曽根賢(Pissken)のBurst&Ballsコラム

元『BURST』、『BURST HIGH』編集長の曽根賢(Pissken)のコラム


テーマ:
[鬼子母神日記](番外編)

「おれたちが月にさらわれる夜。月はもっとも高く昇るだろう」
撮影●佐藤勝彦



曽根さんの詩(注=前回のブログにて)を読んだらこの写真が浮かびました!
2週間位前にたまたまとれたんですが、、この日満月で凄い月が明るい日だったんです。

で、あるバンドのジャケに似てる! と先輩から写真が送られてきて、それが、これです。


ちょっとビックリしました。
(文●勝彦)


8月25日(木)鬼子母神は晴れ。

約2週間の帰省より、七曲がり荘のこの部屋に戻ったのが昨日の夜8時。
上野駅から池袋駅までの山手線車内の混雑、ついで池袋駅構内の人群に圧倒され、歩いて部屋に着いたときはへとへとだった。

母親に着いたことを電話すると、すぐに布団を敷いて横たわった。
いきなり、どっと疲れがきた。
その疲れは、今日のほうがひどいかも。
当りまえか。
連日朝から酒を呑み、2週間きちんとした食事をとっていないのだから。

今さっき(午後2時)、不意にボスYが部屋に来た。
手には段ボール箱を持っている。
宅急便の配達員から事務所へ電話があり(依頼主が届け先の電話番号を事務所にしていたため)、七曲がり荘の入口が分からず、立ち往生しているという。

そこで人のいいボスYは、曽根がまだ帰って来ていないのだろうと荷物を預かりに来たわけだ。
で、念の為、私の部屋の戸を叩いてみたのだという。
(まったく人が良すぎる)
麦茶も飲まずに、ボスYは事務所へ戻った。

荷物は、岩手の醤油屋の若旦那・城戸さんからだった。
中身は精米したての米と、2升の醤油と、味噌2袋。ビール券まで入っていた。
「これだけ暑いと夏バテになりますよね。味噌を塗った焼きおにぎりを作ってビールで流しこんで乗り切ってください」
ありがとう城戸さん。

さっそく米をとぎ、水につける。
それからこれを書きはじめた。
なによりケロッピー前田くんのイベント(私も出演)を宣伝しなければならない。



【『CRAZY TRIP』トークイベント】
伝説の雑誌『BURST』で国内外のアンダーグラウンド・カルチャーを追い続けてきたケロッピー前田の20年の集大成! そんな最狂旅本刊行記念イベントを開催することが決定!



●日時:8月29日(月)18:00~(約2時間予定)
●場所:ヴィレッジヴァンガード渋谷宇田川店
当店で『CRAZY TRIP』を購入していただいた方はイベントにご参加いただけます!

トークイベントは著者のケロッピー前田さん、雑誌『BURST』編集長ピスケンこと曽根賢さん、クレイジージャーニーにも出演した写真家名越啓介さん、『TATTOO BURST』編集長の川崎美穂さんの豪華すぎる4人で行われます! これはやばい!

「イベント告知前に本買ったんだけど…」もちろん当店でのレシートと本をお持ちいただければイベントへ参加できます! 取り置き、予約も承りますのでお電話ください! お待ちしております!
(ケロッピー前田)



さて、これをアップしにボスYの事務所へ行こう。
そして、あずけていたお金をもらい、3カ月分の家賃を払おう。
(4カ月遅れているのだが)

大家さんにはケーキを買ってこよう。
兵庫くんには、城戸さんの醤油と味噌と、古川名物「パパ好み」を半分(田舎の親友の利明が酒と一緒にもたせてくれた)渡そう。
――夕べは疲れ過ぎて、メールで「あいさつは明日ね」としていたのだ。

以上なんとも寝惚けた文章だが、今日もまだなんにも食べておらず、これだけ書くのでくたくたである。
今回ばかりは勘弁してほしい。

これから毎日ちゃんと食べて、体力を回復し、もすこしマシな文章をアップします。
どうか、これからも御贔屓に。
尚、シェルビス新メンバーの名乗りを、一日千秋の思いで待っています。


アップして部屋に戻ったら、肉野菜炒めと、汁をつくり、味噌焼きおにぎりをビールで流し込みます。
おやすみなさい。
よい夢を。



P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――1万5千円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と1万円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]


●7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
●中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。
●下北沢「気流舎」にて。







AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
[鬼子母神日記]


「One Busy Place ・賑やかな丘の上からの眺め」
(アクリル オン ボード/1994)
佐藤ブライアン勝彦●作品



「シーン・フロム・ザ・プラネット・パーフェクション」からの二作目。
その頃はよく、「何か薬でもやって描いてるのですか?」と聞かれたが、いたってナチュラル。
人に見せると「変だ、変わってる絵だね」としか言われない為、他人に絵を見せるのを辞め、部屋に篭りただ絵を描きためていた時期。
その後、体に変化が起き始めた――(次回につづく?)。
(勝彦●文)



8月6日(土)鬼子母神は晴れ。猛暑。


昨晩、下北沢の書店(&カフェ・ バー)「気流舎」にて、ケッロッピー前田著『クレイジー・トリップ』(三才ブックス/2,000円)の出版パーティがあった。
狭い(6畳ほどしかない)「山小屋風」の店内に、20人くらいが集まった。
(鉄梯子を上ったロフトにも人が座った。まさに天井桟敷)

で、そこには相変わらず、ケロッピー前田、石丸元章、釣崎清隆、私の『BURST』4人組がそろっていた。


●左からケロッピー前田、釣崎清隆、石丸元章、私。

このメンツがそろうと、私の中でたちまち、ゆったりと気楽な気分と高揚した気分とがないまぜとなる。
中学のときの「不良グループ」が集まったような、面映ゆい悲哀を感じたりもする。
(まあ私はもちろん、3人もいわゆる「不良」な学生ではなかったはずだが)

客の顔を眺めながら、
「まるで、連合赤軍の山岳アジトみたいだねえ。どいつから殺されちゃうのかなあ?」
と、のんびり、死体カメラマン釣崎清隆に言った。
まったく自分が殺されるとは思っていない。
殺す側にいるとも思わないが、私は(釣崎や他2人も)「自己批判」する柄じゃない。

店には「アブサン」が数種類あった。
(もちろんホンモノではないが、10年くらい前から「ニガヨモギ」の成分量が徐々に解禁されている)
安シャンペンを持ちこんでいたので、カクテル「ヘミングウェイ」(彼のオリジナル)をつくってもらう。
別名「午後の死」(デス・イン・ジ・アフタヌーン)。
レシピは、アブサンをシャンペンで割ってステアするだけ。

ケロッピー前田&石丸元章の対談のあと、ポエトリー・サウンド・ユニット「PISS★KERO」のセカンド・ライブを8分ほど。
(ユニット命名者のケロッピー前田によると、★は読まずに「ピスケロ」と発音するとのこと)
来る前に寄ったボスYの事務所で、プリント・アウトしてもらった6編のうちから、夏なので、以下の2編の詩を読んだ。



「おれたちが波にさらわれる夜」
(ポエトリー・サウンド・バージョン)


