曽根賢(Pissken)のBurst&Ballsコラム

元『BURST』、『BURST HIGH』編集長の曽根賢(Pissken)のコラム


テーマ:
[鬼子母神日記]


「マリーの夢」
佐藤ブライアン勝彦●作品
(1995 Acrylic on board)


●37歳の私(曽根)は、この絵を見てひとめぼれした。52歳の誕生日に、ここへ紹介できることを光栄と思う。




7月23日(土)鬼子母神は小雨。

起床、昼の1時。
布団を上げると、ちいさな紙切れが畳に落ちた。
手にとって見ると、ボールペンで、4人の女名が書かれてある。
隣室の漫画家、兵庫くんの字だった。

ひめ川ゆうな
向井 藍
天衣 萌香
白石 まりな

昨夜観た、今の「マニアックAV女優」のベスト4なのだろう。
「AV女優マスター」を我らから称号された、デザイナーの有山くんが紹介し、3人で選んだAV女優たちか。
(夕べ遊びに来てくれた有山くんは、元「平和出版」同僚。5歳下。現在独身)

けど、私の部屋にネットは繋がっておらず、「Xビデオ」を見ることはできない。
(昨夜はいつものように兵庫くんから借りたワイファイで観たのだ)

躊躇しながら、メモを屑籠にすてる。
歯を磨き、顔を洗い、ひげを当たる。
それから畳に寝転がり、昨夜有山くんが買ってくれたジャック・ダニエルのソーダ割りを呑みながら、先日の続きの本を読む――。


――午後5時。
ザ・ビートルズのアルバム『リボルバー』、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』、『ホワイト・アルバム』、『アビイ・ロード』のレコーディング・エンジニアであるジェフ・エメリック(聞き書きハワード・マッセイ)の本を読了。

(邦題『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実――Here,There and Everywhere MY LIFE RECORDING THE MUSIC OF THE BEATLES』序文エルヴィス・コステロ/奥田祐士訳/河出書房新社刊――厚さざっと6センチ)

読んで感動したのは、シングル「シー・ラブズ・ユー」の録音時に、EMIスタジオに百人もの〈ビートルマニア〉の女の子たちが殺到し、ビル内は大混乱だったというくだりだ。
(ビートルズの録音スタジオ内に1人が突入し白眼でリンゴへ突進。付き人にタックルされ退場)

その最中に、笑いながら「ファブ4」は演奏した。
(ビートルマニアは職員の髪までひっつかんで狂奔した。カツラでメンバーが変装しているかもしれないと思い)
ジェフは言う。
「だから、シー・ラブズ・ユーの演奏は、ビートルズ史上、最高にホットなんだ」と。

ようやく納得。
あの狂乱の魔術は、そういう状況から生み出されたもんだったのだ。
あなたも、もう1度聴いてみればいい。
「シー・ラブズ・ユー」を。
リンゴの最初のドラムからの、奔(はし)りの凄さよ。

(むかし『BURST HIGH』誌上にて、ロック・シングル100選特集をしたとき、私の1位は「シー・ラブズ・ユー」だった。ちなみにアルバムは『リボルバー』が好き。携帯の着信メロディーが「レイン」だったこともある。2位はたしかストーンズの「悪魔を憐れむ歌」。3位はピストルズ「ホリディ・イン・ザ・サン」だったような。別に嘘ではないが、他の選者4人――釣崎清隆・アイカワタケシ・清野栄一、モブ・ノリオの諸氏が、やたらマニアックな曲を並べたため、わざとベタな曲選をした気味がある。まあ、私は編集長だったのだし。ちなみにちなみに初期ビートルズのポールの1番は「キャント・バイ・ミー・ラブ」だ)


昨夜と今夜、雑司が谷鬼子母神は「盆踊り」だ。
どうしよう。
酔払いすぎて、とても外へ出ていく気力がない。
校了したシングル小説のB面「ものもらいの数珠」に、8字の文字抜けが見つけ、慌てて、編集・横戸へメールする。

そして、布団を敷き、倒れた。
その前に、詩を完成させたはずだ。
ところで、いつも思うのだが、ジョン・レノンって、男前だったのだろうか?



7月24日(日)鬼子母神は晴れのち曇り(涼しい)。

午前10時起床。
歯を磨き、洗顔し、ヒゲをあたる。
終えて、網戸を開け、午前の日に顔をさらす。
「52歳かあ」
今日は私の誕生日であり「河童忌」だ。

顔をしかめ、ほぼ無意識に近いルーティンで、小指の爪で、小鼻の脂をしごいた。
そして一瞬、爪を嗅ぎ、ティッシュで小指をぬぐう。

その爪についた脂に「チーズ臭」を嗅いだなら、私の内臓はまさに腐りかけており、臭いの濃さによって、膵炎の発症を恐れる。
その振舞いは5年半ほど前からの癖だ。
最初の「アルコール性重症膵炎」で入院してからすぐからだ。

我ながら気色の悪い癖だが、最早こればっかりはこの先も止められそうにない。
その臭いの度合いが、如実に体調の悪さを教えるからだ。
私は楽しく生きたい。

1日に2度3度、意識的に嗅ぐときもある。
ひどい二日酔いや、締切直前の原稿を前にしたときだ。
嗅ぐ際、先にティッシュで、爪の脂をぬぐう場合もある。
するとより、空気を含んだ発酵臭が、花開くように明晰となる。
虫を喰う大型の植物は、タンパク質が腐ったような匂いで虫を誘うというが、こんな臭いなのかもしれない、と思う。

