完走おめでとう!

堀田季何 さん

83 しかたなくこんなとこまでやつてきてキャベツの匂ひおもひだしたよ

しかたなく何かをやってしまうことってありますよね。喪失感を感じる歌です。

返歌「キャベツが香るそらのはて 思い出のようなきみをみつける

武田ますみ さん

100 自死の後もマラソンランナーでありつづけるしかなかった円谷幸吉

これ凄いです。悲劇のランナーを上手く取り入れましたね。

57 制服を着て武装せよ!学校は戦場だからと誰かが叫ぶ

確かに制服は、武装するためのものですね。自分自身を隠すための。

3 少しだけ暖かいような気がします。夜の菜の花のつぼみのあたり

蕾が花開こうと発光するときに熱を感じる気がします。

返歌「毎日がマラソンのようくれてゆく 夜のあったかさ戦場に降る

三宅やよい さん

79 お父さんのぬいぐるみ着る係長チャックの位置はときどき変わる

シュールですねぇ。こういう感覚好きです。

13 三月十日焦土と化した路地裏に足踏みミシンの音は続けり

これも凄いです。三月十日、東京は焼け野原になりました。その現実を観たことはないけれど、喪失感の中に、生きるという希望があるような気がします。人の営みの凄さを感じました。

返歌「さんがつの足踏みミシンカタカタと父さんを縫う路地裏の母

以上です。
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完走おめでとう!

影山光月 さん

93 病室に果物ナイフはありふれて光を放つ林檎の傍で

ナイフがありふれるという感覚にグッときました。病室で光っているナイフが目に浮かびます。

32 乾電池入れるとカタカタ動き出す昔の玩具のような人でした

なんだか、角ばったような実直な性格の人を想像しますね。すごく不器用な感じ。

返歌「コロコロとブリキのりんご転がってくおもちゃのナイフ飛び出すように

島田 久輔 さん

37 すっぽかされた詫びのメールに書かれてる汗、汗、汗から微かな臭気

汗の匂いが肌に感じられる不思議な感じですね。すっぽかしてしまった相手の様子がリアルに感じられました。

2 黒板にチョークで書いたサヨナラは色とりどりの旅立ちのうた

卒業式の教室が鮮やかに浮かび上がりますね。

返歌「水色のチョークひかる汗のよに サヨナラ滲む最後の授業

中川佳南 さん

61 丸ごとのじゃがいも入りのスープカレー食べて焦がるる札幌の風

焦がるる札幌の風が良いですね。爽やかな風が吹き渡る気がします。

6 ガラリ暗転 二時五〇分わが叔母は宇宙の生命(いのち)と一体化せり

深いテーマですね。でも、重くならずに、召されることが何か崇高なことのような気がします。

返歌「暗転ののち札幌の風にさらわれたたましい 宇宙へと飛び去りて

以上です。
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完走おめでとう!

コメット さん

71 喪服着の老夫婦しずかラッシュ時の電車の隅に異次元はある

喪服姿の老夫婦、上手いチョイスですね。でも、老夫婦が異次元になるのは考え物ですね。自然に溶け込んで欲しいものです。

25 鯉のぼり泳ぐ曇天声もなく笑う男の子の葬列が行く

さびしい風景をホラーチックに仕立てることで、哀しさが余計にしみますね。

返歌「異次元の扉開きて老夫婦ほほえむ隅におとこのこの瞳(め)

つきみ さん

66 9時消灯暗がりの中クスクスと「寝た子はだあれ?」に笑って応え

可愛いですね。情景が浮かびます。

2 それぞれに子の持つ色は鮮やかに描く未来は伸び伸びとあれ

子を思う気持ちですね。

返歌「クスクスト子供ら跳ねてゆうぐれはのびのび帰る影ふみこみち

桜井敏幸 さん

66 消しゴムのカスを集めた人型が夜中にボクを殺しに来るよ

消しゴムのカスって言うのがミソですね。着眼点が面白いです。

返歌「人形の影に触れればゴム臭く背中にぽっかり穴のあく夜

以上です。
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完走おめでとう!