おれの計画が頓挫した夜
月が高く昇るのを見た

おれの罪が露見した夜        
月が高く昇るのを見た         

勾玉(まがたま)を 乳房で温める女よ        
呪いを司る 唇を固く結んだ女よ  

おれたちが波にさらわれる夜      
月はもっとも高く昇るだろう  

 
おれの雑誌が発禁となった夜
月が高く昇るのを見た

おれの手から砂金がこぼれた夜
月が高く昇るのを見た

おれの軍隊が叩き売られた夜
月が高く昇るのを見た

おれの背に塩がまかれた夜
月が高く昇るのを見た

雷鳴を張った帆に 刀ぬく鉄火な女よ
ほころんだ夏の暮らしを 吐息の糸でかかる女よ
戦慄の向こうを きっかり見据える女よ
図書館の片隅で スカートを床にひろげる女よ

おれたちが波にさらわれる夜
月はもっとも高く昇るだろう




「天秤座の賽と匙」


渇いた男だけが
砂漠をわたる
目指すは
天秤座の賽と匙

むずかるくらいなら
女は船に乗るべきだ
男の舌を針に刺し
わたつみ深く糸を垂らせよ

群青の鉢いっぱいに
むきたての海鞘(ほや)
橙色(だいだいいろ)のやわな筋肉 
甘い果汁

渇いた男だけが
砂漠を渡る
目指すは
天秤座の賽と匙

むずかるくらいなら
おまえは釣りでもしていなよ
おれの舌に針を刺し 
おまえのまたぐらの
ちっちゃな泉に深く糸を垂らせよ
むずかるくらいなら




以上の模様をユーチューブにアップしてくれたそうだ。
「ピスケロ・ライヴ@気流舎(下北沢)」で検索すれば見れるはず。
気流舎にはシングル小説も置いてもらった(署名入り)。
初めて「ポップ」いうものを書いた。
(石丸さんに言われた通りに)


●アーティスト志望の若いお客さん。ゲイ・カップルに見立てて


2次会は気流舎そばの「餃子の王将」にて。
その後、みんなへ挨拶もせずに消える。
これ以上居たら、常のごとく「大失敗」を引き起こすに決まっている。
それに、若者で賑わう街は、若いころから苦手だ。

高田馬場で電車を降り、ついふらふらと30年来の馴染みのバーへ寄る。
大きなモニターに映る、スティーブ・マックイーンの『シンシナティ・キッド』を観ながら、ジン(ゴードン)を足してもらった「カンパリ・ソーダ」を2杯。
この夏は、こいつで通そうと思う。
キザな気もするが、52歳なのだから世間には勘弁してもらおう。
第一、旨い。

その後、深夜スーパーで食材を買い、鬼子母神のわが「七曲がり荘」へと歩く。
が、途中からきっぱりとブラック・アウト――。


――かけっぱなしのラジオの音で目覚めた。
オリンピック「ブラジル大会」の開会式が始まっていた。
時計を見ると午前の9時半。
やはり布団も敷かず、畳に寝ていた。
テーブルのカセット・コンロのフライパンには、炒めものが手つかずとなっている。
(ピーマン、インゲン、アスパラガス、赤いパプリカ、牛肉の細切り)
オイスターソースの瓶が畳にころがっていた。

冷蔵庫を開けると、缶ビールがぎっしりと詰まっている。
そこでようやく気づく。
「うわっ、まずい」
慌ててジーンズのポケットをさぐると、案の定、帰省用の新幹線代が使いこまれていた。

明日の日曜日に帰ると、母や弟たちと約束していたが、これで月曜日にしか帰られない。
それも、ボスYにあずかってもらっている家賃(3カ月分)から抜くしかない。
ボスY怒るだろうな。
(大家さんが旅行中のため、私がまとまった金を持っているのは危ないとボスYが取り上げたのだ。明日はボスYの休日だから頼めない)

しょうがない。
さっそく缶ビールを呑みながら、携帯電話の小さな画面で、オリンピックの開会式を観る。
ちょうど、日本選手団の登場を観ることができた。
サンバのリズムが心地よい。
かるく炒めなおした夏野菜も旨い。
今日は広島で、無数の生きものが一瞬で焼き殺された日でもあるのだが。

(先日、井上ひさしの戯曲『父と暮らせば』を読み返し、またラストで涙がこぼれた。広島原爆の日から数年後。「生き残ってしまった負い目」から、幸せを自ら拒否する娘に、押入れに住む(?)死んだ父親が「恋のキューピット」役を買って出る。悲しみと喜びが最後に訪れる「正統悲劇」。世界戯曲史上に残る名品中の名品だ)


3缶目を呑み干したあたりで、不意に記憶が蘇った。
あれは12前の「シドニー・オリンピック」だったはず。
場所は、浅草の和風ホテル「K」の最上階701号室。
(その部屋はエロ本&AV撮影現場として有名で、私も何十回と撮影に使った――701号室は3部屋あり、ウナギの寝床みたいな庭もあった)

そこの10畳の和室の布団に、私と恋人は全裸でねそべり、ビールを呑みながら開会式をテレビで観ていた。
そら豆をつまみながら――「K」はその手の肴も用意してあった。
(ラブ・ホテルとは思えない落ちついた部屋とサービスが気に入り、「K」はいつも浅草で呑む我らの定宿となっていた)

「世界中でこうして、恋人たちが開会式を観てるんだろうな」
「そうねえ、すごい数だろうね」
「おまえさん、運動神経よかったっけ?」
「ぜんぜん」
「ふ~ん、そういや俺、運動神経のいい女と付きあったことないや。それと不良の子とも。俺って運動はできたけど、やることなすこと、その手の女たちに気味悪がられてたからなあ」
「あなたは根っから、文系でインドアだからね」
「それに自分で気づいたのは、つい数年前だ。体育会系だとばかり思ってたよ」

シドニーの開会時間は、日本時間で何時だったのだろう。
カーテンを閉め切った部屋は、行燈とテレビの灯りしかなく暗かった。
次の会話が記憶違いでなければ、おそらく夕方か?

「こいつら見てると、やっぱりいっぱい食べなきゃいけないって反省するな。酒ばっか呑んでちゃいけないって」
「そう、男は食べっぷりがよくなきゃ」
「なんか腹が減ってきたな。そうだ、うなぎを取ってもらおうか」
「ほんとあなたって、つくづく単純ねえ」

その後、近所の老舗から白焼きと、うな重を出前してもらい、2人差し向かいで食べた。
そういう場所で食べるうなぎは、なかなか味わい深かった。
あれが、まともなうなぎを食べた最後のような――。


開会式を観たあと、前田くんからもらった『クレイジー・トリップ』を読む。
世界各国のTATTOO、カンナビス、トレパーネーション、身体改造、解剖博物館、アート、ハッカー、縄文、エトセトラ。
帯には「伝説の雑誌『BURST』で、世界の最果てを巡ったクレイジー・ハンター20年の集大成」と書かれてあった。


『CRAZY TRIP ~今を生き抜くための“最果て”世界の旅~』
ケロッピー前田著/三才ブックス/本体価格2000円(定価2160円)