私は山羊の硬いチーズが好きだが、小鼻の脂の発酵臭は、もっとネットリとした、羊のクリーム系チーズの臭いに近い。
脂の色は一見透明だが、ティッシュでぬぐうと、鶏の脂のような黄みがかった染みとなる。

体調が悪いほど、脂の臭いと黄みは強くなる。
体調が良くなると――以前なら1週間ほど禁酒すると、小鼻の脂はあっけなく無臭となり、ぬぐった染みも黄みが失せている。
その状態なら以後、酒を呑んでも、深酒をしなければ、やはり無臭のままだ。

それに気付いたのは、最初の「アルコール性重症膵炎」で入院してから、2度目の同病で入院するまでの、半年間の初期のことだったと記憶する。
(結局、私は2年間に3度入院するはめになる――最初の入院以後、飲酒をひかえ、薬を飲んでいたにもかかわらずだ。しかし、薬はもう4年飲んでいない。むろん飲酒を止めてもいない)

そんな真似を毎日、つまり小鼻の脂を嗅いでいたのを、暮らしていた前の女も知らないだろう。
いや、その姿を目撃し、はっきり私を棄てる決心がついたのかもしれない。
それは「男女の別れ」の決定的な理由となるはずだ。
さぞや「不潔な光景」に違いない。
私だって、他人のそんな様を見たらおぞけをふるう。

しかし、小鼻の脂の発酵臭を、私はやや恐れつつも、心底臭いと思ったことはない。
いや、それどころか、その臭いを嗅ぐのは、まさに病みつきといった妙だ。
そのあきらかに病んだ異臭は、私のからだが示す危険信号であるが、腐りかけの「旨そうな内臓」の放つ香りでもある。

まさか食欲を起こすわけもないが、我が身への愛しさを嗅ぐたびに感じさせ、私もまた平凡な「ナルシスト」だと納得させる。
(世には自分の排泄物にさえ愛着を持ち、その「つるつる」とした表面をなでる人間もいる――詩人の金子光晴がそうだった)

むろん、誰かに嗅がせたいなどとは思わない。
さすがに私はそれほどのナルシストじゃない。
が、これから先、私とくちづけする女が現れないとも限らない。
そのとき私は泥酔しているだろう。
シラフで最初のくちづけを交わしたことは、かつて一度もなかった。

くちづけの瞬間は、酒と煙草の臭いしか女は嗅がないかもしれない。
しかし1秒後、その発酵臭を女は鼻にするだろう。
そして愕然とするだろう。
たったいま抱いている男が、生きたまま内臓を腐らせていることに気づいて。


――年ほど前に、「からみ」の撮影したモデルは、当日「妊娠している」ことを告げた。
(これは「妊婦企画」でなければ御法度だ)
撮影場所の、当時私が女と暮らしていたマンションの風呂に浸かることを嫌がって、彼女は告白したのだった。
(風呂は撮影前に掃除してあった。私の女には内緒で)

「じゃあ、シャワー浴びるとこにしよう」と、私はカメラを構えたが、未だに覚えているのは「心外だ」と思ったからだったろう。
でも、もちろん彼女の告白を「ありがたい」とも思ったのだ。
知らずに「無理」をしたら大変だ。


眼のくりっとした彼女は、まさに業界的に「妹っぽい」幼く可愛い面立ちをしていた。
(むろん「宣材写真」で選んだのは私だ)
私服の、ワンピースも上下の下着の色模様も、彼女の「男を知らぬような」白い肌に映えていた。

彼女は「企画系」だったから、たいがいのことなら「何をしてもいい」女だったが、さすがに「妊娠している女」には手が引く。
結局、さわりもしなかった。
20代のエロ本編集者(&男優)のころ、同僚たちから「鬼畜」と称号された私が。


撮影後、お互いようやく気持ちがほどけ(他に後輩スタッフがアシストしていたが)色々話をした。
いつも女と寝ている布団に2人で横になって。
アシストの後輩は忙しいからと編集部へ帰った。

彼女曰く――。

わたしは「セックス」しないと男がわからない。
その体臭を嗅がないとわからない。
その人格と未来と相性がわからない。

14歳の初恋でも、まず自分から誘ってセックスしてみた。
それからずっと、気になった男と会うたび、セックスをして、匂いを嗅いで「さがして」きた。
今の夫は、最初のセックスの、最初のキスで「このひとと結婚しよう」と思った。
その口臭さへ愛おしかった。
ようやく「さがして」きたひとに出会えたと思った。

今日が最後の撮影。
昨日でSMクラブも辞めた。
わたしはルックスがこうだから「M女」をしてきて、けっこう人気もあった。
浣腸されて「うんこ」するだけで、4万円もらえるんだから楽だったけど、ようやく「匂いがこれぞ」という男と出会ったので、止めようと「一瞬」で決めた。

彼は自分が、わたしの最初の男だと信じている。
わたしが可愛くて、毎夜あそこを1時間も舐め続ける。
生理のときは、じっと我慢しているのがわかる――。


――年前たまたま、テレビの人物紹介番組で、妻としての彼女を見た。
彼女の腰にまとわりつくように子どもがおり(私が撮影していたときお腹にいた子だろう)、腕は赤ん坊を抱え、その腹は臨月の脹らみだった。

