COLORS(仮)(第1話) | ディビえーしょんのブログ

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「ねえ黒川君、このスカートに合うトップス教えて。次の日曜デートなの」
 カスタニ色の椅子に座り、キャメルウッドの机で頭を伏していた僕に話しかけてきた女子は桃田だった。
「俺に聞く為だけにわざわざ私服のスカートを学校に持ってきたのか」
「いいじゃーん。実物見せたほうがアドバイスしやすいでしょ」
 桃田が両手で嬉しそうに持っていたのはターコイズブルーのサーキュラースカートだった。
「まあ青に合わせるなら鉄板は黒でしょ。単純にTシャツでも良いと思うけどシフォンシャツあたりがマストかな。あとは白Tにネービーブルーのブルゾンをレイヤードするとか」
「ありがと。いつも参考になって助かるよっ」
 そう言うと桃田はメープル色の床の上を早歩きしながら友人のもとへと向かった。
「はあ。昼休みぐらいゆっくり寝させてくれよ」
 僕は再び寝ようとしたが、間髪入れずに白石が話しかける。
「おい黒川、俺携帯これに変えようと思うんだけど何色が良いと思う?」
 白石はソフトバンクのカタログを開いて僕に見せた。うわ、よりによってパントンかよ、25色もあるじゃねえか。面倒だから適当に流すか。
「レッド一択っしょ」
「エー、赤で良いの? 女々しくない?」
「何を言っている。携帯ショップに勤めている僕の従兄弟の話では、赤を選ぶ男性が意外に多いらしいぞ」
「そう言われると確かに……格好良く見えてきたかも」
「よし、その気持ちを大事にしよう」
「ありがとな」
 そう言うと白石はシルバーグレイの扉を開けて隣のクラスへと戻っていった。
「あ、そうだアイツ、クラス違うじゃねえか。ホントに暇人ばかりだな」
 今度こそ安眠につける。そう思ったのも束の間だった。
「くっろかわー。今日も伝統色について語るよー」
 来やがった。歴女の鶯谷である。
「もう良いだろ。お前は300色以上もある伝統色を全部語るまで卒業しないつもりか?」
「まだ『し』までしか行っていないじゃん。今日は『紫苑色』からいくよ」
「秋に淡い紫の小さな花を沢山つけるキク科の多年草『シオン』のようにくすんだ青紫。源氏物語にも『紫苑の織物』があるように、平安時代から好まれていた」
「さっすが黒川。色彩辞典を丸暗記しているから話が早いね」
「そんなわけねえだろ。お前が前回、次回予告の如く紫苑って教えてくれたから調べてきたまでだ」
「童の、濃きあこめ、紫苑の織物かさねて、赤朽葉の羅(うすもの)のかざみ、だよね?」
「源氏物語を丸暗記しているお前のほうが凄いよ」
「そいでさ、光源が葵の上と結婚していながら藤壷の宮と不倫しようとするシーンについてだけど」
「僕は色以外には興味がない。帰れ」
 どいつもこいつも僕の邪魔ばかり。色彩に少し詳しいだけの僕に頼る馬鹿共がこの学校には多すぎる。