ぴの

こんにちは 緑川 ぴの です


風に思いを乗せるように うた(詩)を書いています


えっと、“ぴの”はピノッキオの“ぴの”です

どうぞよろしくお願いします



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さくら坂のひと

テーマ:うた 2010-02-08 18:36:07 pino1864の投稿
私のおなかの上で赤鬼みたいな怖い顔をして
流れる額の汗拭おうともせず
力強さこそが総てと容赦ない恥骨の痛みに涙を流す




さきほどまでの赤鬼が嘘のような寝顔
横になって見つめれば不思議と安らぎに満たされて
肌けた掛け布団をなおしてみたり
母から教わった子守唄
許せることの優しさを知る




あれは手をつなぎ越える坂だった

坂の上には添え木で支えられた桜の老木があって
開花の季節ともなれば
坂上から見渡す景色を薄桃色に染め上げた

晴れ着を着た母と子が
契りを交わしたばかりの男と女が

一歩一歩と手をつなぎ苔した石段を登りつめ
鶯の気まぐれに老木の生き様これみよがしと風に舞う




母の乳首に夢心地と戯れていた
そんな子守唄を
私を組し抱いた男のためにくちずさみ

やがて産まれ来る我が子の指先に咲いた桜の色をなぞっては
いつの日にか手をつなぎ母と越えたあの坂を


越える


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振り返るひと

テーマ:うた 2010-02-01 20:35:37 pino1864の投稿
疲れてきたのかな?

女子マラソン観てたあの人がつぶやいた

どれどれとテレビの画面を見やれば
折り返しまで先頭グループにいた選手が何度も後ろを振り返った

背後に見えるのは何なんだろう

迫り来る選手の姿とか見えれば追いつかれてしまう恐怖にかられるだろうし
何も見えなければ見えないで底知れぬ不安に捉われてしまう気がする

これからが勝負ってときなのにね

不規則に乱れる両肩はみるからに苦しそうで

まるでわたしたちみたいだよね
ウソっぽく
それでいて本気交じりなわたしの想い

あなたは敢えて答えようとせず
トップの選手は決して後ろを振り返ったりしない
そんなことばを画面に向かって吐き捨てた

人生はマラソンみたいなものって言われるけど
長いようで短かった人生で諦めと引き換えに得たもの
それは明日への仄かな希望というか
未だ扉は閉ざされきってはいないのだという不確かな手触り

それでもあなたは優しいから
抱きしめられれば厚い胸板からは吸いさしの臭いがして

俺も疲れてきたのかな?

問いかけられたことばの背後に見えるもの

たぶんねと苦笑交じりに答える連れ合いの姿であり
ささやかな殺意を秘めながら生きているひとりの女の姿でもある




尋ねるひと

テーマ:うた 2010-01-25 22:47:47 pino1864の投稿
お嬢さん、ハンカチ落としませんでしたか

なんか懐かしいよね

それから腕時計しているくせに
いま何時?とちゃっかり左手首隠しつつ尋ねてみれば

そうねだいだいね♪

あの頃のあなたは笑顔で答えてくれた

柱という柱から時を刻む音絶えて久しいけど
今年の桜の開花は早いらしくて
ひとり出直そうと決意したわたしの心を励ましてくれる

そんな季節だよね

春ってさ

涙をお拭きよと渡されたハンカチは別れのしるし
粋な別れをしようじゃないかと
かび臭いフレーズにすがりつく自分自身が悔しくて

そうねだいだいね♪

あくまでもシロクロ付けないのが人生の妙味ってやつだけど

外したままになってた結婚指輪
何処へ仕舞ったのかと机の引き出しひっくり返す





歩めるひと

テーマ:うた 2010-01-19 19:45:04 pino1864の投稿

ちぇっ!