美作直哉 さん

91 暖冬と冷夏のオフィス ルーチンの書類の中に秋が来たらしい

オフィスの情景が立ち上がってきますね。書類の中にだけ秋がくる。なんだか、空きが出来るみたいな感じにも取れて面白いです。ただ、最後「らしい」で終わっちゃうのは勿体無い気がしました。

10 太郎次郎三郎四郎の夢運ぶ線路の繋ぎ目落ちたのは誰

最初が「一郎」じゃないのがミソですね。面白いです。

返歌「ルーチンの書類にまぎれた秋の日が線路に残すタロジロの夢

敏恵 さん

68 四つ目の角を曲がって突き当たりおもちゃの病院やっとこみつけ

やっとこが「おもちゃの兵隊」を連想させて面白いです。

4 ゆず二つ湯の面をゆき流れ出る縁にたゆたうその香も淡く

ゆず湯の情景ですね。ゆずの実と水に浮く蝋燭がイメージできて綺麗ですね。

返歌「おくになまりの兵隊さんがあふれだす湯気にとろけてやっとこと歌う

林 ゆみ さん

77 天皇の崩御に命奪われし祖母が残した飴色の櫛

明治・大正・昭和と生きてきた人の壮絶さを感じます。神として崇められていた天皇。戦争が終わった瞬間に自決した人たちも多かったと聞きます。櫛が人生そのものみたいですね。

71 美しき銀の髪もつ二次元の男に搦めとられる真昼

銀色の髪の男性は、とても神秘的に感じてしまいます。この歌が一番好きですね。なんだか、幻想的でそれでいてとてつもない寂しさを感じます。

33 ひたひたと山椒魚が這いまわる感覚だけの望まぬ愛撫

この感覚、わかるなぁ~って思いました。ゆみさんの違う一面を見たような気がします。

2 君の手を温めるため飴色になるまで煮込むオニオンスープ

この歌は、ハッピーなのかそれとも譲れない何かに対する挑戦とも取れる気がしてしまいました。100首目から逆に読んで行って、この歌に出逢った時、なんだかそれまでの流れと異質なものを感じてしまったのです。

1 電話から漏れる貴方の妻の声息をひそめる星も私も

この歌は、なんだか怖いなぁ~と思いました。上の歌を読んだ後にこの歌が来ると色々な想いがよぎってしまいます。のっけからこんな歌を詠んだのかぁ。。。ノンフィクションにせよフィクションにせよ、女性としての根底にある不穏な部分を感じずにいられませんね。

返歌「うつくしいたそがれが二次元の男つれさってスゥプにおちるコール音

以上です。
完走おめでとう!

桜井龍斗さん

90 枯れてても薔薇にはトゲがあるんだし 関係ないよ 年の差なんて

こんな風に言ってもらえると嬉しいですよね。

88 色気より食い気の年ごろなんだもの。 まずは食べたい。だからキスして。

はい、その通り。可愛いですね。

34 描けそうで描けないけれど描きたくて  ちょと曲がった背中に触れる

いい雰囲気です。もどかしい想いが伝わります。

返歌「すこしゆがんだせぼねのカーブなぞるゆびかめばさばくをみたすぬくもり

丸井真希 さん

95 翼持ち飛んだとしたら足裏はどんな世界を感じるだろう

高所恐怖症のうちとしては、怖くて下を見る事が出来ませんが、足の裏はどんな風に感じているのでしょうね。

80 ワタシのと主張するんだ君のその身体に私の名前を書くんだ

書いておきたいですね。そして、誰かに見せたいかも(^^ゞ

返歌「足裏に君の名前のつばさもつきみのせかいへ飛び立つあした

さるた さん

4 朝早く空を見上げた瞳には今日のブルーが淡くうつるよ

綺麗な情景が浮かびます。でも、その淡い空には何が映っているのでしょう?気になるところですね。

返歌「めにうつるそらあおあおとすみわたりむねいっぱいにきみをすいこむ朝

以上です。
完走おめでとう!

五十嵐きよみ さん

97 指先でバイオリンの弦はじかれて静かに秋の深まる気配

綺麗な情景ですね。バイオリンの亜麻色と秋の色が響き合っています。

60 人が皆チェロのかたちの影をもつ日になるでしょうと天気予報が

この歌、一番好きです。チェロの形と人の影の形が重なり合いますね。

56 だとしても下車する理由はあいまいな井の頭線東松原

そうそう、井の頭選東松原駅は、曖昧です。いいところを突きましたね。

43 わたくしの海馬をいつか震わせる未来の記憶のようなさみしさ

綺麗な比喩ですね。淋しさが広がります。

28 異母兄妹だったらという空想の色付きリップ的少女趣味

こういう感覚ありますよ。空想妄想の世界は、いつでも少女趣味かも知れません。

五十嵐さんの100首に、陸と言う人の名前がいくつか出てきて、詞書と合わせて、ストーリーになっているような気がしました。あと、渋谷などの地名もよく出てきていて、100首の舞台背景がそこに集約されているような気がしました。
しかし、読みが浅いのか、陸の名前が出てくる歌になると、何故か違和感を感じてしまいました。すみません。
でも、100首の舞台背景の描き方はすごい好きです。参考にしたいです。