夫は成功し、家族の笑顔は明るく、その部屋は健康だった。
彼女の嗅覚は、正しかった。
だてに14歳から23歳までに、200人近い男を嗅いできたわけじゃない。
そのうちの1人に私もいるのだが――。

女の嗅覚は、男の内臓の不健康さを嗅ぎ当てる。
その精神の不健康さも嗅ぎ当てる。
52歳になった今日、これを書きながら、もう1度、小指で小鼻をしごいて嗅いでみる。

なぜか今日は無臭だ。
「まだ、呑めるな」
で、今、呑んでいる。
誰か(おそらくあいつか)、私に声をかけず、黙って廊下に置いていった酒を。
(越後「鶴亀」純米酒――それとハイライト1箱、わかば2箱。誕生日だからハイライトを吸っている)


52歳の誕生日の男より、あなたへ詩を贈ろう。
昨日、ようやく完成した詩だ。
こんなもんでも、2年かかった。
(今月号のコアマガジン発行『ホット・ミルク』には、以下の詩の初出が載っている)

おやすみなさい。
読んでくれてありがとう。
今夜は月が輝くはずだ。
よい夢を。





「おれたちが波にさらわれる夜」


おれの計画が頓挫した夜
月が高く昇るのを見た

おれの罪が露見した夜
月が高く昇るのを見た

勾玉(まがたま)を乳房で温める女よ
呪いを司(つかさど)る 唇をむすんだおまえよ

おれたちが波にさらわれる夜
月はもっとも高くのぼるだろう














P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――10,000円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と5,000円ほどで)

●pissken420@gmail.com


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御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
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[鬼子母神日記]

「福島県鳥キビタキ・ガイガー・カウンター」
佐藤ブライアン勝彦●作品




人を感知し空間放射線量を話す、福島県の県鳥、キビタキを模したガイガーカウンター。
元々はニューヨークに住む友人が「佐藤くんが好きそうなので」とゴミ箱から拾って来たもので、プレスリーの監獄ロックが流れていた。
震災で物が散乱した部屋の掃除をしていた時、このおもちゃがボロボロの状態で出て来た際に作品のアイデアが閃いた。

その頃は仙台の空間線量の数値もガイガーカウンターの値段も高く手に入りづらい状況だったため、自分の為にも作りたかった。
(ノイローゼの様な状態になり、眠れず夜な夜な漫画喫茶に入り浸っている状態だった)

そこで作品のアイデアを福島県の企業に相談したところ、心良く依頼を受け入れてくれた。
タイミングよく視覚障害者の団体から依頼され音の出るガイガーカウンターを制作中とのことだった。
日本に何社か制作している企業があったが、僕はどうしても福島県の企業に制作してもらう事に作る意味があると思った。
(佐藤ブライアン勝彦●文)

(※)尚、ユーチューブにて「ガイガーカウンター 福島県鳥キビタキver ビリケンギャラリー佐藤ブライアン勝彦展」で検索すると、動く姿が観れます。







●新宿歌舞伎町の某中華料理店にて泥酔中


6月25日(土)鬼子母神は雨、ときどき晴れ。

喉の渇きに目覚めると、昼の1時過ぎだった。
よろけながら立上ると、シャンペンを冷蔵庫から取りだし、畳に胡坐をかく。
栓をぬき、水がわりにラッパ呑みする。
ただし、むせないようゆるゆると。

「酔いざましのサイダーと迎え酒の効用を兼ねた飲料は、シャンペンに限る」
(若きパリ時代を振り返っての獅子文六の言)

ボトルの3分1ほどを呑みほすと、冷えた息を大きく吐き、6畳の部屋を見渡す。
布団も敷かず、畳に寝ていた。
カーテンも閉めていない。
が、外は小雨模様で、部屋は薄暗かった。

テーブルの中央には、お握りを盛った大皿がラップされてある。
明け方寝る前に、発作的に握ったものだ。
梅干の紫蘇の葉を刻んだものと、煎り胡麻をご飯に混ぜこんである。
ラップの内側に、水滴がびっしりとついている。

お握りの向こう、開けはなした窓の網戸越しに、窓柵の内に置いた3本のミニ・ヒマワリが見える。
赤いポットの2本は、1本が40センチ、1本が30センチの背丈だ。
しかし、黄緑色のポットのヒマワリは15センチほどの背丈しかない。
赤いポットの丈高いほうが直径7センチほど、低い方も6センチほどの黄色い花を咲かせている。
黄緑のポットの1本も、小さなつぼみをつけている。

陰気な部屋で、シャンペンを呑み呑み、テーブルのお握りとヒマワリの色の対比を眺める。
テーブルの赤茶。大皿の白。お握りの赤紫。ヒマワリの緑と黄色――。

それから、窓の下壁に頭をつけるようにして寝ている、色白のガクを見た。
小柄なガク(元『ニャン2倶楽部』編集長)は、もう40半ばだというのに、まるで幼児のように親指を口に含んで眠っている。
あらためて、お握りとヒマワリとガクの寝姿を、視界いっぱいに映してみる。

