるであろうと予測できる(などと書いて開発者にプレッシャ~を掛けてみる)。

選手権では敵だとしても、今後の活躍が楽しみな将棋プログラム[*5]である。また、敵ながら天晴れ、という手を観せて頂きたいと思っている。


将棋を指している時、投了図が見えるらしい。その時確信したよ。コイツは誰よりも寄せが速くなる(笑)


[*1] 西暦2060年頃に、入れ歯ガタガタいわせながら、そう言ってみたい気がする。
[*2] "Inside KFEnd" を読んで眠くなった、と当人の前でのたまった、恐らく唯一の計算機将棋開発者。
[*3] 後手最後の▽11香を無駄受けとするなら5手必至。余談だが、この将棋は互いに1手25秒か1秒消費で殆ど指しているところが面白い。
[*4] タキオン(tachyon、ταχύς=ギリシャ語で速いの意から)とは、超光速で動くと仮定する素粒子。名付け親はアメリカの物理学者ジェラルドファインバーグ(Gerald Feinberg)。どんなに減速しても光速度以下にならず、そのような素粒子は現時点でも発見されていない。因みに、質量0で真空中を光速運動する粒子をルクシオン(luxon)、正の実数の静止質量を持ち真空中を光速未満で運動する粒子をターディオン(tardyon)と言う。全く蛇足だが、チェレンコフ効果は、真空中ではなく触媒(物質)中で荷電粒子の速度が光速度(光は、真空中では約30万km/sだが、例えば水中なら約22.6万km/s程度)より速い場合に起きる発光現象のことである。

[*5] なお、「KFEnd」というのは、当初の棋譜編集プログラムに詰、必至などの終盤用のルーチンを加えた時点で付けた名前で、KFEnd = KiFu editor and END game analyzer の略称だ(プログラマーズノート より引用)。

YSS

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謎電が第7回選手権に初出場した年に優勝したプログラムがYSSである。であるが故にその時の事を良く覚えている。但し、残念ながら今日までYSSと対局したことは一度もない。2度に1度は決勝シード組であるYSSは、あまりに強過ぎて組み合わせに当たるチャンスが殆ど無いからである。しかし逆に言えばYSSに当たったことがないというのは、それだけ謎電は運が良かったのかもしれない。


余談だが、YSSの作者である山下さんは囲碁プログラム彩の作者でもあり、私の廻りではこちらの方が有名だ。理由は私が宮崎に住んでいるからで、宮崎では将棋より囲碁の方が圧倒的に盛んであり[*1]、彩がフリーウエアだからというせいもあるだろう。これは話し出すと結構長くなるし計算機将棋とは全く関係ないので機会があれば改めて書きたいと思う。


さて、その山下さんの計算機将棋開発者に対する影響は計り知れないものがあるのではないかと思っている。特に「コンピュータ将棋の進歩2」においてのYSSの詳細なアルゴリズム説明と具体的なパラメタデータの公開は、前にも後にも山下さんが群を抜いているのはないかと思う。また「YSSと彩のページ」及び「コンピュータ将棋や囲碁の掲示板」を通しての継続的な活動は誰にも真似の出来ないところで、最先端計数将棋学的にも貴重なネタの宝庫である。HPや掲示板で、時々山下さんが公開される統計データ等について、こちらでも追試したり自分の持っているデータと照らし合わせてみたりするのだが、極めて信憑性の高い情報であることが確認でき、やはり一流の開発者というのは一味違うことをやってるものだなと感心することが多い。


残念なのは、YSSは謎電の好敵手と呼ぶには実力差があり過ぎて語りようがなく、そもそも公式対局がないことである。恐らく、24のR換算で言えば1000点前後の違いがある筈で、これはそうそう簡単には埋まらないと思っている。研究の差、努力の差、掛けている時間の差が、それぞれそれなりに大きいとは思うのだが、結局は「計算機将棋に対する情熱の差」がプログラムの棋力に直結しているのではないかと、山下さんを見てて感じるところである。謎電の場合は、「計算機将棋に対する」というより「将棋の終盤分析に対する」という局所的目標に特化させている。これを大きく広げないと、「YSSの敵に非ず」のまま謎電は引退を余儀なくされてしまいそうだ。


山下さんに対しては失礼な書き方になるが、YSSは第15回選手権で決勝シードを失う4位であった。次回選手権は、余程の事がない限り二次予選からなので、対局が出来るチャンスが少なからずあることになる。たとえ大差で負けることになるとしても、私にとってYSSとは一度は公式戦で対局してみたいプログラムの一つである。


最後に、印象に残っている第7回選手権決勝▲金澤将棋▽YSS戦から、謎電での解析結果を以下に書く。


左図は、117手まで進んだ局面。▲19桂は馬取りになってはいるが後手玉に詰めろが掛かっているわけではなく、ここで先手玉に必至を掛ければ勝ちというところだ。結論を書けば、▽79銀▲77玉▽84桂までの3手必至。▽84桂は▲同金と取れない(▽75香以下の簡単な詰がある)し、▲85金と歩を払っても同じく頓死なので、最強に受けて▲86歩と玉の逃げ道を作っても、▽59角▲68銀▽76歩以下17手詰がある。