『BURST』や『BURST HIGH』の編集長だった私は、その大半の取材を見て読んではいるが、やはり1冊にまとまると、あらためて「凄い」と思った。
読了し、さっそくケロッピー前田プロフェッサーにメールする。
「これを読んだ、前田くんみたいな早熟な小学生が、20年後、バーストみたいな雑誌を作るだろうな」


さて、どうにか、お盆まで生き残ることができたようだ。
これもすべて仲間や弟たちのおかげである。
月曜日、ボスYからお金をいただいて、実家へいっとき逃げ帰ることにしよう。

実は今回「兄弟会議」を呑み屋でしようと話が決まっている。
議題は「今後のおふくろと家」について。
兄弟会議を開くのは、おやじの死んだとき以来、24年ぶりのことだ。
なにより、3兄弟だけで、外で呑むのは初めてのことである。
(弟たちは酒を好まない)

別に暗い話をする気はないし、私にそう意見があるわけじゃない。
「愚兄賢弟」
心配されているのは私のほうだろうし。
兄はせいぜい陽気に酔っ払うつもりだ。

それと、田舎に帰ったら、試してみたいことがある。
深夜の思いつきだ。
(あまりまともに受け取られても困るのだが)
うな重ならぬ「天丼」についてだ。

先日、ボスYの新事務所そばにある、ずっと気にかかっていた天婦羅屋で、ランチの天丼(800円)を食べた。
ところがすこぶる不味い。
海老もイカも冷凍もので、ピーマンは揚げ過ぎだ。
なにより油が悪い。

天丼だけではなく、小皿にちょっぴりの業務用漬けもの、実のうすい味噌汁、風味のないお茶、それらの器類、花のいけかた、油臭いカウンター、メニューの書体、夜はフレンチの肉料理を出すという張り紙、すべてが出鱈目である。
ここが人気店だというから呆れた。

しかし、そこで私は「はた」と気づかされた。
そもそも私は、天丼をおいしいと思ったことがないってことに。
私は鮨の次に天婦羅が好きで、編集者時代の打ち合わせやデートには、たいがい天ぷら屋を使っていたが、天婦羅を酒の肴にしているわけで、〆に天丼まで食べたことはない。

それでも、いろいろな店で、昼めしに天丼を食べたことはある。
が、いつもいつも不満が残った。
(家で残りものの天婦羅を丼にしたり、弁当はこのさい省く)
天丼とは、揚げたての天婦羅を、わざと不味く食べる料理なのではないだろうか?

揚げたての天婦羅につゆをかけ、熱いめしで蒸らせば、「ころも」がぐちゃぐちゃになるのは当然のこと。
それが天丼であり、それが旨いんだという人に、なんらケチをつける気はないのだが、私はどうにも腑に落ちない。
揚げたての意味がないではないか。
(かっこつけるわけじゃないが、私は店ではたいがい天つゆにひたさず塩で食べる。もちろんひと品ずつ揚げてもらってだ)

そういえば、天丼を礼賛した文章を、私は読んだことがない。
またもしかすると、筋の通った高級店では、天丼を出さないのかもしれない。
(私がいちばん女を連れていった天婦羅屋は、池袋パルコの「船橋屋」だ。2人で十分に呑み食いしても1万円ほどの大衆店である)

で、深夜つらつらそんなことを考えていたら、ふと、こうすればいいんじゃないかと思いついたのだ。
(くどいが真面目に受取らないように)

●丼には、熱いめしではなく、ひと肌の「酢飯」を盛る。
●その上に、刻んだ海苔をふりかける。
●その上に揚げたての天婦羅を乗せる。
(丼にふたはしない)
●食べる際に、塩か、甘くない天つゆか、醤油を天婦羅に垂らす。
(大根おろしの代りに山葵をそえてもいいかも)


つまり、ちらし寿司と「天むす」を折衷した天丼だ。
天婦羅のタネは魚介が多いし、炙った穴子の握り鮨もあることだし、酢飯は合うと思うのだが。第一、油がさっぱりするのではないか。
(ここらへんが初老の感覚か)

海苔は不要かもしれないが見た目もある。
海苔の代りに刻んだ大葉でもいいかもしれない。

まあ、以上が深夜に思いついた「新天丼」である。
肝心の天婦羅のタネは定番でかまわないが、この場合、油は胡麻油ではなく、サラダ油の白っぽい天婦羅がよいように思う。

かつ丼にも、つゆと卵でとじたものと、ソースかつ丼があるように、天丼にも別バージョンがあったっていいだろう。

そこで、やはり1度試したくなった。
とは云え、そこらの天婦羅屋で、そんな頼みごとはできない。
が、田舎には、天婦羅割烹店を継いだ幼なじみがいる。
来週末に幼なじみが集まって呑むことになっており、そいつも来るので頼んでみるつもりだ。

それを楽しみに取っておいて、今夜のところは「うな丼」を食べて、精をつけようじゃないか。
どうせもう新幹線代を使いこんだんだ。半端な金を残してもしょうがない。
(52歳の長男は、今回も「鉄砲」の帰郷である)

それにメンバー募集に誰からも手が上がらないからと、くよくよしててもしょうがない。
「果報はうな丼喰って寝て待て」だ。
まず、銭湯でさっぱりして、雑司が谷墓地そばにあるうなぎ屋へ飛びこもう。


読んでくれてありがとう。
おやすみなさい。
おたがい良い夢を。




P.S.

[ザ・シェルビス新制作メンバー募集]
●詳細は8月1日のブログ「緊急『The SHELVIS』制作メンバー募集」にて。


以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――1万5千円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と1万円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]

●7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。
●下北沢「気流舎」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト&セカンド・ライブ放映中]
●中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。
●下北沢「気流舎」にて(最新)。





AD
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)

テーマ:


[鬼子母神日記]


「シーン・フロム・ザ・プラネット・パーフェクション」
(1994/アクリルボード)

佐藤ブライアン勝彦●作品



――この絵はバリ島への旅行から帰国後に描いた。
アジアには全く興味がなかったのだが、満点の星空と遠くから聞こえるガムランが僕の頭の中の何かを溶ろけさせてしまった様だ。
この作品以降、数年間は取り憑かれた様にココア色の女性をモチーフに絵を描いていた。
(勝彦●文)





8月2日(火)鬼子母神は晴れ。

昼下がり、買いものを終え、「七曲がり荘」へと歩く。
途中の「鬼子母神」へ、いつものように裏門から入った。
境内は、セミの(それも、もう数匹の)啼き声が聞こえるばかりで、30分前よりもガランとしていた。

が、銀杏の巨木(樹齢600年以上)の前に、たっぷりとしたからだつきの「三つ子姉妹」にも見える、若い女たちがたむろしていた。

背丈はそろって160センチ前後で、齢は22、3といったところか。
いや、もしかしたら30がらみなのかも知れない。
この齢(52)になると、そろそろ見た目では、女の齢がわからなくなってきている。
しかしいくつにしろ、その姿とたたずまいは、やはり「場違い」に映った。

3人とも、やけに「生白い肌」をしており、濃く柔らかな脂肪を絞るようにして、ノースリーブの派手な花柄模様のワンピースを(まるで薄いラバーのように)張りつけている。
髪や耳や首や腕に、子どもっぽいアクセサリーを下げ、足もとは皆ちぐはぐだ。