いい景色だ。

ガクの名を呼ぶと、すぐ目覚めた。
シャンペンのボトルを差し出す。
「ああ」とガクはつかみ、ラッパ呑みした。
途端、案の定むせて吹きだした。


「外で呑もうぜ。まだ金あるから」
とガクが言うので、タクシーで池袋へ向かった。
歩ける距離だが、すでに酔っぱらったガクが嫌がった。
雑司が谷には昼下がりに呑める店がない。

北口にあった24時間のチェーン居酒屋に入った。
2人ともホッピーを頼み、肴を2種。
しかし、そこに1時間もいなかったろう。
ガクが、近くに24時間営業の「女装娘(じょそこ)クラブ」があるから行こうと、愚図りだしたからだ。

元来ガクは、一か所に尻を落ちつけて呑むのが嫌いな男だ。
(昨夜も高田馬場で3軒ハシゴしている。むろんガクの奢り――シャンペンもガクが買ってくれた)
20代からのアル中で、よく私の部屋で呑みながら座りションベンをしたものだ。
(そのたび私のパンツを履いた)

当時からガクの「4日酔い」は有名だった。
(呑むと4日間ぶっつづけで呑むという意味)
誘われるたび「何日目?」と私は訊き、初日の場合は断わった。
とても付き合いきれるもんじゃない。

ガクは現在、奥多摩の実家にもどり、老父母にかくれて呑んだくれているらしい。
ライター仕事は月に4万円ほどしかなく、時給910円のロープウェイの運転手(?)のバイトに履歴書を送って、返事待ちだという。

ちなみに、元同僚の樋口毅宏(ひぐちたけひろ)の小説『ルック・バック・イン・アンガー』には、モデルとしてガクがフューチャーされている。
(登場人物のほとんどが、コアマガジンの編集者たちをモデルとしている。が私は出てこない)

ところで「女装娘クラブ」とは初耳だ。
「おかまクラブ」とどう違うのだろう?
しかし、すでにべろべろのガクは説明できない。

店を出る前に、私は食べ残した「イカ焼き」と、「ちくわの磯辺揚げ」を、パックに詰めてもらった。
それを見て「そうそう、夜のつまみにしなきゃ」とガクが言った。
気のいい店員がビニール袋もくれた。

外に出てすぐ「小便がしたい」と、ガクは眼の前の回転ずし屋に入った。
私は酒を頼み、さっそく甘鯛のコブ〆と、鰹と、烏賊と、ホッキ貝と、中トロを頼んだ。
便所から帰ってきたガクは「おれも酒を」と言ったが、鮨はつままず、酒も猪口でひと口呑んだだけで「さあ、出ようぜ」と立上った。

「うそだろ、おれ1年ぶりの鮨なんだぜ」
くそ、しょうがない。
(頼んだ鮨は1分で食べ終えていたが)
私は自分の1合瓶をラッパ呑みし、ガクの1合瓶をつかんで先に外へ出た。

それからあたりを廻ったが、やはりガクは、まったく店の位置を憶えていなかった。
それでも店の名前だけは憶えていて、道行く人に片っ端から聞いている。
24時間営業の「女装娘クラブ」なんて、そこらのおっさんが知っているわけがなかろう。
私は他人のふりをして、1合瓶をラッパ呑みしていた。

「曽根さん! あの子が探してくれるって!」
「あの子?」
見れば自転車にまたがった若い女が、スマホをいじくっている。
ちょっとコンビニへ出てきたといった服装とサンダル履きで、赤い眼鏡をかけ、10代にも見える童顔の女だった。

「いいんだよ、こんなのにかまわなくて」
「いえ、大丈夫……あっ、ありましたよ」
娘がガクにスマホを見せた。するとガクは、さも当然とばかり、
「ありがと、そこまで連れてって」という。
「おいおい」
「いいよ」と娘はくったくがない。
私は2人のあとを追っかけた。

路地を入ってすぐに、その店の入っているビルが見つかった。
3階と4階らしい――(ん?)
そのビルには「和風おっぱいパブ」も入っており、ちょうど5時になったばかりで、若い金髪の呼びこみが立っていた。

「40分で6千円かあ。ずいぶんと安くなったんだねえ」と、私は声をかけた。
「ええ、(今どきは)これくらいじゃないと」
「なに、この和風って? 着物着てるの?」
「ええ、けっこうエロいっすよ」
「うん、こんどお世話になるね」

そう言ってから、私は彼女を誘って、ビルの対面にあるタイ料理屋へ入った。ガクも異存はない。
彼女とガクは「シンサー」、私はキリン・ビールの小瓶を頼んだ。
肴は、彼女がなんでもいいと言うので、生春巻きと、タイ流のソーセージを。

彼女はN子と名乗った。
西の生まれで、東京はまだ3年。しかし、なんともう28歳だという。
どう見ても18歳の笑顔である。
仕事はチェーン居酒屋の運びやで、今日も10時から明け方まで仕事らしい。

芝居がしたくて上京したが、劇団に所属したことはない
「さっさと実家へ帰れよ。親御さんに心配かけるな」
と、あやうく言いかけた。

ビールを飲み干し、残った輪切りのソーセージを、前の店で〈おみや〉にしたパックに詰めた。
N子はやはりくったくなく「女装娘クラブ」へついてきた。
新宿2丁目の「おかまバー」に、1度行ったことがあると言う。