本譜の後手は▽18馬と一旦逃げ、ここから十数手の間先手の相手をすることになるのだが、これは残り時間が既に少ない状態であった(当時は30分切れ負けで、この時YSSは約25分を使っていた)し、そもそもマシンの性能を考慮すれば、これを読み切るのは厳しかったと思われる。

もし今のYSSなら、この3手必至を読み切れるとなれば、謎電がいくら終盤に自信を持っていても、もうどうにもならない差がある気はする。分析は出来ても実戦(配分1分)では指せない手順だからだ。


[*1] ご存知の方も多いと思うが、宮崎は盤も石も「世界的に有名な」産地である。特に蛤(ハマグリ/clam)碁石はメキシコ産を除けば日本では宮崎県日向市だけでしか作られていない。

TACOS

テーマ:

今のTACOSは、もー手が付けられないくらい異常に強いらしい。『激TACOS』とプログラム名を変更するんじゃないかという勢いがある。第15回選手権では決勝まで進んで6位だが、今は24のR換算で2500には達しているのではないかと思える程の怖い存在だ。


謎電にとって好敵手とは既に言えない雲の上の存在になりつつあるTACOSだが、7年前の第9回デビュー当時は一次予選すら突破できない程度でしかなく、私の印象では、計算機将棋に興味がある学生が趣味で作ってる、というものだった。しかしながら第13回選手権頃に大ブレイクしたのにはちょっと驚く。トータルの順位を見れば、第9~12回の4年間は謎電にアドバンテージがあったが、第13回で一気に追い抜かれてしまったのである。


さて、ここで謎電の過去の栄光を自慢することにする(笑)


TACOSと謎電の初対局は、非常に印象深く良く覚えている。TACOSが初めて一次予選を突破し、二次に現れた第11回選手権の時の事だ。その二次の最終戦(9戦目)、その時点でTACOSが1勝6敗1分、謎電が2勝6敗と最下位を争っている状況。その差が0.5ポイントしかなかった。因みに当時、私は飯田先生を良く知らず、そもそもお顔を存じておらず、背広を着ていらっしゃったので、正直「どこのオッさんか?」と思っていた[*1]


対TACOS戦が始まる時、そのオッさんに「一局教えて頂けますか?」と挨拶されてしまった時には、「いえー、教えるって程のものではないですよ、私のプログラムは」と返したのだが、「いやいや、謎的電棋さんは先輩ですから、是非教えてください」と繰り返されるので、一次突破組にそれほど負ける気がしてなかった私は、「判りました、0.5勝差がどれだけ大差であるかをお教え致しましょう」とトンでもない返事を本気で言ってしまったのであった(実話)。


恐らく、飯田先生もこの返答にはビックリされたのではないかと思う。でも、何故か負ける気がしなかったんですよ、なんとなく。 といったことがありながらも、対局中はオッさん同士でその将棋の話が弾むわけで、左図は、76手目に謎電が▽38銀と指したところ。そう、この時であった。そのオッさんの口から、次の一言が飛び出る。


「この手は専門的に観て損だな~」


なんと、職業棋士独特の云い回しが。無論、この時のオッさんがプロ棋士だと知らない私は、この言葉の意味をちょっと考え込んだ。非専門的に見ても駒の働きが悪く疑問手に見えるし、口癖なのかな~、とか呑気に思っていた。結局真相は懇親会の時まで知ることなく、局面は進んでいったのだった。


結果この将棋は、その年の選手権二次最下位を謎電がTACOSに譲った一局となった。人間として、いや計算機として、譲り合う心の大切さを知った、貴重な対局ではなかったかと思う。


TACOSとの対局はこの一局だけである。実力が大きく異なるとなかなか当たらないのだが、出きれば来年あたり、もう一度対局したいと思っている。その為には私の方が相当努力しなければならない状況になっていることは言うまでもない。


[*1] なお、飯田先生と私は同じ年の生まれである。従ってどっちもオッさんなのだが、どっちかというと私の方が若く見えるよね、ね、ね。

神吉宏充六段

テーマ:

計算機将棋関係者が、今最も注目しているプロ棋士は竜王でもなければ名人でもない、ズバリ神吉六段ではないだろうか[*1]。それは単に、瀬川アマのプロ入り試験対局2局目の相手だからという意味ではない。とはいえ、本日その対局があることを考えれば、最先端計数将棋学で採り上げる機会としては、これ以上はないと思えるので、「計算機将棋開発者の好敵手」としてアーティクルを起こしてみることにする。


私が最初に神吉を見たのは先崎とセットで10年以上前の話だ。言うまでもなく「先崎・神吉の将棋パトロール」なのだが、当初、神吉も先崎もプロ棋士だとは全く思わなかった。特に神吉の方は、そのド派手な衣装から、どう見ても関西芸人以外の何者にも見えなかった。その後、先崎をNHK杯で見た時に初めて、神吉もプロ棋士である事が判った時には非常に驚いたものである。


