アレキサンドリア | not simple.

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あるときはさすらいの本読み、あるときはジャンル無用の映画好き、またあるときは、B級グルメの備忘録

not simple.-アレキサンドリア
(C) 2009 MOD Producciones,S.L.ALL Rights Reserved.
英題: AGORA
製作年: 2009年
製作国: スペイン
日本公開: 2011年3月5日
上映時間: 2時間7分
配給: ギャガ
カラー/シネマスコープ/ドルビーSR/ドルビーデジタル
公式サイト
監督・脚本: アレハンドロ・アメナーバル
脚本: マテオ・ヒル
キャスト:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、アシュラフ・バルフム



4世紀、エジプトのアレクサンドリア。女性天文学者のヒュパティア(レイチェル・ワイズ)は、あふれる知性と美ぼうを持ち、弟子たちに慕われていた。一方、アレクサンドリアではキリスト教が急速に広まっていき、ついにはキリスト教徒たちに古代の神々を侮辱された科学者が、彼らにやいばを向ける事態に発展してしまい……。
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今年の11本目です。

世界史の授業で、アレキサンドリアの古代図書館が粉砕された話を読んだときにですね、
「なんつーもったいないことするんじゃ、どあほ」と思ったことを激しく思い出しました。
焚書禁止です。
ほんと。焚書だけは禁止です。
なんというもったいない。思想や読みつがれなくなってしまった物語や美しいもの、それが万民向けではなくても、政治的に不合理なものでも、焚書だけは絶対反対です。

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ってところからはじめちゃいましたが。
アレハンドロ・アメナーバル監督が何を思って、この作品を作られたのかは謎です。
物語の大きな中心になるのは、アレキサンドリア図書館。
古代の文化、学術の中心地なわけですよ。
ここで女ながらっていうのも変ですが、周りに女性はいないので当時でも結構稀有な存在だったんでしょうか。哲学者であり、数学者、天文学者なヒュパティア。
絶世の美女としても有名な人らしいです。

生徒たちにも慕われていうか、こんな美女だから告白なんかもされちゃうわけですが、彼女はそういうことにまったく興味がなく、自分の研究や疑問としていることの答えを追い求めてしまうわけですね。

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特に彼女を慕うのはまずはこの人、ダオス。
ヒュパティアの家の奴隷なんですけど、ヒュパティアからはなんとも思われてないわけです。
たぶん年下じゃないのかなぁ。
もうねー。ヒュパティア自身は彼をかわいがってるんですが、ただそれがペットや年の離れた男の子に接するみたいな感じなんですよ。
当時は普通だったんだろうけど、入浴の手伝いさせて平気だし、ヒュパティア本人はさらりと差別発言をするわけです。
ヒュパティアについて、学問の手伝いをしているので、門前の小僧じゃないけれども奴隷としての見識もかなり高いと思うんですよ。
だからつらい。

そしてある日爆発してしまい、ヒュパティアから自由を結果的に与えられてしまう。
これってどう取るかだろうなーって思うわけです。
ダオス側からすると少し見捨てられた?って思っちゃうかなーって思うんですよ。
ヒュパティアの彼への愛の種類がわからないわけですから。
だからその後、キリスト教の戦士となって、いろいろな虐待に参加するわけです。
この間、本人も「あれー?」みたいな感じなんだと思う。

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もう一人は彼女の教え子で、アレキサンドリアの長官までになる彼。
でもお坊ちゃまなことが災いしてか、頭下げときゃいい場面で頭を下げず、ヒュパティアを危険にさらしてしまうわけですね。
なにかと彼女を口説きにかかるわけですが、公衆の面前で告白してしまい、ヒュパティアとその父が真っ青になっちゃうというか、父親はヒュパティアの才能を惜しんだりするわけですから、当時って言うか古代ローマの文化ってすごく今に近いのかもと思いました。

しかも告白のお返しとしてハンカチにヒュパティアの月経の証をもらっちゃう(実話らしい)という恐ろしい返し技で振られるわけですが、この人へこたれません。

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図書館崩壊後、出世をしていくわけですが、だんだんとヒュパティアのよき理解者として成長はするわけです。でもお坊ちゃんだからしくじっちゃうんだけどwww

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そしてへこたれず、口説きます。
くどくがヒュパティアはそれと気がつかないです(苦笑)
彼女の頭の中には自分が考える謎を解き明かすこと。
残念ながら、彼女の研究した内容はすべて失われてしまったらしいですが、この作品の中では、地球と太陽の関係と重力(という言葉では表現されませんが)が、最大の関心事となります。
まぁひとつは解き明かせたんじゃないかなぁ~って形で表現されてます。
これが彼女を襲う悲劇を観たあとで、少しでもヒュパティアは死ぬときに悔いはすくなかったんじゃないかという観客側の慰めになります。

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結果として、彼女が追い求めたものが彼女を滅ぼしてしまう一因となるわけです。

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ただ日本人としてわかりにくいのは宗教というものかと思います。
唯一の神。
ユダヤ教を迫害し、キリスト教を信じないものを迫害する。
彼らだって迫害され続けた歴史があるというのに。
とくにユダヤ教、イスラム教、キリスト教は近しい存在でもあるというのに。
その根底にある暗い情熱を理解できないわけです。

そして結局彼女はすごい死を迎えるわけですが、ずっとヒュパティアを慕う解放奴隷ダオスによって物語り上では、石投げというリンチではなくその前に殺されていてよかったなぁと思います。
(Wikiで調べたら実際の死に様はもっと壮絶・・・)

それらを観ると本当に宗教って何のためにあるんだろうって考えちゃいます。
監督の答えなのかどうかわからないのですが、時たま挿入される宇宙からの視点のようなシーンを観ると、神という存在は単に漂うものという雰囲気に近いような気がします。

観終わったあと、本当にいろいろ考えてしまいました。
いいなー。ヒュパティアは非業の死を迎えるけれども、自分の中で追い求めているもの、その強烈な感情、思考を手に入れることができてうらやましい。
そういう人は凛としていて美しいですよね、生き様が、とか。
男子二人組というか実は3人なんですがどうにかしてやれないのか、とか。
あの意味は何だろう?っていうシーンも非常に多いです。
こういう作品は本当に好きですね。
あまり観てる人がいないんだけどw

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