その24時間営業の「女装娘」の店は、3階がDVDを観る個室が並んでおり、4階がバーとなっていた。
メンズ・オンリーで、N子は入れないと言われたが、
「これ女装した男だから」と、ガクが強引に連れて入った。

入場料(?)は1人2,500円。
渡された小さなプラスチック籠には、コンドームが2つ入っていた。
金を払うと、オレンジ色の細いプラスチック布を手首に巻く。
細い通路の両脇に、6つの扉がある。
ドアを開くと、2畳ほどの薄暗い部屋に、ベッドとテレビ・モニターがある。

ベッドに私たちは籠を置いた。
それから4階に上がり、バー・カウンターに座った。
先客の女装娘が2人いた。
奥は8畳ほどのソファ席になっており、別の女装娘2人と、平服の男2人がこそこそ話している。
やがて、2カップルは3階へ降りた。

なんのことはない、女装娘クラブとは「はってんば」のことだった。

先客の身長183センチの女装娘に、ソファ席の「奥の部屋」を案内してもらった。
そこは、暗く、狭く、生臭く、なにやら禍々(まがまが)しかった。
3畳くらいか。
1畳半が観客席らしい。
水槽を側面から観るようにして、四角の枠の奥に敷き布団がある。

すでに1人、大きな紙芝居を待っている短髪の中年男がいた。
私は頭を下げ、「どうも、うるさくてごめんね」と言った。
彼はそっと薄い頭を下げた。

それからカウンターで、私たちはセーラー服姿のマダムや、女装娘2人と楽しく呑んだ。
酒はなんでも500円。
私たち3人は、ウイスキー・ソーダを何杯も呑んだ。
もちろんガクの金で。

バイトへ行くN子が9時ごろ帰り、しばらくして私とガクも「はってんば」を後にした。
タクシーで新宿へ。
なじみの中華料理屋へ着くなり、元同僚の稲野辺さんを呼び出す。
この店までは、〈おみや〉のビニール袋を私は手にしていた。


●中華料理の肴も〈オミヤ〉にしていたようだ。


稲野辺さんの案内で、歌舞伎町の、ど派手なナイト・クラブへ行く。
ラスベガスのそれを模したのだろうゴージャスな店内に客はおらず、白人の店員が手持ちぶたさに突っ立っている。


●真ん中が稲野辺さん。左がガク。


ステージでは、外人のピアノとウッド・ベースをバックに、日本人の女ジャズ・シンガーが、われわれ3人だけに歌ってくれた。
60年代の「農協」のおっさんのごとく、私は盛んに声援(?)をかけた。












そこを出てから、ゴールデン街の「中村酒店」へ向かう。
途中の路上で、むりやり2千円を稲野辺さんからむしりとる。
店へ入ってすぐ、客の若僧に喧嘩を売り、私ひとり京ちゃんから追い出される。
素直に1時間歩いて、〈七曲がり荘〉へ帰った。


〈除湿〉をかけっぱなしにしていた6畳は涼しかった。
テーブルには手つかずのお握りの大皿があった。
いい景色だ。
が、そこでようやく、〈おみや〉をどこかへ置き忘れてきたことを知った。

私は冷蔵庫からシャンペンを取り出した。
それをグラスで呑みながら、お握りをゆっくり、もしゃもしゃと食べた。
「これが、女の握ってくれたもんだったらなあ」
と、つぶやいた瞬間、4方の壁が膨張するほどの沈黙が部屋に満ちた。

が、すっと沈黙の緊張はとけた。
「そういや半分、ガクが握ってくれたんだっけ」
女じゃなくとも、人が握ってくれたお握りは旨い。
冷蔵庫には、明日の酔いざめ用のシャンペンも残っているし――。


――2日後の昼、ガクがまた雑司が谷へ来た。
あれからずっと新宿で呑みっぱなしだったという。
ガクの「4日酔い」は健在だった。
それから、元シブガキ隊のバック・バンド「シブ楽器隊」のギタリストで、元同僚の川守田(私と同い年)を呼び出し、割烹店「 I 」で、キンメ鯛の煮魚を肴に呑んだが、記憶はおぼろである。



7月21日(木)鬼子母神は朝から小雨。

今日午後6時半より、ボスYの事務所にて横戸と3人、THE SHELVIS(ザ・シェルビス)のセカンド・シングルの原稿を校了する。
B面の「ものもらいの数珠」のラストの書き直しを終えたのが昨夜。
(A面は「親不知(おやしらず)のしゃれこうべ」なり)

掌編2作に5カ月もかかったが、どうにか振り絞った感あり。
あなたに読んでほしい。
せめて「ジャケ買い」してほしいな。

読んでくれてありがとう。
これから早いペースでブログをアップします。
ぜひ御贔屓に。
おやすみなさい。
よい夢を。



P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――10,000円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と5,000円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]
href="http://stat.ameba.jp/user_images/20160721/17/pissken420/bf/5b/j/o0531053013703054155.jpg">

7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。

[シングル小説第2弾は、8月発売予定!]
乞うご期待!