なにより眼を惹くのが、その乳房の異様な大きさだった。
3人が3人、そろって「Hカップ」もあるのだ。
(元エロ本編集者の眼に狂いはない)
それは今にも、大きく開いた胸の布地から「まろび出るのでは?」と、危うさを感じさせるほどの大きさだった。

しかし実際は、すでにその齢にして、まったく「弾力を失っている」のを予想させる雰囲気が3人にはあった。
皆そっくりの、メイクと、首や腕の皮膚のぬめりと、その腰の微妙な開きが、あるひとつの「職業」を語っていた。

その表情は、3人ともくったくがない。
けれどすれ違う寸前、ひとりが「猫がいるからなあ」と、空をあおいだ。
妙に幼い声だった。
彼女たちとすれ違って、数歩目に、香水と汗の混じりあった濃密な匂いの「溜まり」を突きぬけたように感じた。

わざと大きく振り返ってみると、3人は本殿へ向かって歩きだしていた。
その後姿も、濃く、厚ぼったいが、妙に無邪気な可憐さを感じさせる女たちだった。
「ソープ嬢の夏休みか」
モーパッサンの短編「脂肪の塊」を読んだのは、やはり高1の夏休みだったような。

のんびりと、空がごろごろ鳴りだした。
見上げると、いつの間にか青空の大半を埋め、灰色の雲が流れている。
参道の端を折れ「七曲がりの路地」に入った。
角を曲がるたびに、黒白のノラ猫が跳ぶように走り去る。
どこからか糞の臭いが鼻につく。
が、路面はいたって清潔だ。

――去年の夏の「猫盛りの路地」はひどかった。
縄張り争いが激化し、あちこちの路面の真ん中に糞が落とされた。
そのたびに掃除されるのだが、すぐ新鮮なつややかなそれが置かれ、とうとう古い住民たちが路地に集まっては「駆除」を口にしはじめた。
(その声の中心には「猫嫌い」のうちの大家のお婆さんがいた。「コミュニスト」なのにノラ猫にはいたって冷淡なのである)
とは云え結局、保健所には通報しなかったようだが――。

アパートの前には、区の管理する「七曲がりの井戸」がある。
去年のいつだったか忘れたが、ここ2年以上続いている近くのトンネル工事(路面電車下のバイパス道路建設)のためだろう、いったん井戸が枯れ、ここらの住民を悲しませたが、いつの間にか蘇った。
(私でさえ、いっとき工事を呪った。大家さんによると150年ものの井戸なのだ)

その脇に、常に置かれてあるバケツに首を突っこんで、親子と見える大小2匹の猫(やはり黒白)が水を飲んでいた。
私は立止まった。
数秒して、親猫が私に気づき、それに続いて子猫も生垣の下に消えた。

――おとついの深夜、ゴミを出すため玄関のドアを開くと、いきなり20匹ほどが集結しているのに出くわし面食らった。
脇を通っても皆ひっそりと動かない。
さすがに戻ったときに群れは消えていたが、なんの会合だったのだろう?
やけに神妙な雰囲気だったが。


〈除湿〉にしたままの6畳間は涼しかった。
スーパー前の花屋が200円にまけてくれた花を、2合徳利に一輪挿ししてから、酒をつくり、それを呑みながら肴をこしらえる。

花は桔梗(ききょう)だ。
6月にもらった仕事の金が入ったので、久しぶりにおごってみたのだ。
香りは薄いが、青紫色の、5枚の星型の花びらは、やはり涼しげである。

酒はパイント・グラスに「カンパリ・ソーダ」を。
ヘミングウェイにならってジン(ゴードン)を足したもの。
(レモンまではおごらなかった)
きりっとして、すこぶる旨い。

肴は、手早くできる3種をそろえた。
ひと鉢には、昨日糠に漬けた「白うり」を。
茄子やキュウリもいいが、夏にはこれが一番の楽しみだ。

もうひと品は、タコのぶつ切りと、インゲンとラディッシュのサラダ(マリネ?)。
つごう良く皆「半額」だった――見切りの野菜に風味はないが、歯ごたえだけを「よし」として。
新しい米酢の瓶を開けた。
オリーブ油は、やはり貰いものの「小豆島産」の絞りたて。
(おそらく4千円はするだろう品)

それと3つ目は、誰かの本で読んだ「高菜サンドウィッチ」をつくってみた。
(高菜は先日、滋賀の友人Rが送ってくれたものだ)
ライ麦の黒パンに、辛子バターを塗り、食べやすく切った高菜をはさむ。
「うん、旨い」
ライ麦パンの酸味と、高菜のしょっぱさと、バターのコクがよく合うじゃないか。


昼下がりの七曲がり荘は、内も外も、ひっそりかんとしている。
隣室の兵庫くんはバイトだ。
階下の大家さんは先週から来週までの2週間、「ドナウ河」を客船でくだっている。
(88歳が連れもなく独りで)

ラジオでFENをかけると、知らない女の知らない、たっぷりとした歌声が流れた。
おそらく体重150キロ以上の声。
すると、さっきの3人の女たちが頭に浮かんだ。

「夏服の女たちか……いいもん見れたな」
ひとりごちて、カンパリ・ソーダを啜る。
オリーブ油と酢にまみれたタコを齧る。
なにやら、忘れかけていた「ゆったり」とした気分をおぼえる。
まるで、夏の休暇に、どこかの海沿いの宿で、くつろいでいるような――。

ふと、田中冬二の詩を思いだす。
「だったらここは、『七曲がりホテル』の202号室だ」
口にした途端、吹きだした。
馬鹿な。
この6畳間の、どこに「エロス」がある?

「まあ、あの3人に汗ばまれたら大変だろ?」
いや、彼女たちがこの畳に座ったら、私は10編ほどの詩を書かずにはいられないだろう。
以下の詩よりも、軽く、金のかかった、色気という不純物だけを絞った詩を――。

(曽根の判断で、以下の詩の行頭をわざとそろえた)




「山猫のゐるホテル」



ネズミ地に 赤い細縞のあるサキソニーの服
それは南仏蘭西の避暑地を思はせる

馬車はあかるい海の見える村へはひる
よりかかってくる女の体重と触感と頭髪の匂ひ 眼鏡がくもる
腋の下が汗ばむ
膝かけがおちかける
女の剪った花は もう萎れてゐる

馬車は小さなホテルの前でとまる
ホテルでは、カルカラという小怜悧(こざか)しさうな眼をしたアフリカ産の山猫を飼ってゐる
女がベッドに腰かけて 靴下を脱いでゐると
葡萄の葉を打つ音がして驟雨がやって来た
カラカルが異様な声でなく             







――不意に窓の外から、雨の打つ音が聞こえた。
閉めた窓のすぐ外には、大きな葉をこの2階まで茂らせた、名も知らぬ緑がある。
「これで少しは、気温が下がるか」
どうしてもここのところ、クーラーのない207号室の爺さんのことを、1日1度は考えてしまう。

去年同様、夜はもうここ1カ月半(日曜祝日は1日中)、共同便所の手前にある爺さんの扉は開きっぱなしだ。
そこから、いまだに扇風機の音は聞こえない。ラジオの音さえ。
(眼鏡をかけた小柄な爺さんは、たまたま玄関や廊下で出くわした私の挨拶に、声や視線どころか肩をこちらへ振ったことさえない)