返歌「バイオリン ヒトガタへト暮レテユクアイマイナ空色リップ降ルヨ

河村壽仁 さん

98 「王国の未来に女系の王はなし」と黒覆面の男ら宣誓し合いぬ

これは、日本の様子と重なりますね。

7 水戸駅発見川町行きバスに乗る 海を見に行く春の蝶々と

情景が鮮やかです。

4 兵庫県神戸市北区淡河(おうご)町本陣に餅つくひとらは幻

こういう地名があるのですね。面白いつくりだと思いました。

100首の殆どに詞書があって、しかもルパン三世を髣髴とさせるものでした。しかし、この詞書は、必要だったのだろうか?と感じました。
逆に詞書の無い歌のほうが新鮮と言うか、気になりましたね。そう言う作戦だったのでしょうか。

返歌「水戸王国にくろふくめんのおとこ立ち 本陣跡には光國が舞う

萩原留衣 さん

93 フォークにもナイフにもない優しさでスプーンは雪を攫ってしまう

雪を攫うという部分が良いですね。それぞれの特徴を生かしていると感じました。

90 美しいはじまりとして薔薇が咲く 数式が今ひとつ生まれた

上の句が良いですね。こういう表現好きです。

29 無人駅はかならずものがたりがあって時間を超えた繋がりがある

これ、一番好きですね。ならずものというあまり使わない言葉を、別な言葉の中に発見して、綺麗に仕上げています。
この使い方は上手いです。

返歌「ばらのはなたばはじければすくうやさしさゆきのよにはじまるものがたり

以上です。
完走おめでとう!

花鳥 佰 さん

82 なはとびのなはといふ罠ぬけられず炎天に去りし少女の背中

なわとびのなわが罠だと言う感覚が良いですね。面白いです。

76 うすぐもりの日にはリズムの半拍子ぶれ竜巻となるきみ愛し

リズムが半拍子ぶれる、ずれるのではなく「ぶれる」。この感覚良いですね。シャープなのかフラットなのか、イメージが広がりますね。

38 谷崎の横浜につねつきまとふ震災のけむりナホミのにほひ

ナオミのにほいにやられました。

返歌「背中にゆるくあきのひをつれくるにおい はんびょうしずれナオミふりむく

原田 町 さん

96 留守ならばあなたはきっと帰りくる彼岸花さくこの畦道を

叙情的な感じが良いですね。

63 鬼の棲む山などなかなか見つからない関東平野ひたすら走る

関東平野と鬼の住む山の取り合わせが気に入りました。

34 うつ伏せの背中ならべてポーズするヨガ教室のトドの群たち

これはもう、トドの群れですよ。ホント、そうですよねぇ。

返歌「水滴のような汗疹をしたたらせ海馬(トド)のむれ畦道かける

佐藤紀子 さん

91 膝の上のノートパソコン暖かく秋の夜長の湯たんぽ代はり

優しい夜がイメージできますね。

74 麻酔でもかけられしごと眠くなるひと日を海に過ごしたる夜

眠りに落ちる瞬間は、緩やかで海に漂うような感じがありますよね。

返歌「秋の日 影はあざやかにのびはじめ潮騒とおく夜はしらべを

以上です。
完走おめでとう!

