集客広告屋の覚書 コトノハ草子古今東西 コトバ屋さくらの徒然ネタ帖

集客広告コトバ屋のネタバレ「言葉」の徒然日記。ビジネスと恋愛と人生に効くコトノハを一方的に熱く語ります。日本語・アイヌ語・古今東西。今も昔も言霊があなたの側で、そろりと何かをささやきます。


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間男という言葉がございます。

まあ、要するに、女房を寝とる男のことですね。

その昔、男がお妾さんを持つことは合法と言うか、契約書をかわせば問題ないことで、女房も了解していたり、了解していなくてもお妾さんにとってみれば契約事で、お妾というのは「職業」でした。

しかし、人の女房というのは絶対に何かしてはいけなくて、間男は殺しても構わないという法律がありました。
「不倫」なんていいますがそんな悩ましいものではなく、生きるか死ぬかの大事であったわけですね。

「主ある花」つまり、人妻。
生きるか死ぬかの恋路。しかし、人妻というのは魅力があるものでして。


「はああああああ。困っちまったなああああああ。」

貸本屋の新吉は、今まで生きてきた中で最高潮に悩んでいた。
取引先の旦那の御新造(奥さん)から「お誘い」を受けていたのだ。

「今夜、旦那がいないので来てくださいって、行けるわけがないじゃないか。
でも、『来てくれないと覚悟があります』なんて書いてあるし、お得意さんの奥様には可愛がってもらわないと、取引をしくじるなんていうしなあ。弱っちゃったなあああ」

手紙には「覚悟がある」なんて書いてある。そんなことに慣れていない新吉。
仕方がなく、御新造のもとへ行ってしまう。

「なんだい新さん。全然飲んでないじゃないか」
「いえ、もう十分いただきました。そろそろ帰らせていただきたいんですけどぉ。」
「なに?帰るっていうのかい?そんならあたしは旦那にあることないこと喋っちまうよ」
「ええええええ。そんなの困りますよお」

そうなってしまってはもうヤケである。
ぐーっと湯のみで酒を飲んで勢いをつけようとすると、今度は気持ちが悪くなってしまった。

「あらあら。だらしがないねえ。さあ。着物を脱いで。横になったら楽になるからさ」
襖を開けると、準備良く床が敷かれている。

横になっていると、今度は御新造が襦袢一つになって同じ布団に入ってくる。
と、そこへ。

「おおい。帰ったよ。今帰りましたよ。開けとくれ!」

お帰りにならないはずの旦那が帰ってきた。
「新さん!大変起きとくれ!旦那が帰ってきたんだよ!」
「今日は帰ってこないって言ったじゃないですかあ」

バタバタと身支度をして裏口からほうほうの体で逃げてきた新吉。
ふと見ると、紙入れ(財布)がない。

「しまった!忘れてきた!」

家に帰って頭を抱えて、新吉は悶々と考える。
夜逃げしようと思ったが、もしかすると旦那は紙入れに気づいていないかもしれない。
なら、紙入れを御新造を返してもらえば、こともなく終わるに違いない。

朝に行ってみると、具合の悪いことに旦那は起きている。
新吉のウロウロしている挙動不審な姿を見て、旦那が声をかけた。

「なんでい新吉。浮かない顔して。何かあったのかい」
「なんか…あったんですかねえ」
「俺がそれを聞いてんだよ。」

と、おかしな会話がはじまる。

「おめーの悩みってそりゃ女じゃないか?しかも、人のかみさんじゃないのか」
「そうなんです。」
「おお。うまいことやりやがったな。で、なんだってそんなことになったんだい」
「御新造から手紙をもらったんです。来てくれないと覚悟がある、なんていって」
「そりゃあ仕方がねえなあ。俺だってそんな手紙をもらった日にゃあ、出かけるよ」

「そしてお酒を飲んで、酔っ払っちゃって」
「ふんふん」
「布団に入ってたら、御新造が入ってきて」
「ほうほう!」
「そこに、旦那が帰ってきちゃったんです」
「間抜けなところに帰ってきやがったな」

「で、裏口から逃げたんですけど、紙入れを忘れてきてしまったんです」
「それは、お前さんの紙入れだと知らないんだろう。シラをきればいいじゃないか」
「でも、中に御新造の手紙が入っているんですよ」
「馬鹿だなあ。そんなもんは破って捨てたり燃しちまったりするんだよ!」

とかなんとかやっていると、その御新造がやってくる。
「おはよう新さん。あら、青い顔してどうしたの?」

「それがこいつときたらどっかの女将さんにからかわれたらしくって、紙入れを置いてきちまって、そこから足がつかないかどうかを心配してるんだよ」

すると御新造。
「あらあら。そんなことは大丈夫だと思うのよ。だって…」
としれっと話し始める。

「そんな若い男を引き入れて何かをしようっていう方ですもの。抜かりはないでしょうよ。
旦那さんをお迎えする前に、何か具合の悪いものはないかをぱっと見渡して、紙入れなんかがあったらちゃーんと、しまっていますよ。
だから新さん、大丈夫。ねえ、あなた」

「そりゃあそうだなあ。ああ、その通りだ、心配ねえ。
よしんば見つかった所で、てめえの女房取られるような旦那だ。
まさかそこまで気が付かねえだろうよ」


落語「紙入れ」。
男二人のおかしな会話に、したたかな御新造のセリフがなんとも色っぽく聞こえてしまう噺です。

このサゲは江戸版ですが、上方版では続きが。

「そうよねえ。そんな阿呆な顔を見てみたいわあ」
すると旦那が自分を指さして

「ここにおるで」


人の女房と枯れ木の枝は 登りつめたら命がけ

落ちてケガをする前に、引き返せるうちに降りる心がけを。



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