スーパーからガメたらしきプラスチック籠に、日々積まれていく缶酎ハイが覗くが(それを確認するたび少し安心するが)開かれた引き戸の前を通りすぎる際、1度だって視線を振ったことはない。
ついでに呼吸も止める。
なにしろ臭い。

まあ、その明らかに「生きている人間の腐敗臭」に、やはり安心をおぼえるのだが、ついそのたび、吾身を振り返ってしまう。
ポロシャツの襟を引っぱり、鼻先を突っこんでは舌打ちする。
爺さんはおそらく、今日も近場で〈棒振り〉をしているだろう。


雨音が激しくなってきた。
〈読み肴〉の図書館から借りてきた文庫本を開く。
川崎長太郎「抹香(まっこう)町」小説集『ひかげの宿/山桜』(講談社文芸文庫)
ファン以外に説明すれば、「抹香町」とは、小田原にあった「赤線地帯」私娼街をいう。

巻頭の「夜の家にて」は何度も読んだことがある。
どころか、作家になると決めた36歳のときに、本文の脇に鉛筆でなにやらメモしながら読んだことさえある。
(そんな風に「勉強」したのは川端康成の『千羽鶴』だけだ――その文体を私はまっさきに「扼殺」した。ついで長太郎のそれも――理由は面倒なので書かない。が、今回のシングル小説のB面「ものもらいの数珠」に1行、はっきりと『千羽鶴』の数行をパクっている)

それでも、また読んでみる。
最初の数行を読んで、思わず笑みがこぼれる。
「夜の家にて」は、こう始まっている。


 女房というものをもてず、五十のとしまで独身できてしまった川上竹七は、十余年来の棲家である、物置小舎を出た。十月なかばにしては、生ぬるい雨が、降っていた。
 ワイシャツに、ところどころツギの当たっている半ズボン、ゴムナガを穿き、子供用の小さな番傘をさし、かかとで歩くような、ぎこちない歩きつきで、彼は町端れの魔窟を、目ざして行った。



自他共に認める「私小説作家」であるから、川上竹七とは長太郎本人をいう。
実家の「物置小舎」に10年以上住んでいたのは、もはや伝説だ。
「魔窟」とはもちろん「抹香町」のこと。
その魔窟に長太郎は、戦後の「売春防止法の完全施行」で赤線が消えるまでの8年間を含めた30年間「一年も切れたためしがなかった」というから、よっぽど「肌が合った」のだろう。

まあ、先に読んだ「解説」(斎藤秀昭)よれば、当時の「ショート・タイム」(15分からせいぜい20分――この時間は今も変わらないはず)は、2百円から3百円で、現在の金額でいえば2千円から3千円程度だというから、男女の肌は今よりずっと合いやすかった。


「夜の家にて」50歳の長太郎は、ヒロイン「みえ」の前で何度も「不覚」をとる。
52歳の私は、もっと「不覚する」だろう。
でもせめて、この「七曲がりホテル」の202号室なら。



いま、Gメールを確認すると、まだ誰も「新メンバー」に手をあげてくれた人はいない。
私は待つ。
あなたの、色っぽい「決断」を。
この「七曲がりホテル」の202号室の畳から。
ねそべった言葉のまま。

――たったいま、セカンド・シングルのジャケット・デザインがボスYよりきた。
クソ! めちゃくちゃカッコいい。
これを早く、あなたに見せたい。
嗚呼!


おやすみなさい。
読んでくれてありがとう。

私もそろそろ布団を敷こう。
39時間も寝ていないのだし。
(酒を呑んでいただけだ)

おたがい、よい夢を。



[明日8月5日「PISS★KERO」のポエトリー・サウンド公開]

「ケロッピー前田著『クレイジー・トリップ』出版パーティ」




『CRAZY TRIP ~今を生き抜くための“最果て”世界の旅~』
ケロッピー前田著
カラー192ページ(一部2色)
三才ブックス(2016年8月5日発売予定)
本体価格2000円(定価2160円)

(以下ケロッピー前田より)
「明日の発売日8月5日に、新刊「クレイジートリップ」の著者書店訪問ツアーをやります。
(都内7店舗予定)
最終目的地(下北沢の気流舎)にて、石丸元章とのミニトーク(20:00〜21:00)あり。
追加ゲストに『バースト』『バーストハイ』元編集長ピスケンが登場します。
(「ピス★ケロ」のポエトリー・サウンド予定)

http://www.kiryuusha.com/blosxom.cgi

その後、そのまま「気流舎」にて、パーティとなります。
お時間ありましたら、ご参加よろしくお願いします」


(以下は曽根)
ポエトリー・サウンド・ユニット「PISS★KERO」のセカンド・ライブだ。
新作の詩を読もう。
(なんてまだ、書いていないが)
もちろん、「The SHELVIS」のファースト・シングルも手売りする。
(署名&詩の一節を書きます)



P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――1万5千円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と1万円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]

href="http://stat.ameba.jp/user_images/20160801/20/pissken420/2c/b3/j/o0531053013712441955.jpg">  
   
●7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。



AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
[鬼子母神日記]


「SECRET AGENT WOMAN」
(1992. Acrylic on board) 
佐藤ブライアン勝彦●作品




第1作目、10数センチの絵に3ヶ月かかった。
画材もわからず絵の具はメーカー混合。
またイラストボードの存在も知らぬ為、部屋にあった色画用紙の裏の厚紙に描いた。

この形は中学の図工の授業の際に、木彫りで友達の顔を抽象的に彫ったときの形のまんま。
当時,私が働いていたレストランの常連さんだったギャラリーショー・コンテンポラリーアートのオーナー佐竹氏に、グループ展に誘って頂けるきっかけとなった思い出の作品。
(佐藤●文)



7月26日(火)鬼子母神は曇り、ときどき雨。

午後1時。
不意に戸が叩かれる。
「東京電力です」
との声に慌てる。
これまで通り、今月も月末にひと月分払えば(2月分遅れているとは云え)大丈夫だと思っていたのだ。

手持ちの金は千円ほどしかない。
むろん口座に金などなく、その千円が虎の子だ。
真黒に日に焼け、いろんなモノをからだにぶら下げた40がらみの男は、申し訳なさそうに頭を下げ、汗をふきふき、それでも電気を「止める」と言う。

彼は決して「待って」はくれない。
いや「待てない」のだ。そりゃ、徴収員なのだから。
「辛い仕事だねえ」
なんて、同情している場合ではない。

この時期の東京で、クーラーを止められたらエライことになる。
(そもそもクーラーのない7号室――私が最初に住んだ部屋――の爺さんは死にかけている)
冷蔵庫もめちゃくちゃだ。

「南無三」
隣室の兵庫くんの扉を叩く。
兵庫くんが緊張した顔つきで顔を出す。
先日「このごろ金を借りるペースが早くなってません?」と言った「恐い顔つき」だ。

結局、2,217円を兵庫くんが立て替えてくれる。
兵庫くんは憮然とした顔で領収書をよこす。
「ごめんなさい」
一昨日52歳になったばかりの男は、心底暗欝な気分となる。