右肩に強い衝撃を感じたと思ったら
見知らぬ男のひとの舌打ちが耳奥にまで突き刺さる

ちぇって言われてもね

いつもと変わらぬおっちょこちょいだから
うっかり階段踏み外して捻挫しているだけなのに

なんて世間は冷たいんだろう

信号変わるやいなや
どっと交差点を渡り切ろうする忙しい人波に乗れず
あれれっどっちの手でつくんだっけ
右足捻挫しているのに左手で松葉杖ついていた

なんだか情けなくてしょうがない
わたしって弱者と言い切るのはおこがましいにしても
こんな身体になって思い出したことがある

小学校生活最後の冬休み
同じクラスにアキちゃんって名前の女の子がいて

まっへっへ!

久しぶりに白く積った校庭ではしゃぐ皆の背中へ叫んでた

誰ひとりとして彼女のこと特別扱いしてなくて
いじわるとかしてた訳じゃないし

もしかすると彼女なりの生きる速さで
自分自身を追い求めていたのかなと思ってしまう

ちぇっ!

わたしを追い抜きざまに今度は若い女のひとが舌打ちした

何がそんなに気に障るのだろう

よっこらしょ!

わたしはわたしなりの速さではじめの一歩を踏み出した

縛るひと

テーマ:うた 2010-01-12 18:57:28 pino1864の投稿
自分自身を型にはめようとしているのかな
知らず知らずのうちに
「ねばらない」
そんな思いに捉われてしまう

誰かにそそのかされている訳でも
強いられている訳でもないんだけどね

つまるところはこころの持ちようなんだからと
そんな思いを試しに捨て去ってみた
そしたら、すうっと軽く身体弾みだして
今までの悩みってなんだったろうかと可笑しくなった

ばっかみたいだったよね

いつもの陽だまりにはいつもの三毛猫がくつろいでいて
出会う度にガン飛ばしてたんだけど
優しく微笑んで「こんにちは」なんて声かけてみる

清清しい一日だなと機嫌よく歩いていたら
ちょこっと小腹空いてきた
何か買い物でもして帰ろうかとお財布のなか覗くと

どうしてなんだか小銭しか残っていなくて

自由とは不自由ってこと

そんな当たり前のことから目を逸らす自分自身に気付く


年明けのひと

テーマ:うた 2010-01-05 19:04:32 pino1864の投稿
たばこのヤニで煤けたリビングの壁に一箇所
まるで雪景色を穿ったような真新しい壁紙が気になる

あのひとがわざわざ買ってきては飾っていた
贔屓にしてる野球チームのカレンダー
縦じまのユニフォーム着た選手たちが不細工な笑顔でポーズ取っていた

関西生まれじゃないはずなのに
連敗続くとわたしにまで八つ当たりしてさ
頭にきてカレンダー破り捨ててしまおうと何度思ったことか

会社で貰ってきたカレンダー飾ってみたけど
小振りなサイズに間抜けな白さが未練を誘うようで

このなかにはトレードされてしまった選手も入っているんだよな
あのひとは一枚一枚めくりながらそんなこと呟いてた

通勤路にシャッターを閉ざしたお店の名前は直ぐに忘れ去ってしまうのに
間抜けな白さは愛しあってた頃の記憶をいつまでも押し付けてくる

この際だから壁紙張り替えてしまおうかな

借りてる部屋だし勝手なことできないの判っていても
たばこ臭さと明けたはずの年まで未だに明けぬような気がして

あのひとの嫌いなジャイアンツのカレンダー飾ってみた



年越しのひと

テーマ:うた 2009-12-29 22:41:19 pino1864の投稿
誰にでも越すに越せない川がある

その川を越えようと試みるもよし
はなから越すことなど考えもせずに使い古しの釣竿一本
かの太公望になった気分で日がな一日

立ち枯れの葦原を渡る北風は冷たくもあり
それ故の優しさをうちに秘めていて

たとえば旧友からの手紙に綴られている
想いを成し遂げたことへの誇り

せっかちな手つきで裏返す焼餅のこおばしさと
心の片隅に多少のやっかみがあるにせよ
ここは素直に礼賛のことばを添え
百八つの鐘では足らぬ我が煩悩を持て余しながらも

穂先より伝わる魚信の手ごたえに
これも人生と一気呵成に消しこむ浮きの向こうへ明日をみる




知りすぎたひと

テーマ:うた 2009-12-22 18:28:47 pino1864の投稿
お母さんのこと嫌いなの?