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[鬼子母神日記]

「3.11ブルーシート・バーキン」
※曽根が勝手に命名――本当の作品名を聞き忘れたため


佐藤勝彦●作品

3.11で使われた(?)ブルー・シートを使用し、エルメスの「バーキン」型のバッグを、某かばん会社に以来し制作した作品。
表のサインは、趣旨に賛同したジェーン・バーキンの直筆(!)。
むろん、世界にただ一つだけの「バーキン」である(非売品)。


5月22日(日)鬼子母神は快晴。

雑司が谷鬼子母神「みちくさ市」(古本市)に、初めて参加。
主催者の西早稲田「古書現世」店主・向井透史さんが誘ってくれたのだ。
もともと向井さんを紹介してくれたのは、石丸元章さん。
で、石丸元章責任編集『ブルーズ・マガジン』(フリー・マガジン)の配布ブースを間借りしてシングル小説を販売した。

他のたくさんのブースから「はっきりと」離された場所に、テーブルとパイプ椅子が2脚。
眼の前はコンビニだから、酒を買うのも便所も楽ちん。
午前11時より店を開く。
が、肝心の『ブルーズ・マガジン』石丸や、編集の雨森が顔を見せたのは、12時半過ぎだった。

それでも、天気が良く、最新号の『ブルーズ・マガジン』は面白く、ビルとビルのすきまのパイプ椅子に座って、焼酎のグレープフルーツ炭酸ジュース割を呑むのは、まったく気分がよかった。

ブースに立ち止まる人も多かったが、私はしかとう。
若いカップルの男が、シングル小説を開いて笑いながら、
「こういうコンセプトなら、B面の頭は反対から読めるようにしなきゃ。本来これは横組みにするべきなんだよ」
と解説し、彼女はうっとり。

しばらくすると、なんとシングルが売れた。
若い男性で、ごめん、酔っぱらっていて名前を失念。
実はまったく売れることを念頭に置いていなかったので慌てた。

次いで、向井さんが「姪の女子中学生かな?」と思われるちっちゃい娘を連れてきた。
実は、向井さん一押しの歌い手で、北村早樹子さんだという。

「かわいいねえ。お嬢ちゃん、いくつ?」
「もう31歳なんですよ」(本来大阪弁)
「げっ! マジで!?」


●出奔した父親を訪ねてきてくれた末っ子の娘


彼女のCDとシングル小説を交換し、サインをしあう。
※今ユーチューブで観聴きしたところ、「裏パミュパミュ」みたい(妄言多謝)。
「マイハッピーお葬式」と、なにより円広志の「夢想花」のカバーが良かった。

その後、石丸さんが来るが、1分もその場にいなく、どこかへ消える。
そして、ようやく編集のシングル・ファーザー雨森が息子のH君を連れて登場。
そのあたりで、私はべろべろ。

売れた1600円で、Hくんへお菓子とかケーキとか、サンドイッチやらを買う。
それを親子が食べる、ほほえましい姿を見ながら酒がすすむ。
その後、『ブルーズ・マガジン』の読者がついでにシングルも買ってくれる。
その1600円で、またお菓子と石丸さんたちの酒を買う。

(石丸さんとの2ショットが石丸さんのツイッターに載っているとのこと。キャプションは「ウイ・アー・ゲイ」らしい)

午後4時無事終了。
煙草を買ったら、手持ちの金が130円しかなかった。
H君から似顔絵を描いてもらったので部屋に飾った。
シギーのKちゃんに描いてもらった似顔絵の隣に。
食べるものがないので、早寝した。



5月27日(金)鬼子母神は曇り、ときどき雨。

ここ2週間ほど、友人Sから貰ったコピーライトの仕事を、ボスYの新事務所でやらせてもらっている。
ボスYは、そのデザインをしている。
(ボスYは今年の頭、池袋に新事務所を開いた。住居と仕事場を別にしたのだ)

ボスYと一緒の部屋で仕事をするのは久しぶり。
数日前には、野菜ジュースを箱で貰ったりもした。
(兵庫くんと分ける)
コーヒー飲み放題なり。

さっき最後のコピーを友人Sへ送って、ひとまず私の仕事は終わり。
酒で2日ほど倒れたが(昨日はかるい膵炎を発症し寝込んでいた)、おおむね仕事は順調だった。
が、これでまた無職に。

その後帰らず、ユーチューブでハッピーエンドを聴きながら、これを書かかせてもらっている。
一昨日古本屋で、『レコード・コレクターズ』の「追悼特集・大滝詠一 1969‐1979」を買ったため(500円)。
やはり『風街ろまん』のA面1、2曲目はかっこいい。

さて、これをアップしたらスーパーで夕食を買って部屋に帰ろう。
酒はどうしようか?
う~む。


おやすみなさい。
読んでくれてありがとう。
よい夢を。



P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――10,000円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と5,000円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]


◎7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。

[シングル小説第2弾は、7月発売予定!]
乞うご期待!