そこへ、The SHELVIS(ザ・シェルビス)の「制作メンバー」よりメールがある。
ここにいたって、メンバーから降りると言う。
理由は書けないが、むろん私が悪い。
謝って、考え直してもらえないかと頼んだが、もはや1度切れた信頼の糸は繋がらなかった。

これで、校了したばかりのセカンド・シングル小説集「Shigella」が、宙に浮いてしまった。
制作メンバーがいなければ、印刷ができない。
総製作費約20万円は、制作メンバーが用意することになっていたからだ。

「ざまあみろ」と、あざける声がする。
頭を振って、コーヒーを淹れる。
しょうがない。
「金がないとは首のない」ことだ。
こうなれば、改めてここで、新たな制作・販売メンバーになってくれるメンバーを募集するしかない。
大袈裟じゃなく、歯を食いしばって、言おう。


[The SHELVISメンバー募集] 

●製作費約20万円(見積もり有り)を「用意」してくれ、
(むろん売上げで相殺――ファースト・シングルは半年ほどで製作費をペイできた)、
●販売・発送・経理・イベントを計画してくれるメンバーを求む。
(販売・発送・イベントについては曽根も一緒に担当する)

●すでに、ジャケット写真代、スリーブ&ビニール代は支払っている。
(これら事前に払った者は元制作メンバーと私――むろん、これらは製作費20万円に入っており、新制作メンバーが最終的に清算する)

●至急必要な金は、印刷費の14万円弱(13万7千540円)だ。

●基本的にノー・ギャラとなる。
(メンバー全員がそうだ)

●3枚のシングルを発売する企画なので、2枚目の製作費回収金も、そのまま3枚目の製作費として使用したい。
(ただしペイした時点で、その回収金を持ってメンバーを抜けるのはしょうがない。1番最初のメンバーがそうだった)

●3枚目を発売して後、浮いた金があればメンバー間で分ける。

――とは云え、限定500枚。
たとえ金が浮いたとしても、メンバー4人で温泉1泊旅行さえできない。
それでは、メンバーとなって、なんの利があるのか?
(今回は校了済みのため、原稿にさえ、もはや口を出せない)

身も蓋もないが、そんなものは、はなからない。

「それじゃあ、おまえは?」

唐突だが、以下はほぼ20年も昔、私の編んでいた雑誌『BURST』の編集後記である。
(1997年VOL.18――当時の文章をやや直した)
支離滅裂な詭弁と取られることは承知。
だが、かまやしない。
作家とは元来「口舌の徒」なのであるから。



「さらば編集の光」

『ガロ』の青林堂が終わった。
おれは『ガロ』の良い読者ではなかった。
が、青林堂の創立者であり、『ガロ』の編集長だった故長井勝一が好きだ。

と云っても、生前に長井と親交があったわけではない。
彼の著書『ガロ編集長』や、『ガロ』の長井追悼号での、漫画家や編集者たちが描く肖像に、同じ雑誌編集者として深く親愛の情を感じるからである。

彼の編んだ『ガロ』が、『バースト』と同じ小部数雑誌で、製作費の少なさから、作家やスタッフ編集者に満足なギャラを支払えなかったという類似点に親近感を覚えたのでは当然ない。

『ガロ』が漫画世界や若者カルチャーへおよぼした、その怖いぐらいの影響力を多少なりとも知っていれば、2誌を比べようなんて発想自体がキチガイざただ。
おれだって、そこまでプライドを棄ててるわけじゃない。

じゃあ、長井勝一のどこに愛情を持つかと云えば、その雑誌や言葉から匂う、
「金じゃないだろ、やりたいからやってんだ」
と云う、明確で、粗暴な、ロマンチシズムこそにだ。

ガキは言うだろう。
「雑誌編集者だって、もうけてなんぼの商売なのだから、利益を考えない編集者はクソだ」と。

けれど、大人のおれはそんな理屈など屁とも思わない。
なぜなら、雑誌を売ってもうけることを目的としていないからだ。
おれの目的は、
「みんなが面白いと感じる雑誌を、自分自身が興奮しながらつくれること」だ。

自らのぞんだ先に、報酬を願う心を嫌悪すること――それがモノ作りをする者のロマンチシズムだと、おれは思う。

ロマンチシズムは美意識を生む。
目的のためには手段を選ばせる。
それが長井にとって『ガロ』であり、おれにとって今は『バースト』だ。

ちなみに、長井勝一は私と同郷の宮城県出身。
『ガロ』創刊号の発売日は、昭和39年(1964年)7月24日。
その日におれは生まれた。

ロマンチストでナルシスト。
それが大人の条件だ。
(ピスケン)



虫のいい話であることは承知の上での募集だ。
前回、前々回の募集でも、名乗りを上げてくれたのは1人ずつしかいない。
その2人とも抜けてしまったのは、すべて私の短気のせいだ。

私はモノ作りとなると、つい「刀を抜いて」しまう(マルC末井昭)。
そもそも私には、他者へ配慮すべき「生活の言葉」がないのだろう。
「昼は甘えん坊、夜は赤ん坊」
と呼ばれるゆえんだ。

決断するのは「事業計画書」と、今回の2作品「親不知(おやしらず)のしゃれこうべ」と「ものもらいの数珠」を読み、私と話し合ってからで勿論いい。
(ジャケット写真も見てもらう)

pissken420@gmail.com
こころの動いた人は、以上にメールをくれたし。
事業計画書と、2作品を送ります。
(メールを毎日確認できないので、返信は2、3日の猶予をお願いする)

まだ見ぬ新メンバーへ、以下の詩を贈る。
口舌の徒よりの「そそのかし」として。
また、今の私を叱咤するためにも。



「砂時計の砂漠」


おれは毎日
砂時計の砂漠を歩いている
夜が来ると井戸に落ち
朝が来るとまた歩きだす

からかうなよ
おれは楽しんでいる
喉が渇いているのは君のほうだろう

さあ、冷たい梨でも食べて出かけなよ
ごたごたした電気の街へ
そこに井戸を掘るのが君の仕事だ
おれが砂時計の砂漠を歩くように









[8月5日「PISS★KERO」のポエトリー・サウンド公開]

●「ケロッピー前田著『クレイジー・トリップ』出版パーティ」



『CRAZY TRIP ~今を生き抜くための“最果て”世界の旅~』
ケロッピー前田著
カラー192ページ(一部2色)
三才ブックス(2016年8月5日発売予定)
本体価格2000円(定価2160円)

【内容紹介】
注目すべきクレイジーな人々に会いに行く! 
伝説の雑誌『バースト』で国内外のアンダーグラウンド・カルチャーを追ってきたケロッピー前田の20年間を集大成! 
頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション、マリファナ合法化の最前線、ロシアにあった300年前の驚異の部屋、人体を冷凍保存するアルコー延命財団、サイバー戦士が集う国際ハッカー会議、カナダ先住民族の謎、日本人の起源を探る北海道そして縄文タトゥーの旅など、世界の驚愕の現場を詳細に紹介する。
旅本というには、いささかクレイジーな情報量を投入することで、読者の脳内に新たな旅の衝動を引き起こす危ない指南書である。