携帯電話でのやり取りを気にされたのか
調布駅の改札抜けたところで、由紀さんが心配そうに尋ねてきた

母のことかぁ、どうなんだろうねぇ
好きとか嫌いとかそんな物差しで母娘を計った覚え無い訳じゃないけど
あれは小学六年生の冬だったか
夫婦喧嘩した母からパパとママのどっちが好きかと問われ
うっかり「パパ!」と答えてしまったバツの悪さ忘れてはいない

何十年ぶりかで霜柱を見かけた

こんな朝はめったやたらと寒さに震え
おしゃべりな由紀さんさえも口数少なくなりがちで
吐く息で眉毛まで白くなってしまったのではと眼鏡越しに睨んでも

年の瀬の青空は葉の落ちた銀杏並木とそっけなく

「今年のイブはパン教室つながりでホルモン焼きパーティーかな?」

彼氏のいないイブって正気ではいられないほどに怖くて
好きでもない男子と一年前から予約入れたベッドのなかで過ごしたりしたけど
あの頃のエネルギー?って何処から沸いてきたんだろうね

一切合財を遠い昔と括ってみたくはなるものの

今年のお正月は早く帰って来いって母のことばが気障りで
あの時、「ママ!」って答えておけば良かったかなと今更ながらに考えてみる






犬印のひと

テーマ:うた 2009-12-15 10:31:16 pino1864の投稿
結婚しないわたしへのあてつけなのかなと思った

今更ながらの大ぶりな段ボール箱の底
つややかな赤い実りをいたわるかのようにそれは敷かれていた

一見して母の達筆を思わせる簡潔な手紙には何一つ触れられていなくて
お礼の電話でもどうしたものか言いそびれてしまった

押入れでもあれば押し込んでおくのだけど
初雪の肌触りには産まれ来るものへの願い込められているように思え
あっさりと捨てるわけにもいかずベッド下の小さな衣装ケースへ押し込んだ

それからだったと思う

季節の折々に送られてくる仕送りに添えられた思い出らしき品々
あるときはガラガラだったり
セルロイドのおしゃぶりだったり
きれいに畳まれ、押し花然としたあぶちゃんだったりした

相変わらず手紙にはそれらについて何一つ触れられてなくて
偏狭な片思いにも似たノスタルジアというか
物ごころつく前のわたしにはそれらについての記憶なんてあるわけ無い
「これはあなたが泣いて離さなかったガラガラなのよ」
遠い昔を懐かしむように母から語りかけられたとするならば
「ああ、そうだったわね」と頷いてはしまうのだけど

初雪の便りしだいと遅くなってゆくような

湯上りの薄暗がりを素っ裸で寝室へすたすた歩み
何を思ったのかベッド下の小さな衣装ケースからそれを取り出すと
鏡に向かい産まれ来るものをいたわるように下腹部へそれを巻くひとりの女

それはわたしなんかじゃなくて
遥か遠い昔の
初雪よりも真白い肌した若かりし頃の母の姿



戯れのひと

テーマ:うた 2009-12-08 20:58:15 pino1864の投稿
年末の気忙しさに閉経後の人生を考えてみたりする
それはあまりにも取りとめなくて
生理用品の買い置きはどうしようかとか
明日から生理用ショーツ穿かなくて済むのねとか
不幸中の幸いにして生理痛とはさほど縁の無いおんなだったし
子供を欲しがったあの男とは別れて久しく

あぁ飲みかけのボジョレヌーボーあったよね

おんながおんなじゃ無くなるってのは
年老いて卵産めなくなってしまった廃鶏のようで
ある日突然若い男に背負われ姥捨て山に捨てられてしまいそうな
漠然とした不安感あったりするとか

おつまみ…えっと、チーズ欲しい

幼女、そして少女からおんなになって
おんなを卒業したら
やっとのことで、ひとかどの人間らしくなれるのかな?

そしたらさぁ、さくら色した小さな貝が恋の予感にきゅんとなるような
そんな想いに巡り会える気がして

閉経
そのことばのうちにある悲劇性というか喜劇性ってヤツと
ほろ酔い加減で戯れる

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