上澄眠 さん

21 雨粒が屋根たたく音きいているたんたんたたたたたたうたた寝

オノマトペが良いですね。こういう雰囲気好きです。

38 横浜に行ったらほんとに恋人になってしまうよねえ帰ろうよ

いやぁ~こんな事言ってしまいたいですね。言われたら、蹴飛ばして帰ります(笑

72 トゥインクルリトルスターとくちずさむほんとはもっとなでてほしいの

あ、こういう気持ちわかります。

95 マスカラのまばたき/はばたき/かささぎの翼をたたんでここでおやすみ

マスカラの瞬きを翼にかけるところが良いですね。

上澄眠 さんの作品は、全体的に好みでした。

返歌「雨粒がうたうリトルスター(ぽつん)おやすみのキスひとつほしいの

方舟 さん

79 眠ることも無く犬猫のぬいぐるみガラスの目玉に秋の灯宿す

綺麗な情景ですね。ガラスの目玉に映った秋は、燃えるようでしょうね。

返歌「あきのひがねむりをさそうねこのよに硝子のひとみしずかにとじて

香乃 さん

76 ひょろひょろと音符は楽譜去りゆきて歌ふくませたリズムがかえる

何とも言えない心地よいリズムですね。

45 ほほえみを壁いっぱいにパズルした もうすぐここは なにもない場所 

下句が良いなぁ。淋しさがひしひしと伝わってきます。

返歌「ほほえみをかえしましょうねほろほろと おんぷはじけるさかみちのうえ

以上です。
完走おめでとう!

雪之進 さん

87 仲秋の月の真裏にゆく計画 ひんやりとしてしんとさみしく

月のさびしさみたいな感じが良かったです。

79 きぐるみをみぐるみはがされぬいぐるみぐるぐる夢みるミルクとクルミ

言葉遊び的な感じが良いですね。リズムが良くて好きです。

返歌「ぐるぐるぐるうさみしくて月はひんやりあきらめの蒼 ゆめへとかえる

篠田 美也 さん

91 ブーニンの音が少しく暖かくきこえて今日から紅茶を変へる

レコードの音でしょうか。そう言う些細な変化に気がつく感性が好きです。

80 その死後に晒されてゐる羞づかしき書簡 小説家とふ生業(なりはひ)

これは、確かにそうですね、と言う感じです。小説家と言うのも因果な商売ですね。

返歌「紅茶のおんどをいちどあげましょう しごのことばへながれこむ湯気

すずめ さん

61 美人じゃがいも好きなんが玉に瑕ほいで縁談めげたげな へぇ~

方言が最高です!方言の力は侮れませんね。

返歌「ごつごつとじゃがいもころげあかときにころがる美女のうえでぃんぐどれす

恩田和信 さん

53 おさげ髪ひっぱりたかったわけじゃないきみのしっぽをつかまえたかった

可愛い!そう言いたくなる歌ですね。

64 科学的根拠あらねど惚れており純情色のリトマス耳たぶ

確かに科学的根拠など何処にもないのに、耳たぶは色がカーっと変わりますね。温度感がいいです。

返歌「おさげがみひっぱるたんびに桃色のりとますしやくぼくの耳たぶ

以上です。
完走おめでとう!

もりたともこ さん

88 食べかけの桃をつかんで庭先へ放る 今ならたぶん間に合う

この展開好きですねぇ。何が今なら間に合うんだろう?なんだか色々な想像が働きます。

54 「あついね」とあなたの前で靴下をそろそろぬいでみせる生足

ははは、こんな場面ありますねぇ。言われた相手の反応を楽しんでいたりするお茶目な女の子が浮かびますね。

87 天上へゆく計画を思いつき枝豆ゆでて食べる深夜に

枝豆をゆでて食べる深夜ってちょっと怖いですね。それに天上へ行く計画なんて、あららどうしちゃったのかしら?って思っちゃいますね。

返歌「庭先の桃の種はじきとばした生足染める天上の赤

やまもとまき さん

84あっちゃんは満員電車のニンゲンの林の中で九九を覚える

ニンゲンがカタカナなのが良いですね。

30小テストちぎって投げる戻り橋一匹ぐらい式神いないか

式神がいたら便利ですね。まるで、コピーロボットのように。

9 終電で眠りこけてる少年の手から落ちそう「蹴りたい背中」

現代の誰しもが抱えているような感覚ですね。眠りこけながらも「蹴りたい背中」があふれているなんて。

返歌「落ちそうな満員電車少年が式神になった 眠り張り付く

久松 さん

89 目に見えて秋は来にけり巻雲の薄きがゆっくり東に流る

情景の浮かぶ歌ですね。

49 チェコグラスに琥珀のワイン光りおり一日だけの恋の終わりに

一日だけの恋の終わりが良いですね。

26 真直ぐに歩くを嫌うあの人は又蜘蛛の巣を背にくっつけて

イメージの広がる歌ですね。真っ直ぐに歩くのが嫌いって面白いです。

返歌「ひがしかぜまきあげる雲にウインク ワインいろした蜘蛛のすひとつ

以上です。