発売日8月5日に、新刊「クレイジートリップ」の著者書店訪問ツアーをやります。
(都内7店舗予定)
最終目的地(下北沢の気流舎)にて、石丸元章とのミニトーク(20:00〜21:00)あり。
追加ゲストに『バースト』『バーストハイ』元編集長ピスケンが登場します。
(「ピス★ケロ」のポエトリー・サウンド予定)

http://www.kiryuusha.com/blosxom.cgi

その後、そのまま「気流舎」にて、パーティとなります。
お時間ありましたら、ご参加よろしくお願いします。
(ケロッピー前田)



ポエトリー・サウンド・ユニット「PISS★KERO」のセカンド・ライブだ。
新作の詩を読もう。
もちろん、「The SHELVIS」のファースト・シングルも手売りする。
(署名&詩の一節を書きます)


こんな、みっともない文章を読んでくれてありがとう。
けど、あなたが新メンバーに手をあげてくれることを願う。
おやすみなさい。
良い夢を。





P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――10,000円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と5,000円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]


●7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。



いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:
[鬼子母神日記]


「マリーの夢」
佐藤ブライアン勝彦●作品
(1995 Acrylic on board)


●37歳の私(曽根)は、この絵を見てひとめぼれした。52歳の誕生日に、ここへ紹介できることを光栄と思う。




7月23日(土)鬼子母神は小雨。

起床、昼の1時。
布団を上げると、ちいさな紙切れが畳に落ちた。
手にとって見ると、ボールペンで、4人の女名が書かれてある。
隣室の漫画家、兵庫くんの字だった。

ひめ川ゆうな
向井 藍
天衣 萌香
白石 まりな

昨夜観た、今の「マニアックAV女優」のベスト4なのだろう。
「AV女優マスター」を我らから称号された、デザイナーの有山くんが紹介し、3人で選んだAV女優たちか。
(夕べ遊びに来てくれた有山くんは、元「平和出版」同僚。5歳下。現在独身)

けど、私の部屋にネットは繋がっておらず、「Xビデオ」を見ることはできない。
(昨夜はいつものように兵庫くんから借りたワイファイで観たのだ)

躊躇しながら、メモを屑籠にすてる。
歯を磨き、顔を洗い、ひげを当たる。
それから畳に寝転がり、昨夜有山くんが買ってくれたジャック・ダニエルのソーダ割りを呑みながら、先日の続きの本を読む――。


――午後5時。
ザ・ビートルズのアルバム『リボルバー』、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』、『ホワイト・アルバム』、『アビイ・ロード』のレコーディング・エンジニアであるジェフ・エメリック(聞き書きハワード・マッセイ)の本を読了。

(邦題『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実――Here,There and Everywhere MY LIFE RECORDING THE MUSIC OF THE BEATLES』序文エルヴィス・コステロ/奥田祐士訳/河出書房新社刊――厚さざっと6センチ)

読んで感動したのは、シングル「シー・ラブズ・ユー」の録音時に、EMIスタジオに百人もの〈ビートルマニア〉の女の子たちが殺到し、ビル内は大混乱だったというくだりだ。
(ビートルズの録音スタジオ内に1人が突入し白眼でリンゴへ突進。付き人にタックルされ退場)

その最中に、笑いながら「ファブ4」は演奏した。
(ビートルマニアは職員の髪までひっつかんで狂奔した。カツラでメンバーが変装しているかもしれないと思い)
ジェフは言う。
「だから、シー・ラブズ・ユーの演奏は、ビートルズ史上、最高にホットなんだ」と。

ようやく納得。
あの狂乱の魔術は、そういう状況から生み出されたもんだったのだ。
あなたも、もう1度聴いてみればいい。
「シー・ラブズ・ユー」を。
リンゴの最初のドラムからの、奔(はし)りの凄さよ。

(むかし『BURST HIGH』誌上にて、ロック・シングル100選特集をしたとき、私の1位は「シー・ラブズ・ユー」だった。ちなみにアルバムは『リボルバー』が好き。携帯の着信メロディーが「レイン」だったこともある。2位はたしかストーンズの「悪魔を憐れむ歌」。3位はピストルズ「ホリディ・イン・ザ・サン」だったような。別に嘘ではないが、他の選者4人――釣崎清隆・アイカワタケシ・清野栄一、モブ・ノリオの諸氏が、やたらマニアックな曲を並べたため、わざとベタな曲選をした気味がある。まあ、私は編集長だったのだし。ちなみにちなみに初期ビートルズのポールの1番は「キャント・バイ・ミー・ラブ」だ)


昨夜と今夜、雑司が谷鬼子母神は「盆踊り」だ。
どうしよう。
酔払いすぎて、とても外へ出ていく気力がない。
校了したシングル小説のB面「ものもらいの数珠」に、8字の文字抜けが見つけ、慌てて、編集・横戸へメールする。

そして、布団を敷き、倒れた。
その前に、詩を完成させたはずだ。
ところで、いつも思うのだが、ジョン・レノンって、男前だったのだろうか?



7月24日(日)鬼子母神は晴れのち曇り(涼しい)。

午前10時起床。
歯を磨き、洗顔し、ヒゲをあたる。
終えて、網戸を開け、午前の日に顔をさらす。
「52歳かあ」
今日は私の誕生日であり「河童忌」だ。

顔をしかめ、ほぼ無意識に近いルーティンで、小指の爪で、小鼻の脂をしごいた。
そして一瞬、爪を嗅ぎ、ティッシュで小指をぬぐう。

その爪についた脂に「チーズ臭」を嗅いだなら、私の内臓はまさに腐りかけており、臭いの濃さによって、膵炎の発症を恐れる。
その振舞いは5年半ほど前からの癖だ。
最初の「アルコール性重症膵炎」で入院してからすぐからだ。

我ながら気色の悪い癖だが、最早こればっかりはこの先も止められそうにない。
その臭いの度合いが、如実に体調の悪さを教えるからだ。
私は楽しく生きたい。

1日に2度3度、意識的に嗅ぐときもある。
ひどい二日酔いや、締切直前の原稿を前にしたときだ。
嗅ぐ際、先にティッシュで、爪の脂をぬぐう場合もある。
するとより、空気を含んだ発酵臭が、花開くように明晰となる。
虫を喰う大型の植物は、タンパク質が腐ったような匂いで虫を誘うというが、こんな臭いなのかもしれない、と思う。

私は山羊の硬いチーズが好きだが、小鼻の脂の発酵臭は、もっとネットリとした、羊のクリーム系チーズの臭いに近い。
脂の色は一見透明だが、ティッシュでぬぐうと、鶏の脂のような黄みがかった染みとなる。

体調が悪いほど、脂の臭いと黄みは強くなる。
体調が良くなると――以前なら1週間ほど禁酒すると、小鼻の脂はあっけなく無臭となり、ぬぐった染みも黄みが失せている。
その状態なら以後、酒を呑んでも、深酒をしなければ、やはり無臭のままだ。

それに気付いたのは、最初の「アルコール性重症膵炎」で入院してから、2度目の同病で入院するまでの、半年間の初期のことだったと記憶する。
(結局、私は2年間に3度入院するはめになる――最初の入院以後、飲酒をひかえ、薬を飲んでいたにもかかわらずだ。しかし、薬はもう4年飲んでいない。むろん飲酒を止めてもいない)