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テーマ:
[鬼子母神日記]




佐藤(ブライアン)勝彦
(3.11直後の絵である)


5月11日(水)鬼子母神は曇り。

起床午前6時。
前日ギャラが入ったので、久しぶりに朝酒を呑むことにした。
いや、嘘か。
前夜から決めていたのだ。

起きがけの酒は(あらゆるドラッグ同様)効きがいちばんいい。
死んだアル中の親父も、50になると、休日の午前5時ともなれば、自ら肴をつくり呑んでいたっけ。
(その姿を見て、高校生の私は、はなはだしく嫌悪したもんだ)

59歳で脳出血で即死した親父の肴は、甘辛い卵焼き(に醤油をだぶだぶかけたもの)や、塩の結晶がびっしりと浮いた鮭の塩引きや、白菜漬けや、自家製の烏賊の塩辛や、前日の鰹(かつお)の刺身だった。

親父は獣肉を食べず(いや、鯨だけは好物だったが)、魚肉しか食べなかった。
その魚肉も「焼き魚」ばかりで、刺身が嫌いだった。
唯一口にした生魚はカツオだけ。

当時(70年代)の東北の一般家庭で食するカツオは、買った時点で身が「でろんでろんで」と柔らかく、当然生臭く、翌日ともなれば、それはひどいもんだった。
それをオカズにご飯をたらふく食べた小学生は、20年後、ラズウェル細木の『酒の細道』のある回を読み、「うん、うん、そうなんだよなあ」と、コアマガジン「仮眠室」にてうなづいて眠った。

(昭和生まれのサラリーマン主人公が、居酒屋で出た新鮮なカツオに物足りなさを覚え、残りの刺身をタッパーに入れて持ち帰り、冷蔵庫に入れて、翌日の肴にし、そのでろんでろん具合に満足する――と云った話)


閑話休題(それはさておき)。

布団を上げ、歯を磨き、洗顔し、けれどヒゲは当たらず、豆腐を買いに外へ出た。
すぐそばに豆腐屋があるのだが、水が悪いのか腕が悪いのか、それとも夫婦仲が悪いのか、どうにも私の舌には塩梅が悪いので、往復30分歩いて某豆腐屋へ行く。
この鬼子母神に長く住んでいた、石丸元章さんから教わった店だ。

初めてその店へ、夕方買いに行ったとき、60がらみの店主は、
「もう無くてね、昨日のでいい?」
と、こともなげに言ったものだ。
その億面のなさにビックリし、私は断れなかった。

けれど悔しいことに、その冷奴はじゅうぶん旨かった。
むろん出来たての朝は、まさに「舌うち」したくなるほどだ。
今朝は、絹ごし豆腐(子どものころからだから木綿に変えようがない)の他に、がんもどきを買う。

部屋にもどるとすぐ、酒と砂糖と醤油でさっと、がんもどきを煮た。
他に自家製の、蕪の糠漬けを器に盛り、一味と醤油を振る。
(まだ糠みそは若すぎて、肝心の臭みが淡い)
豆腐半丁に、葱と一味と中華ドレッシングをかけて冷奴とする。

スナック代わりに煮干しをひとつかみ。
酒は昨夜の残り、一の蔵を冷やを茶碗酒で。
ゆるゆる呑みながら、昨夜の残りの「納豆の味噌汁」に、賽の目に切った豆腐半丁を足して温める。

味噌汁の納豆は「大粒」2パックを、包丁でかるく叩いたもの。
味噌&納豆&豆腐とは「畑の肉」のそろい踏みだ。
これぞ「三位一体」の、ゴージャスな味噌汁だ。

椀に「三つ葉」をひと束(スポンジに根づいた分すべてを)刻み入れる。
三つ葉は椀から、あふれんばかりになる。
そこへ熱い納豆汁をたっぷりとそそぐ。
たちまち三つ葉は椀の中で鎮(しず)まる。

三つ葉の香りは淡い――日本の〈香菜〉は皆そうだが。
これだけの量を入れて、ようやくその香りがはっきりと鼻にぬける。
こってりとした納豆汁には、これくらいの三つ葉が適量だと思う。

なんにしろ、納豆汁は旨い。
ものの本によれば、江戸時代の庶民はたいがい、納豆を味噌汁の実として啜ったそうだ。
なぜなら、ご飯にかけようにも、白米を食べられることはそうないことだったから。

納豆汁と茶碗酒を、交互にすすれば、ゆらりと酔いが浮き上がる。
何度もここに書いたが、熱いスープは最上の肴だ。
ラジオから、オバマが広島を訪問すると、盛んに伝えられる。

「読み肴」は、小川国夫「随筆集 夕波帖(ゆうなみちょう)」(幻戯書房)。
小川国夫のエッセイは面白くない。
彼の世界に入るための「スイッチ」の位置がわからない。
でも、探す。
でも、なかなか――。

[明日22日、雑司が谷鬼子母神「みちくさ市」にてシングルを手売り]

5月22日(日)雑司が谷鬼子母神参道にある、コンビニ「ポプラ」前にて、石丸元章氏監督、フリーマガジン『ブルーズ・マガジン』配布ブースにて、曽根がシングル小説を手売りします。
この季節の鬼子母神の緑は美しく、古本&雑貨市である「みちくさ市」は楽しいので、ぜひ遊びに来てほしい。


(発売:リットーミュージック/詳細はネットで検索してください)


王様こと村藤治(デザイナー&テキサコレザーマンのG)より、その話を相談されたのが4月の前半の某日電話にて。

「アンノちゃんの本のさ、表紙の撮影場所を、ピスケンの部屋でやれないかなあ」
アンノちゃんとは、あのギターウルフのセイジさんのことだ。
セイジさんのブログを本にすることが、数年前から企画されていたそうだ。
(企画はリットー・ミュージックより)