さて、(何年後になるかは判らないが)計算機将棋史上、初めて平手で公式にプロに勝った相手として、その歴史に未来永劫名を残すカモシレナイ棋士、という意味からも、瀬川アマとの対局は、関係者にとって相当興味深い一局だと思われる(確信はない)。瀬川アマの普段の実力が発揮できれば良い勝負になると思われるが、あくまで普段通りに指せればの話であって、「あの派手な衣装に平常心を保てるか否かが勝負を決めるのではないか」と勝手に分析している。棋士という職業を完全にナメているかのように見えてしまうあの衣装こそが神吉のアイデンティティであり、そこにトンでもない落とし穴が潜んでいるように感じるからだ。


ここで、BIGLOBEストリームの2局目予告編とインタビューを見て私なりに感じたことを書く。


まず、神吉の穴熊宣言。「穴熊以外の何があるの?」と、ブラウザに向かって思わず突っ込みを入れてしまいました。衣装宣言についても同様。毎度のことなので、知っている人間にとっては全く驚きようがない。

次に内藤関西本部長の言。「自分の弟子は誉めにくい」と仰っているが、内藤先生、おもいきし誉めてるじゃないですか。「プロのトップクラスが嫌がる、互角なんですね」って、NHK杯1999年9月5日放送の森内戦のこと言ってますね。その対局の感想戦の時、そこでも「神吉くん、強いなあ」って全国放送で誉めてたじゃないですか、心の底から、自分の弟子を。神吉にとっては言葉通りに聞こえたかもしれない。しかしながら、ソバにいた森内にはどう聞こえたであろうか。その翌日、森内が放心状態で将棋会館に現れた[*2]と伝え聞いている。


森内をそこまで凹ませる神吉穴熊が、果たして計算機将棋に通用するものなのか見てみたいと思うのは私だけだろうか。その時には、是非とも、実況:古館伊知郎、解説:内藤國雄、でお願いしたいところである。


[*1] と思ってるのは私だけかもしれないが(笑) 平成8年度の将棋年鑑でのアンケート回答の真意は、言葉通りではなく「私が最初に平手で相手してあげますよ」と受け取ることができるのではないだろうか。

[*2] 神吉談だが、オリジナルソースは不明。

SPEAR

テーマ:

SPEARは、第7回選手権で謎電と同期デビューの将棋プログラムである。作者は、ライエル・グリムベルゲン(Reijer Grimbergen)[*1]。以前から東公平さんもご存知のオランダ人である。

実はSPEARには、これまで直接対決で謎電は一度も勝ったことがない。これは私にとっては面白くない事実なのだが、実のところはライエルの方が、特に去年は面白くなかったかもしれない。去年の二次予選の直接対決では、謎電は負けて陽の当たらない裏街道へ廻った。しかし、勝ったSPEARは強豪と当たることになり、恐らく本意ではない結果になってしまったからだ。

本来充分自力で次回予選シードを獲れる実力があるにも関わらず、たった1位差でシード権を獲得できなかったのである。その1位差でシードを獲ったのは謎電の方だった。この差は、ほんのちょっとした運の差でしかない。

自慢したいわけではないが、この8年間のSPEARと謎電の選手権での順位を次に示す。

 

第7回
('97)
第8回
('98)
第9回
('99)
第10回
('00)
第11回
('01)
第12回
('02)
第13回
('03)
第14回
('04)
SPEAR2325252216202320
謎電2427151922272219

 

赤く示した方が、その回の上位者である。事の起こりは第7回の初舞台の時、1位差で謎電が負けたことに端を発する。最近の第13、14回と2期連続で1位差というのが神がかり[*2]だが、これで大会トータルでみたとき、4-4の互角となった。

ところが、結局ライエルも同じく運が良かった。シード権を持つプログラムの一つが、今年参加しないことになり、SPEARは繰り上げシードになった。実利的に言えば宿泊費1日分が浮く。これは実際に大きいのだ。

 

全くの余談なのだが、NHK教育TV「サイエンスZERO」のプラスZEROのコーナ[*3]で、前回の選手権の模様が紹介された。そのコーナの冒頭で、ライエルと私がツーショットで映っているカットがある。NHKのカメラが会場に入ってきた時、丁度ライエルの娘さんの将来の話をしていたところだった。ライエル曰く「健康に育ってくれれば、それだけで満足」という話に対して、「あれれ?女流名人にする、って話じゃなかったでしたっけ?」と突っ込みを入れたシーンだったのだ[*4]。その突っ込みの根拠はコレである。

今年の選手権も、出来る事ならまたSPEARと当たりたいと思っている。


[*1] あえて敬称を略する。 ライエルのホームページはココ

[*2] 私はこれで運を使い果たしたかなという気はしている。

[*3] 第44回 新世代テレビが暮らしを変える/コンピューター将棋 最強のプログラムをめざせ(OnAir:04.05.22)

[*4] あのカットの中で笑い声を上げてるのはライエルである。因みにその時、私はカメラが入ってきたことに気が付き、うっかりカメラ目線になってしまった。即刻目をそらしたのだが、わざとらしかったか。あれでよく編集されなかったものだ。