miracle apple laboratory #2

This is PIRONISM BLOG from The Apple Jack for the practice of writing knowledge to the text.


テーマ:

テクノ・ポップの始祖、クラフトワークがここ数年取り組んでいるプロジェクト「クラフトワーク3‐D」。

その全貌をまとめたボックスセット『3‐D ザ・カタログ』がこのほどリリースされた。

 

いち早く購入された熱狂的ファンのみなさんが記されたAmazonレビューによると

「ファンの歓声を全てカットするなんて、さすがファンの期待を分かっていらっしゃる」

とのこと。この発言が何を意味するかは、クラフトワークの信者であるほど、すぐに理解できることだ。

 

 

1991年にリリースされた過去の名曲群を再レコーディングした傑作アルバム『The Mix』以降、クラフトワークの活動は新しい作品を創造することよりも、テクノロジーの進化に歩調を合わせた、レパートリーのアップデートが中心となった。

そして、その現時点での究極形が『3‐D ザ・カタログ』である以上、ファンの歓声というのは作品における“不純物”ということにもなりかねないのだった。

 

かつて、パスカル・ビュッシー氏による評伝本『クラフトワーク ~マン・マシーンとミュージック』に、『The Mix』の次は『The Mix 2』が計画されている、との記述があった。

結局、そのプランは流れ、シングル『EXPO 2000』~アルバム『Tour De France Soundtracks』とリリースが続くのだが、純然たる新曲のリリースを喜びつつも、内心「あれ?『The Mix』の続編はどうなったの?」と思う自分もいたものだった。クラフトワークの旧作アップデート作業は、それだけの成果を上げていたということだ。

 

だからだろうか、『3‐D ザ・カタログ』のAmazonレビューには「これこそが『The Mix 2』だ」とも書かれていた――。

そこで今回は、(せっかくファンの歓声も無くて編集しやすい事だし)『3‐D ザ・カタログ』の音源を基に「もし『The Mix 2』という名の1枚のCDがあったとしたら、どんな選曲になっただろう?」という妄想を、勝手に繰り広げてみることにしたい。

 

(以下、クラフトワーク『3‐D ザ・カタログ』購入→聴き終えた後に追記。 2017/07/19)

 

 

 

KRAFTWERK / THE MIX 2

 

【選曲する上での自分内ルール】

① CD1枚(79分55秒)に収まるサイズ

② 使える音源は『3‐D ザ・カタログ』のもの

③ 『The Mix』に選ばれている曲は収録しない

 

01. Numbers [2:58]

02. Computer World [3:22]

1981年作『コンピューター・ワールド』収録、クラフトワーク史上どころかエレクトロニック・ミュージック史上に残る最重要曲“Numbers”でアルバムを始めたい。

ビートに合わせて数をカウントするだけの単純な曲が、そんな扱いになった理由は2点。第1に、このバウンシーなエレクトロビートがヒップホップに影響を及ぼした(つまり、常に黒人音楽を搾取する立場だった白人の側から、黒人に影響を与えた稀有な例である)こと。第2に、様々な言語で数を連呼することによって、世界共通言語が数字であることを示すとともに、管理社会にとって数字データが重要であることを表したこと。

そのコンセプトは2曲目“Computer World”でより具体的になる。「インターポール、ドイツ銀行、FBI、スコットランド・ヤード、CIA、KGB。みな我々の情報を握っている、コンピューター・ワールド」。クラフトワークが描く世界への導入として、これ以上の曲は無い。

 

03. Metropolis [5:45]

1978年作の歴史的名盤『人間解体』より。クラフトワークが電子音を通して表す世界は、必ずしも希望に満ちているばかりではない、どことなく憂いを帯びた未来観が描かれるのが特徴。
原曲の完成度が高いため、『3‐D ザ・カタログ』版のアレンジも、約40年前とほぼ変化なし。
 

04. Electric Cafe [3:50]

05. The Telephone Call [2:45]

06. House Phone [2:30]

1986年作『エレクトリック・カフェ(現在は『テクノ・ポップ』に改題)から3曲。1980年代以降のクラフトワークは、機械文明と人類の生活とが融合していく様をテーマの主軸としていくが、1986年時点で、生活の細部にまで機械が利用されるようになり、それに伴い1曲ごとの題材もどんどん小粒化する(インターネット的なものを予言していたという評価もあるが、それはただの後付け)
とはいえ、個人的には好きなメロディが一番詰まっているのが、この時期だったりする。特に当時メンバーで、グループのポップ性を担っていたとされるカール・バルトスがメインヴォーカルを取るなど、大車輪の働きを見せた……のだけど、『3‐D ザ・カタログ』でのリアレンジによって、彼のパートは全カット。結果 “The Telephone Call”はインスト曲に変容していたのだった。
 