私に是非があろうはずがない。
もし、それが実現すれば、光栄だ。
王様はひとまず、この部屋へ「ロケハン」に来た。
そこで、もしその企画で撮影するなら(企画者はセイジ&王様)、こういう小道具が必要なんじゃないかと、私もアドバイスをした。
(例えば原稿用紙は、ベタに神楽坂「相馬製」とか、文鎮が必要だとか。葉巻も?とか)


で、なんと、あっさり撮影が実現することになったのだ。
撮影日は4月25日(月)の午後3時より。
事前(20分前)に84歳の大家さんには許可を得た。
つい先日、小林秀雄の『ゴッホの手紙』を読んだという彼女は快諾してくれた。
(タイトルは知っているが、もちろん私は『ゴッホ~』を読んだことがないけれど)

当日午後3時、この「七曲がり荘」の6畳間にでかい男たち6人もが集結した。
むろんセイジさん。
カメラマンの三島タカユキ(三島っち)。デザイナーの王様。書籍担当編集者。ギターウルフのスタッフ。そして私。

セイジさんは、坂口安吾の有名な写真(林忠彦が「これだ! これだ!」と叫んで撮ったという、ゴミに埋もれた、けれど強烈に清冽な文士の現場)のイメージを持っていた。
だから自分の部屋から、レコードや雑誌や本やギターや、グローブや工事現場道具や竹刀やらをいっぱい持ってきた。

三島っちは、ストロボをセッティングしたが、最初は窓からの自然光で撮影を始めた。
そして結局、ストロボは1発も鳴らさず、最後まで自然光で撮った。
最初は、セイジさんが持ってきたものは散らさず、テーブルに原稿用紙を開いただけの写真から。
あとから、ブツをばらまいて撮影。

なんと撮影は、ものの1時間ほどで終了。
つまり、いい現場だった。
現場でぐずぐず時間がかかるときは、ダメな撮影だから。
(スタッフと主演の考えがまとまっていないとき、最悪な撮影になる)
ワン・カット目を、皆で「いい」と云い、実際それが使われた。


撮影後、王様だけが部屋に残って呑み、それから兵庫くんも誘って中目黒の呑み屋「銀紋」へ。
たしか、数回前のブログにそのことを書いたはず。
スタジオ代として頂いた15,000円は翌日には木端微塵、胡散霧消したはず。
(銀紋も、その後の店の呑み代もぜんぶ王様に払ってもらったのに)

ちなみに撮影中、三島っちは共同(和式)便所へ行った。
帰ってきて「いや~大変でしたよ」と笑う。
「あっ、大きいほうだったのかあ」
そりゃ無理だ。
私(174センチ)でも、しゃがんで用を足すのは苦しいのに、三島っちは190センチもある。
(身長185センチの死体カメラマン釣崎清隆は、この部屋に同居した3日間、近くのコンビニへ毎回出た)


ちなみは続く。

写真の、赤茶のテーブルはボスYから貰ったもの(部屋での乱闘で片足が折れている)。
セイジさんの手にしている万年筆は、私のモンブラン。

(女から貰ったもので、PISSKENと金文字がほどこされている。が、使ったのは1年ほどで、あとはずっとボールペン。ただし、そのインクにこだわりが出来、芯だけダースで買って貰っていた。むろん別の女に。まだ残っている。がもう販売中止らしい――実は、表紙のセイジさんの文字のインクはそれ)



●セイジさんはそもそも身長が185センチほどもあるのだが、現役の剣道五段の「正座」は、こうやって見ると「うわっ」と思うほど違う。


で、上の写真の手前に赤っぽいものがあるが、それは映画の台本である。
この世に1冊しかなく、テレビで映す場合、セイジさんに借りにくるそうだ。
私は手にした。
開いた。

映画『狂い咲きサンダーロード』
監督:石井聰亙
主演:山田辰夫

その山田辰夫のサイン入り台本を。
少しだけ書き込みがあった。



翌日三島っちからのメールによると、セイジさんは、
「ピスケンって、相変わらずおもしろいなあ」と、言ってくれた由(よし)。
セイジさんと会うのは10年以上ぶりだった。




冷奴と蕪の糠漬け(茄子を漬けたいがまだ高い)、納豆汁を肴に茶碗酒を呑みながら、昨日買ったカツオを引く。
それと一緒に「行者ニンニク」の醤油漬け(頂きもの)で喰う。

カツオと行者ニンニク。
初めての体験だ。
今日の朝酒は良かった。



おやすみなさい。
よんでくれてありがとう。
「ニンニクは食べると臭いから」とか、医者の斎藤茂吉みたいなこと言いなさんな。
その口で噛みつこうぜ。

読んでくれてありがとう。
よい夢を。



P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――10,000円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と5,000円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]


     
7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。

[シングル小説第2弾は、7月発売予定!]
乞うご期待!



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テーマ:

[訂正]


前回のブログの「みちくさ市」でのシングル小説販売の告知で、ブース位置が間違っていました。
以下に正しい情報を。


5月22日(日)雑司が谷鬼子母神「みちくさ市」。
午前11時より夕方4時まで。
私(曽根)がシングル小説を手売りします。

ブースは、鬼子母神参道にあるコンビニ「ポプラ」前のブースにて。
石丸元章主幹『ブルーズ・マガジン』配布ブースに同居です。
「みちくさ市」自体が楽しいので、買わなくても遊びに来てください。

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