そんな真似を毎日、つまり小鼻の脂を嗅いでいたのを、暮らしていた前の女も知らないだろう。
いや、その姿を目撃し、はっきり私を棄てる決心がついたのかもしれない。
それは「男女の別れ」の決定的な理由となるはずだ。
さぞや「不潔な光景」に違いない。
私だって、他人のそんな様を見たらおぞけをふるう。

しかし、小鼻の脂の発酵臭を、私はやや恐れつつも、心底臭いと思ったことはない。
いや、それどころか、その臭いを嗅ぐのは、まさに病みつきといった妙だ。
そのあきらかに病んだ異臭は、私のからだが示す危険信号であるが、腐りかけの「旨そうな内臓」の放つ香りでもある。

まさか食欲を起こすわけもないが、我が身への愛しさを嗅ぐたびに感じさせ、私もまた平凡な「ナルシスト」だと納得させる。
(世には自分の排泄物にさえ愛着を持ち、その「つるつる」とした表面をなでる人間もいる――詩人の金子光晴がそうだった)

むろん、誰かに嗅がせたいなどとは思わない。
さすがに私はそれほどのナルシストじゃない。
が、これから先、私とくちづけする女が現れないとも限らない。
そのとき私は泥酔しているだろう。
シラフで最初のくちづけを交わしたことは、かつて一度もなかった。

くちづけの瞬間は、酒と煙草の臭いしか女は嗅がないかもしれない。
しかし1秒後、その発酵臭を女は鼻にするだろう。
そして愕然とするだろう。
たったいま抱いている男が、生きたまま内臓を腐らせていることに気づいて。


――年ほど前に、「からみ」の撮影したモデルは、当日「妊娠している」ことを告げた。
(これは「妊婦企画」でなければ御法度だ)
撮影場所の、当時私が女と暮らしていたマンションの風呂に浸かることを嫌がって、彼女は告白したのだった。
(風呂は撮影前に掃除してあった。私の女には内緒で)

「じゃあ、シャワー浴びるとこにしよう」と、私はカメラを構えたが、未だに覚えているのは「心外だ」と思ったからだったろう。
でも、もちろん彼女の告白を「ありがたい」とも思ったのだ。
知らずに「無理」をしたら大変だ。


眼のくりっとした彼女は、まさに業界的に「妹っぽい」幼く可愛い面立ちをしていた。
(むろん「宣材写真」で選んだのは私だ)
私服の、ワンピースも上下の下着の色模様も、彼女の「男を知らぬような」白い肌に映えていた。

彼女は「企画系」だったから、たいがいのことなら「何をしてもいい」女だったが、さすがに「妊娠している女」には手が引く。
結局、さわりもしなかった。
20代のエロ本編集者(&男優)のころ、同僚たちから「鬼畜」と称号された私が。


撮影後、お互いようやく気持ちがほどけ(他に後輩スタッフがアシストしていたが)色々話をした。
いつも女と寝ている布団に2人で横になって。
アシストの後輩は忙しいからと編集部へ帰った。

彼女曰く――。

わたしは「セックス」しないと男がわからない。
その体臭を嗅がないとわからない。
その人格と未来と相性がわからない。

14歳の初恋でも、まず自分から誘ってセックスしてみた。
それからずっと、気になった男と会うたび、セックスをして、匂いを嗅いで「さがして」きた。
今の夫は、最初のセックスの、最初のキスで「このひとと結婚しよう」と思った。
その口臭さへ愛おしかった。
ようやく「さがして」きたひとに出会えたと思った。

今日が最後の撮影。
昨日でSMクラブも辞めた。
わたしはルックスがこうだから「M女」をしてきて、けっこう人気もあった。
浣腸されて「うんこ」するだけで、4万円もらえるんだから楽だったけど、ようやく「匂いがこれぞ」という男と出会ったので、止めようと「一瞬」で決めた。

彼は自分が、わたしの最初の男だと信じている。
わたしが可愛くて、毎夜あそこを1時間も舐め続ける。
生理のときは、じっと我慢しているのがわかる――。


――年前たまたま、テレビの人物紹介番組で、妻としての彼女を見た。
彼女の腰にまとわりつくように子どもがおり(私が撮影していたときお腹にいた子だろう)、腕は赤ん坊を抱え、その腹は臨月の脹らみだった。

夫は成功し、家族の笑顔は明るく、その部屋は健康だった。
彼女の嗅覚は、正しかった。
だてに14歳から23歳までに、200人近い男を嗅いできたわけじゃない。
そのうちの1人に私もいるのだが――。

女の嗅覚は、男の内臓の不健康さを嗅ぎ当てる。
その精神の不健康さも嗅ぎ当てる。
52歳になった今日、これを書きながら、もう1度、小指で小鼻をしごいて嗅いでみる。

なぜか今日は無臭だ。
「まだ、呑めるな」
で、今、呑んでいる。
誰か(おそらくあいつか)、私に声をかけず、黙って廊下に置いていった酒を。
(越後「鶴亀」純米酒――それとハイライト1箱、わかば2箱。誕生日だからハイライトを吸っている)


52歳の誕生日の男より、あなたへ詩を贈ろう。
昨日、ようやく完成した詩だ。
こんなもんでも、2年かかった。
(今月号のコアマガジン発行『ホット・ミルク』には、以下の詩の初出が載っている)

おやすみなさい。
読んでくれてありがとう。
今夜は月が輝くはずだ。
よい夢を。





「おれたちが波にさらわれる夜」


おれの計画が頓挫した夜
月が高く昇るのを見た

おれの罪が露見した夜
月が高く昇るのを見た

勾玉(まがたま)を乳房で温める女よ
呪いを司(つかさど)る 唇をむすんだおまえよ

おれたちが波にさらわれる夜
月はもっとも高くのぼるだろう














P.S.
以下の作品を買ってくれる方、また、仕事をくれる方、メール下さい。
●「詩作品」(手書きした原稿用紙を額装したもの――10,000円)
※宅配便着払い

●原稿と編集&コピーライトの仕事。
(個人誌やグループの冊子も受けつけます。アドバイス程度なら、酒と5,000円ほどで)

●pissken420@gmail.com


[シングル小説「The SHELVIS」発売中]

     
7インチ・レコードと同じ体裁の小説集(A面「八重桜」/B面「熱海にて」)定価1,600円


●本作の購入は、これからしばらく、曽根のメール(pissken420@gmail.com)へ直にお申込みください。
(ただし、毎日メールチェックが出来ないため、お返事が数日遅れることをご了承ください)


●以下の「ディスクユニオン」の店舗で発売中。
御茶ノ水駅前店/新宿パンクマーケット/渋谷パンク・ヘヴィメタル館/下北沢店/通販センター
●中野ブロードウェイ「タコシェ」にても発売中です。
●西早稲田「古書現世」にても発売中。

[ユーチューブにてシングル小説A面「八重桜」のPV公開中]
曽根自身が声と手足で出演しています。
※ガレージパンク・バンド「テキサコ・レザーマン」が全面協力!

[ユーチューブにてPISS&KEROのファースト・ライブ放映中]
中野「タコシェ」にてのポエトリー&サウンド5回。


[シングル小説第2弾は、8月発売予定!]
乞うご期待!


いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。