07. The Model [3:38]

08. Showroom Dummies [3:37]

1970年代後半にクラフトワークが発表し、シングルカットもされた歌モノ2連発。2曲とも「感情の無い人体」を描いた点で共通していて、この路線の完成形がグループを象徴する楽曲“The Robots”となる。

 

09. Europe Endless [5:52]

10. Tour De France [4:18]

人類と機械の理想的な関係を示すものとして、クラフトワークが頻繁に取り上げるテーマに「乗り物」がある。
1977年作『ヨーロッパ特急』収録の“Europe Endless”は、列車に乗って縦断するヨーロッパの光景を描いた楽曲。甘美なメロディーから、乗り物に対するロマンティシズムが溢れ出している。今回のアレンジで楽曲がシェイプアップされ、より旋律の美しさが際立った。
1983年発表のシングル“Tour De France”は自転車をテーマにしている。リーダーのラルフ・ヒュッターは、自転車こそが人間と機械の力が融合した存在だとし、サイクリングへとのめり込んでいく。そして、2003年にはアルバム『Tour De France Soundtrack』を発表し、趣味を実益化する(が、そこに至るまでの偏執的なハマりっぷりに引いたメンバー2名が脱退する……)
 
11. Antenna [3:37]

12. Airwaves [6:01]

1976年作『放射能』は、効果音中心のトラックがアルバムの約半分を占めるコンセプチュアルな作品であるため、リードトラックの“Radio-Activity”以外の楽曲が陰に隠れがちである。

が、そんな中にもポップ性をもつ曲が何曲かあり、エレクトロニック・ブギーともいえる“Antenna”はその最たるものだ。こういう楽曲に再び光を当てるということも『3‐D ザ・カタログ』プロジェクトの意義深さであろう。

なお“Airwaves”については、1997~1998年頃にコンサートで披露された幻の新曲“Tango”の元となった曲だという説がある。“Tango”自体は、試作品の域を出ないまま公式リリースは無く現在に至っているが、この“Airwaves”のアレンジはどことなく“Tango”に寄せたものになっている、ような気がする。。。

 

13. Spacelab [5:27]

1978年作『人間解体』収録。クラフトワークにしては珍しく、「宇宙」という普遍的過ぎるネタを扱ったものであること、ジョルジオ・モロダー風なシーケンスなど、本人側からすると「自分らの芸風ではない」という意識があったかもしれないが、楽曲の完成度としてはクラフトワーク史上随一であるといえる。

個人的には、手塚治虫の『火の鳥 -望郷編-』(漫画『火の鳥』シリーズの中でも宇宙空間の孤独を描いたセンチメンタリズム、という点では最もドラマチックな物語)を読んでいた時に、部屋のステレオからこの曲がかかり、あまりに世界観がピッタリハマったせいで鳥肌が止まらなかったという思い出がある。

『3‐D ザ・カタログ』プロジェクトの中でも、映像効果によって最も評価を高めた曲であろう。ライヴでは、この曲に合わせて流れるヴィジュアルによって、観客から大歓声が上がっている。

 

14. Kometenmelodie 1 [5:29]

15. Kometenmelodie 2 [3:30]

1974年作『アウトバーン』は、タイトルチューン“Autobahn”22分以外は刺身のツマとして扱われる場合がほとんどであるが、B面収録のこの2部構成の曲も決して捨てたものではない。ただ、邦題“大彗星”は、やや大袈裟過ぎやしないだろうか。

 

16. The Man Machine [5:08]

アルバムの最後を締めるのは、1978年作『人間解体』よりタイトルチューン“The Man Machine”

2000年代に入ってから、コンサートのオープニングをこの曲で飾るようになったが、原曲をアルバムで聴いていた人間にとっては、静かに幕を下ろす位置の方がしっくりくる。

“The Robots”と並んで、グループの存在そのものを言葉で示したものとして、クラフトワーク史上最重要曲の一つである。

 

 

こうして編集し終えた『The Mix 2』が、『The Mix』と最も異なる点は、もはやクラブミュージックや現行テクノに色目を使うことをせず、自分たちのサウンドをクリアーに、シャープに更新することに徹底している点だ。

『3‐D ザ・カタログ』に収録されている楽曲に、原曲のイメージを壊すものはほとんどない。

それは、もはやクラフトワークが時代や流行に価値を左右されることのない存在になったことを意味している。すでに彼らは、歴史的な音楽遺産になっているのだ。

『3‐D ザ・カタログ』は、そんなグループの“物理的な”集大成中の集大成。だから、これ以上歴史を更新する必要も無い。新曲なんか、もう出してくれなくてもいい。

 

 

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。