レーエッセイ わたしの好きなうた
「MUSICIAN」~あきらめない夢は終わらない~
18時25分、2ベルが鳴り響くコンサートホール。開演に先立ち注意のアナウンスが流れる。女性のぎこちない声が終わると何処からとも無く手拍子が起きる。それはさざなみが広がるように、会場全体へ広がってゆく。波が会場を包み大きなうねりになる頃照明が静かに落ちる。
18時30分、ギターの音が開演を告げる。と、会場は総立ち、手拍子は拍手と歓声へと変わる。照明が点き、ステージにはALFEEの3人が。拍手と歓声は増し、こうして、めくるめく3時間強のステージの幕が上がる。
ALFEEのライブは、歌もさることながら、彼らのトークとそして何より、あのコントがライブにハマる原因の大部分を占めていると言っても過言ではない。通常と言っても、他のライブには、あまり行かないので分からないけれど、「歌のリハ30分、コントのリハ2時間」と言わしめるライブなんて何処を探しても無い!と思う。まさに3時間強ギャグで構成されているのじゃないかとも思うほど。突っ込みどころ満載の歌、衣装、動き、そのどれひとつとっても、何時間でも語れてしまう要素が散りばめられている。また、坂崎さんのアコギの音色・櫻井さんの美声・高見沢さんの歌詞が三位一体となって不思議な世界が構成される、それがALFEEのライブ。
そんな、不思議な世界観を持つ彼らだが、デビューから彼らの歌には、一貫して「あきらめない夢は終わらない」と言うテーマが込められている。それが、ライブパフォーマンスと相まって歌詞にリアリティを持たせている。普通、こんな事を言えば、青臭いと言うか、ちょっとこっぱずかしさを感じてしまうものだが彼らが歌うと心に迫ってくる。その根底には、全く売れなかった10年間があるのだと思う。この10年が有ったからこそのリアリティなのだ。
彼らの言葉を少し拾ってみる。
♪海が見えるまでは 時間がかかるけれど
きっとそこは喜こびで満ちているだろう「セイリング」1979年
♪
この歌と夢を信じて明日へ 明日へ向かえ……「SAVED BY THE LOVE SONG」1981年
♪
夢をその手で 掴みとれ!/
あきらめないで 明日を信じて「A.D.1999」1983年
♪
命が尽きるまで夢追いかけようぜ「Sweat&Tears」1986年
♪だからどんな悲しみが 絶え間なく続いても
いつでも夢だけを信じてきたのさ
「Victory」1993年♪Chasing The Wind
あきらめない夢は終わらない「風を追いかけて」1993年
♪
君が目指した夢をつかもう どんなに遠くても あきらめないで「自由になるために」2000年
♪
無理な夢でも言葉にすれば 自然に体はそれに向かうものさ「BEAT POP GENERATION」2001年
いかがだろうか?ちょっと拾い出しても、こんなに出てくる。書ききれないほどある中の1部である。
この原点とも言える曲が「MUSICIAN」と言う曲ではないかと思っている。1974年にデビューし、1980年に出されたアルバム「讃集詩」に初収録されている。しかし、この曲はシングルカットされていない。アルバムとライブのみでしか聴くことが出来ないのである。そんなまさに氷河期ど真ん中、アルバムのラストにいれた彼らの思いは、いかばかりだったか。しかしこの曲があったからこそミュージシャンへの道を捨てることなく続ける事が出来たのだと思う。
♪つらくてもギターは捨てられない 心で泣けばいいのさ
と言う歌詞で始まり、
♪夢をこの手で つかみ取るまで 君のために 歌いつづけよう
で締めくくられる。
坂崎さんのギター一本で語られるこの歌は、何かに行き詰まった時に聞くと「もう少し頑張ろう」と素直に思える。
♪思いどおりに ならない時には 他の夢求めようと 何度も思い悩んだけど・・・・
確かに、人生は思い通りにならないことばかり起こる。そして、何もかも投げ捨ててしまいたいことの方が圧倒的に多い。上手くいかなくてイライラしたり、自分は駄目だぁ~と落ち込んだりする。しかし、そんな時、自分を支えてくれるのはこの曲なのだ。焦りや怒り、どうしようもないほどの不安に駆られる時、彼らのステージを思い出しながらこの曲を聴くと不思議な力が湧いてくる。それは、気障なようだけれど彼らの生き方に触れることが出来るような気がするからかも知れない。
ヒット曲に恵まれなかった10年間。周りの人たちがヒット曲を出し世に進出してゆくのを尻目に、ライブハウスでの地道な活動や他の人のバックバンドをしながらやってきた彼らだからこそ聞く人の心に響くのだと思う。
人は、誰でも何かに憧れる。その憧れの種が夢へ変わってゆく時、人は生きる力を手に入れるんじゃないかと思う。思い通りにならなくても、そう、例えそれが失敗に終わってしまったとしても、夢に向かっていれば必ず何かを掴む事が出来るのじゃないかと思う。
勿論、失敗に終われば、確かに辛い。それこそ、時には死んでしまいたい事もあるかもしれない。けれど、追いかけた夢は無駄じゃないと思うのだ。逆にもし、そこで死んでしまったら描いた夢に対して失礼だと思う。真に願った夢は裏切らない・・・なんて、青臭い事を言っている気もしないでも無いが・・・たまには、真正面から語ってみるのも悪くはないか。
そうそう、思春期の頃、よく母親に「あんたは夢ばかり見ている。もっと普通でいなさい」と言われていた。しかし、夢を持てずに過ごすなんて事のほうがはるかに不幸だ。今、DNAの見地からも、何かに向かって生きる人間は病気の発症率が低く、また病気になったとしても治癒率が高いことが少しずつ証明されてきている。
夢物語も見続ければ現実となるし、いくつになっても「夢」を持ち続けることは生きる力になる。そう教えてくれた原点がこの歌なのです。
♪ミュージシャンにあこがれ 見果てぬ夢追いかけて 一歩ずつゆっくり 歌の足跡残したい
そして、この歌詞に触れるたび、物を書くこと、表現する事を続けていこうと思う。
ALFEEの3人がそうであったように、自分も書き続けてゆこう、立ち止まったり、振り返ったりしたくなったら、この曲を何度でも聴いて前に進もうと思う。短歌も詩であり歌です。一歩ずつゆっくり歌の足跡を残したいと。まだまだ、短歌の世界の喜びまでは至っていない。むしろ、あっちこっちにぶつかり、にっちもさっちもいかなくなって迷走を続けているのが現実。それでも自分の歌を読んで何かしら感じてもらえる人がいたらと思うこの頃。
最後に、ALFEEの歌からイメージした1首を。
拳を上げろ退屈なんてぶっとばせ声嗄れの路ラジカルティーンエイジャー